キャンディのような甘美な輝き スポジュミン | 多彩なカラー変種や宝石の魅力、鉱物特性までを解説

キャンディに例えられる甘く愛らしい色合いをした宝石・スポジュミン(リチア輝石)。そのカラーバリエーションはカラーレスからライラック色やミント色、ブルー、黄色など実にさまざまです。
今回はコレクターからの人気が高いスポジュミンに迫ります。多彩な輝石グループの紹介や、知られざるスポジュミンの用途まで、幅広い情報を網羅しました。
知れば知るほど集めたくなるスポジュミンの魅力を、ぜひ最後までご覧ください。
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1.宝石・ルースとしてのスポジュミン

まずは宝石・ルース品質のスポジュミンについて解説します。世界各地で産出されるスポジュミンは、産地や生成環境によって豊かな個性をあらわします。
■スポジュミンとはどんな石?

スポジュミンはリチウムとアルミニウムを主成分としており、リチア輝石とも呼ばれます。ベーシックなカラーはカラーレスですが、色のバリエーションが豊富なことで知られています。
とりわけコレクターから人気が高いのは、次の3種類の色変種です。
クンツァイト:アルミニウムがマンガンに置換。ピンク色・ライラック色。
ヒデナイト:アルミニウムがクロムに置換。アップルグリーン・ミント色。
トリフェーン:アルミニウムが鉄に置換、カラーセンターで黄色に輝く。
この3色以外にもカラーバリエーションがあり、それらはすべてスポジュミンに分類されます。
キャンディに例えられる優しい色合いが魅力で、宝石・ルースとしても原石のままでも人気がある石です。
■高品質なスポジュミンとは
宝石・ルース品質のスポジュミンは、以下を満たすほど高品質とされます。
カラーは濃く鮮やか
インクルージョンがなく透明度が高い
カラットが大きい
スポジュミンは生成する鉱床環境の影響を受けやすい石といわれます。クリアで大きな結晶に成長する個体は珍しく、多くの結晶はインクルージョンが生まれたり、破損・溶解したりしてしまいます。
とりわけストロー状のインクルージョンはできやすいとされます。
一般的にはインクルージョンがないスポジュミンのほうが高い評価を得ますが、インクルージョンが密集してキャッツアイ効果をもたらすと別の価値を持ちます。
■スポジュミンのカラーバリエーション
カラフルなスポジュミンのなかでも、とりわけ個性的なカラーを紹介します。
カラー | 画像 | 解説 |
ブルー・スポジュミン |
![]() |
一見すると無色にも見える、クリアなブルー。澄んだ水のようなイメージ。 |
ライム・スポジュミン |
![]() |
ヒデナイトより淡く、黄色がかったグリーン。見る角度によって色が異なる多色性も。 |
また一部のスポジュミンは、UVライトで色が変わる蛍光性(フルオレッセンス)を持ちます。シャンパンカラーやオレンジ色にチェンジするさまは、見事の一言です。
■スポジュミンの名前の由来
スポジュミンという面白い名前は、ギリシア語の "spodumenos" に由来します。
"spodumenos" は「燃えて灰と化す」という意味です。スポジュミンの結晶を加熱すると、砕けて灰色に変化することから名前が付きました。
■スポジュミンの産地

アフガニスタン産のクンツァイト
Wikipedia掲載画像:Didier Descouens - 投稿者自身による著作物,
CC 表示-継承 4.0,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=8623750
による
スポジュミンは世界各地で産出されます。ただ、場所や環境によって現れる様相が異なるのが興味深い点です。
産地によって色の風合いが変わる例としてわかりやすいのは、ピンク色のスポジュミン「クンツァイト」でしょう。
アフガニスタン産のクンツァイトのほうがピンク色が濃く、鮮やかです。ブラジル産のクンツァイトは淡く、桜のような色をしています。
色の違いは変色・褪色のしやすさにも影響します。直射日光に弱く、あっという間に変色・褪色する場合があるため、保管には十分注意しましょう。
2. 鉱物・原石としてのスポジュミン

スポジュミンの面白さは、鉱物学的に見たときに本領を発揮します。ここからはスポジュミンを鉱物・原石、あるいは結晶の面から見ていきましょう。
■組成について
スポジュミンの組成情報は、以下のとおりです。
英名 | Spodumene(スポジュミン) |
和名 |
リチア輝石(りちあきせき) 黝輝石(ゆうきせき) |
成分 | LiAl[Si2O6](ケイ酸リチウムアルミニウム) |
結晶系 | 単斜晶系 |
モース硬度 | 6.5~7 |
屈折率 | 1.65~1.67、1.67~1.69 |
劈開 | 2方向に完全 |
色 | 無色、白色、灰色、黄色、ピンク色、紫色、黄緑色、緑色、帯緑黄色、帯青緑色、淡灰青色 |
主な産地 | ブラジル、アフガニスタン、パキスタン、マダガスカル、アメリカ、ミャンマー、インド、スコットランド、イタリア、メキシコ、ロシア、カナダ |
■スポジュミンの結晶系
一般的なスポジュミンは、単斜晶系をしています。これはスポジュミンが生成する環境がおもにペグマタイト鉱床だからです。
ペグマタイトとは、火山活動によって生まれたマグマが冷えて岩石に固結したあとに残された液状物質(残液)です。マグマはすでに冷えているため、温度も高くありません。
しかし稀に、高い温度環境でスポジュミンが生成する場合があります。およそ900度以上の高温で結晶化したスポジュミンは正方晶系を形成するといわれます。
■スポジュミンの仲間・輝石
スポジュミンは大所帯の「輝石」グループの一種です。輝石が正式に分類されたのは意外に新しく、1988年のことです。国際鉱物学連合(IMA)にて輝石の分類・命名が整理されました。
輝石の総数は20種です。そのうち、よく見られる4グループ・14石種を紹介します。
マグネシウム(Mg)-鉄(Fe)グループ
- エンスタタイト(Enstatite・頑火輝石)
- フェロシライト(Ferrosilite・鉄珪輝石)
- 単斜エンスタタイト(Clinoenstatite・単斜頑火輝石)
- 単斜フェロシライト(Clinoferrosilite・単斜鉄珪輝石)
- ピジョナイト(Pigeonite・ピジョン輝石)
カルシウム(Ca)グループ
- ダイオプサイド(Diopside・透輝石)
- ヘデンバージャイト(Hedenbergite・灰鉄輝石)
- オージャイト(Augite・普通輝石)
カルシウム(Ca)-ナトリウム(Na)グループ
- オンファサイト(Omphacite・オンファス輝石)
- エジリン・オージャイト(Aegirine-augite・エジリン普通輝石)
ナトリウム(Na)グループ
- ジェイダイト(Jadeite・ひすい輝石)
- エジリン(Aegirine・錐輝石)
- コスモクロア(Kosmochlor・コスモクロア輝石)
- ジャービサイト(Jervisite・ジャービス輝石)
輝石は世界中の火成岩や変成岩に含まれる、代表的な造岩鉱物です。さまざまな場所で生成するため、環境によって含有する成分が異なり、大所帯となったと考えられます。
ちなみにスポジュミンは、輝石のなかでもっとも硬度が高い石としても知られています。
■工業用途にも重要なスポジュミン
スポジュミンは宝石・ルース、また鉱物コレクションとして楽しむほかに、工業分野でも珍重される鉱物です。
スポジュミンの工業用途として有名なのは、リチウムの精製です。スポジュミンの主成分はリチウムだからです。
リチウムはパソコンやスマートフォン、電気自動車などのバッテリーに使われているリチウムイオン電池の原材料となり、私たちの生活に欠かせない存在となりました。
またスポジュミンは低熱膨張剤としても注目されています。
低熱膨張剤とは、常温付近での膨張や縮小など寸法の変化が小さい素材をいいます。「インバー材」とも呼ばれます。半導体の製造やガラスなど、工業分野では欠かせない材料です。
ここで、秩父小野田株式会社 中央研究所の坂巻誠氏と、東北大学工学部分子化学工学科教授の遠藤忠氏による、興味深い研究を紹介します。
ウォラストナイト(Wollastonite・ワラストナイト)はケイ酸塩鉱物の一種です。針状形状をしており、建材や樹脂、セラミックなど多くの用途で活用されています。加工性に優れている反面、強度が低く耐熱衝撃性に課題がありました。
坂巻・遠藤両氏は、ウォラスナイトに低熱膨張剤であるスポジュミンを複合し焼き固める実験をします。いくつかの配合パターンで実験した結果、スポジュミンの配合率が上がるほど耐熱衝撃性が高まるという結果が導かれました。
900度まで耐えられるスポジュミンの結晶構造の強さが証明されたといって良いでしょう。
ただし同じ実験では、スポジュミンの含有率が低いほど焼き固めた物質の強度は高くなることも分かっています。なんとも興味深い結果ではないでしょうか。
この実験についてもっと詳しく知りたい方は、『ウォラストナイト/スポジュメン複合焼結体の物性におよぼすスポジュメン含有率の影響(外部リンク)』 をご覧ください。
■スポジュミンの主成分・リチウムについて

スポジュミンの主成分はリチウムとアルミニウムです。このリチウム、ちょっと面白い考察ができる物質です。詳しく見てみましょう。
私たちの生活に欠かせないリチウム
「リチウム」は近年、耳にする機会が増えた言葉ではないでしょうか。スマートフォンやパソコンなどの電子機器に使われる電池の材料として、急激に需要が高まっている鉱物です。
リチウムイオン電池の登場で充電器の小型化と効率化が可能になり、いまや私たちの生活に欠かせない大切な鉱産資源となりました。
リチウムの採取方法と主な生産国
リチウムイオン電池の原料となるリチウムは、スポジュミンなどの鉱物からも採取されますが、世界的に行われているのは「かん水産」、つまりリチウムを含む水を濃縮させて取り出す方法です。
面白いことに、リチウムの埋蔵量は南半球が突出しています。世界最大の埋蔵量を誇るのは南米・チリ、次いでオーストラリア、アルゼンチンです。「映えスポット」としても有名なボリビアのウユニ塩湖も、多量のリチウムを埋蔵しています。
なぜ、南米ではリチウムがこれほどまでに採れるのでしょうか。
南米にリチウムが豊富な理由
チリやボリビアのリチウムは、塩湖で産出されています。塩湖とは塩水をたたえる湖です。地中から溶けだした塩成分が雨とともに湖に流れ込み、湖の水分が蒸発して塩分濃度がどんどん濃くなり塩湖となります。
塩湖の多くは、その昔は海中だった場所です。地殻が急激に隆起したために、海水をたたえたまま標高が高くなったのがはじまりだと考えられています。
実際、南アメリカにある世界でもっとも長い山脈として知られる「アンデス山脈」は、約4,000年前から急速に隆起をはじめ現在の姿になりました。南アメリカ大陸の下にはもぐりこむように海洋プレートがあり、これが隆起を引き起こしています。
アンデス山脈を擁するチリには、いまも活動が続く火山地帯が広がっています。
活発な火山活動により地中に豊富な成分を蓄えた地殻が地表にあらわれ、また同時に湖が形成されたことで地中のリチウムが水中に溶けだせるようになりました。
そして人間がリチウムを含む水を精製し、リチウムを取り出し利用できるようになったというわけです。
リチウムは反応性が高い物質です。他の物質や環境とのわずかな接触で自然発火してしまいやすいため、元来の金属の形で採掘されることはありません。スポジュミンなどの鉱物の中、あるいは塩湖の中などに溶け込み存在しています。
リチウムの特性を知っていると、リチウムイオン電池の廃棄方法が細かく決められているのも納得できますね。
3. スポジュミンをより楽しむために

柔らかく優しい色合いが魅力のスポジュミンは、コレクションするだけでなく身につけて楽しみたくなりませんか。
もっと気軽にスポジュミンを楽しむヒントを紹介します。
スポジュミンは硬度は十分ありますが劈開が完全です。固いものが当たると簡単に破損する恐れがあります。取り扱いに注意しながら、キャンディカラーを楽しみましょう。
■石言葉
スポジュミンの石言葉は「無限の愛」「自然の恵み」「純粋さ」です。愛の石とも呼ばれ、エモーショナルな魅力を高めたいときに向いています。
健康を大切にしたいときにもおすすめの石です。
■ビーズや加工品として

スポジュミンを丁寧に研磨し、ラウンドに仕上げたビーズも人気です。カラーレスからピンク、イエロー、グリーンなどさまざまな色の組み合わせを楽しめます。
宝石品質にはならないミルキーな色合いは、ビーズ加工にぴったり!愛らしいラムネの風合いが、いくつも並べたくなる魅力を放ちます。
■スポジュミンは釉薬にもなる
欧米では、スポジュミンを釉薬(陶磁器の表面に塗るうわぐすり)としても利用します。スポジュミンを砕いて粉末にし、水分を含ませて塗るそうです。艶やかな光沢のある、美しい仕上がりになります。
ただし、スポジュミンの粉末が水分に触れると独特のにおいを発します。もしスポジュミンを釉薬として使う場合は、換気の良い場所での作業を心掛けてください。
また水と混ぜると接着剤のような粘性を示すため、扱いには注意が必要です。
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トップストーンは、国内最大級の天然石輸入卸問屋「株式会社ウイロー」が運営するルース専門の通販サイトです。世界中から買い付けたレアストーン、誕生石を販売しております。パライバトルマリン、タンザナイト、サファイアなどの宝石、ルースなど。豊富な品揃えから、天然石やパワーストーン、カラーストーンをお選び頂けます。
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4. まとめ
スポジュミンは大所帯である輝石グループの1つで、リチウムとアルミニウムを主成分とするケイ酸塩鉱物です。
キャンディやラムネのようなカラフルな色合いが魅力で、色を集める楽しみも味わえます。ピンク色の「クンツァイト」、緑色の「ヒデナイト」、そして黄色の「トリフェーン」も、スポジュミンの亜種です。
劈開が完全なため、カットや研磨が難しい石としても知られています。だからこそ、まばゆいきらめきを放つパビリオンカットなどが施されたスポジュミンは高く評価されます。
工業的用途としても重要なスポジュミンは、これからも需要が高まること間違いなしです。ニーズの高まりとともに、価格が高騰するかもしれません。気になるスポジュミンに出会えたら、ぜひ早めにお迎えしてあげてくださいね。
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この記事を書いた人

みゆな
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。