2023/11/09

新種のレアストーン、ローレントーマサイトとは?特徴から魅力まで徹底解説

ローレントーマサイトは、2019年に新種として認められたばかりの新しい鉱物です。発見されてから日が浅いためまだあまり知られていませんが、見る角度によって異なる表情を見せる美しい宝石です。

この記事では、そんな今後注目したい宝石ローレントーマサイトをご紹介します。

20年以上の長きにわたり、天然石の卸売に携わる宝石のプロ・TOP STONEが、特徴から魅力まで詳しく解説していきます。

ぜひこの機会にローレントーマサイトを知り、レアストーンの魅力に足を踏み入れてみませんか。


▶ TOP STONE で販売中のローレントーマサイト



1. 宝石・ルースとしてのローレントーマサイト

まずはローレントーマサイトの特徴や品質など、基本的な情報をご紹介します。ローレントーマサイトがどのような宝石なのか、詳しく見ていきましょう。

■高品質なローレントーマサイトとは

ローレントーマサイトは2019年に新鉱物として登録されたばかりの、新しい宝石です。

まだわずかしか産出していないおらず、解明されていないこともたくさんあります。

レアストーン愛好家を中心に注目を集める、これからに期待が高まる宝石です。

ローレントーマサイトの品質は、カラー・透明度・カラットを総合的に見て決まりますが、宝石品質の結晶が産出するのはきわめてまれです。

カラー

ローレントーマサイトは、青緑色の神秘的な色合いが特徴です。石によって青色から黄緑色まで微妙に異なる色合いを見せます。鮮やかに美しく発色しているものほど高く評価されます。

カラット

カラットは宝石の重さのことです。1ct(カラット)は0.2gに相当し、カラットが大きいほど価値が高くなります。

ただし、ローレントーマサイトは、まだ小さな結晶がわずかしか見つかっていません。もしサイズが大きく高品質なローレントーマサイトが見つかったら、非常に高い価値が付けられるでしょう。

■ローレントーマサイトの輝き方・特徴

    ローレントーマサイトは強い多色性を持つ宝石です。

    <用語解説>多色性とは?
    多色性とは見る角度を変えると違う色に見える現象のことです。光源による変化はありません。 多色性を持つ宝石は、タンザナイトが有名です。
    ***
    多色性と似た言葉に「変色効果」があります。変色効果とは光源によって、見える色が変わる現象です。 カラーチェンジ効果とも呼ばれます。 変色効果を持つ代表的な宝石は、アレキサンドライトです。アレキサンドライトの名前を借りて、変色効果を「アレキサンドライト効果」と呼ぶ場合もあります。

    ローレントーマサイトは、見る角度を変えると青色と黄色の2色に変化します(2色性)。

    1つの宝石でありながら、美しく複雑な輝きを楽しめるのがローレントーマサイトの大きな特徴です。

    ≪豆知識≫ローレントーマサイトの2色性が起きる理由
    ローレントーマサイトの2色性は、鉱物内を遷移する金属イオンFe2+とFe3+によるものと考えられています。 ローレントーマサイトには八面体の面と四面体の面があります。両者の間を価数が異なる電荷が移動するのが、2色性を生み出すとの理論です。

    ■ローレントーマサイトの魅力

    ローレントーマサイトは2019年にマダガスカルで初めて発見されました。発見者である地質学者・宝石商のローレン・トーマス(Laurent Thomas)氏にちなんで名付けられています。
    ちなみにローレン・トーマス氏は、ペツォッタイトの発見者でもあります。ラズベリー色が美しいペツォッタイトは、非常に希少性の高い石として知られています。

    レアストーンを2つも見つけるとは、ローレン・トーマス氏はなんと幸運な人なのでしょうか。

    話をローレントーマサイトに戻しましょう。

    ローレントーマサイトは、同じくマダガスカル産のグランディディエライトと、見た目も成分もよく似ています。
    両者は混同されやすく、目視での識別は難しいといわれます。

    屈折率・比重・多色性など、細かな分析により若干の違いが判明します。

    <ローレントーマサイトとグランディディエライトの違い>

    ローレントーマサイト グランディディエライト
    青色から黄緑色 青色から青緑色
    成分 Mg2K(Be2Al)Si12O30 (Mg, Fe₂+)Al₃(BO₃)(SiO₄)O₂
    結晶系 六方晶系 斜方晶系
    モース硬度 6.0 7.5
    比重 2.66~2.67 2.85~3.09
    屈折率 1.54 1.58~1.62

    グランディディエライトは2015年に世界でもっとも高価な宝石3位に輝いた希少石です。発見から100年以上経ってからようやく注目を浴び、現在はその希少性からマダガスカル政府によって輸出規制がかけられています。

    ローレントーマサイトは発見からまだ日が浅いながらも、レアストーンコレクターたちの間ではすでに話題となっています。

    新鉱物というだけでなく、透明度が高く美しい色の結晶で産出することから、ファセットカットも可能な新しい宝石として注目されているのです。

    青色と黄色が混ざり合ったティールブルー(青緑色)は、宝石界で近年流行の色でもあります。グランディディエライトよりもやや青みの強い独特の美しい色合いは、今後大きな注目を集め人気が高まっていくでしょう。

    ■ローレントーマサイトの産地

    ローレントーマサイトの主な産地は発見地のマダガスカルです。

    発見されたのはマダガスカル南東部のフィアナランツォア県イフルンベ近郊で、サファイアの鉱山として有名なイラカカの東150kmほどの場所です。

    マダガスカル以外で宝石品質のローレントーマサイトが産出するかどうかは、まだわかっていないようです。

    ちなみにマダガスカルは、宝石コレクター垂涎の地といわれます。宝石・鉱物の産地が1000もあり、370種以上が発見されているためです。
    ローレントーマサイトは、マダガスカルで見つかったミラライトグループに属する最初の鉱物種です。

    <用語解説>ミラライトとは
    ケイ酸塩鉱物の一種です。1870年、Kengngottiによって、スイスのVal Milaにちなんで名付けられました。 鹿児島県桜島南垂水町咲花平の流紋岩中で発見された「大隅石」も、ミラライトグループに属します。

    2. 鉱物・原石としてのローレントーマサイト

    原石の状態でも独特の色合いが美しいローレントーマサイト。ここでは鉱物としてのローレントーマサイトについて詳しくご紹介します。

    ■組成について

    ローレントーマサイトの組成は以下のとおりです。

    英名(カタカナ) Laurentthomasite(ローレントーマサイト)
    和名 -
    成分 Mg2K(Be2Al)Si12O30
    結晶系 六方晶系
    モース硬度 6.0
    比重 2.66~2.67
    屈折率 1.54
    劈開 不明瞭
    青色、青緑色、黄緑色
    主な産地 マダガスカル

    ローレントーマサイトはケイ酸塩鉱物の一種です。

    モース硬度は6程度で、ムーンストーンやラブラドライトなどと同じくらいです。加工に耐えられる硬さがあり、宝石品質のローレントーマサイトにはファセットカットが施されることもあります。

    ただし、硬度が高い宝石と一緒に保管すると傷がつくおそれがあるため、取り扱いには十分注意してください。

    ■ローレントーマサイトが希少な鉱物的理由

    ローレントーマサイトは「産出量が少ない」「産地が多くない」という点以外にも、希少性が高い理由があります。

    それはローレントーマサイトが「スカンジウム(Sc)を豊富に含む」ことです。スカンジウムはレアアース(希土類元素)の代表的存在です。

    前提として、重要な構成成分としてスカンジウムを含む地球上の鉱物種は15種しかありません。トルトバイタイトやユークセナイト、ガドリン石などが該当します。

    また地球外に由来するスカンジウムも報告されています。

    数少ない、スカンジウムを豊富に含む鉱物がローレントーマサイトです。

    スカンジウムが希少なのはなぜ?

    スカンジウム自体は地球上で50番目(地殻中では35番目)に多い元素とされており、地球上の存在量はコバルトと同程度と考えられます。
    太陽系全体を見ると、23番目に存在量の多い元素でもあります。

    存在量だけ見ると、決して希少ではありません。

    ではなぜスカンジウムがレアアースなのか、それは地球上にスカンジウムを濃縮する地質学的過程が存在しないからです。

    地球上のスカンジウムは地殻全体に広く分散し、何百種類もの鉱物に少量ずつ含まれます。そのため、スカンジウムだけで構成される化合物は、ほとんどありません。「スカンジウム鉱山」が存在しないのも、同じ理由です。

    スカンジウムを豊富に含むトルトバイタイトの標本は、1950年代に同じ重さの金(Au)を上回るほどの値がつけられたほどです。

    ちなみにスカンジウムは、茶の木や葉にも含まれます。茶の木が、成長に必要なアルミニウム(Al)を吸収する際に、化学的に類似したScを区別せず一緒に取り込んでしまうことが要因だと考えられています。

    ≪豆知識≫
    アルミニウムに0.5%量のスカンジウムを加えると「Al–Sc合金」になります。アルミニウムの軽さを維持しつつ強度を著しく高められること、および融点が800℃も上昇することにより、様々な用途に使われます。
    ロシアのジェット戦闘機「ミグ(MiG)」の部品にも、この合金が使われています。 また野球のバットやラクロスのスティック、自転車のフレームなどのスポーツ用品にも、この合金が利用されています。

    ■原石の形状

    ローレントーマサイトは、黒雲母と角閃石が豊富な一連の片麻岩、ミグマタイトおよび輝石が豊富なアルカリ閃長岩が混ざったペグマタイト内で発見されました。

    現在も正長石や塊状の石英、淡緑色アパタイト結晶、フェナカイトベリル、曹長石、磁鉄鉱、トートベイタイト、ケラライトなど、多くの鉱物と共に発見されます。

    ローレントーマサイトの結晶は六方晶系を示し、独特の青緑色で自然なガラス光沢が見られます。

    ■原石としての魅力

    ローレントーマサイトは産出量自体が少ない上に、流通量もきわめて少ないため原石もほとんど出回っていません。しかしながら独特の色合いと美しさから今後人気が高まっていくことが予想されるため、多くの原石コレクターが注目している希少石です。

    流通量が限られているゆえに今はまだ情報も多くありませんが、今後注目されるにつれて少しでも流通量が増えれば、さまざまな原石が見られるかもしれません。

    3. ローレントーマサイトをより楽しむために

    ローレントーマサイトをさらに楽しむための豆知識や補足情報をご紹介します。

    ■ローレントーマサイトの発見から今まで

    ローレントーマサイトは2019年4月に国際鉱物学会(IMA)に新しい鉱物として登録されました。

    いまだに流通量が少なく、「幻の宝石」とも言われる理由は2つあります。

    • もともとの産出量が少ないこと

    • 市場へのデビューと新型コロナの流行が重なったこと(流通が停滞)

    産出量や希少性についてもまだ詳しくわかっていない部分が多くあります。

    それでも強い多色性が見せる美しい色合いの変化や、独特の青緑色は唯一無二の魅力があります。

    ファセットカットを施しジュエリーに加工することもできるため、今後流通量が増えれば、より多くの人がローレントーマサイトに魅了されるでしょう。

    ■カットしたり磨いたりすると新たな魅力が生まれる

    ローレントーマサイトは適切にカットを施すことで、キラキラと繊細な輝きを放ちます。流通量が少ないためカットルースに出会えることはまれですが、適切なカットが施されたローレントーマサイトは非常に美しく魅力的です。

    さらに多色性を持つため、カットされたローレントーマサイトは見る角度によって色が変わるのも大きな魅力です。角度によって青色と黄色に変化する複雑な輝きを楽しめます。


    天然石・レアストーン・誕生石ならトップストーン

    トップストーンは、国内最大級の天然石輸入卸問屋「株式会社ウイロー」が運営するルース専門の通販サイトです。世界中から買い付けたレアストーン、誕生石を販売しております。パライバトルマリン、タンザナイト、サファイアなどの宝石、ルースなど。豊富な品揃えから、天然石やパワーストーン、カラーストーンをお選び頂けます。

    適正な販売価格を提示

    天然石の市場価格は、決して安定しているとは言えません。常に変動する相場の中、トップストーンでは、最新の天然石の相場・平均価格を熟知しております。世界情勢や市場の動向をいち早くキャッチアップし、適切な価格を提示しておりますので、安心してご購入いただけます。

    取り扱い種類が豊富

    株式会社ウイローでは、40,000点以上の石を、鉱物・原石から宝石、ルースまで取り扱っております。また、弊社独自の調査により、入手難易度レベルを作成。入手困難な希少な天然石もトップストーンならば仕入れ可能です。

    第3者鑑別機関のチェック済み

    弊社で扱っている宝石、ルース(天然石)の数々は、商品名には流通名または宝石名を記載して販売しております。中立の立場である第3者鑑別機関に鑑別しているため、安心してご購入いただけます。

    ※TOPSTONEでは、鑑別・ソーティングを概ねA.G.L加盟の鑑別機関にお願いしております

    ▼鑑別・ソーティングについては以下ページにて詳細をご確認いただけます

    https://www.topstone.jp/help/faq


    4. まとめ

    新鉱物のローレントーマサイト。歴史は浅くまだ知る人ぞ知る宝石ですが、一目見れば神秘的な色合いと唯一無二の複雑な輝きに魅了されるでしょう。今後流通が増えれば、間違いなく人気のレアストーンになるはずです。

    この機会にぜひ名前だけでも覚えていただき、今後のローレントーマサイトの動向に注目してみてくださいね。


    ▶ TOP STONE で販売中のローレントーマサイト


    ▸ こんな記事も読まれています


    この記事を書いた人

    みゆな

    TOP STOneRY / 編集部ライター

    トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。