アホイト&パパゴアイトを解説 | 価値高騰中の数限られた希少石の魅力に迫る

透明なクォーツが、ミント色や青色の鉱物を内包するさまを思い浮かべてください。さわやかでいて神秘的。海に浮かぶ白波や、青空に漂う雲のように、自然の一瞬を切り取ったような魅力があります。
そんな不思議で静謐な雰囲気をまとう宝石が、今回紹介するアホイトインクォーツやパパゴアイトインクォーツです。クォーツに「アホイト」や「パパゴアイト」という極めて希少な鉱物が内包され、コレクターが熱望する逸品として知られています。
他の石では見られない唯一無二の存在感は、コレクションに加えることで全体の印象を大きく変えてくれるでしょう。
この記事では、アホイトとパパゴアイトに分けながら、美しさや鉱物的魅力に迫っていきます。
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1.宝石・ルースとしてのアホイト/パパゴアイト

まずは、アホイトやパパゴアイトを内包したクォーツの美しさに触れ、その価値基準や特徴、魅力を解説していきます。
■高品質なアホイト/パパゴアイトインクォーツ
アホイトインクォーツもパパゴアイトインクォーツも、内包される鉱物の状態によって品質が左右されます。
評価基準は主に以下の三点です。
色は鮮やかなほど良い
内包量は多いほど価値がある
透明度は高いほど評価される
一般に、クォーツに内包されるアホイトやパパゴアイトはほんのわずかです。そのため、ルース全体がミント色に染まる個体や、青色がはっきりと確認できる個体は、希少であり価値が高くなります。
極稀に、アホイトとパパゴアイトの両方を内包するクォーツも見つかります。運良く出会えた際は、色合いの違いに注目してみてください。ターコイズのように緑がかった青がアホイト、夏の空を思わせる鮮やかな青がパパゴアイトです。
■アホイト/パパゴアイトインクォーツの特徴

一方、アホイトやパパゴアイトは、半紙に垂らした絵の具のように淡く広がる形で内包されます。よく見ると繊維状になっている場合もありますが、ルーペを使わなければわからないかもしれません。
結晶形をとらないからこそ生まれる、やわらかな表情。それがアホイトインクォーツやパパゴアイトインクォーツの大きな魅力です。石ごとに異なる佇まいを見比べる楽しみがあります。

■アホイトやパパゴアイトにまつわる逸話
アホイトは多色性をもつ鉱物です。多色性とは、見る角度によって異なる色が現れる光学現象のことを指します。アホイトの場合、淡い青緑色から鮮やかな青緑色までの変化が楽しめます。
和名は「アホ石」「アホー石」とされています。日本語では少し間の抜けた響きに聞こえるかもしれませんが、名称自体は1958年、発見地に因んで付けられました。
発見地はアメリカ・アリゾナ州のアホー(Ajo)で、地名に「石」を意味する「-ite」が付けられ、Ajoite(アホイト)と名づけられたのです。
このアホイトが見つかったのはニュー・コーネリア鉱山(New Cornelia Mine)です。アリゾナといえば、コレクターにはおなじみの世界最大級のミネラルショー「ツーソン・ジェムショー」の開催地ですが、この鉱山はツーソンから西へ約150kmの地点にありました。かつては日帰り可能な距離ということもあり、ツーソンからの視察ツアーも行われていたといいます。現在は休山中で、訪れることはできませんが、かつては露天掘りもされていた鉱山で、今なお興味を惹かれる存在です。
一方、パパゴアイトの名前は、この地域に暮らしていた先住民族に由来します。1960年にアホーで発見され、当時「サンド・パパゴ」と呼ばれていたハイア・セド・オオダム族への敬意を込めて命名されました。
■アホイト/パパゴアイトの産地

アホイトの発見地であるアリゾナ州ニュー・コーネリア鉱山は、現在は休山しています。ただ、基準標本はスミソニアン博物館群のひとつ、国立自然史博物館(National Museum of Natural History)に保存されています。
現在、市場にわずかに流通しているアホイトの主な産地は、アメリカ・アリゾナ州のウィッケンバーグ郡やマリコパ郡、そして南アフリカのメッシーナです。
メッシーナでは、アホイトのほかにもパパゴアイトやシャッタカイト(Shattuckite/シャタック石)といった青色のケイ酸塩鉱物を含むクォーツ(石英)が産出しました。アホイトとパパゴアイトの両方を内包するクォーツが産出するのは、世界でもメッシーナのみとされています。
しかし、このメッシーナもすでに閉山しており、現在流通しているものがほぼすべてといえる希少な石です。
パパゴアイトの産地については、まず発見地であるアリゾナ州アホーが挙げられます。ここはアメリカ国内で唯一の産地ですが、すでに休山しており、再開の見込みはないようです。
アメリカ以外では、南アフリカやナミビアでも産出しましたが、こちらも閉山が相次いでいます。そのため、今後新たな供給はほとんど期待できない状況です。
市場で見かける機会があれば、非常に貴重な出会いといえるでしょう。
2. 鉱物・原石としてのアホイト/パパゴアイト

ここからは、鉱物・原石の観点からアホイトやパパゴアイトに迫ります。
■組成について
アホイトとパパゴアイトの組成情報は、それぞれ以下のとおりです。
項目 | アホイト | パパゴアイト |
英名 | Ajoite(アホイト・アホーアイト) | Papagoite(パパゴアイト) |
和名 | アホ石・アホー石 | パパゴ石 |
成分 | (K, Na)3Cu2+20[Al3Si29O76(OH)16]・8H2O | CaCuAlSi2O6(OH)3 |
結晶系 | 三斜晶系 | 単斜晶系 |
硬度 | 3.5 | 5~5.5 |
屈折率 | 1.583~1.641 | 1.607~1.672 |
劈開 | 完全 | 不完全(1方向) |
色 | 青緑色 | 濃青色~明るい青色 |
産地 | アメリカ・アリゾナ州(アホー)※休山中 南アフリカ北部(メシナ銅鉱山) |
アメリカ・アリゾナ州(ニュー・コーニーリア鉱山) 南アフリカ・トランスバール(メッシーナ鉱山)※閉山 |
■鉱物としてみるアホイト/パパゴアイト

アホイトは、酸化銅が生成する際にできる二次鉱物で、銅鉱床の酸化帯などで見つかります。多くの場合、クォーツなど他の鉱物に内包された状態で産出され、内包される際は筋状やファントム状、層状になることが多いです。
パパゴアイトは、銅を含むケイ酸塩鉱物で、微細結晶からなる塊状・球状の集合体として発見されます。こちらも二次鉱物であり、主に変質した花崗閃緑岩脈上で生成し、クォーツやカルサイト(方解石)にも内包されることがあります。
ここでいう二次鉱物とは、一度生成した鉱物が地表や地下浅部の風化・酸化作用などの影響を受けて、新たな鉱物に変化したものを指します。アホイトもパパゴアイトも、銅鉱床での酸化や風化に伴って形成される二次鉱物のひとつであり、鉱物コレクターにとっては独特の美しい色彩や結晶形が魅力となります。
銅にゆかりの深いアホイトとパパゴアイトの両方の発見地は、アメリカのアリゾナ州でした。実はアリゾナ州は、アメリカ国内で最大の銅生産量を誇ります。銅の生産量上位3州(アリゾナ、ユタ、ニューメキシコ)が国内総生産の約99%を占めるといわれています。
アホイトとパパゴアイトがアリゾナで発見されたのも、地質学的にみれば「ごく当然」の流れだったのかもしれません。
3. アホイト/パパゴアイトを手元で楽しむ

希少なアホイトやパパゴアイト。コレクターでもなかなか目にする機会は多くありません。手にすることができたなら、その色合いや内包模様の魅力をじっくり楽しみたいものです。
これらの石は公式には誕生石や石言葉に指定されているわけではありません。一方で、クォーツに内包されることが多いため、ヒーリングストーンとしても人気があり、「マイナスな感情の浄化」「内面からの輝き」「過去からの脱却」「自立した生き方」といったパワーがあるとされています。
前述の通り、アホイトやパパゴアイトの産地は、大半が休山・閉山しており、新しい原石の供給はほとんどありません。アメリカ・アリゾナ州や南アフリカ・メッシーナ鉱山での採掘は、現在ではほぼ行われておらず、手に入る石のほとんどは既に市場に出回ったものです。そのため、希少性は一層高まっています。
さらにルースや鉱物のコレクター、ヒーリング愛好家からも人気があるというこで、アホイト/パパゴアイトは価格も高騰しています。
ビーズや装飾品に加工されることはほぼありません。市場で目にするのは、原石標本やルースとしてのものが中心です。
中でも、結晶標本としての楽しみ方は特におすすめです。クォーツに内包されたアホイトやパパゴアイトは、均整の取れた六角形の結晶が美しく、見る角度によって変化する光の反射や内包模様が楽しめます。先端が尖ったポイント状の結晶であれば、より存在感が増し、手元で眺めるだけでもその神秘性を十分に味わうことができます。
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4. まとめ
アホイトやパパゴアイトを内包したクォーツは、多彩な種類が存在するインクォーツの中でも特に人気が高く、まさに双璧とされる存在です。
ただし、産出していた鉱山はすでに閉山しており、市場に流通している量はごくわずかというのが惜しまれる点です。現在流通しているものがほぼ全てであり、入手の機会はコレクターの手放しに期待するしかありません。
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この記事を書いた人

みゆな
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。