出会えることが幸運!希少石ヘルデライト|特徴・産地・魅力を解説

ヘルデライトはレアストーンのひとつです。加工が難しいことも要因となり、ルースでも滅多に見られない貴重な宝石です。
今回はレアストーン愛好家がこぞって探し求める、ヘルデライトに注目しました。ギュベリン博士が所蔵していたヘルデライトコレクションや、スミソニアン博物館にあるヘルデライトなど、周辺情報も満載です。
ヘルデライトの特徴や歴史的ストーリーを紐解きながら、レアストーンの世界を覗いてみましょう。
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1.宝石・ルースとしてのヘルデライト

まずはヘルデライトに、宝石・ルースの観点から迫ります。
高品質なヘルデライトの条件や、希少性を裏付ける物語を紹介します。
■高品質なヘルデライトとは

ヘルデライトは産地、産出量が限られている宝石です。
他の宝石のように大きな塊状の結晶での産出は極めて稀で、宝石品質の個体となると大変貴重です。
また、硬度が高くないため加工が難しく、ルースに加工されて流通するものは「出会えたらラッキー」と思って良いレベルでしょう。
そんな存在そのものに価値があるヘルデライトですが、なかでも高品質な個体は以下の条件を備えています。
透明度が高い
インクルージョンやクラックがない
カラットが大きい
ヘルデライトのカラーはカラーレスや淡黄色、緑がかった白色、ミント色、ピンク色など産地によってさまざまです。
とりわけ人気が高いのは、色が濃いブラジル産のヘルデライトです。ブラジル産のヘルデライトでは、ゴールデンブラウンが高く評価されます。
ルースに加工されたヘルデライトは、その多くが1カラット未満の大きさです。
1カラット以上の大きさを持つルースは本当に稀で、出会えたらまさに一期一会!チャンスを逃さず手元に迎えてあげてください。
これまでに見つかっているヘルデライトの大きさ
ヘルデライトは大きな原石がほとんど見つかりません。過去にはブラジルで握りこぶしほどの大きさの原石が見つかっただけで話題になったこともありました。
実際、ヘルデライトはどのくらいの大きさで見つかっているのでしょうか。GIA(Gemological Institute of America・米国宝石学会)の調査報告をもとに、具体的にリサーチしました。
1996年、38.91カラットのヘルデライトが見つかったとの報告
以降、最大161.09カラットのヘルデライトが見つかる
2003年、イリノイ州(アメリカ)で78.35カラットのヘルデライトが報告される
ただし、これらのすべてが宝石品質とは限りません。
ヘルデライトの大きな原石は宝石品質を満たさないものが多く、ルースに加工できるのはほんの一部です。
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参考までに、GIA創設メンバーの一人でもある宝石学会の第一人者・ギュベリン博士(Dr. Edward Gübelin)のコレクションにあるヘルデライトのカラットは、次のとおりです。
2.40カット・紫色
4.93カラット・紫色
6.13カラット・ミント色
7.12カラット・淡紫色
17.16カラット・黄緑色
ちなみにギュベリン博士のコレクションには、51.10カラットのフローライトや58.57カラットのフェルドスパー、30.37カラットのダンビュライトなど、桁違いの大きさのコレクションも含まれます。
コレクションの本物を、一度見てみたいものですね。
■ヘルデライトの特徴
ヘルデライトの特徴として、蛍光性があげられます。
蛍光性自体はあまり強いとはいえませんが、長波紫外線ライト(UV365)を照射すると、青色~紫色へのカラーの変化をみることができます。
なお、カラーレスの個体のほうが、蛍光性が顕著にあらわれるようです。
■ヘルデライトの希少性
ヘルデライトは、その希少性から博物館に収蔵されることもある宝石です。
アメリカ・ワシントンD.C.にあるスミソニアン自然史博物館には、5.9カラットの緑色のヘルデライトと、1.5カラットの淡い灰紫色のヘルデライト(いずれもブラジル産)が収蔵されています。
スミソニアン自然史博物館は、鉱物愛好家なら一度は訪れてみたい憧れの場所です。
同館には37万点を超える鉱物標本が収蔵されており、それらはデータベース化され、体系的に保管されています。
石炭を思わせる黒雲母の母岩に育つエメラルドの結晶や、木の実のような外観を持つ鉱物を割ると内部からオパールが現れる「ヨーワナット」など、珍しい標本も収蔵されています。
■ヘルデライトにまつわる逸話

Photo: Jan Albrecht © Jan Albrecht
ヘルデライトが発見されたのは1828年、ドイツ・ザクセン州にあるエルツ山地(Erzgebirge)のザウバーグ鉱山においてでした。
発見者は同鉱山の鉱山長を務めていたジークムント・アウグスト・ヴォルフガング・フォン・ヘルダー男爵(Siegmund August Wolfgang von Herder)であり、その名にちなんで「ヘルデライト」と命名されました。
発見地であるエルツ山地は、古来より多様な鉱物資源に富んだ地域として知られています。
地名の由来となったドイツ語「Erz(鉱石)」からも、その鉱業上の重要性がうかがえます。
この地では銀や錫(すず)、鉛、鉄、コバルト、ビスマス、ウラン、ニッケルのほか、石灰、カオリン、石炭などが豊富に産出しました。
さらに2019年には「エルツ山地鉱業地域」としてUNESCO世界遺産にも登録され、ヨーロッパ屈指の鉱山地帯としてその歴史的価値が世界的に認められています。
参照:ユネスコ / 世界遺産リスト / エルツ山地/クルシュノホシ鉱山地域(外部リンク)
■"ヘルデライト"と"ヴェルデライト"

この記事で取り上げているのは"ヘルデライト"です。
ところが"ヴェルデライト"と呼ばれる石もあります。名前は「へ」と「ヴェ(ベ)」の違いだけで、とても紛らわしいですね。
ヴェルデライトはグリーン・トルマリンの別名です。深い緑色をしており、ヘルデライトとは色の印象がまったく異なります。
ただし、中には淡い緑色や黄色味を帯びたヴェルデライトもあり、その場合はヘルデライトとの区別が難しいこともあります。
まずはヘルデライトとヴェルデライトという2つの異なる石が存在することを押さえておきましょう。
さらに、鑑別書のついた本物を集めるようにすれば、間違いがありません。
ヘルデライトの鑑別書には「鉱物名:天然ヘルデライト/宝石名:ヘルデライト」と記載されます。
一方、ヴェルデライト(グリーン・トルマリン)の鑑別書には「鉱物名:天然トルマリン/宝石名:グリーン・トルマリン」と記載されます。
■ヘルデライトの産地

ヘルデライトの主要な産地はブラジルのミナスジェライス州です。
ここでは握りこぶし大の原石が発見されたこともあります。
ブラジル産のヘルデライトは、他の産地のものに比べて色が濃い傾向にあります。
中でも特に人気の高いビビッドなゴールデンブラウンカラーは、ほぼブラジルで産出されます。
またブラジルでは、カラーレスやピンク、緑、紫など多彩な色合いのヘルデライトも採掘されています。
ヘルデライトは産地によって色味に特徴があるのも興味深い点です。
例えばアメリカ合衆国のメイン州では、カラーレスや淡黄色の結晶が産出されます。
またアフリカでは灰色がかった紫色といった珍しい色も見られ、アフガニスタン産からは淡い緑色や明るい緑色の個体も報告されています。
ヘルデライトは産地ごとに色の特徴が見られます。
しかし「この色はこの産地のもの」という決まりがあるわけではありません。あくまで「この産地ではこの色が多く見られる傾向がある」という程度です。
ヘルデライトは産出量自体が非常に少なく、鑑別サンプルも限られているため、産地の特定が難しい石です。
そのため、「ピンクのヘルデライトだからブラジル産」と安易に決めつけないよう、注意しましょう。
近年は世界各地で発見例が増えつつありますが、ヘルデライトの産出量は依然として非常に限られています。
他の鉱物に比べて産出量が少なく、宝石品質の個体はさらに希少でカラットも小さいため、ヘルデライトは今なお希少石(レアストーン)として高い価値を保っています。
2. 鉱物・原石としてのヘルデライト

Rob Lavinsky, iRocks.com – CC BY-SA 3.0, 出典: Wikimedia Commons (https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10453203), サイズ変更
ヘルデライトは、鉱物としても非常に興味深い特徴を持っています。
実はトパーズ以外にも、フッ素(F)タイプとヒドロキシ基(OH)タイプの2種類がある鉱物がヘルデライトです。
ここからは、ヘルデライトを鉱物・原石の視点で解説しましょう。
■組成について
ヘルデライトの組成情報は、以下のとおりです。
英名 | Herderite(ヘルデライト) |
和名 | ヘルデル石 |
成分 |
CaBe(PO4)F CaBe(PO4)OH |
結晶系 | 単斜晶系 |
硬度 | 5.0~5.5 |
屈折率 | 1.59~1.62 |
比重 | 3.02 |
劈開 | 不明瞭 |
色 | カラーレス、淡黄色、緑がかった白色、ミント色、ピンク色 など |
産地 | ブラジル、アフガニスタン、ロシア、マダガスカル、スペインなど |
ヘルデライトはリン酸塩鉱物で、成分にフッ素(F)を含みます。
同系統の亜種として、ヒドロキシ基(-OH)で構成された個体(ヒドロキシルヘルデライト)があり、市場に流通する多くはこのタイプだといわれています。
本来のフッ素を含むヘルデライトはさらに希少で、産地もごく限られます。
<F-ヘルデライトの発見産地例>
ブラジル
ミャンマー(モゴック鉱山)
中国(宜春・ぎしゅん)
ナミビア
ただし、FヘルデライトかOHヘルデライトかは化学組成のわずかな違いであり、鉱物の価値や評価に大きく影響するものではありません。
■原石の形状
ヘルデライトは花崗岩ペグマタイト中に産出する鉱物で、単斜晶系に属し、柱状の結晶として成長します。
双晶状態で見つかることもあり、稀に六角柱状や扁平な板状、ブドウ状の集合体となる場合もあります。
大きな結晶が見つかることはほとんどなく、握りこぶし大のサイズが「かなり大きい」と評価されるほどです。
また、宝石品質の個体は数が少なく、硬度が5.0〜5.5と高くないため加工が難しく、ルースに加工されるのはごくわずかです。
一方で、母岩がついたままの結晶をそのまま楽しむコレクターも多く、原石としても人気があります。
■鉱物観点から紐解くヘルデライト
FタイプとOHタイプの鉱物で有名なのはトパーズです。
トパーズのFタイプは化学式で Al₂F₂SiO₄、OHタイプは Al₂OH₂SiO₄ と表記されます。
最高峰のトパーズはOHタイプで、オレンジ色を帯びた「インペリアル・トパーズ」もこのタイプに属します。
少しトパーズの話を続けます。
FタイプのトパーズとOHタイプのトパーズができるかは、生成環境の影響を受けると考えられています。
ざっくり分類すると、
高温環境(約850〜600℃)ではFタイプトパーズが形成される傾向があります。
低温環境(約400〜200℃)ではOHタイプトパーズが形成されやすいといわれます。
ただし、FやOHの結合度には圧力も影響し、一概に温度だけで決まるわけではありません。
ここで話をヘルデライトに戻します。
温度によってFタイプとOHタイプが分かれる傾向は、実はヘルデライトにも共通しています。
ヘルデライトは通常、花崗岩ペグマタイトや錫・タングステンの気成鉱床で生成します。
揮発性に富む成分(水やフッ素など)を含むマグマが地下で固結し、そこから生じた高温の流体によって鉱物が生成される鉱床のこと。
水の臨界温度374℃を超えているため、液体と気体は明瞭に区別されませんが、便宜上ガスとされます。
花崗岩ペグマタイトで産出する鉱物は、低温の熱水生成物です。ヘルデライトもほとんどがこの低温環境で採取されています。
市場に出回っているヘルデライトの大部分はOHタイプです。
一方で、高温環境で採れるFタイプのヘルデライトは非常に希少で、産出例は限られています。
つまり、ヘルデライトも高温環境下ではFタイプになり(ただし極めてまれ)、低温環境で生成したものはOHタイプになるとされています。
3. ヘルデライトをより楽しむために
レアストーンであるヘルデライトは、主にコレクター向けに流通しています。
ルースカットされたものや、原石のままの形で目にすることが多いでしょう。
しかし、運が良ければ比較的お手頃な価格で、気軽に手に入れられるヘルデライトに出会えるかもしれません。
ここからは、そんな巡り合えたヘルデライトをもっと気軽に楽しむためのヒントをご紹介します。
■石言葉
ヘルデライトの石言葉は「自己革新」や「革命を起こす」といった意味があります。
新しい挑戦をしたい時や、自分を変えたいと感じた時に、身近に置いてみるのがおすすめです。
ヘルデライトはパワーストーンの中でも特に強い力を持つ石とされています。
世界的なパワーストーン販売会社であるHeaven&Earth社の代表、ロバート・シモンズ氏は、「シナジー12」と呼ばれる特に強力なパワーを持つ12種の石のひとつにヘルデライトを挙げています。
<シナジー12の全石種>
アゼツライト
タンザナイト
フェナカイト
ダンビュライト
ペタライト
ブルッカイト
ヘルデライト
ナトロライト
チベット・テクタイト
モルダバイト
スコレサイト
サチャロカクォーツ
なお、ヘルデライトは誕生石には指定されていませんが、牡牛座の守護石として扱われることがあります。
■ビーズや加工品として

ヘルデライトは硬度が5.0~5.5と決して堅牢とは言えません。
そのため、カットが難しく、アクセサリーに加工されることは稀です。
ヘルデライトをアクセサリーとして楽しみたい場合は、研磨されていない結晶の形を活かす方法もおすすめです。
また、宝石品質に満たないヘルデライトも、原石として扱うことで新たな魅力を引き出せます。
クラックや不透明な部分も、ひとつの個性として装いのエッセンスになるでしょう。
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4. まとめ
ヘルデライトは希少なベリリウム鉱物の一種で、レアストーンとして高い人気を誇ります。
ルースに加工された個体の流通は非常に稀で、ミネラルショーや宝石・ルース専門店で見かけたらぜひ注目してみてください。
淡い緑色やミント色、萌黄色の個体が比較的多く、その他にもゴールデンブラウン、ピンク、灰色、紫色など多彩なカラーバリエーションがあります。
産地ごとに色が異なり、含まれる不純物によって発色が決まると考えられています。
また、美しい発色や透明度に加え、蛍光性を持つこともヘルデライトの個性であり魅力の一つです。
アメリカのスミソニアン自然史博物館にも所蔵されるほどのレアストーン、そんなヘルデライトをあなたのコレクションに加えてみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人

みゆな
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。