2023/09/19

フローライトの魅力はカラーと蛍光性!歴史から原理まで解説

フローライト(フルオライト)は、「蛍石」という名前のほうが馴染み深いかもしれません。日本でも採掘されていた、意外と私たちに身近な鉱物です。最近だとTBSテレビ・日曜劇場『VIVANT』の作中でも登場し、その名前を聞いたという方も多いはず。蛍光を意味する「フルオレッセンス」の由来にもなっており、フローライトの中には紫外線で蛍光する石もあります。

フローライトの豊かなカラーはルースコレクターから、原石のかわいらしい存在感は鉱物コレクターから、それぞれ人気があります。

世界中で産出されるメジャーな石でありながら、カラーバリエーションや蛍光の仕組みなどまだまだ知りたいことがたくさんあるフローライト。今回はフローライトの特徴や歴史、魅力を多方面から解説します。一度はまると「沼」ともいわれるフローライトの世界を、ちょっと覗いてみませんか。


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1. 宝石・ルースとしてのフローライト

フローライトはカラフルさと透明度ゆえに、ルースとしてとても人気がある石です。はじめに、宝石・ルースの面からフローライトに迫っていきましょう。

■高品質なフローライトとは

フローライトは一粒ひとつぶ個性豊かで、どれも思わず手に取ってみたくなる愛らしさを持っています。

高品質なフローライトを見きわめるには、次のポイントに注目してみてください。

  • カラーは濃い方が◎

  • 透明度は高い方が◎

  • カラットは大きい方が◎

フローライトには完全な劈開性があり、モース硬度は4と頑丈とはいえません。ちょっと力を加えただけで小さな結晶に割れてしまう脆さを持っています。

劈開性は4方向に明瞭です。劈開を利用すると八面体に割れるため、八面体の鉱物がコレクター向けに流通しています。

大きなカラットを維持しているフローライトは、その大きさだけで価値があります。またルースへの加工が難しく、結晶のまま流通するフローライトもたくさんあります。

クラックがなく、透明度が高いフローライトは美しさが際立ちます。神秘的な透明感から高く評価されています。

■フローライトのカラーバリエーション

さて、フローライトのカラーバリエーションについて見ていきましょう。

フローライトは「世界でもっともカラフルな石」と呼ばれるほど、カラーバリエーションが豊富です。純粋なフローライトは無色で、含有する微量の元素によって多彩なカラーを表出します。フローライトの色は紫や黄、緑、青など実にさまざまです。

また一つの結晶に複数の色領域が現れる累帯構造が見えたり、いくつもの色が斑状になる石もあったりと、個性的な表情を見せてくれます。

集め始めると次からつぎへと欲しくなってしまうのも、フローライトの豊かな色彩ゆえでしょう。

フローライトの代表的なカラーを紹介します。好みのカラーを、ぜひチェックしてみてください。

《豆知識》
フローライトのなかでも極めて珍しいカラーは「ブルー」です。
サファイアのような深く透明なブルーを呈するフローライトはほとんど取れず、希少性から高く評価されています。

カラー 画像 解説
パーティカラーフローライト パーティカラーフローライト 2種類以上のカラーが縞状に現れる石。色の組み合わせた現れ方は、個体によってさまざま。
バイカラーフローライト バイカラーフローライト 2つのカラーが明瞭に分かれている石。色の境目は縞模様、またはグラデーション状。
ピンクパープルフローライト ピンクパープルフローライト ピンク~紫色を呈するフローライト。希少な色といわれ、人気が高い。
フローライト フルオレッセンス フローライトフルオレッセンス 蛍光(フルオレッセンス)するフローライト。紫外線やブラックライトの照射で別のカラーを呈する。
フローライトインクォーツ フローライトインクォーツ フローライト結晶がクォーツに内包された石。とても希少。
エンジェルフェザーフローライト エンジェルフェザーフローライト フローライトに天使の羽のようなインクルージョンが見られる石。縞模様の上にフェザーが見られるタイプもある。
カラーチェンジフローライト カラーチェンジフローライト 光源によってカラーが変わる石。自然光ではブルーやブルーグリーンに見える石が、白熱灯や電球色ではレッド・ピンク・パープルなどに色を変える。

■フローライトの魅力

    フローライトは劈開が完全で硬度が低く、研磨が難しい石です。ファセットをつける際は劈開の影響を避けながら、力を加えすぎないよう・振動させないよう細心の注意を払わなければなりません。

    ただカラーバリエーションが豊富で同一結晶内に複数の色を呈するものもあるため、カットのしがいがある石でもあります。

    古代エジプトでは、フローライトが彫像やスカラベ(甲虫をかたどった宝石彫刻)にもつかわれてきました。

    中国でも300年以上、彫刻の材料とされた歴史があります。やわらかくて加工がしやすいこと、だからこそカットや研磨が難しい性質のために、研磨師が腕を競う材料とされてきたのでしょう。

    フローライトは、研磨により明るさを増します。美しくカットされ磨き上げられたフローライトは、見る人の目を石奥深くまで誘います。

    ■フローライトにまつわる逸話

    昔から人々の生活とともにあったフローライトは、多くの逸話をもっています。歴史的なストーリー、またフローライトの特性ゆえの物語を紹介します。

    古代ローマ人とフローライト

    フローライトは古代ローマ時代から人々に愛されてきた石です。

    ブルーとイエローの縞模様が美しい「ブルー・ジョン」はとりわけ人気がありました。「ブルー・ジョンで作った壺にワインを入れると、香りが芳醇になる」と好まれていたといいます。

    ただ、実はローマ人が芳醇だと愛した香りは、実は研磨につかわれた松脂だったという説もあります。フローライトの原石は隙間が多く、松脂は水漏れを防ぐ目的で塗られていたようです。

    《豆知識》
    ローマ人が愛したフローライトが採れた鉱山は、鉛の産地でもありました。ローマ帝国は水道橋・水道管の建設でも知られていますが、彼らがつくった水道管は実は鉛製です。
    ローマ人は鉛の水道管を通ってきた水を飲み、鉛中毒になって滅亡の一途を辿った…、ともいわれています。
    ローマ帝国を支えた鉛を産する鉱山から、たまたま見つかったフローライト。帝国を滅亡に追いやった金属と、一方で帝国から愛された石が同じ鉱山から採掘されていたという歴史の表裏に美しい皮肉を感じます。

    フローライトの名前の由来

    フローライトの和名は「蛍石(ほたるいし)」といいます。フローライトを小さな破片に砕き火にくべると光りながら弾け飛ぶ、その現象を蛍になぞらえたのがはじまりです。

    光もほとんどない漆黒の夜に、「パチパチ」と乾いた音を立てながら光が飛び交うさまに昔の人は驚いたことでしょう。

    英名であるフローライト(Fliorite)はラテン語fluere(溶ける・流れる)に由来します。

    フローライトは鉱物や岩石の融解・精錬時に、不純物を分離・流動しやすくする性質を持っているためです。古来から融材としてつかわれてきた歴史も、名前に影響しているといわれます。

    《豆知識》
    金属や岩石成分は、非常に強い分子結合力を持っています(だから固いのです)。融解し、精錬しようとしても簡単にはいきません。
    たとえば岩石の主成分は二酸化ケイ素やケイ酸塩鉱物です。とりわけケイ酸は2,000℃にも達する高温で融解しても、流動しにくく不純物を取り除きにくい性質を持っています。ケイ素原子は酸素原子と共有結合になっているためです。
    このとき、融解した溶液にフローライト(フッ化カルシウム)を加えるとどうなるでしょうか。ケイ素原子、あるいは酸素原子の一部がフッ素と結びつきはじめます。するとそれまで強力に結合していた構造が崩れ、成分が分離しやすくなるというわけです。

    ■産地ごとの違い

    産地によって特徴がわかれるのも、フローライトの面白さです。

    イギリス・ダービーシャー州では「ブルー・ジョン(blue john)」と呼ばれるフローライトが産出します。
    ブルー・ジョンは縞状の模様を呈するフローライトです。濃淡ある紫色のバンドのあいだに青色・黄色の縞が入ります。フランス人が「青黄色(bluejaune)」と呼んだのがはじまりで、ヨーロッパを中心に人気があります。イギリスやフランスのアンティーク好きのコレクターからも注目を集める石です。

    フローライトは完全な劈開を持ち、硬度も4と固くはありません。そのため産出される原石は、小さめのものがほとんどです。

    ところが、2009年に雲南省(中国)で直径1.6メートル・重さ6トンものフローライトが公開され注目を集めました。おそらく世界最大といわれ、22億元(約276億円・当時のレート)にのぼると報じられています。

    また、中国産のフローライトは、比較的蛍光しやすいといわれています。

    《豆知識》
    フローライトは世界中で採れますが、工業向け需要の急増により採掘量が急増し、埋蔵量は徐々に減っています。
    工業用需要が高いフッ素は蛍石からつくられますが、リサイクルできません。高まる需要に応えるには天然フローライトを使い続けるほかに方法がないためです。
    すでに閉山した鉱山や埋蔵量が最盛期の1/4にまで減った鉱脈もあり、この先40年ほどでフローライト鉱脈は枯渇するのではと見る向きもあります。

    2. 鉱物・原石としてのフローライト

    フローライトは、鉱物や原石コレクターをも魅了してやみません。フローライトについて、鉱物学視点から解説していきます。

    ■組成について

    フローライトの組成情報は、以下のとおりです。

    英名(カタカナ) Fluorite(フローライト)
    和名 蛍石(ほたるいし)
    成分 CaF2(フッ化カルシウム)
    結晶系 等軸晶系
    モース硬度 4
    屈折率 1.43
    劈開 四方向に完全
    無色、(濃淡)緑色、(濃淡)青色、(濃淡)紫色、黄色、ピンク色、橙色、褐色、白色
    主な産地 イギリス、アメリカ、カナダ、チェコ、スペイン、イタリア、アルゼンチン、ドイツ、ポーランド、スイス、ナミビア、ノルウェー、中国、日本

    フローライトは等軸晶系、つまり軸の長さが等しい3本の結晶軸が互いに直交している結晶構造をしています。この結晶系をもつ物質はほかにダイヤモンド岩塩黄鉄鉱があります。フローライトの特徴的な正八面体構造は、結晶のでき方によるものです。

    ■原石の形状

    フローライトは花崗岩やペクマタイト中に立方体や八面体、塊状で産出します。コロンとした原石結晶がかわいらしく、鉱物標本としても人気が高い石です。

    一般的には立方体(正六面体・さいころ状)の結晶で採れますが、力を加えると劈開性により正八面体の結晶になります。天然の正八面体結晶はとても希少なため、市場に流通している正八面体結晶の多くは劈開性を利用して割られた石です。

    正八面体の結晶といえば、代表例はダイヤモンドやスピネルでしょう。手のひらで転がしたくなるかわいさから、正八面体結晶はコレクターからの人気も高い原石です。

    ■鉱物としてのフローライト

    「蛍石」という名前の由来でもある蛍光の性質について、詳しく見てみましょう。

    フローライトが加熱により蛍光する理由

    フローライトを火にくべると光る(蛍光する)のは、フローライトが加熱により蛍光する性質を持っているためです。加熱により蛍光し始めたフローライトは、加熱を中断してもしばらくはぼんやりと光を放ち続けます。

    加熱されたといっても、フローライトが熱分解して発光しているわけではありません。加熱されてもフローライトの成分は変化せず、もともと持っていた格子・原子配列の歪が加熱により緩和され、余剰エネルギーが光となって放出されるという原理です。

    「蛍光」が起きる原理

    そもそも蛍光とは、「物体がある波長の光を吸収し、吸収した光とは異なる波長の光を放出する物理的な性質」をいいます。

    蛍光する物質は特定の光を吸収すると、物質内の電子を一時的にエネルギーの高い場所に移動させます。電子がここから元いた場所に下りてくる際、熱のほか光でも余剰エネルギーを放出します。これが、蛍光の光です。通常、蛍光では吸収した光よりエネルギーが低い光を放出します。

    電子は、エネルギーが高い場所を好みません。とても不安定なためです。電子はすぐに元の場所に戻ろうとするため、蛍光は長時間は持続しません。

    波長のなかでもっともエネルギーが高いのは紫外線で、青→緑→黄色→橙→赤(赤外線)の順にエネルギーが低くなります。

    【豆知識】
    光を消したあともしばらくぼんやりとした光を放ち続ける蓄光は、蛍光と似た「燐光(りんこう)」という仕組みで起こります。
    燐光では、蛍光と同じように電子は一時的にエネルギーが高い場所に移動しますが、すぐに元の場所に戻るわけではありません。途中、一時休憩所ともいうべき場所に留まるためです。
    一時休憩所のおかげで、光を消したあともしばらく光が続くというわけです。

    【豆知識】
    フローライトのように紫外線により蛍光する石は、ほかにもあります。

  • ルビー
  • サファイア
  • ダイヤモンド
  • オイルインクォーツ
  • アウイナイト
  • ハイアライトオパール
  • アンバー
  • ミントガーネット
  • スキャポライト

  • 紫外線照射による蛍光という性質が初めて発見されたのは、フローライトです。 蛍光現象を英語で「フルオレッセンス(fluorescence)」と呼ぶのは、フローライトにちなんだともいわれています。

    3. フローライトをより楽しむために

    産出量が多く手頃な価格で流通しているフローライトは「ルース」「原石」以外にも、さまざまな使い方ができます。
    フローライトをもっと身近に、もっと楽しむためのヒントを紹介します。

    ■フローライトの石言葉

    フローライトの石言葉は「清らかな愛」「知性」「創造性」などです。透き通ったフローライトには集中力を高め、頭脳を明晰にする力があるといわれています。知性のお守りとして、受験生にも人気があるようです。

    多彩な色を持つ特徴から「七色の宝石」と呼ばれることもあります。

    ■アクセサリーやビーズとして

    フローライトは脆く傷つきやすいため、アクセサリーやビーズとして使うときには細心の注意が必要です。硬度の高い他の石と一緒に保管したり、強い衝撃が加わったりする使い方は避けましょう。

    使い方と保管方法にさえ気をつければ、フローライトはデイリーユースからフォーマルまで対応できる素敵な素材です。豊富なカラーバリエーションやカラーチェンジの性質をつかい、個性的なアクセサリーとして活用できます。

    正八面体の原石形状を活かしたペンダントトップやピアス・イヤリングは、存在感あるアクセサリーになります。パーティカラーやバイカラーのフローライトは、装いに彩りを添えたいときにぴったりでしょう。

    フローライトはアクセサリー以外にも、さまざまな楽しみ方ができます。振り子として使われる「ペンデュラム」や勾玉は代表例です。

    ほんの数ミリ位置が違うだけでまったく異なる色合いになることも多いフローライトは、見る人に神秘性をも感じさせます。ヒーリングや占いの分野で多用されるのも納得です。

    同じフローライトでも、個体によって表情も色合いも変わります。フォーマルな上品さからカジュアル、パワーストーンとしてなど、どのような用途にも利用できるのもフローライトが人気の秘密でしょう。

    好みの色合いのビーズを組み合わせるのも、楽しい使い方です。好きな色だけ集めたり、グラデーションにしたりとアイデア次第で表情豊かに使えます。

    「レインボーフローライト」という名前で販売されているフローライトのビーズは、宝石品質になれればバイカラーやパーティカラーに分類される石です。

    ビーズサイズの小さな石でも、豊かな色合いを味わえるのはフローライトならではの魅力でしょう。


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    4. まとめ

    フローライトはカラーバリエーションの豊富さが魅力です。「フルオレッセンス」とある石はと蛍光性を持つため、紫外線を照射して色の変化を楽しんでみましょう。

    工業用の需要も高く、現在ある鉱脈は遠くない未来に枯渇するともいわれています。これから希少価値が高まり価格が高騰するかもしれません。好みの石に出会ったら、すぐにお迎えしておきたい石の一つです。

    ルースやビーズとして楽しむのはもちろん、原石のままでも愛らしいのがフローライトの魅力。キャンディのような色合い、転がしたくなるフォルムはいつまで見ていても飽きません。

    紫外線をあててみたり、光源を変えてみたりと、自分なりの楽しみ方を見つけてください。また破片を火にくべると、弾けながら輝くのもフローライトの特徴です。機会があれば、ぜひ試してみてくださいね。


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    この記事を書いた人

    みゆな

    TOP STOneRY / 編集部ライター

    トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。