希少石の中でも希少! 知られざる魅力を持つ石 ジェレメジェバイトについて解説

ジェレメジェバイト、エレメージェバイト、エレメエファイトまたイェレメイェフィットとも呼ばれる宝石をご存知でしょうか。どれも一度は口にしてみたくなる響きですが、どの名前でもあまり見る機会の少ないレアストーンです。希少ながら近年人気を博しているこのジェレメジェバイトについて解説します。
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1.宝石・ルースとしてのジェレメジェバイト

冒頭から複数の名前で混乱してしまいそうですが、その石はシンプルに美しい貴石です。
カラーレス、ブルー〜バイオレット、時にイエローを示す、透明感と艷やかなテリが魅力。
産地が限られており、その限られた産地でも多く採れる訳ではありません。大きな原石も稀と、希少性は非常に高く、コレクター垂涎の石と名高いです。
■最高のジェレメジェバイト

ジェレメジェバイトは大きな結晶が少なく、1ctもあれば大きな方と言えます。1ct以下の小ぶりなジェレメジェバイトが流通する中、存在感を示す大きなカラットの石はそれだけで価値が高いと言えそうです。
クラリティ(透明度)が高い方が好まれるのは当然ですが、元々透明感の強い石で、屈折率も1.65と高めの貴石です。内部にクラック(割れ)があってもそれが虹彩を放つことで却って魅力を高めることもあります。透明度を著しく損なわない限り、インクルージョンの有無よりも入り方が重視されます。
但し、鉄による黒色インクルージョンなど目立つものは折角のジェレメジェバイトの透明感を阻害してしまうので、肉眼でも確認できる程の黒色インクルージョンがあるものは避けた方がいいかもしれません。
ジェレメジェバイトの色に関しては、カラーレスもしくはブルー系が一般的によく知られています。その中でも希少なのはやはり濃いはっきりとしたブルーでしょう。コーンフラワーブルーとも呼ばれる深く鮮やかな青のジェレメジェバイトは中々お目にかかれません。
一方で、カラーレスや薄いライトブルー、またイエロー系のジェレメジェバイトの美しさも見逃せません。透明な、或いはわずかな色味を伴って反射するライトカラーのジェレメジェバイトは、シベリアの凍土が燦燦と照らされているような、永久に解けない氷のような気高さを感じられます。
■ジェレメジェバイトならではの魅力
ジェレメジェバイトは強い多色性を持つ貴石です。通常は二色性を示し、表面からは透明でも側面からは青く輝いてみえます。またわずかに傾けるだけで、二色性が複雑な色合いを反射する石はどう飾っても見飽きない美しさです。ジェレメジェバイト全てが多色性を持つわけではなく、カッティングの際はこの多色性が重視されます。
通常は二色性を持ちますが、石によってはカラーレス、ブルー、イエローと贅沢にジェレメジェバイトのカラーを楽しめる石もあります。結晶の大きさを最大限損なわないようステップカットにされることが多いジェレメジェバイトですが、そのカッティングの理由はこの多色性にもあります。
■ジェレメジェバイトの歴史と由来
ジェレメジェバイトは1883年、フランスの鉱物学者アレクシス・ダモーによって発見されました。ロシアはシベリアのザバイカリエ地方でのことです。新たに発見されたシベリアの氷のような透明な貴石はロシアの鉱物学者、パヴェル・ウラジミロヴィッチ・イェレメイェフ(Pavel Vladimirovich Eremeev)に敬意を表して彼の名がつけられました。
イェレメイェフは聖書に出てくる預言者エレミアに由来するロシア語圏の姓です。これがドイツ語圏だとジェレミアとなり、冒頭のジェレメジェバイト、エレメージェバイト、イェレメイェフィットといった複数の名前となる理由です。
コマーシャルネームや通称など複数の名前を持つ石は多くありますが、どれも正しい宝石名として複数の名前を持つ石も珍しいですね。鑑別機関によっても、鉱物名からしてエレメージェバイト、エレメージェーバイト、エレメジェバイトと微妙に違っています。本来の発音はイェレメイェフィットに近いのかもしれませんが、日本語話者にとって正しく発音するのは難しそうです。
ジェレメジェバイトは1883年に発表されて以来、長い間新たな結晶の発表がありませんでした。また当初発表されたものはカラーレス〜淡い黄色系の、10cmにも満たない数個の結晶でした。その後100年近く沈黙を経て、1980年頃、ナミビアでコーンフラワーブルーの結晶が発見されます。その後も大きな産出はなく、希少石としてひっそりとコレクターの間で流通するに留まっていました。1980年当時にSNSがあれば、ジェレメジェバイトもかなり人気かつ手に入らない、三代希少石の仲間入りをしていたかもしれません。
■ジェレメジェバイトの産地

ジェレメジェバイトの主な産地はナミビア、ミャンマー、タジキスタン、ドイツです。最初に発見されたのはシベリアでしたが、現在は産出がないようです。
市場にあるジェレメジェバイトの大半がナミビア産です。1980年代に美しい青いジェレメジェバイトが見つかったとおり、ナミビアではカラーレスから深く鮮やかな青のジェレメジェバイトが産出されます。
2.鉱物・原石としてのジェレメジェバイト

美しい色と透明度を持ちながら産出が少なく中々手に入らないジェレメジェバイト。鉱物学的特性からその側面を読み取ります。
■組成について
まずは、組成から見てみましょう。
英名 | Jeremejevite(ジェレメジェバイト) |
和名 | エレミア石 |
成分 | Al6(F,OH)3(BO3)5 |
結晶系 | 六方晶系 |
モース硬度 | 6.5 |
屈折率 | 1.64 |
劈開 | なし |
色 | 無色、青、黄色 |
主な産地 | ナミビアなど |
ジェレメジェバイトはアルミニウム ホウ酸塩鉱物です。同じホウ酸塩鉱物にハウライトやウレックス石がありますが、それらのモース硬度は2.5〜3.5と、ホウ酸塩鉱物は柔らかく溶けやすい鉱物が多いです。そのため、モース硬度6.5とやや低めではあるものの、貴石として十分な硬度を持つこともジェレメジェバイトの特性といえます。
ジェレメジェバイトの組成は、実はトパーズに似ています。というのも、ジェレメジェバイトのホウ酸がケイ酸になると、Al2(F,OH)(SiO4)のアルミニウムケイ酸塩鉱物、つまりトパーズの組成になるのです。組成だけ見るとジェレメジェバイトもトパーズのように世界各地で産出されてもおかしくなさそうに思えるのですが、そう簡単にはいかないところが自然の妙ですね。
ジェレメジェバイトは人工的な合成が可能で、研究目的に合成石が作られたことはあるようです。現在合成石が市場に出回る規模で作られているという話は聞きませんが、今後貴石としても、工学的素材としても人気が高まってきたら、合成石も作られるかもしれません。
■原石の形状

Wikipedia掲載画像
Fred Kruijen - https://www.strahlen.org/archive/wannenkopfe/jeremejevite19.html, CC BY-SA 3.0 nl,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10073031による
ジェレメジェバイトの多くは数cmの小さな結晶です。六方晶系の結晶らしく小さな六角柱として成長しますが、熱水脈で成長するジェレメジェバイトは成長過程で歪みや熱水に削られることで蝕像と呼ばれる不思議な像を刻みます。
ジェレメジェバイトは六方晶系の通り一軸性の結晶ですが、ある一方方向から圧力を加えると二軸性を示す不思議な性質もあります。最初にシベリアで発見された結晶は、六方晶系の結晶の中心に単斜晶系の結晶が成長していました。その単斜晶系の結晶は六方晶系の結晶とは区別され、発見された鉱山の鉱山長の名前に因んでアイヒワルダイトと名付けられています。複数の小さな結晶が成長する原石は、溶けない氷の作り出す小さな花のようでファンタジックな魅力があります。
■鉱物としての魅力

ジェレメジェバイトは前述した通り、熱水脈で成長し蝕像を作り出します。飴細工のような、不思議な蝕像の作り出す造形美は一つとして同じものはなく、コレクター魂を燃え上がらせます。
色合いもカラーレスから淡いブルーかと思えばサファイアを思わせるコーンフラワーブルーまで、原石のままでも鮮やかな色を呈します。コレクションに興味のない人でも、透明から青、時に黄色の、それぞれ色を鮮やかに煌めかせながらユニークな形を作り出す原石の中に、どうしようもなく惹かれる石を見つけられるでしょう。
3. ジェレメジェバイトをより楽しむために
宝石のその他の楽しみ方として、誕生石や石言葉、加工品の使用例などをご紹介します。
■ジェレメジェバイトの石言葉
ジェレメジェバイトの石言葉は、静寂、浄化、純粋、願望成就などです。人知れず、静かに成長を続けるジェレメジェバイトの結晶に相応しい石言葉ですね。パワーストーンの世界では、気持ちや状態を落ち着けたい、浄化する石として使われるようです。
確かに、透明度の高い小さな結晶を見つめていると、外界を忘れ気持ちが落ち着けられるかもしれません。
■ジェレメジェバイトの加工品
残念ながら、レアなことと硬度の点から見てビーズや加工品として流通することは稀です。しかしながら原石に天然の美しい像があるため、それをナチュラルアクセサリーにするのはおすすめです。
原石でも小振りなものが多く流通しているため、目立ちすぎない、身近に扱えるアクセサリーに加工できるでしょう。何より見た目もカラーも一つではない希少なジェレメジェバイトは、コレクションすることも楽しみ方の一つになります。
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4. まとめ
レアストーン中のレアストーンと名高いジェレメジェバイト、いかがでしたでしょうか。
ジェレメジェバイト、エレメージェバイト、エレミア石、ジェレミア石など様々な呼び方があるため、特にオンラインで探す時はJeremejeviteと英語で探すのが見つけやすいかもしれません。最近人気も高まりつつあるジェレメジェバイト、今のうちに一つ、気に入ったものを是非探してみてください。
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この記事を書いた人

佐伯
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。