2025/9/11

カタプレイアイトとは?市場にほとんど出ない希少宝石の魅力と鉱物的特徴

- カタプレイアイト。
「石沼にはまって長いが、はじめて名前を聞いた」という人も多いのではないでしょうか。ジルコニウムを含む希少石で、国内の市場ではまずほとんど見られません。大手ルース専門店で、ようやく1粒在庫があるかどうか、というほどです。

今回は、レアストーン人気に影響され、徐々に知名度が上がっているカタプレイアイトを紹介します。コレクター仲間に先だってトレンドの石を押さえたい人、あるいは知られざる石をいち早くキャッチアップしたい人は、ぜひチェックしてみてください。


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1.宝石・ルースとしてのカタプレイアイト

はじめに、カタプレイアイトの特徴や美しさ、個性を解説します。

■宝石品質のカタプレイアイト

世界各地から産出は報告されていますが、宝石品質を満たす原石はカナダ・ケベック産のみ。
さらに、ファセットカットできる個体となると、「まずない」といわれるほどです。

ケベックのカタプレイアイトは無色から白濁した個体が多めです。

■カタプレイアイトの複屈折性

    強い複屈折性を持つのも、カタプレイアイトの特徴です。
    ファセットカットされたルースは、複屈折性によってファセットの稜線が重なって見え、何層もの複雑でやわらかな光を放ちます。
    くっきりとシャープなファセットとはまた異なる、独特の雰囲気を楽しめるのは、複屈折性を持つ宝石ならではの醍醐味でしょう。

    ■カタプレイアイトの蛍光性

      カタプレイアイトの中には、短波UVライトで黄緑色〜緑色に蛍光するものもあります。
      ルースより、透明度の低い原石標本のほうがよく蛍光するとの言質もあり、蛍光鉱物コレクターからも人気です。

      ☑ 豆知識:GIAコレクション収蔵のカタプレイアイト
      カタプレイアイトは、GIAが所蔵するギュベリンコレクションにもその名を連ねます。
      ギュベリンコレクションにあるカタプレイアイトは、1.97カラットの無色透明なルース。カナダ・ケベックのモン=サン=ティレール産です。
      ギュベリンコレクションにあるカタプレイアイトは、この1つのみ。カタプレイアイトの希少性がわかる逸話です。

      ■カタプレイアイトの歴史

      カタプレイアイトは、1849年に発見され、翌1850年に公表されました。

      発見地は、ノルウェー秘境の地と呼ばれるランゲンスフィヨルド、ローブン島(Låven)です。
      ノルウェーの地質学者パウル・クリスチアン・ウェイビー(Paul Christian Weibye|1819 - 1865)が発見しました。

      カタプレイアイトという名前はギリシャ語由来で、「〜とともに」を意味する「κατα(kata)」、そして「より多く」を意味する「πλειον(pleion)」からきています。多くの希少鉱物を伴って産出するさまから、この名前がつきました。

      ■カタプレイアイトの産地

      カタプレイアイトは『産地が限られる』と紹介されることもある石ですが、実際は世界各地で見つかっています。

      発見地であるノルウェーをはじめ、お隣のフィンランドや北極海でつながるグリーンランド、ロシア、ヨーロッパ各地、さらにブラジル中国、マダガスカルといった宝石産地、アフリカでも見つかっています。

      ただ、ファセットカットが施され、ルースになれる品質を持ったカタプレイアイトの産地は、現在のところ唯一、カナダのケベックのみといわれています。それ以外の産地からは、原石標本が採られています。

      2. 鉱物・原石としてのカタプレイアイト

      出典:イタリア語版Wikipedia
      Rob Lavinsky, iRocks.com – CC BY-SA 3.0(画像をリサイズしました)https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10030122

      後半は、鉱物や原石の視点からカタプレイアイトに迫ります。この希少石の個性的な面白さをご紹介します。

      ■組成について

      カタプレイアイトの組成情報は、以下のとおりです。

      英名 Catapleiite(カタプレイアイト/カタプレアイト)
      和名 カタプレイ石
      成分 Na2Zr(Si3O9)・2H2O
      結晶系 単斜晶系
      硬度 5.5~6.0
      屈折率 1.591~1.629
      劈開 完全
      濃茶色、帯赤茶色、ベージュ色、帯黄赤色、無色、明るい灰色、黄褐色、明るい黄色、オレンジ色、明るい青色
      産地 ノルウェー、フィンランド、グリーンランド、ポーランド、ポルトガル、ルーマニア、フランス、ドイツ、ウクライナ、イギリス、アンゴラ、オーストラリア、ブラジル、中国、マダガスカル、マリ、モロッコ、ナミビア、パラグアイ、カナダ、ギニア、インド、キルギスタン、リビア、ロシア、南アフリカ、アメリカ

      Si₃O₉の成分を持つことから、ベニトアイト(ベニト石)グループに分類され、ベニトアイトの水和物とされていた過去もあります。

      ■原石の形状

      カタプレイアイト形状

      カタプレイアイトは、アルカリ深成岩中に生成する鉱物です。アラゴナイト(霞石)-方ソーダ石閃長岩から成るペグマタイトでは、美しい板状結晶が見られます。

      ユーディアライト(ユーディアル石)から二次的に生成するものがほとんどですが、稀に主成分のジルコニウムから直接、カタプレイアイトになるものもあります。直接カタプレイアイトになった例としては、スウェーデンのノーラ・カール(Norra Karr)産が知られています。

      カタプレイアイトの原石は、その大半が塊状や六角形の板状です。ごく小さな粒状や、花弁状で見つかる場合もあります。共生する鉱物が非常に多く、名前の由来も「より多く(の鉱物)とともに」からきているほどです。

      ☑ カタプレイアイトが共生する鉱物の例
      ・ユーディアライト
      ・ソーダライト(方ソーダ石)
      ・ナトロライト(ソーダ沸石)
      ・アナルシム(方沸石)
      ・エジリン
      ジルコン
      ・リューコフェン石
      ・リンク石
      ・エピジジム石
      ・ローブン石
      ・アストロフィライト(星葉石) など

      ■鉱物観点からみるカタプレイアイト

      カタプレイアイトは、ナトリウム(Na)とジルコニウム(Zr)の珪酸塩2水和物です。成分中のナトリウムが優勢だとカタプレイアイトになり、カルシウム(Ca)が優勢になるとカルシオカタプレイアイト(Calciocatapleiite・灰カタプレイ石)という別種になります。
      カタプレイアイトとカルシオカタプレイアイトは固溶体です。成分は比率はグラデーション状に遷移しています。

      ちなみに、宝石として流通するカタプレイアイトは、ナトリウム優位のカタプレイアイトがほとんどです。

      カタプレイアイトは、イットリウム(Y)、セリウム(Ce)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)などの希土類元素(レアアース)を含みます。

      ☑ 豆知識:"レアアース"は"レア"ではない
      希土類元素(レアアース)は、その名前から、産出量が少なく希少である、と思われがちです。
      ただ、実際にはそれほど希少ではありません。セリウムは銅より、イットリウムやランタン、ネオジムはコバルトより地殻中の埋蔵量が多いとわかっています。

      ちなみに「レアメタル」は、偏在性が強く生産国が偏っていること、金属に製錬・精製するのに膨大なエネルギーが必要なことなどの理由から、「レア」と定義されています。
      リチウム電池の原料であるリチウム(Li)や、鉱物を緑色に発色させるクロム(Cr)などは、レアメタルの代表例です。

      3. カタプレイアイトを楽しむために

      カタプレイアイトは流通量自体が少なく、さらにコレクター人気の高い石です。国内の市場には滅多に出回らず、あったとしてもすぐに売り切れてしまうのが常です。
      もし見かけることができたのなら、それだけでも幸運。お迎えを前向きに検討してみる価値があります。

      硬度が5.5〜6とやや低めで、完全な劈開もあるため、取り扱いには注意が必要です。ジュエリーに仕立てる場合は、固いものとぶつかりにくいピアスやネックレスが適しています。複屈折性から生まれるやわらかな光が、装いにさりげないアクセントを添えてくれます。

      コレクションとして保管する場合は、直射日光を避け、ケースに収めてください。汚れは柔らかな布でやさしく拭き取りましょう。クリーニングに洗剤等の使用は避けてください。


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        4. まとめ

        希少カラーは無色透明、一般的には黄色やハチミツ色を呈するレアストーン、カタプレイアイト。宝石品質の個体はカナダ・ケベックのみが産地とされ、なかなか市場に出回らない希少な石です。複屈折性によって生まれるやわらかな光と、レアストーンならではの静謐な佇まいが、この石の魅力です。コレクションに加えれば、きっと満足度を高めてくれるでしょう。

        カタプレイアイトを探す際は、大手の宝石ルース専門店やミネラルショーなどのイベントで探してみるのが良いでしょう。TOP STONE オンラインショップでも極稀に入荷することがありますので、お探しの方はこちらのページをチェックしてみてください。


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        この記事を書いた人

        みゆな

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