ユーディアライトとは?ルビーと見紛う「深紅」から赤黒白の「個性」まで、魅力と特徴を徹底解説
ルースや鉱物のコレクターでも、「ユーディアライト」を知っている人は、そう多くはないのではないでしょうか。マダガスカルを除いては北半球、それも高緯度の限られた地域だけが産地というレアストーンです。赤・黒・白3色のコントラストが、他にはない個性的な雰囲気を醸しだします。
透明度が高い個体はさらに希少で、ルビーと見紛うほど鮮やかなレッドも魅力のひとつ。
今回は知られざるユーディアライトを、宝石・ルースの美しさの観点から、そして鉱物・原石の科学的観点から、詳しく紹介します。
専門店でもなかなかお目にかかれないユーディアライト。読むうちに、希少性もあいまってコレクションに迎えたくなるかもしれません。どうぞ、最後までお付き合いくださいね。
それでは早速、宝石やルースになったユーディアライトの美しさを、存分に愛でることから始めましょう。
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1.宝石・ルースとしてのユーディアライト
はじめに、宝石・ルースという美しさの点から、ユーディアライトに迫ってみましょう。ユーディアライトならではの深く大人びた表情の魅力や、高品質とされるユーディアライトの条件を解説します。
■高品質なユーディアライトとは
前提として、宝石品質(混じりけがなく、透明度が高い個体)を満たすユーディアライトは、本当に稀です。国内の一般的な市場には、ほとんど流通していないといわれるほど。
したがって、透明度が高く発色が美しい宝石品質のユーディアライトは、存在するだけで価値があります。
一般的に見られるユーディアライト(・・・といっても、それでも希少なのですが)は、他の鉱物と混じりあってできています。
共生する鉱物については、次章:鉱物・原石としての解説の中で触れていきます。
他の鉱物と混じりあったユーディアライトは、赤・黒・白のはっきりしたコントラストが個性的。原石からカットする職人は、三色が織りなす模様がもっとも魅力的に見えるよう、慎重に研磨します。
透明度が低く、また硬度が5〜5.5と高くないため、カボションやビーズにカットされるのが一般的です。筋状の模様が切り出された個体は、「ドラゴンの血のユーディアライト」と呼ばれ、愛好家の多い逸品です。
宝石品質の個体だけでなく、三色が生み出す模様とコントラストも、心惹かれるユーディアライトの魅力です。
■ユーディアライトの魅力
宝石品質のユーディアライトは、ルビーやスピネル、パイロープガーネットに似た深みのあるレッドが大人の雰囲気を感じさせます。赤系ルースのコレクターなら、ぜひコレクションに加えたいシックな色合いが魅力です。
繰り返しになりますが、一般の市場にはめったに登場しません。ユーディアライトをお探しの際は、宝石ルースの専門店や大規模ミネラルショーに足を運んでみてください。
他の鉱物と混じりあい、複雑な模様をみせるユーディアライトも人気です。白や黒の地に鮮烈にあらわれるレッドを、昔の人は女性に例えたそう。今でも女性的な魅力を高める石として、パワーストーン愛好家から支持されています。
ちなみに、ユーディアライトの主要産地であるロシアのコラ半島からは、ソーダライト(方曹達石)を伴ったユーディアライトも見つかっているとか。ソーダライトといえば、ラピスラズリのような鮮やかなインディゴブルーの石です。深い赤と青が共演する不思議な存在感は、出会えれば一生のコレクションになることでしょう。
■ユーディアライトとよく似た宝石
赤、白、黒の三色が入り混じる独特の表情を持つユーディアライト。
同じように"複数の色が重なり合って豊かな表情をつくる石"は、ほかにも存在します。ここでは、その代表的な三種を紹介します。ユーディアライトと並べて見比べるのも楽しいかもしれません。
ロードクロサイト(インカローズ)
まずはロードクロサイトです。鉱物コレクターの方には「菱マンガン鉱」が馴染み深いかもしれません。アメリカ三大希少石のひとつに数えらえる、赤系の美しい宝石です。
ロードクロサイトの中でも、半透明〜不透明で乳白色の縞模様を持つ石は、最初の産出地とバラのように見える模様から「インカローズ」と呼ばれます。この模様こそがロードクロサイトの魅力だと、インカローズを指名買いするコレクターも多いほどの人気。
ユーディアライトよりも優しく柔らかい雰囲気を持つ赤系の模様石、ぜひチェックしてみてください。
ロードナイト
前述のロードクロサイトと名前がよく似た、バラ色の宝石ロードナイト。和名「薔薇輝石」のとおりに、ローズレッドの色合いが魅惑的な人気の宝石です。
透明度が高いものはルースに加工されますが、ここで注目したいのは不透明なロードナイトです。不透明なロードナイトのなかには、黒い模様が入るケースがあり、このタイプはユーディアライトによく似ています。
ただ、ユーディアライトとの違いは、白がないところ。また、宝石やルースの市場では、黒い模様のないロードナイトの方が評価されます。
バラ色のイメージどおり、愛や絆を深める石として人気があります。
ブラッドストーン
ブラッドストーン、日本語にすると「血の石」。
なんとも物騒ですが、これはグリーン味のある黒地に、赤い模様が点在する見た目から付いた名前です。赤い模様が血しぶきのように見える、というわけですね。
石英の一種であるジャスパー(碧玉・へきぎょく)の仲間で、古来ヨーロッパでお守りとして愛されてきました。日本では2021年に3月の誕生石に指定されています。
■ユーディアライトにまつわる逸話
ユーディアライトは、英語で「Eudialyte」と綴ります。由来はギリシア語で「よく」を意味する「Eu」と、「溶ける」を意味する「dialytos」だという説が有力。実際、酸によく溶ける石です。
発見者や名付け親がユーディアライトを酸に溶かしたのかどうかまではわかっていませんが、きっと何かのきっかけでユーディアライトの溶けやすさに気づいたのでしょう。
現代の私たちにも、取り扱いに注意を喚起してくれる、秀逸な名前です。
ユーディアライトが発見されたのは、1817年のグリーンランドでした。当初の個体は褐色が強めで、人々はガーネットが見つかったと考えていたとか。
1819年、次はロシアから、ルビー色をした鮮やかな赤い結晶が見つかります。ここで初めて、ユーディアライトが新種だと認定されたそうです。
血を思わせる濃く鮮やかな赤色ゆえに、ユーディアライトは血にまつわる伝説を持っています。伝説が伝わるのは、現在もユーディアライトの主要な産地である、ロシア・コラ半島です。
この地の先住民族・ラップランド人は、ユーディアライトの赤色は、「その昔外敵から侵略された自分たちを守ってくれた勇敢な戦士の血が、石に染みこんだもの」と考えているといいます。
実際、コラ半島ではユーディアライトを「ラップランドルビー」とも呼びますが、これは「ラップランド族の血」から派生した名前だとか。
ユーディアライトの、紫みを帯びた赤色は、たしかに血のようでもあります。古くから、神秘の生命力を持つ石として、愛されてきた歴史を垣間見られるエピソードといえます。
■ユーディアライトの産地
ユーディアライトの産地は、北方に偏在しています。ロシア(コラ半島)やカナダ、ノルウェー、スウェーデン、アイルランド、グリーンランドと、北半球高緯度の国が続きます。
南半球で唯一の産地は、マダガスカルです。マダガスカルはアフリカ大陸東部にある島ですね。なぜ、マダガスカルは例外的に南半球でユーディアライトが採れるのでしょうか。
その答えのひとつとして、マダガスカルの非常に複雑な地殻構造が、その背景にあるのではないでしょうか。
遥かな昔、大陸がまだ現在のような形ではなく衝突と移動を繰り返していた時代のこと。大きな大陸(ゴンドワナ大陸)から分離してできたのが、現在のマダガスカル島です。激しい地殻変動のあとがいまもマダガスカル島の地中に残っており、結果的に島全体に豊かな鉱産資源をもたらしました。
マダガスカルは、宝石の一大産地です。トルマリンにベリル、トパーズ、クォーツをはじめ、希少なグランディディエライトやダンビュライト、さらに色の濃いサンタマリア・アフリカーナ・アクアマリン、ルビー、サファイア、ガーネット、クリソベリル、スピネル…と、マダガスカルで採れる宝石をあげればきりがありません。
そんな宝石の島・マダガスカルだからこそ、南半球で唯一のユーディアライト産地たりえたのでしょう。多種多様な鉱物と共生したがるユーディアライトの性質も、マダガスカルの地だからこそ満たせたに違いありません。
2. 鉱物・原石としてのユーディアライト
英語版Wikipedia掲載画像: By Rob Lavinsky, iRocks.com – CC-BY-SA-3.0, CC BY-SA 3.0 (一部編集あり) / Wikimedia Commons より
ここからはユーディアライトを鉱物・原石の観点から深めていきましょう。
■組成について
ユーディアライトの組成情報は、以下のとおりです。
| 英名 | Eudialyte(ユーディアライト) |
| 和名 | ユーディアル石 |
| 成分 | Na4(Ca,Ce)2(Fe,Mn,Y)ZrSi8O22(OH,Cl)2 |
| 結晶系 | 六方晶系(三方晶系) |
| 硬度 | 5~5.5 |
| 屈折率 | 1.59~1.60 |
| 劈開 | 不明瞭 |
| 色 | 帯紫赤色、赤紫色、赤色、ピンク色、褐色 |
| 産地 | ロシア、カナダ、ノルウェー、スウェーデン、アイルランド、グリーンランド、マダガスカル |
ユーディアライトの組成表記は、諸説あります。ここでは、比較的広く使われている「Na₄(Ca,Ce)₂(Fe,Mn,Y)ZrSi₈O₂₂(OH,Cl)₂」という表記を採用しました。
ただ、いまでも文献によって組成表記が異なることもある、非常に複雑な成分を持った宝石です。
成分中の「カルシウム(Ca)/セリウム(Ce)」「鉄(Fe)/マンガン(Mn)/イットリウム(Y)」「水酸基(OH)/Cl基(Cl)」は、それぞれ置き換わります。ユーディアライト特有の赤色のもとは、鉄やマンガンです。
■原石の形状
出典:英語版Wikipedia▶ ブラジル、ポソス・デ・カルダス産の閃長岩(ルハブリ石)に含まれるピンク色のユーディアライト。白い鉱物はアルカリ長石、黒い鉱物はエギリン、小さな茶色の粒は黒雲母です。
ユーディアライトは、六方晶系(もしくは三方晶系)の結晶形をしています。柱状の結晶形を残した原石が見つかることもあります。カボションにカットされたルースの赤い部分(ユーディアライト)をよく見ると、断面が六角形の結晶形を残していることもあるとか。
研磨されたユーディアライトを手にできたら、ぜひ赤い部分の形状にも注目してみてください。
ユーディアライトは、閃長岩(せんちょうがん)や閃長岩ペグマタイト中に、ネフェリン(霞石)など、多くの鉱物を伴いながら生成します。
特徴的な模様を成す黒い部分はエジリン(錐輝石)、白い部分はアルバイト(曹長石)です。黄色いアパタイト(燐灰石)や、青いソーダライト(方曹達石)を伴うものもあります。
閃長岩は、火成岩の一種でカリ長石を主成分とします。見た目が花崗岩(かこうがん)とよく似ていますが、花崗岩の主成分である石英(SiO2)をほとんど含まないのが、閃長岩の特徴です。
閃長岩は、アルカリに富んだ場所で生成します。火山が多く酸性地下水に富む日本ではほとんど見られません。そのため、閃長岩中に生成するユーディアライトも、残念ながら日本では採れないのです。
ちなみに、火山地域で地下水が酸性になるのは、マグマには酸性の成分(水・H2O/二酸化炭素・CO2/二酸化硫黄・SO2など)が豊富に含まれるためです。こうした成分が水中に溶け込み、やがて地中にも浸透し土壌も酸性に偏るようになります。
■鉱物観点からみるユーディアライト
ユーディアライトの深紅を発色させる要因は、鉄(Fe)やマンガン(Mn)です。前章の中で紹介したブラッドストーンの赤は、鉄由来。ロードクロサイトやロードナイトの赤は、マンガンが要因です。
鉄由来の赤は褐色に寄り、マンガン由来の赤はローズ色になりますよね。同じ「赤」でも、つくりだす成分によって微妙に色が異なるのも、興味深いポイント。好みの赤色の石を見付けたら、ぜひ「何の成分による赤なのか」を確かめてみてください。鉄由来の赤、マンガン由来の赤、自分の好みにより合うのはどちらかが分かると、成分面から蒐集したい石を探せるようにもなりますよ。
3. ユーディアライトをより楽しむために
レアストーンであるユーディアライトは、手にした後の楽しみ方も幅があります。コレクションとして眺める方法もあれば、装飾品として日常に取り入れることもできます。ここでは、ユーディアライトを身近に感じられるいくつかの方法を紹介します。
■誕生石・石言葉
知る人ぞ知るユーディアライトらしく、誕生石には指定されていません。
石言葉は、次のとおりです。
・女性性
・活性
・愛情
・自然や宇宙との調和
何かとストレスが多い現代、ユーディアライトの優しく溶け合うエネルギーで生きやすい道を探してみてはいかがでしょうか。女性の魅力を高める石としても知られています。運命の人に出会い、絆を深めたい人にもおすすめです。
■ビーズなどの加工品
ユーディアライトは原石、あるいはカボションやビーズに研磨された状態で流通しています。硬度は5〜5.5と高くはありませんが、劈開がないため加工は容易。ペンダントトップにあつらえれば、大人の魅力を感じさせる素敵なアクセサリーになります。
また、ユーディアライト独特の模様は、ビーズになっても顕在です。一粒一粒が異なる表情を見せ、いつまでも眺めていられる魅力を放ちます。
「溶けやすい」という名前は嘘ではなく、ユーディアライトは酸によく溶けます。酸は、私たちの生活でもよく登場する物質。不注意で大切なユーディアライトを溶かしてしまわないよう、お手入れには十分気をつけましょう。
ユーディアライトの汚れが気になったら、蒸留水をふきかけて柔らかい布で拭き取ります。
以下は、身近な酸の一例です。トイレ用洗剤の中にも、酸性が強いものがあります。トイレ掃除のときは特に、ユーディアライトを身につけないようにしてください。
<身近な酸>
- 食酢
- 炭酸水
- 清酒
- レモン汁
- ソース
- クエン酸洗剤
- サンポール(トイレ用洗剤)
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4. まとめ
ユーディアライトはごく限られた地域のみで産出するレアストーンです。ルビーやスピネルを彷彿とさせる深紅の色合いが特徴で、透明度が高い宝石品質の個体はめったに登場しません。不透明な個体は共生する白色や黒色の鉱物と、個性的で美しいコントラストを成します。ユーディアライト特有の模様が好きで、あえて不透明なユーディアライトを探すコレクターもいます。
赤い石が好きな人や模様のある石が好きな人、また希少鉱物を探す収集家にもおすすめのユーディアライト。TOP STONEでも、少ないながら入荷できたユーディアライトを紹介しています。採れる量は、年々減少しているとも…。出会ったその時が、お迎えのベストタイミングかもしれません。
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この記事を書いた人

みゆな
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。