蓮の花のような稀産のレアストーン、ヴェイリネナイトについて解説

パライバトルマリン、アレキサンドライトといった三大レアストーンとして名高い宝石は、レアとはいえ目にする機会があります。
一方で、目にする機会も殆どない、知る人ぞ知るスーパーレアといえる貴石が幾つもあります。スーパーレアになる理由は、本来は貴石品質ではない鉱物や、ジュエリーにするには耐久性が弱い鉱物など様々ありますが、ひとえに稀産なことが要因の石も多数あります。
このヴェイリネナイトも稀産のレアストーン。
その美しい色は、時に三大レアストーンの一つ、パパラチアサファイアになぞらえられることもあります
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1.宝石・ルースとしてのヴェイリネナイト

ヴェイリネナイトは知る人ぞ知る、発色の鮮やかなオレンジからピンクの貴石です。大きな原石の産出はほとんどなく、市場に出るカット石のほとんどが0.5ct未満。カラット当たりでみるとダイヤモンドより高額になることも多い石です。
■高品質のヴェイリネナイトとは?

ヴェイリネナイトの最たる特徴はそのカラーにあります。溌剌としたオレンジからピンクを呈し、特にオレンジ味のあるサーモンピンクは蓮の花を思わせます。蓮の花の色をした宝石といえばパパラチアサファイア。ヴェイリネナイトの最高品質の貴石も、それに準えてパパラチアカラーと表現されることがあります。
活き活きとしたオレンジ、エネルギッシュなオレンジ味のピンク、目の覚めるようなピンクと豊かな色合いを持ち、濃いながらも鮮明なカラーが人を虜にします。
そのカラーが映えるよう、クラリティの高さも求められます。黒色インクルージョン(内包物)など、著しくカラーに影響するインクルージョンは価値が下がりがちです。
元々大きな結晶は産出されないため、大きいに越したことはありませんが、クラリティが高くネオンカラーでサーモンピンクが眩しいヴェイリネナイトは小粒でも最高品質といっていいでしょう。
■ヴェイリネナイトの特徴
評価が高い傾向にあるのはパパラチアカラーのヴェイリネナイトですが、オレンジ味の強いヴェイリネナイトも夏の夕陽のような美しさが魅力的です。パパラチアカラーに拘らなくともビビッドなヴェイリネナイトは人気が集まるでしょう。
通常、気泡のような二相インクルージョンや管状インクルージョンを含みます。内側で自由に光を反射させるインクルージョンはヴェイリネナイトの発色の良さに更に魅力を足してくれるでしょう。
また組成によって黒味が強くなり、褐色味を帯びるものもあります。貴石品質のヴェイリネナイトとしては珍しいですが、ペールグレーなど色の薄いヴェイリネナイトもあるようです。
■ヴェイリネナイトの名前の由来
ヴェイリネナイトの命名には三人の鉱物学者が絡んでいます。
まず初めてヴェイリネナイトが新鉱物と認識されたのは1939年、鉱物学者のクノールリング氏(Oleg von Knorring)によるものでした。ちなみにクノールリング氏は1968に発見されたガーネットグループの一種、クノーリンガイトの名前の由来にもなっています。宝石としては聞かない鉱物ですが、ダイヤモンドの指標鉱物です。
それを1949年に論文として発表したのが、鉱物学者のヴォルボルス氏(Alex Alexis von Volborth)。ヴォルボルス氏によって、ヴェイリネナイトが発見された地でもある、フィンランドのヴィタニエミにあるペグマタイトを発見した、地質学者のヴェイリネン氏(Heikki Allen Vayrynen)に献名されました。
■ヴェイリネナイトの産地

産出自体は各地でありますが、貴石品質のものになると限定的です。
1949年の発表以降、発見されたフィンランドやスウェーデン、アメリカや中国など各地で極々稀に採掘されたヴェイリネナイトの原石がコレクターストーンとして流通していました。
それが1994年頃からパキスタンで貴石品質のヴェイリネナイトが産出されるようになり、蒐集家の注目を集めるようになります。といっても本格的に人々に注目されるようになったのは近年、アフガニスタンからも貴石品質のヴェイリネナイトが採掘されるようになってからではないでしょうか。
現在市場にある貴石品質のヴェイリネナイトのほとんどがアフガニスタン、パキスタン産。とりわけパキスタン産が多いようです。パキスタンのカラコラム山脈からは最大で22cm程の赤味のあるオレンジのヴェイリネナイトが採掘されています。
2.鉱物・原石としてのヴェイリネナイト

小粒でも美しい宝石として注目され始めたヴェイリネナイト。
その鉱物的な側面について解説します。
■組成について
まずは、組成から見てみましょう。
英名 | Vayrynenite(ヴェイリネナイト) |
和名 | ヴェイリネン石 |
成分 | MnBe(PO4) (OH,F) |
結晶系 | 単斜晶系 |
モース硬度 | 5 |
屈折率 | 1.638-1.630 |
劈開 | 一方向に完全、一方向に明瞭 |
色 | ピンク、ピンキッシュオレンジ、オレンジ、ブラウン |
主な産地 | アフガニスタン、パキスタンなど |
ヴェイリネナイトはリン酸塩鉱物の一種です。同じリン酸塩鉱物で産地も同じことから、時にトリプライトと間違われることも多いようです。組成としてはトリプライト(Mn₂(PO₄)F)よりヘルデライトCaBe(PO₄)(OH,F)に似ています。ヘルデライトのカルシウムがマンガンに変わるとヴェイリネナイトになります。
ヴェイリネナイトの着色原因はマンガンで、これによって蓮の花のようなピンクからオレンジのカラーを呈します。しかしマンガンの含有量が多すぎると黒っぽくなってしまいます。
ちなみにパパラチアサファイアの着色原因はクロム。パパラチアカラーとは表現されることはあるものの、比べてみるとそれぞれに美しさを持っているのがわかるでしょう。どちらが自分の好みに合うか、並べて比較してみたいものですね。
■原石の形状
通常は粒上、また塊状で産出することが多い為、貴石品質の自形結晶は稀です。
柱状、また単斜晶系の結晶らしく先の尖った刃状に結晶しますが、大きいサイズは稀です。
ですが数年前まで数mmサイズのものが大半だったものの、近年は数cmの結晶も出回っているようです。
鮮明なピンクの柱がすっと伸びる原石も魅力ですが、小さなサーモンピンクの結晶が蕾のように集まった原石も非常に可愛らしさがあります。
■鉱物としての魅力
原石のままでも発色が良いのがヴェイリネナイトの魅力です。塊状の原石も溌剌としたピンクが楽しめます。元々コレクターズストーンとして流通していましたが、コレクターでなくともコレクションしたくなる色の良さがヴェイリネナイトの魅力です。
リン酸塩鉱物はフォスフォフィライトやトリプライト、またヴェイリネナイトと組成の近いヘルデライトといったジュエリーには向かない硬度ながら発色の美しい鉱物が多いです。それらと一緒にコレクション、また比較して観察するのも鉱物の楽しさを発見できそうです。
3. ヴェイリネナイトをより楽しむために
宝石のその他の楽しみ方として、誕生石や石言葉、加工品の使用例などをご紹介します。
■石言葉
レアストーンの中でも希少なヴェイリネナイトには、まだ定まった石言葉がないようです。
蓮の花のようにも夕陽のようにも見える、神秘的な中東を産地にしたこの石に、どのような石言葉がつけられるのか楽しみですね。
■ビーズやアクセサリーへの加工は?

へき開が完全で、モース硬度も5と然程高いわけではありません。また大きな結晶も珍しく、ジュエリーやビーズなどの加工品には向いていません。
一方、元々コレクター向けに流通していたヴェイリネナイト。サーモンピンクの鮮やかなこの石は、ディスプレイするのもおすすめです。アンティークな木箱にコレクションする、瓶などに入れて飾ってみるなど、目に入るたび活力を貰えそうです。
衝撃に弱い為、ディスプレイする時は緩衝材を忘れずに設置してください。
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4. まとめ
ヴェイリネナイト、まだ一般的には馴染みがなく、その魅力もまだ知られていません。
まだ見ぬ石を探して岩盤を穿つように、ヴェイリネナイトの魅力を是非、手元で発見して欲しいです。
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この記事を書いた人

佐伯
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。