2024/03/15

"究極の赤色"を放つアントヒルガーネット | その輝きの秘密や歴史を解説!

ガーネットと聞いてまず思い浮かべるのは、"赤い宝石"というイメージではないでしょうか。

カラーバリエーションが豊富なトルマリンに並ぶほど非常に多くの色を持つガーネット。その中心的な存在である赤色系統の中にも、実はさまざまな種類が存在します。

その中でも"本物の赤"、"深紅"とも言えるのが、通称アントヒルガーネット(クロムパイロープガーネット)です。

この記事ではそんなアントヒルガーネット(クロムパイロープガーネット)について詳しく解説していきます。


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1. 赤いガーネットの一族

神話にも登場し、古来より愛されてきた歴史上最も古い宝石、それがガーネットです。

ガーネットとひとくちに言っても、実は非常に多くの種類やカラーに細分化されています。

ここでは赤いガーネットの系統であるパイラルスパイトグループを見ていきたいと思います。

■パイラルスパイトグループ

赤色を呈するガーネットのグループを"パイラルスパイトグループ"といい、大きく次の3タイプに分類されます。

  • パイロープガーネット<PYRope>

  • アルマンディンガーネット<ALmandine>

  • スペサルティンガーネット<SPessartine>

同じ赤色系統でも、組成成分により発色が異なります。

◆パイロープガーネット

パイロープガーネットはグループの中でも鮮やかな赤色をみせる種類です。

しかし、その組成は本来であれば無色になるはずの構成となっているのです。ではなぜ鮮やかな赤になるのか。

そこには、鉄イオン発色によるアルマンディンが混ざりあったり、クロムが含まれることが関係しています。さらに、その割合によって色合いが変化し、より鮮やかに赤いものからうっすらとしたピンク色まで幅がうまれます。

実際にはカラーレスのパイロープは見つかっていません。ごくうっすらとしたピンクも非常に希少で、おおよそ赤系統の結晶になります。

◆アルマンディンガーネット

アルマンディンはガーネットの中で最も多く産出する種類です。

和名を鉄礬柘榴石(てつばんざくろいし)といい、その名の通り鉄の成分を持っているガーネットです。鉄分の割合が増えるほどに赤くなっていきますが、その含有量によっては黒っぽい赤になっていきます。

◆スペサルティンガーネット

マンガンを成分にもつのがスペサルティンガーネットです。

アルマンディンと混ざりやすく、そのアルマンディンの鉄が含まれると褐色になりますが、純粋なスペサルティンに近ければ近いほど、鉄が少なくマンガンの含有量が多くなることから、明るいオレンジの発色となります。

■それぞれの"赤"の違い

含まれる成分の割合の違いや、他の種類が混ざることで色が変わってくる赤いガーネット。

多岐にわたる赤いガーネットから、特徴的な一部をご紹介します。

◆アントヒルガーネット(クロムパイロープガーネット)

鉄で発色する赤はどの宝石でもやや重量感のあるやや沈んだ赤が特徴ですが、その鉄の割合が減りクロムが多くなることで、鮮やかに発色したガーネットがこのクロムパイロープです。

クロム発色タイプは赤系ガーネットの中でも色鮮やかであるという点でも希少価値が高く、産出量自体も多くありません。その中でもアメリカ・アリゾナ州産のものは蟻塚付近から発見されることから『アントヒルガーネット』という通称名を持っています。

◆ロードライトガーネット

ロードライトガーネットはパイロープとアルマンディンの中間タイプとなるガーネットです。その赤色はやや紫色を帯び、真紅とは違う華やかさを見せてくれます。

スペサルティンの割合が非常に少ないことから褐色味がなく、ワインレッドの色合いは赤系ガーネットの中で高貴なバラ色のガーネットとして特に人気が高いガーネットです。

▸ ロードライトガーネットについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

◆パイロープアルマンディンガーネット

パイロープとアルマンディンが主に含まれるガーネット。後ろに表記されるものの方が割合が多いため、アルマンディンよりのガーネットと言えます。やや黒っぽい赤色を呈しています。

同じパイロープアルマンディンの中でも鉄の量が増えアルマンディン寄りになると、より濃く黒い、重厚感のある赤に変化していきます。

◆スペサルティンアルマンディンガーネット

スペサルティンアルマンディンガーネットはスペサルティンとアルマンディンの成分を主成分としており、オレンジ寄りの赤褐色になります。

◆スペサルティンガーネット

主にオレンジ~赤褐色の色をもつガーネットです。
写真は赤褐色のスペサルティンですが、類質同像という関係性のため、スペサルティンだけではなく他のアルマンディン等の成分も少なからず含まれます。成分の割合によりオレンジから赤褐色まで発色に幅が生まれ、よりスペサルティンの比率が高くなると、鮮やかなオレンジ色を発するマンダリンオレンジカラーと評されるオレンジカラーのガーネットになります。

※類質同像とは結晶を構成する金属イオンが混じり合ったり入れ替わりやすい関係にある、という意味です。

◆カラーチェンジガーネット/マラヤガーネット

パイロープガーネットとスペサルティンガーネットの中間タイプがいわゆるマラヤガーネットとよばれるガーネットです。中にはカラーチェンジやカラーシフトを見せるものもあります。

原石によって成分の割合が異なるため、"赤い"ガーネットとはまた少し違ったカラーバリエーション、という立ち位置になります。マラヤというのは” 外れもの ”という意味です。

その昔、ウンバライトやマヘンゲといった名称でも呼ばれていましたが、定着しませんでした。現在はマラヤガーネットという名前が浸透しています。

▸ マラヤガーネットについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

実は…

このカラーチェンジガーネットの中にはいわゆる『ベキリーブルーガーネット』と呼ばれる青いガーネットも含まれるのですが、今回は赤いガーネットの解説ですので、このお話はまた別の機会にいたしましょう。

▸ ベキリーブルーガーネット(カラーチェンジガーネットアレキタイプ)についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

◆パイラルスパイトガーネット

さて、今回の3つの赤いガーネットの集大成。パイラルスパイトガーネットはパイロープ・アルマンディン・スペサルティンの3種類が混合したガーネットです。

これらのガーネットはお互いに含まれる成分のイオンの大きさが似通っているため混ざり合いやすく、明確に分かれていることはまずありません。含まれる成分が特に多く振り分けられているものを鑑別では宝石名として表記をしますが、実際はそのほとんどが、3つの成分を少しずつ共有して混ざり合っています。この状態を類質同像の関係と言い、結果形成されたものを<固溶体>といいます。

・スペサルティンはアルマンディンと混ざり合うことが多く、アルマンディン(鉄)が増えるほどに赤から褐色の色合いとなります。
・さらに、パイロープも混ざると、3種混合のパイラルスパイトと呼ばれるガーネットになります。

ちなみに『パイラルスパイトグループ』とは、この3タイプの名前の頭文字から付けられた名前で、さらに成分にアルミニウムを共通して持つことから、『アルミニウムガーネット』とも呼ばれています。

■クロムパイロープガーネットの産地

クロムパイロープガーネットの産地としては、チェコが歴史的産地として有名です。
ただ、徐々に枯渇してしまい、チェコ産のクロムパイロープガーネットは今となっては大変貴重です。

その後、アメリカ・アリゾナ州で大きな鉱床が見つかり、産地の主流がアメリカに移りました。
"蟻塚"の付近で見つかったことから、アリゾナ州産のクロムパイロープガーネットは『アントヒル(蟻塚)ガーネット』と呼ばれます。そこはナホバ族たち先住民族が住んでいる地域でした。
彼らが実際に採掘をした…わけでなく、じつは地中深くからこの宝石を採掘してきたのは、蟻、です。

ナホバ族の居住地の砂漠で蟻が巣を作る際、"異物"として地中から地上へ押し出したもの、それがガーネットの結晶でした。ネイティブアメリカンたちはその巣穴の横に見つけた宝石をお守りとして使用していたという、なんとも興味深いエピソードがあります。

■クロムパイロープガーネットにまつわる逸話

ガーネットだけではく、宝石というものは古来より、魔除け・お守りとして用いられてきました。

当時の人々は、原色の持つ鮮やかさに黄泉の国のパワーや自然のエネルギーが宿っていると信じていました。
特に赤色=火の色であり、邪なものを振り払う色として、特別なものと考えていたようです。
現代のような夜でも煌々と明るい照明はありません。ろうそくの揺らめく光や月明りなど、現代と比べ格段に暗い光の中でも存在を示すかの如く明るく輝いていたエメラルドやサファイアやルビー、さらにこのクロムパイロープガーネットは、まさに特別で貴重な宝石だったのでしょう。

また神話にもこのパイロープガーネットは登場します。
『旧約聖書 創世記』では世界を飲み込んだ大洪水の後、ノアの方舟が漂流しているときに、その内部を明るく照らし続けたカンテラの光。その光はパイロープガーネットが明るく照らし続けたものだという伝説があります。
クロムを多く含んだ赤いガーネットは、先の見えない暗闇の中で唯一の希望のように、鮮やかに輝いていたのかも知れません。

ノアの方舟は誰もが知っている神話、古代から受け継がれてきた伝説です。
そんな遥か昔から、特別鮮やかなものの代名詞として用いられてきた宝石、それがクロムパイロープガーネットなのです。


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この記事を書いた人

TORACO

TOP STOneRY / 編集部ライター

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