レアストーン・レッドベリルとは?赤色に輝く希少なベリルを徹底解説

レッドベリルは、その名のとおり赤色のベリル。淡い赤色は、ピンクベリルに分類されることもあります。
世界各地で産出されるベリルの一種でありながら、レッドベリルはアメリカのユタ州とその周辺でしか採れない、とても希少な宝石です。
この記事では、レアストーンのなかでも特に希少な宝石・レッドベリルを紹介します。
レッドベリルの魅力を紐解き、奥深いベリルの世界に足を踏み入れてみませんか。
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1.宝石・ルースとしてのレッドベリル

まずは、レッドベリルおよびピンクベリルの特徴や品質など、基本的な情報をご紹介します。
■ベリルの多彩なカラー

ベリルは、含有する金属イオンや不純物の成分により、さまざまな色に変化します。
実はエメラルドやアクアマリンも、ベリルの一種です。
エメラルド(緑色のベリル)とアクアマリン(青色のベリル)は、ベリルグループの鉱物が「ベリル」と命名されるずいぶん前から、世界中に存在が知られていました。「いまさらエメラルドやアクアマリンを改名するのは、現実的ではない」と考えられたため、そのまま名前が残っています。
その他のベリルは「〇〇ベリル」と、色名を付けて呼ばれるように決まりました。
以下は主要なベリルのカラー一覧です。この表を見ただけで、ベリルの豊かな世界が垣間見えるのではないでしょうか。
カラー | 名称 | 発色要因 |
カラーレス | ゴシェナイト(ホワイトベリル) | - |
緑色 | エメラルド | クロム・バナジウム |
青色 | アクアマリン | 2価の鉄 |
黄色 | イエローベリル | 微量の鉄 |
オレンジ色 | ゴールデンベリル | 微量の鉄 |
黄緑色 | ヘリオドール | 微量の鉄 |
ピンク色 | モルガナイト(ピンクベリル) | マンガン |
赤色 | レッドベリル(ビクスバイト) | マンガン |
かつて、黄色系のベリルはすべて「ヘリオドール」と呼ばれていました。
しかしベリルを色名で呼び分けるようになったため、カラーを細分化した名称がつけられます。
黄色のベリル「イエローベリル」
濃い黄色でオレンジに近いベリル「ゴールデンベリル」
それ以外の黄緑色のベリル「ヘリオドール」
また、ベリルはマンガンを含むと赤色に変化します。
含まれるマンガンの量によって鮮やかな赤色や紫がかった赤色から淡いピンク色まで、さまざまな色合いを見せてくれます。
ピンク色に近い色を呈するベリルは、「モルガナイト」と呼ばれます。
濃い赤色が特徴的なベリルが、この記事のテーマでもある「レッドベリル」です。
ただし、ベリルの分類は明確な基準が定められているわけではありません。
鑑別機関の見解によって宝石名が変わる可能性があります。似た色合いのベリルでも「レッドベリル」と鑑別される個体もあれば、「ピンクベリル」とされる個体があるのは、このためです。
(※TOP STONE オンラインショップでは、レッド・ベリルもしくはピンク・ベリル、どちらにも鑑別される可能性があるものに関しては宝石名を併記して販売しております。)
ベリルに属する宝石はこちらの記事で詳しく解説しています。
■高品質のレッドベリルとは

ベリル自体は世界中で多く産出しますが、宝石品質のレッドベリルは産出量がきわめて少なく、ほとんど市場に出回らないレアストーンのひとつです。
ここではどのようなレッドベリルが宝石として高く評価されるかを解説します。
カラー
赤色が濃く、鮮やかに発色している個体ほど、高品質で希少価値が高いとされます。
鮮やかで明るい赤色こそが、レッドベリルの魅力です。ベリルの赤色は「ネオン系」「ラズベリー」「優雅」「赤ワイン」とも称されます。小さなカラットでも存在感は抜群で、遠くからも赤さが輝いて見えるほどです。
高品質なレッドベリルを探すときは、ぜひ色合いに注目してください。深みのある濃い赤色が、良いベリルの証です。
透明度
レッドベリルはインクルージョン(内包物)が入りやすい宝石です。
そのため、インクルージョンが少なく透き通ったレッドベリルは、希少で高い価値があります。
レッドベリルはもともと、含浸処理が施されることの多い宝石です。インクルージョンやクラックが多く、外観と耐久性を向上させるのが目的です。
ちなみにエメラルドも、一般的に透明剤やオイルでの含浸処理が施されます。
含浸処理自体は一般的な処理であり、その有無が価値に大きく影響を与えることはありません。
未処理でインクルージョンやクラックが少ない、美しいレッドベリルは「ノンオイルレッドベリル」と呼ばれ、非常に高く評価されます。
<用語解説>含浸処理とは
鉱物のすき間に、別の物質を浸透させる処理。宝石の場合、ワックスやオイル、樹脂、着色液などが含侵剤として使われる。光沢や透明度を上げる、鮮やかさを増す、強度を増すなどの効果がある。
カラット
レッドベリルは、もともと大きな結晶がみつかりにくい宝石です。
幅2cm、長さ5cm程度の原石が見つかっただけでも、「世界最大級」といわれるほどです。
さらに宝石品質のレッドベリルとなると、さらに少なくなります。ルースに加工されると0.1カラットに満たないほどになってしまいます。
もし1カラットを超えるレッドベリルに出会えたら、奇跡といって良いレベルです。
■レッドベリルが希少な理由
レッドベリルは、コレクターから「一度は手にしてみたいレアストーン」と称されるほどの人気を誇ります。
その鮮やかで明るい赤色は、ルビーの深紅とは異なる魅力を放ちます。
また、希少性の高さもレッドベリルの人気に拍車をかけています。
ではなぜ、レッドベリルはこれほどまでに希少なのでしょうか。
その理由は、他のカラーのベリルと比較して産出量が少なく、さらに限られた地域でしか採れない点にあります。
ここで次の疑問が湧いてきます。
限られた地域で僅かしか産出されないのはなぜなのか。
それは、レッドベリルの結晶化に多くの条件が必要だからです。
レッドベリルの化学組成は【Be₃Al₂Si₆O₁₈】です。
これを紐解くと、結晶が形成されるには特定の元素が最適な分量で存在する環境が必要なことが見えてきます。
ベリリウム(Be)
アルミニウム(Al)
ケイ素(Si)
酸素(O)
マンガン(Mn)
鉱物の採掘地域が広がり、技術が進んだ現代でも、この条件を満たしてレッドベリルを産出できる場所はアメリカ・ユタ州だけといわれています。
■レッドベリルの産地

レッドベリルは、1904年にアメリカのユタ州で初めて発見されました。
以降もアメリカ・ユタ州とその周辺でしか産出していません。そのため産出量がきわめて少なく、現在は枯渇しているのではないかと考える専門家もいます。
ちなみにレッドベリルは、発見された当初は「ビクスバイト」と呼ばれていました。発見者でもある鉱物学者のメイナード・ビクスビーにちなんでつけられた名前です。
しかし、別の鉱物の「ビクスビバイト(ビクスビ鉱)」と混同しやすいため、現在は「レッドベリル」と呼ぶのが一般的です。
ちなみにビクスビバイト(ビクスビ鉱)も、アメリカのユタ州で採掘されます。ますます、紛らわしいですね。
2.鉱物・原石としてのレッドベリル

【レッドベリル:Wikipedia掲載画像】
Didier Descouens - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9560718による
レッドベリルは原石も美しく、鉱物的にも大変魅力的な石です。鉱物としてのレッドベリルについても詳しくご紹介します。
■組成について
レッドベリルの組成情報は以下のとおりです。
英名 | Red beryl(レッドベリル)/ Bixbite(ビクスバイト) | |
和名 | - | |
成分 | Be3Al2Si6O18 | |
結晶系 | 六方晶系 | |
モース硬度 | 7.5~8 | |
比重 | 2.63~2.92 | |
屈折率 | 1.56~1.57 | |
劈開 | 不明瞭 | |
色 | 赤色、赤紫色、濃ピンク色 | |
主な産地 | アメリカ・ユタ州 |
レッドベリルは、ベリリウム(Be)を含む六角柱状のケイ酸塩鉱物です。
エメラルドやアクアマリンと同じ、ベリルの一種です。
純粋なベリルはカラーレスですが、微量の金属イオンや不純物が含まれることで赤色や青色、緑色、ピンク色などさまざまな色に変化します。
レッドベリルは、このうち微量のマンガンにより赤色を呈するようになったベリルを指します。
モース硬度は7.5~8と比較的高めですが、インクルージョンやクラックが多いためもろい特徴があります。
宝石品質のレッドベリルには、耐久性を高めるために含浸処理が施されるのが一般的です。
■原石の形状

【Red beryl:英語版Wikipedia掲載画像】
By Rob Lavinsky, iRocks.com – CC-BY-SA-3.0, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10121714
レッドベリルの原石は、六角形の断面をしています。柱状に長く伸びた六角柱の形が一般的です。
ベリルは花崗岩ペグマタイト中に産出しますが、レッドベリルは流紋岩鉱脈で成長します。
流紋岩マグマが冷えて結晶化する際、火山活動によって放出される高熱ガスや水蒸気により、空洞部分や母岩内の割れ目に沿ってレッドベリルが生成すると考えられています。
また、他のベリルがおよそ4%ほどの水分を含むのに対し、レッドベリルはまったく水分を含まないという研究結果が報告されています。
■鉱物観点からみるレッドベリル
レッドベリルは産出量自体がきわめて少ないため、カットが施されていない原石の状態でも非常に希少です。希少性の高さと唯一無二の美しさから、コレクターたちがこぞって探し求め、希少性に拍車をかけています。
また、レッドベリルの原石はインクルージョンによって独特の模様が見られるものや、赤とピンクが混ざり合ったような個性的な色合いのもの、母岩がついたものなどさまざまなバリエーションがあります。
原石を眺めるだけでもレッドベリル独自の形成環境に思いを馳せることができ、新たなレッドベリルの魅力に気づけるかもしれません。
■合成でつくられたレッドベリル
人工的に合成されたレッドベリルも流通しています。
合成レッドベリルは、水熱法という手法でつくられます。おもには工業用途です。
水熱法は、3,000~4,000気圧にして沸点を374℃まで上げた水に、原料を溶かし結晶化させる手法です。天然に近い環境といわれていますが、爆発の危険性があります。結晶の成長速度も遅く、大量生産はできません。
合成ベリルはロシアでつくられています。
また、過去には赤と緑のバイカラー合成ベリルが鑑別に出されたこともありました。
このバイカラーベリルはレッド部分が水熱合成レッドベリル、グリーン部分は水熱合成エメラルドです。
鑑別の結果、合成レッドベリル部分は発色要因のマンガンのほか、コバルトとニッケルも検出されています。コバルトとニッケルは、天然のレッドベリルにはない成分です。
合成エメラルド部分は発色要因のクロムのほか、鉄とニッケルが含まれていました。一方で、天然エメラルドならかならず含むナトリウム・マグネシウムが入っていないのが特徴です。
合成レッドベリルはネット通販でも流通しています。レッドベリルは、大きなルースになることがほとんどありません。もし1カラット以上のレッドベリルルースがあったら、合成の可能性があります。
3. レッドベリルをより楽しむために

レッドベリルはジュエリーとして身につけるのはもちろん、お守りやコレクションなどさまざまな楽しみ方ができる宝石です。
ここではレッドベリルの歴史的背景や新たな楽しみ方についてもご紹介します。レッドベリルの魅力をさらに掘り下げていきましょう。
■レッドベリルの歴史
最初に宝石品質のレッドベリルが見つかったのは、アメリカ・ユタ州西部のワーワー山脈です。
ラマー・ホッジス(Lamar Hodges)の一家が発見したのち、レックス・ハリスが採掘権を購入。名称を「ビクスバイト」から「レッドベリル(赤い緑柱石)」に変更し、流通させました。
その後レッドベリルの価値を知った大手企業がハリス一家から採掘権を買い取り、ワーワー山脈の鉱山に採掘会社を立ち上げて採掘を開始したことがありました。しかし、レッドベリルがあまりにも採れないために採算が合わず、会社は倒産してしまいます。それほどまでにレッドベリルが希少だとわかるエピソードです。
現在は採掘権を買い戻したハリス一家が細々と採掘しているものの、ほぼ枯渇しているのではないかといわれています。
現在流通しているレッドベリルのほとんどは、過去に採掘されたレッドベリルです。高品質なレッドベリルは、同じカラット数のダイヤモンドよりも非常に高値で取引されることも。
今後もレッドベリルの流通量はますます減少し、レア度はさらに高まるでしょう。
【豆知識】
レッドベリルは「レッドエメラルド」というコマーシャルネームが付けられていたことがあります。エメラルドもベリルの一種であることから、レッドベリルを赤いエメラルドとして人気を上げようとしたのが目的です。
レッドベリルはマンガンにより赤色を呈したベリルで、エメラルドの緑はクロムが発色要因です。本来なら相容れないはずの二者が、人間の都合で一つの名前にされたのは興味深いですね。
ただし、レッドエメラルドは商用目的の流通名です。正式にはレッドベリルと呼ばれます。
■石言葉やパワーストーンとしての効力
レッドベリルには「誠実」「幸運」「気品」「浄化」などの石言葉があります。凛とした情熱的な赤色の輝きは精神を活性化させ、勇気やエネルギーを与えてくれると考えられています。
ヒーリング効果もあるとされ、パワーストーンとしても注目されています。
新たなチャレンジを始めるときや達成したい目標があるときに持っていると、潜在能力を引き出し、サポートしてくれるかもしれません。
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4. まとめ
数あるレアストーンのなかでも特に希少で美しいレッドベリル。今後産出量の増加は見込めないため、幻の宝石となってしまう可能性もあります。
もし実物を見かける機会があれば、それだけで幸運といえるかもしれません。ぜひ類まれなる希少性と美しさを兼ね備えたレッドベリルに注目してみてくださいね。
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この記事を書いた人

みゆな
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。