2025/12/12

幻の桜色『ピンクゾイサイト』|タンザナイトを凌ぐ「希少性」から可憐な「色彩」の秘密まで徹底解説

ピンクゾイサイトは、タンザナイトで知られるゾイサイト(灰簾石)のうち、ピンク色を示す宝石です。多彩な色を見せるゾイサイトの中でも、ピンクは産出量が少なく、とりわけ珍しい色とされています。

タンザナイトが夕暮れの空なら、ピンクゾイサイトは湖面に浮かぶ桜の花びら。言葉だけでは表しきれない美しさと透明感を誇る、コレクター垂涎の石です。

今回は、そんなピンクゾイサイトの魅力を余すことなくお届けします。意外な逸話から詳しい鉱物データまで。宝石好き、鉱物好きの皆さまの心をつかんで離さない、奥深い世界をどうぞ最後までお楽しみください。


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1.宝石・ルースとしてのピンクゾイサイト

はじめに、ルースとしてのピンクゾイサイトの美しさや品質基準、魅力などを紹介します。

■高品質なピンクゾイサイトとは

ピンクゾイサイトは、ピンク色を呈するゾイサイトのうち、透明度が高く宝石品質を満たすものに与えられる名前です。
ピンクゾイサイトの産出量はタンザナイトより希少です。それは"殆ど採れないレベル"ともいわれるほど。ピンクゾイサイトは存在そのものに価値があるといえるでしょう。

カラー

    ピンクゾイサイトのカラーは、ピンクといっても実はとても表情豊か。ラベンダーのような紫を含んだ色から、サクラ色、ベビーピンクまで様々です。中にはパパラチャサファイアのような、オレンジを帯びたピンク色もあり人気を集めています。

    また、ゾイサイトの特徴である「多色性」も見逃せません。シャンパンカラーが覗いたり、すっと色が消えて無色になったり。あるいはアイスピンクや青みを帯びたりと、ずっと眺めていたくなるような不思議な魅力があります。
    その表情の移ろいは、ルースによってひとつひとつ異なります。ぜひ色々なピンクゾイサイトをチェックして、心惹かれる一粒を見つけてくださいね。

    透明度

    ピンクゾイサイトの価値を決めるうえで欠かせないのが、透明度です。肉眼で見えるインクルージョン(内包物)やクラックがなく、ルースのすみずみまで透き通るような輝きを保っているものは、非常に高い価値があるとされています。

    ちなみに、同じピンク色のゾイサイトにチューライトという石があるのをご存知でしょうか? こちらは色は似ていますが、透明感のあるピンクゾイサイトとは対照的に、不透明でマットな質感が特徴です。

    ピンクタンザナイト

    タンザナイトがあまりに有名なためでしょうか。その人気にあやかってか、市場では「ピンクタンザナイト」という名前を見かけることがあります。

    けれど、実はこの名前、正しくはありません。本来「タンザナイト」と呼べるのは、ゾイサイトの中でもあの独特な「すみれ色」を持ち、かつ「タンザニアのメレラニ地方」から産出されたものだけに許された称号なのです。

    ですから、色が異なるピンクゾイサイトにタンザナイトの名を付けるのは、少し不思議な話ですよね。

    ピンク色のゾイサイトは、そのまま「ピンクゾイサイト」が正式名称です。これから探される際は、ぜひ正しい名前でチェックしてみてくださいね。

    価格

    実はピンクゾイサイトは、同品質・同サイズのタンザナイトと比べ、数倍もの値がつくことも珍しくありません。その理由は大きく2つあります。

    1つ目は、圧倒的な「希少性」です。タンザナイトよりも産出量がずっと少ないため、おのずと価値が高まります。

    2つ目の理由は、「未処理」のまま流通するものが多いためです。 タンザナイトは美しい発色を引き出すために通常加熱処理が施されます。これは一般的で認められた処理であり、それ自体が価値を下げるものではありません。
    一方で、ピンクゾイサイトの多くは、非加熱・未処理のまま。つまり、あの愛らしいピンク色は、大自然が生み出した「天然の色」そのものなのです。地球が創ったありのままの色合いを楽しめる宝石として、その評価と価格は高まる傾向にあります。

    ■ゾイサイトのバリエーション

    ゾイサイトは、実に多様な色を見せてくれる魅力的な鉱物です。ここでは、代表的なバリエーションをいくつかご紹介しましょう。

    チューライト(桃簾石)

    チューライト

    先ほど少し触れた、もうひとつのピンク色のゾイサイトです。「ピンクゾイサイト」が透明感のある輝きを持つのに対し、こちらは不透明で、どこか温かみのある質感が特徴。 マンガン由来の柔らかな色合いは、まさに和名の「桃簾石(とうれんせき)」という言葉がぴったり。主な産地であるノルウェーでは国石にも指定されており、パワーストーンとしても広く愛されています。

    グリーンゾイサイト(クロムゾイサイト)

    グリーンゾイサイト

    タンザナイトの発見から約20年後に出会えたのが、この鮮やかなグリーンのゾイサイトです。 目を奪われるような美しい緑色は、エメラルドと同じくクロム成分によるもの。「クロムゾイサイト」とも呼ばれ、透明度が高く色の濃いものは、宝石としての高い評価を得ています。

    アニョライト(ルビーインゾイサイト)

    ルビーインゾイサイト

    1954年に発見された、不透明なグリーンのゾイサイトに、赤いルビーが共生した神秘的な石です。 グリーンとレッドが織りなすマーブル模様は、まさに自然が生んだアート。厳密には、含まれる赤色はルビーの定義よりも紫色が強く「パープルサファイア」に近いとされていますが、その独自の美しさからパワーストーンとして不動の人気を誇ります。
    ちなみに「アニョライト」という響きは、マサイ族の言葉で「緑」を意味する「Anyol(アニョリ)」に由来しています。

    バイカラーゾイサイト

    バイカラーゾイサイト

    1つの結晶の中に2色以上が現れる、奇跡のようなゾイサイトです。ブルーとグリーンが溶け合うような色合いが多く見られますが、中にはオレンジ系が混ざるものも。色のコントラストがはっきりしているものほど価値が高く、コレクター心をくすぐる特別な一品です。

    2. 鉱物・原石としてのピンクゾイサイト

    ここからは、ピンクゾイサイトを含む「ゾイサイト」という鉱物の正体に、科学的な側面から迫ってみましょう。 なぜこれほど美しい色が生まれるのか――その秘密を化学や鉱物学の視点で紐解けば、石の味わいはより一層深くなるはずです。知れば知るほど面白いゾイサイトの世界を、少し覗いてみてください。

    ■組成について

    ゾイサイト(ピンクゾイサイト含む)の組成情報は、以下のとおりです。

    英名 Zoisite(ゾイサイト)
    和名 灰簾石(かいれんせき)
    成分 Ca2Al3(SiO4)(Si2O7)O(OH)
    結晶系 斜方晶系
    硬度 6~7
    屈折率 1.69~1.73
    劈開 完全
    褐色、白色、灰色、黄色、青色、青紫色、淡紫色、ピンク色、緑色
    産地 ブラジル、タンザニア、パキスタン、スペイン、ノルウェー、ジンバブエ、スイス、イタリア、オーストラリア、ネパール、アメリカ、カナダ など

    ■原石の形状

    ゾイサイトは、カルシウムとアルミニウムを含む「ケイ酸塩鉱物」の一種です。
    原石は柱状をしており、結晶が伸びる方向に平行な「条線」が見られるのが特徴
    です。この見た目はトルマリンと非常によく似ており、鉱物学が現在ほど発展していなかった時代には、実際に混同されていたこともあったそうです。

    生成環境は、広域変成作用や火成岩の熱水変質があった場所が主です。接触変成帯やペグマタイト、熱水脈の中で形成されることもあります。

    ■鉱物観点からみるゾイサイト

    ゾイサイトは「エピドート(Epidote・緑簾石)」グループに属する鉱物です。 エピドートとは鉱物名であると同時に、10種類以上の鉱物が属するグループ名でもあります。ピスタチオのようなくすんだグリーンが特徴で、柱状結晶の1面が他の面より発達して幅広く成長する姿が「簾(すだれ)」のように見えることから、「緑簾石」の名が付きました。

    ゾイサイトは含有する微量成分によって、その色を劇的に変えます。有名なタンザナイトのすみれ色は、バナジウム(V)とクロム(Cr)によるもの。また、チタン(Ti)を含むと褐色や黄色になります。

    実はタンザナイトが発見されるまで、ゾイサイトは宝石としては地味な存在でした。コレクターが結晶標本として集めたり、飾り石として楽しむ程度だったといいます。しかし、タンザナイトの登場によって一気に知名度が向上。現在では宝石ルースの専門店でも欠かせない、確固たる地位を築くようになりました。

    3. ピンクゾイサイトをより楽しむために

    憧れのピンクゾイサイト。コレクターならずとも、一度は手にしてみたい!と思わせる、可愛らしい魅力にあふれた石です。 ここからは、手に入れた後に知っておきたい豆知識や、長く愛用するためのポイントをご紹介します。

    ■誕生石・石言葉

    ピンクゾイサイト単体としての固有の石言葉はありませんが、ゾイサイト全体としての石言葉は「抱擁」「永遠」です。 寛大な心や共感するあり方、そして永遠の絆を象徴します。愛情を高めて人間関係を豊かにしながら、勇気をもって人生を歩む……そんな背中を押してくれる石として、パワーストーン愛好家の間でも人気があります。

    ちなみに、ピンクゾイサイトやゾイサイト自体は誕生石に指定されていませんが、同グループの「タンザナイト」は12月の誕生石として有名です。

    ■ビーズなどの加工品

    アニョライト(ルビーインゾイサイト)やチューライトといった不透明なゾイサイトは、ビーズに加工されたものがよく流通しています。独特の色合いと模様は、コロンと1粒で置いておいても、ブレスレットに仕立てても神秘的な魅力があります。

    一方、透明度の高いピンクゾイサイトは、その希少性から主に「ルース(裸石)」として扱われます。 硬度は6〜7と、水晶(クォーツ)よりやや低い程度。さらに「劈開(へきかい)」という、特定方向へ割れやすい性質を持っています。 強い衝撃で割れたり欠けたりする恐れがあるため、取り扱いには少し注意が必要です。もしジュエリーにお仕立てする場合は、指輪よりもぶつける心配の少ないネックレスやピアスなどがおすすめです。

    ピンクゾイサイトは大変希少なため、探してもめったに出会えないかもしれません。お探しの際は、全国規模のミネラルショーや、品揃えの豊富な専門店を根気よくチェックすることをおすすめします。TOP STONEでも時折入荷できることがありますので、よろしければラインナップを覗いてみてください。


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      4. まとめ

      ピンクゾイサイトは、さくら色やライラック色、ラベンダー色など、ピンク色の花にたとえられる愛らしい宝石です。 その姿は、まるで透明な湖面に浮かんだ花びらのよう。可憐で、どこか儚げな雰囲気が漂います。「キリマンジャロの夕日」と称されるタンザナイトと並べて、色の対比を楽しむのも素晴らしいコレクションになるでしょう。

      カラーバリエーション豊富なゾイサイトのなかでも、トップクラスに希少なカラーがこのピンクです。もし見かけることがあれば、それは運命的な「一期一会」。その繊細な輝きを、ぜひお手元で愛でてあげてください。

      TOP STONEでも、数は少ないながらピンクゾイサイトを取り扱っております。もしご興味がありましたら、私たちのコレクションも覗いてみてください。


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      この記事を書いた人

      みゆな

      TOP STOneRY / 編集部ライター

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