ダンビュライト|ダイヤモンドのようなクリアに輝く希少石、その魅力や価値を解説

かつて「ダイヤモンドの代用品」とされたこともあるダンビュライトは、高い透明度ときらめきが特徴的な宝石です。
採掘量が少なく、希少性が高い石でもあります。現在はダイヤモンドの代用品としてではなく、ダンビュライトそのものの魅力に惹き込まれるコレクターが後を絶ちません。
ダンビュライトの輝きは、どうして生まれるのでしょうか。
今回は発見の歴史や鉱物の性質なども詳しく解説しながら、ダンビュライトの秘密に迫ります。
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1.宝石・ルースとしてのダンビュライト

ダンビュライトは、そもそも宝石品質の個体が採掘されることが、ほとんどありません。宝石品質のダンビュライトは、それだけで価値があります。
はじめにダンビュライトを宝石・ルースの面から見ていきましょう。高品質なダンビュライトのポイントやダンビュライトの輝きの秘密にも迫ります。
■高品質なダンビュライトとは

ダンビュライトも他の宝石の例に漏れず、インクルージョンがなく透明度の高いものが珍重されます。
ただ雪のような細かな乳白色のインクルージョンや、胞子状のインクルージョンがあるダンビュライトも見つかっています。
インクルージョンは、石に閉じ込められた生成環境ともいえるものです。鉱物が存在した環境や成長の仕方によって、内包する鉱物や形状が異なります。
二つと同じものはないのが、インクルージョンの魅力です。
クリアな輝きを放つ透明度の高いダンビュライト、個性あふれるインクルージョンダンビュライト、好みの1点をぜひ探してみてください。
■ダンビュライトの特徴
ダンビュライトの輝きは、ダイヤモンドの代用品とされていたほどです。
カラーレスのダンビュライトに細かなファセットカットを施したルースは、一見しただけではダイヤモンドと区別がつかないかもしれません。
ダンビュライトがこれほどまでに見事な輝きを発するのは、分散率と屈折率が高いためです。
強く輝く宝石の屈折率と分散率を比べてみましょう。
宝石名 | 屈折率 | 分散率 |
---|---|---|
ダイヤモンド | 2.41 | 0.044 |
ダンビュライト | 1.63~1.64 | 0.017 |
クォーツ | 1.54~1.55 | 0.013 |
トパーズ | 1.61~1.62 1.63~1.64 |
0.014 |
スフェーン | 1.90~2.00 | 0.055 |
■ダイヤモンドの代用とされた理由

ダンビュライトがダイヤモンドの代用とされた理由は、輝き以外にもあります。
それは硬度と劈開性です。
ダンビュライトの硬度は、7~7.5とクォーツ同等です。さらに劈開がありません。
ダイヤモンドの輝きを最大に引き出すブリリアントカットを施しても平気な堅牢さと、高い透明度によってダイヤモンドの代用品として人気が出ました。
ただ、ダンビュライトそのものの産出が少なく、希少です。現在は代用品ではなく、ダンビュライトを指名して集めるコレクターも増えています。
■ダンビュライトの名前の由来と発見者
「ダンビュライト」という神秘的な響きの名前は、最初に発見されたアメリカ・コネチカット州のダンベリ(Dabrye)という地名にちなんでいます。
発見者は鉱物学者のチャールズ・シェファード(Charles.U.Shepard)です。シェファードは1839年・ダンビュライトの発見に先立って、2つの新種鉱物を発見しています。
1835年:マイクロライト/マイクロ石 (Microlite)
1838年:ワーウィッカイト/ワーウィック石(Warwickite)
アメリカの鉱物学界の第一人者だったシェファードは、膨大な数の鉱物標本を収集します。1877年にはアマースト大学(マサチューセッツ州)が彼のコレクションを購入し、アメリカでも類を見ない規模だと評価しました。
彼の死後、息子はさらに10,000点以上の鉱物標本をアマースト大学に寄贈します。また200種以上の隕石を含むコレクションは、スミソニアン博物館に所蔵されています。
ダンビュライトは、鉱物に一生を捧げた偉大な鉱物学者が発見した石なのです。
■ダンビュライトの産地

数あるダンビュライト産地のなかでも、美しく整った結晶を産出することで有名なのがメキシコ、そして日本です。
ダンビュライトは、日本を代表する数少ない鉱物の一つです。
ダイヤモンドの代用品、また日本でもジェム品質のダンビュライトが採れた歴史から「ジャパニーズ・ダイヤモンド」と呼ばれたこともあったそうです。
<豆知識>世界で評価される日本産の鉱物
- ダンビュライト(宮崎県、大分県)
- トパーズ(岐阜県、滋賀県、三重県)
- アキシナイト(大分県、宮崎県)
- スティブナイト(山口県、愛知県、愛媛県)
- 水晶/日本式双晶(山梨県、長野県)
- ヒスイ(新潟県、鳥取県、兵庫県、岡山県、長崎県、北海道、群馬県 など)
ダンビュライトは宮崎県を代表する鉱物として、珍重された過去を持っています。鉱山は閉じましたが、いまでも宮崎県総合博物館には「ダンブリ石」として展示されています。
博物館の一角に静かに佇む、ファセットカットされたダンビュライトと原石。一見の価値がある収蔵品です。
■ダンビュライトの蛍光性
2015年、ベトナムで宝石品質のダンビュライトが見つかったニュースが、宝石界を駆け回りました。
発見されたのは、ベトナム・イエンバイ省ルクイエン地区の鉱床です。ルビーやサファイア、スピネル、トルマリンが採掘されていた鉱床でダンビュライトが見つかりました。
ダンビュライトは、コレクターや鉱物学者にとって希少性が高い石です。
しかしルビーやサファイア、スピネル、トルマリンよりも採掘量が少なく、地元の労働者はよく知りません。
「ありふれた石英の破片」として、打ち捨てられることも多かったようです。
さて、この時発見されたダンビュライトはハチミツのような黄色をしており、透明度も高い高品質な個体でした。
ちなみにハチミツ色のダンビュライトは、ホワイトカラーよりもさらに希少です。
調査の結果、色がより濃い個体は長波紫外線により蛍光(青色)を示すことがわかります。
「長波紫外線による蛍光性」という特徴は、他の産地のダンビュライトと区別する際の基準になりました。
タンザニア・マダガスカル産のダンビュライトは長波・短波とも蛍光せず、ミャンマー産のダンビュライトは長波・短波とも蛍光するためです。
とても不思議な現象ではないでしょうか。
ベトナム産のダンビュライトは、まだまだ詳しい調査が進められている最中です。新たな発見があるのかどうか、期待して待ちましょう。
2. 鉱物・原石としてのダンビュライト

【Wikipedia掲載画像】Rob Lavinsky, iRocks.com – CC-BY-SA-3.0, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10147938による
ダンビュライトは鉱物学的にも高い価値を持っています。
ここからは鉱物・原石の視点から、ダンビュライトを詳しく見ていきましょう。
■組成について
ダンビュライトの組成情報を、以下にまとめました。
英名 | Danburite(ダンビュライト) |
和名 | ダンブリ石(だんぶりせき) |
成分 | Ca(B2Si2O8) 珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 斜方晶系 |
硬度 | 7~7.5 |
屈折率 | 1.63~1.64 |
劈開 | 不明瞭(1方向) |
色 | 無色、白色、黄色、ピンク色、褐色、灰色 |
産地 | メキシコ、日本、ミャンマー、マダガスカル、ロシア、アメリカ、イタリア、トルコ、スイス、ボリビア、スロバキア |
ダンビュライトの結晶は、基本的に無色です。次いで白色や黄色、稀に淡いピンク色が産出します。
決して華やかとはいえないカラーバリエーションですが、透明度の高さゆえにどの色も静謐で神秘的な輝きをまといます。
黄色〜褐色系のダンビュライトは、トパーズによく似ています。とりわけインペリアルトパーズと混同されるケースも多いようです。
<用語解説>インペリアルトパーズとは

トパーズのうち、OH(水酸基)タイプのトパーズを、F(フッ素)タイプのトパーズと区別して呼んだ名称。
一般のFタイプトパーズより、価値が高いとされる。 シェリー色ややピンク色が人気で、赤味が強いほど高価格。
■原石の形状

ダンビュライトの原石は、ほとんどが柱状で産出します。さらに柱面に縦の条線があります。
柱状結晶であることと条線の存在により、トパーズとしばしば混同されます。
また、結晶の先端部が、特徴的な楔型になるものもあります。
ダンビュライトはマグマの熱によって既存の岩石が変性した「接触変性岩(熱変成岩)」で生成します。
多く発見されるのは、ドロマイト(苦灰石)スカルン中です。長石を伴って発見されるのが一般的ですが、かつて日本ではアキシナイト(斧石)を伴ったダンビュライトが採れました。
アキシナイトは、かつて宮崎県などで盛んに採掘されていた鉱物です。実際、土呂久鉱山(宮崎県)からは、アキシナイトの一部に白色のダンビュライトが成長した原石が見つかっています。
またダンビュライトはスカルンのほか、高温のペグマタイト鉱床や蒸発岩からも見つかっています。
<用語解説>
● ペグマタイト鉱床とは?
石英やアルカリ長石、黒雲母などの大きな結晶からなる岩石のうち、鉱物採掘の対象となる鉱床のこと。
● 蒸発岩とは?
海や塩湖の水の蒸発にともない、水中に溶けていた物質が沈殿してできる岩石のこと。
■ダンビュライトが希少な理由
ダンビュライトが希少な理由は、結晶にホウ素(B)を含むためです。
ホウ素を含む鉱物は、ほかに以下があります。
トルマリン
アキシナイト
ダトーライト
そして化学式がシンプルな鉱物ほど、地球上に広く産出するのが一般的です。
ところが、ダンビュライトは決して複雑な化学組成をしているわけではないのに、産出量が豊富ではありません。
これは他と比べてホウ素の含有量が多いことが理由だと考えられています。
ホウ素が地殻中に存在する量は、8.7ppm~10ppm程度です。これは希土類元素(レアアース)のプラセオジムやトリウムと同等の量でしかありません。
ちなみにホウ素は、身近なものを含む幅広い用途に使われています。
<ホウ素のおもな用途(ホウ素化合物を含む)>
- 住宅用の断熱材
- 強化プラスチックに使うガラス繊維の原料
- 液晶ディスプレイなどの特殊ガラスの製造
- 陶磁器のうわ薬
- ダンボールの接着剤
- 目薬
- 殺虫剤・防虫剤
- 原子力発電の制御棒 など
現在、日本はホウ素の全量を輸入に頼っています。国内ではホウ素の原料が採掘できないためです。
■ダンビュライトとトパーズ

ダンビュライトの結晶は、トパーズとよく似ています。
透明度といい形といい、さらに色まで酷似しており、一見しただけでは区別できないかもしれません。
ここで、ダンビュライトとトパーズを区別する方法を3つ紹介します。
1)劈開で区別する
劈開を利用した区別は、もっともよく使われる手法です。
ダンビュライトは劈開が不明瞭で、特定の方向に割れることはありません。
ところがトパーズは完全な劈開を持っています。力を加えると結晶の柱面に対して垂直に、すっぱりと割れます。
2)化学的な特性で区別する
コレクターが大切な標本で実行するのは勇気がいる方法ですが、化学的な特性を使って区別する方法もあります。
ダンビュライトは、加熱により溶解します。また温めた塩酸にも解け、ゲル状に変化します。
一方、トパーズは加熱しても、酸を加えても溶けません。
3)比重で区別する
コレクションに傷をつけずに区別できる方法が、比重に注目するやり方です。
ダンビュライトの比重は2.97~3.03。対してトパーズは3.56~3.57(Fタイプ)、3.50~3.54(OHタイプ)です。
同じ大きさの個体を持ったときに、手の平に感じる重みがまったく違います。もし手元に同程度の大きさのダンビュライトとトパーズをお持ちなら、試してみてください。
3. ダンビュライトをより楽しむために

ダイヤモンドの代用品とされるほどの輝きを誇るダンビュライトは、ジュエリーやアクセサリーとしても楽しみたい宝石です。
希少性の高さゆえ、ジュエリーショップではお目にかかる機会が少ないかもしれません。ルース専門店やレアストーン専門店、ミネラルショーなどで探してみてください。
ここからはダンビュライトを、もっと気軽に、もっと身近に楽しむヒントを紹介します。
■石言葉
ダンビュライトの石言葉は「理性の石」「心の調和」です。
自律神経のバランスを整えたいときや、気持ちを落ち着けたいときに向いています。清らかな水を閉じ込めたような透明感は、見ているだけで心をスッと穏やかにしてくれるでしょう。
■ビーズや加工品として
ダンビュライトの性質は加工に向いています。
ファセットカットを施された石や、原石そのものがさまざまなアクセサリーとなり販売されています。

ダンビュライトの静かなきらめきは、ゴールドともプラチナとも相性抜群。すこしくすんだシルバーと合わせて、カジュアルに楽しむのもおすすめです。

ビーズにすると、クォーツを彷彿とさせる石になります。あえてクラックの多いビーズを選び輝きを楽しむも良し、黄色や褐色のダンビュライトでナチュラルな魅力を引き出すのもおすすめの使い方です。
■ダンビュライトの取り扱い方法
ダンビュライトは風化しやすいという特徴があります。
保管の状態によっては、白く粉を吹いたような質感になり透明度が下がる場合があります。直射日光や温度・湿度変化の大きな場所には置かないようにしましょう。
ダンビュライトが風化により粉を吹いたようになるのは、酸化ホウ素(B2O3)が減少し、粘土質の鉱物に変質するためと考えられています。
粉を吹いたダンビュライトは、また違った印象を与えてくれます。パウダースノー、あるいは粉砂糖をまぶしたような、ミルキー色になるためです。
ソフトで愛らしい様相は新しい魅力となります。敢えて風化させたダンビュライトを楽しめるのも、コレクターならではの楽しみ方でしょう。
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4. まとめ
ダンビュライトは透明度と輝き、加工のしやすさから「ダイヤモンドの代用品」としても利用されていた宝石です。
かつて日本でも高品質なダンビュライトが産出され、ジャパニーズ・ダイヤモンドとして名を馳せました。
研磨した後も、また原石のままでも神秘的な美しさを楽しめるのがダンビュライトの魅力です。
現在は新しい原石は採掘されていないともいわれる希少なダンビュライトを、この機会にぜひお手元に置いてみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人

みゆな
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。