2024/02/13

ピンクカラーの新しい宝石、ポードレッタイトについて解説

ポードレッタイトは非常に希少な石です。日頃宝石に関わる仕事の人ですら、見たことがないという人が少なくありません。知れば求めたくなる、得難きポードレッタイトの宝石としての面、鉱物としての面をご紹介します。


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1.宝石・ルースとしてのポードレッタイト

半貴石質なら産出されるものの、ジェムクオリティとなると希少というレアストーンはままあります。しかし、ポードレッタイトは品質を問わず非常に希少な鉱物です。産出が少ない上にジェムクオリティとなると更にレアリティが高く、その希少性の高さからダイヤモンドより高値がつけられることもあります。その希少なジェムクオリティのポードレッタイトについて解説します。

■ポードレッタイトの魅力

ポードレッタイトはカラーレス、淡ピンク~紫ピンクの鉱物です。市場に出回るもののほとんどが1ct未満で、0.1ctを下回るものも珍しくありません。インクルージョン(内包物)として管状インクルージョンなどを含む他、気体と液体の二相インクルージョンや内部の亀裂などを含み、インクルージョンのない結晶は稀です。

ポードレッタイトは色むらの多い石でもあります。クリアな部分と柔らかなピンクがまだらに分布しますが、ペールピンクとカラーレスの描くグラデーションは、むしろそれが魅力といえます。明るいローズピンクや、近年はパープルピンクの濃いポードレッタイトも産出されています。

カラーレスの結晶も多く産出されています。ポードレッタイトはガラス光沢を持ち、屈折率はクォーツに近く、優しい煌きに感じますね。カラーレスに近い、ほんのり色付いたペールピンクのポードレッタイトもはんなりと、装いを選ばない扱いやすい面もあります。

■高品質なポードレッタイトとは?

どの宝石にも言えることですが、カット、カラー、クラリティ(透明度)、カラットが優れているものが最高品質といえます。しかしポードレッタイトはレアリティが高く、見るからに悪い石でなければ、品質を重視するより出会えた幸運の方が先に立つ石のように思います。とはいえ、勿論、選べるなら最高品質のポードレッタイトに出会いたいものです。

色むらの多いポードレッタイトですが、色は均一な方が好まれます。ペールピンク~ローズピンクの鮮やかながら透明感のあるものが高品質と言えるでしょう。均一で濃いパープルピンクのポードレッタイトも稀産で評価が高いです。

その色を阻害するインクルージョンが無いことも評価ポイントです。特に亀裂などに天然で充填された黒~褐色のインクルージョンは目立ちがちです。カラットに関しては、大きければ大きいほど嬉しいものです。

2023年までの間で、最も大きな原石は22ct、それから切り出された9.41ctのポードレッタイトがファセットカットされたものでは最大です。非常に稀有な結晶なのがわかります。

この9.41ctのポードレッタイトはスミソニアン国立自然史博物館に寄贈されています。

■ポードレッタイトの特徴

    ポードレッタイトは多色性の強い石で、角度によってカラーレスから鮮やかなピンクまでの変化を見せる石もあります。淡いペールピンクのポードレッタイトも、角度によって冴えるようなクリアに、また一転してはっきりと主張するピンクにへと表情を変えるポードレッタイトは、色むらも相まって、幻惑的な魅力を放ちます。

    複屈折性も強く、特にルーペなどで見ると、ファセットが二重に見えるのを観察できるでしょう。肉眼でも光がにじむような、多色性と相まって何とも言えない魅惑的な印象が引き立ちます。

    ■ポードレッタイトの由来と歴史

    ポードレッタイトが初めて地上に出たのは1960年代半ば。7つの結晶がカナダのケベック州モン=サン=ティレールで発見されました。小さく色の薄い7つの結晶は専門家の興味を多少ひいたものの、一般には注目されていませんでした。その後、1987年に新種の鉱物として登録されます。

    それから13年後、2000年の終わりに、3ctの濃いパープルピンクを呈するファセットカットされた石が、モゴックのディーラーに持ち込まれました。鑑別の結果、この石がモン=サン=ティレールのみで発見されたあのポードレッタイトと同じだとわかると、新たな宝石質の結晶に宝石界はやにわに盛り上がり、ジェモロジストの熱い視線がポードレッタイトに向けられるようになりました。

    ポードレッタイトの名前の由来は、初めて発見されたモン=サン=ティレールの採掘場を管理していた、ポードレットPoudret家に由来しています。日本語表記ですとポードレッタイトと書きますが、Poudretの発音はプードレットに近く、プードレッタイト、ポウドレッタイトなど表記が揺れることもあるようです。

    ■ポードレッタイトの産地

    ポードレッタイトは、前述したカナダのケベック州モン=サン=ティレールと、ミャンマーのモゴックからしか産出はありません。

    初めてポードレッタイトが発見されたモン=サン=ティレールからはほとんど産出がなく、現在市場にあるポードレッタイトのほとんどがモゴック産です。

    前述した過去最大の22ctの原石もモゴックで採掘されました。モゴック産のポードレッタイトは色むらはあるものの、濃いピンクや淡いながらも華やかなペールピンクが産出されており、ポードレッタイトがジェモロジストの注目を浴びる契機になりました。今後は宝石、鉱物の好きな人全般の注目を集めていくでしょう。

    ポードレッタイトはモゴック北東のピャンジーPyang Gyi鉱山で採掘されていましたが、2022年にはその東、ペインピットPein-Pyit鉱山でも採掘されるようになったそうです。

    このペインピット鉱山で発見されたポードレッタイトは、特徴的なインクルージョンを含むことがあります。ポードレッタイトの中にグリーンの結晶が、単結晶として、また時に点々と散らばるように、もしくは針状結晶としてなど、様々な形で見られました

    このインクルージョンはパワーストーンなど半貴石として流通することの多いエジリン輝石です。通常褐色〜深緑色のエジリン輝石ですが、ポードレッタイトとあわさると、甘く柔らかな雰囲気を引き締める、甘辛なポードレッタイトになりそうです。

    また産地鑑別についても有用なインクルージョンとして期待されています。産地が少ないながら新たな鉱山の発見もあり、今後の産出量の増加に期待できます。

    2.鉱物・原石としてのポードレッタイト

    貴石品質のレアリティもさることながら鉱物としても希少なポードレッタイト。

    ジェモロジストの熱気冷めやらぬポードレッタイトを鉱物的に解説します。

    ■組成について

    まずは、組成から見てみましょう。

    英名 Poudretteite(ポードレッタイト)
    和名 ポードレット石
    成分 KNa2B3Si12O30
    結晶系 六方晶系
    モース硬度 5-6
    屈折率 1.510 - 1.530
    劈開 なし
    カラーレス、ペールピンク、ピンク、パープルピンク
    主な産地 カナダ、ミャンマー

    ポードレッタイトはオオスミライト/ミラライトグループに属する珪酸塩鉱物です。オオスミライトには17種の鉱物が属していますが、その中で貴石品質の鉱物を産出するのはスギライトと、わずかにソグディアナイトが産出する程度で、新たに貴石品質の煌めきを放つポードレッタイトにジェモロジストが熱っぽい視線を向けたのも当然のことでしょう。

    ちなみに、オオスミライトは和名が大隅石。原石は透明感のある青みのブラックで、一般的に装飾用には流通しませんが、美しい鉱物です。鹿児島県大隅半島で発見されたことが名前の由来になりました。

    スギライトは和名が杉石。パワーストーンとしても有名なパープルが美しい石です。こちらも日本で発見され、発見者である杉教授から名付けられています。オオスミライトもスギライトも日本で発見されているから、ポードレッタイトもひょこりと日本で産出したりしないかな、と夢見たりもするのですが、そう単純ではないでしょう。

    ミャンマーでジェムクオリティのポードレッタイトが採掘されるようになったばかりで、まだ判っていないことも多い鉱物です。ポードレッタイトの柔らかなピンクの着色原因も完全には断定されていません。当初はスギライトと同じマンガンだと考えられていましたが、近年の研究でモゴック産に関してはチタンが着色原因と考えられています。

    モン=サン=ティレールのポードレッタイトは、霞石閃長岩に入り込んだ大理石から産出されました。この霞石閃長岩は1億2500万年前に地表に向かったマグマの作った深成岩と言われています。

    幾つかのマグマが貫入し合って出来たモン=サン=ティレールは、ソーダライトをはじめ様々な鉱石が産出、また発見されている場所でもあります。また、モゴックは言うまでもなく、ルビー、サファイアをはじめとした様々な種類の宝石のマザーランドです。4500~6500万年前のヒマラヤ造山運動が作った複雑な地質が、標高1500kmの胸のうちに豊富な秘密を抱えさせるに至りました。

    2つの地で長い時間の果てに、どんな化学変化が起きてポードレッタイトのような美しい鉱物が誕生するに至ったのか、今後の研究で明かされるのが楽しみです。

    ■原石の形状

    ポードレッタイトは六方晶系で、六角柱として成長します。軸がほとんど等しい結晶として成長するポードレッタイトは、カッティングしなくとも比較的整った形を成しています。勿論、自然の風化や外部の圧力によって六角柱を維持していないものもありますが、そういう歪みも天然石の醍醐味です。

    また表面はエッチングされ筋状のざらつきがあります。原石も色むらが多いですが、自然の色むらはトルマリンのバイカラーのような魅力になります。原石そのままでも魅力の多い鉱物です。

    ■鉱物としての魅力

    ピンクのポードレッタイトは、原石のままでも色が鮮やかです。透明感もあり、何より元々小さな結晶が多い中、ファセットカットしないことである程度サイズを保てるのが魅力です

    前述した通り、六角柱など原石のままでも整った形も良いです。原石の形を活かしたジュエリーなど、ポードレッタイトの魅力を更に引き出すこともできそうです。

    勿論、そのままコレクションとして飾るのもおすすめです。ポードレッタイトは、観賞用に置くだけでもその空間を明るくしてくれそうな優しい風合いがありますね。観賞用でも人を選ばず、広く人気を集めそうです。

    3. ポードレッタイトをより楽しむために

    宝石のその他の楽しみ方として、誕生石や石言葉、加工品の使用例などをご紹介します。

    ■石言葉

    ポードレッタイトは希少石で、パワーストーンなど半貴石として流通することはあまりありません。そのため、これといった石言葉もまだ定まっていないようです。

    しかし、ポードレットファミリーの名前を由来に持つこの石は、家族愛が転じたのか、与えられる愛と与える愛のバランス感覚を保つとも言われています。自然と、恋愛に限らず丁度良い人間関係が得られるかもしれない、良縁の石。柔らかなピンクとクリアな部分をあわせ持つポードレッタイトらしい謂れかもしれませんね。

    ■ビーズやアクセサリーへの加工は?

    ポードレッタイトはその希少性のあまり、ファセットカットされたジェムストーンか、加工しない原石としてしかほとんど流通していないようです。前述の通り原石のままでも美しく、枠留やナチュラルジュエリーに加工するのもおすすめです。へき開がなく、モース硬度も5-6と然程高くはありませんが脆いということもなく、華やかなピンクは通年身につけられるジュエリーになりそうです。

    ミャンマーでは新たな鉱床も見つかっていますし、今後順調に産出量が増えれば半貴石のポードレッタイトも市場に出回るでしょう。今後も目の話せない鉱物です。


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    4. まとめ

    ポードレッタイト、いかがでしたでしょうか。

    今はまだ流通量が少なく知る人ぞ知るレアストーンですが、注目度を鑑みると、5年、10年後には人気石になっているかもしれません。今の内に出会える幸運を期待しています。


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    この記事を書いた人

    佐伯

    TOP STOneRY / 編集部ライター

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