ムオニナルスタ|くっきりとしたウィドマンシュテッテン構造が美しい通好みの隕石

隕石好きなら、「ギベオン」「メテオライト」は聞いたことがあるのではないでしょうか。
ただ今回紹介するムオニナルスタ隕石は、ギベオンほど知られてはいない、知る人ぞ知る隕石のようです。
あの特徴的なウィドマンシュテッテン構造が、よりくっきりと見える隕石だと聞いたら?
俄然、興味が湧きませんか?
今回は北極に近いスウェーデンの小さな村で見つかった、ムオニナルスタ隕石を紹介します。
模様のでき方から隕石の概論、さらに日常的に楽しむヒントまで満載でお届けします。
隕石が好きな方も、「普段はルースを中心に見ている」という方も、ぜひムオニナルスタ隕石を見てみてください。
宇宙で長い年月を経て生まれた白刃色の模様に、魅せられること間違いなしです。
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1. ムオニナルスタ隕石の美しさ

はじめにムオニナルスタ隕石の美しさや特徴を、存分に見てみましょう。
表面の特徴的な模様「ウィドマンシュテッテン構造」や、白刃を思わせる神秘的な輝きの秘密も解説します。
■高品質なムオニナルスタ隕石とは

ムオニナルスタ隕石は、遥か昔に宇宙から飛来した本物の隕石です。
地球上にある総量が決まっており、その存在だけで価値があります。
なかでも、次の条件を兼ね備えたムオニナルスタ隕石は高品質。
世界中の隕石コレクターから珍重されています。
美しいウィドマンシュテッテン構造を持つ
厚みがある
サビがない
ウィドマンシュテッテン構造

ムオニナルスタ隕石は、原石のままだと黒くごつごつした“ただの石”にしか見えません。
ところがカットと硝酸・塩化鉄など酸によるエッチング処理を経ると、特徴的な模様があらわれます。
格子状の模様は「ウィドマンシュテッテン構造」と呼ばれ、鉄とニッケルから成る隕石に特徴的な模様です。
実はこの模様、人工的には合成できません(ウィドマンシュテッテン構造のでき方は、後ほど詳しく解説します)。
美しいウィドマンシュテッテン構造をあらわすムオニナルスタ隕石は、コレクター垂涎の品です。
厚み

ムオニナルスタ隕石の多くは、薄いスライス状で流通しています。
薄くスライスするのは、総量が限られている隕石だからです。
限られた原石(隕石)、できるだけ薄くスライスしてたくさん販売したほうが、販売元はお得ですよね。
1〜2ミリメートルという薄さで販売されるものも、珍しくありません。
そのため、厚みのあるムオニナルスタ隕石はとても貴重です。
小さな塊状の隕石の、ある面だけをエッチング処理した個体も見られました。
手つかずの自然な原石外観とウィドマンシュテッテン構造を1つの石で楽しめる、レアな個体です。
サビ
ムオニナルスタ隕石には、鉄分が豊富に含まれています。
鉄は酸素と結びつくと酸化鉄、つまりサビとなって表面に付着します。
やはりサビは、品質を下げる要因。
サビがなく、まんべんなく輝くムオニナルスタ隕石ほど、高く評価されます。
ただ地球上で、完全に空気に触れないように保存するのは、現実的ではありません。
そこでムオニナルスタ隕石は、表面にサビ防止のためのメッキ加工が施されています。
ムオニナルスタ隕石のメッキ加工は品質を維持するため、鑑別書にも記載され、認められている処理です。
ただしメッキ加工されていても、サビる可能性はゼロではありません。
水分を避け、できるだけ密閉して保存するようにしましょう。
■ムオニナルスタ隕石の特徴

ムオニナルスタ隕石の特徴は、くっきりと見えるウィドマンシュテッテン構造にあります。
ウィドマンシュテッテン構造を持つ隕石にはギベオンなどもありますが、ムオニナルスタ隕石の模様は他の隕石よりはっきりとしているといわれています。
ムオニナルスタ隕石のウィドマンシュテッテン構造は、主成分であるニッケルの「酸への溶けやすさの違い」を利用して露出させます。
ニッケルは多いほど酸に溶けにくく、少ない部分ほど酸に溶けやすいのです。
ムオニナルスタ隕石を酸でエッジング処理し研磨すると、ニッケルの溶け具合に差が生まれます。
その結果、内部に隠れていたウィドマンシュテッテン構造が露出するというわけです。
さて、ウィドマンシュテッテンと呼ばれる模様を露出させる手法は、わかりました。
では、そもそもムオニナルスタ隕石が、鉄とニッケルでこのような特徴的な模様を露出させる構造を持つに至ったのは、どのような理由でしょうか。
ウィドマンシュテッテン構造のでき方は、記事の後半で解説します。続きをご覧ください。
■ムオニナルスタ隕石の魅力
ムオニナルスタ隕石は、金属特有のメタリックな輝きも魅力の一つです。
ムオニナルスタ隕石を傾けてみてください。
銀色だった表面が金色や紫色、淡黄緑色などの輝きに変化して見える個体もあります。
金属の表面が時の流れとともに表情を変えた、あるいは金属光沢が周りの色を反射しているのかもしれません。
不思議な表情の変化も、人をムオニナルスタ隕石の虜にします。
ミネラルショーやルース専門店、天然石専門店でムオニナルスタ隕石を見かけたら、ぜひさまざまな角度から眺めてみてください。
■ムオニナルスタ隕石にまつわる逸話

ムオニナルスタ隕石の発見は、1906年にさかのぼります。
見つかった場所は、スカンジナビア半島・スウェーデンの最北端に近い、キトキオヤルヴィ村(village Kitkiöjärvi)の南西3kmほどにある森です。
この森で牛の世話をしていた10歳の少年が見つけた、との説もあります。
発見地の近くを流れる「ムオニオ川(Muonio river)」にちなんで、名前がつけられたそうです。
ちなみにムオニオ川は、フィンランドとの国境にもなっています。
発見されたのは120年ほど前ですが、ムオニナルスタ隕石自体は紀元前約100~80万年頃、隕石として地球に落下したとされています。
しかし、実際にこの隕石となった金属の塊ができたのは約45億年前であり、最も古い隕石であるという研究結果が報告されています。
【豆知識】隕石の年代測定手法は?
途方もなく昔の年代を、人はどのように測っているのでしょうか。
隕石の年代を調べる方法はさまざまありますが、精度高く測定したいときは「放射性同位体の壊変」を調査します。
同位体とは原子番号が同じで、質量数が異なる元素(原子核中の陽子数は同じ・中性子数が異なる)です。そのうち、放射能をもつものを、放射性同位体といいます。
放射性同位体は、放射線を放出しながら徐々に安定した別の同位体に変わります。ただ、放射線量が元の半分になるには、かなりの時間を要します。
たとえばウランの同位体(U-238)は、放射線が半減するまでに、なんと46億年もかかるのです(46億年といえば、地球が誕生したころ!)。
放射線同位体を利用し、減った量を調べることで、隕石がどれくらいの時を過ごしてきたかをかなり正確に測定できます。
■ムオニナルスタ隕石の発見地

ムオニナルスタ隕石は、発見地でもあるスウェーデン最北端の限られた地域でのみ採れます。
1906年の発見に続き、50年後に15キロの塊が、2003年には158キロの塊が発見されます。
これらのムオニナルスタ隕石の塊は、どれも発見地近くの25×15キロメート四方で見つかりました。
鉄とニッケルを主成分とするムオニナルスタ隕石は、非常に重量があります。
そのため、地表に衝突した衝撃の強さにもかかわらず、飛散した距離はごく限定的だったと考えられています。
ちなみに2001年にも、最初の発見地からわずか20メートルほどしか離れていない場所で、9.575キログラムの破片が見つかっています。
興味深いことに、この破片には地球に到達するはるか昔に、宇宙空間で受けたと思われる衝撃によるスティショバイトが見られました。
スティショバイトとは、温度は1200〜1400℃/気圧は16万気圧以上という高圧下でできる、特徴的なケイ酸鉱物です。
同じ組成(SiO2)を持つ石英(クォーツ)の、1.5倍以上の比重を持ちます。
これらの研究からもムオニナルスタ隕石は、宇宙空間がまだ熱と圧力に満ちていた非常に古い年代に、小惑星で生成したと考える専門家もいます。
【豆知識】
ムオニナルスタ隕石としばしば混同される「ギベオン隕石(Gibeon meteorite)」は、ナミビアにあるハルダブ州で採れます。
どちらも鉄とニッケルを主成分とし、特徴的なウィドマンシュテッテン構造をもち、さらに落下時期も似ています。こうした隕石を総称して「メテオライト」と呼びます。
メテオライトは、発見地ごとに呼び名が異なります。
- ムオニナルスタ隕石 → スウェーデン産
- ギベオン隕石 → ナミビア(ハルダブ州)産
- ホバ隕石 → ナミビア(オチョソンデュバ州)産
- クラスノヤルスク隕石 → ロシア産
- アーニートゥ隕石 → グリーンランド産
- カンポデルシエロ隕石 → アルゼンチン産
2. 鉱物・原石としてのムオニナルスタ隕石
ここからはムオニナルスタ隕石を、より化学的な側面から見ていきましょう。
原石、また独特のウィドマンシュテッテン構造のでき方も解説します。
■組成について
ムオニナルスタ隕石の組成情報は、以下のとおりです。
英名(カタカナ) | Muonionalusta Meteorite(ムオニナルスタ) |
和名 | ムオニナルスタ隕石(ムオニナルスタいんせき) |
成分 | (Fe,Ni)+内包物 |
結晶系 | - |
モース硬度 | - |
屈折率 | - |
劈開 | - |
色 | 灰色(金属光沢) |
発見地 | スウェーデン |
記事中でもずっと「ムオニナルスタ隕石」と呼んでいますが、実はこの名前はコマーシャルネームです。
鑑別書には「天然隕石(メテオライト)、鉄質隕石」と記載されます。
鉄(Fe)とニッケル(Ni)からなる隕石で、ニッケルは8.4%ほど含まれます。そのほか、微量のガリウム(Ga)やイリジウム(Ir)、ゲルマニウム(Ge)を含みます。
■原石の形状

ムオニナルスタ隕石は、塊状で産出します。
原石は「隕石」から連想する姿のとおり、ゴツゴツした灰色や黒色の塊です。
主成分が鉄とニッケルという金属のため、見た目以上に重量がある点も特徴でしょう。
ムオニナルスタ隕石が地球にやってきたのは、100万年前。
しかし、地球上で長い時間を経ている割には、原石の表面はあまり風化していません。
北極近くに落下し、永久凍土によって守られたためと考えられています。
■ウィドマンシュテッテン構造の秘密

ムオニナルスタ隕石の特徴であるウィドマンシュテッテン構造が、そもそもどのように隕石中にできるのか。
長いながい宇宙のときの流れに身をゆだねながら、構造の秘密を化学的に見てみましょう。
ウィドマンシュテッテン構造のでき方を理解するにはまず、ムオニナルスタ隕石は「鉄隕石」である、という点を押さえる必要があります。
実は隕石には、多くの種類があります。
主成分によって大きく3つに分けられ、さらに成分や構造の違いによって、30種類以上に分類されています。
【豆知識】隕石の種類
隕石は主成分により「石質隕石・石鉄隕石・鉄隕石」の3つに大別されます。
石質隕石にはコンドライトやエイコンドライト、石鉄隕石にはパラサイトやメソシデライト、シデロファイアなどがあります。
ムオニナルスタ隕石が含まれるのは鉄隕石グループです。
さてこの鉄隕石とは、太陽系が形成された後にできた天体が衝突などによって破壊され、天体の核をつくっていた部分が飛散したものです。
天体の核部分には鉄やニッケル、それらの合金が豊富に含まれるため、隕石になってからも主成分は鉄とニッケルを保持します。
(ちなみに地球の核も、同じものでできています。)
話をウィドマンシュテッテン構造に戻しましょう。
ウィドマンシュテッテン構造は、隕石となる前の天体、つまり破壊される前の天体内部でつくられます。
天体の核に含まれる鉄とニッケルの合金が、長い時間をかけてゆっくりと冷やされることで組織が変質し、あの特徴的な模様を構成します。
鉄-ニッケル合金が冷やされる速度は、なんと100万年でたった2〜3℃、あるいは1℃とする説もあります。
気の遠くなるような時間をかけて冷やされることで、ニッケルが豊富な部分と少ない部分に分離し、あの模様となるのです。
冷却速度がゆっくりであるほど、ウィドマンシュテッテン構造は進行します。
したがってウィドマンシュテッテン構造を持つに至るには、無重力の宇宙空間で100万年以上の時間を経る必要があるといわれます。
100万年に数度という冷却は、人工的にはつくりだせません。
ウィドマンシュテッテン構造は宇宙が生み出した、神秘の模様そのものなのです。
3. ムオニナルスタ隕石をより楽しむために

他の隕石以上に美しいウィドマンシュテッテン構造を持つムオニナルスタ隕石。
丈夫さ・堅牢さは、いうまでもありません。
もっと気軽に、日常のなかでムオニナルスタ隕石を楽しんでみませんか。
ムオニナルスタ隕石が身近になるヒントを紹介します。
■ムオニナルスタ隕石の石言葉
ムオニナルスタ隕石は、以下のような石言葉を持っています。
精神力を高める
意思力を強める
ムオニナルスタ隕石をはじめ、多くの隕石は「地球上にはない特別なパワーを持つ」として、古来大切にされてきました。
今でもパワーストーン愛好家からも、根強い人気を誇ります。
地球に落下する隕石の大半は、大気圏で燃え尽き、地上には到達しません。
地上に到達した稀な隕石が、宇宙の強いエネルギーを持っていると人々が考えたのも、ごく自然なことではないでしょうか。
■ムオニナルスタ隕石の加工について

ムオニナルスタ隕石は、薄いスライスをさまざまな形状にカットしたものが流通しています。
カボション用の空枠にセットし、アクセサリーに加工しても良いでしょう。
またごく稀に、ビーズ状に加工されたムオニナルスタ隕石もあるようです。
ただしムオニナルスタ隕石は、より知名度のあるギベオンの偽物として売られているケースも散見されます。
ギベオンは流通量がごくごく限られており、希少性がさらに高いのも要因です。
ムオニナルスタ隕石とギベオンは、発見地で区別するよりほかにありませんが、隕石自体の鑑別書を出せる機関も限定的です。
販売者の情報に頼るしかないのが、実情です。
ありふれた合金をグラインダーで削り、ムオニナルスタ隕石と称して販売する偽物もあるようです。
ムオニナルスタ隕石の本物を手に入れたいときは、信頼できる、ルースや天然石、隕石の専門店で探してみてください。
■ムオニナルスタ隕石のお手入れ
ムオニナルスタ隕石は、ルースとはまた違ったお手入れが必要です。
サビやすい特性を踏まえ、以下の点に注意しましょう。
湿気や水分のある場所での保管は避ける
隕石用のサビ止めオイルを塗布する
また使用中に割れてしまった場合は、専門店への相談をおすすめします。
割れ目はサビ防止加工がされておらず、サビが一気に広がる恐れがあります。
一度生じたサビは、物理的に削り取るよりほかに対処法がありません。
ふきとっただけでは、また内部からサビが湧いてくる可能性があります。
市販の錆防止スプレーも、一定の効果があるようです。
表面にくすみを感じたら、消しゴムで軽く削るときれいになります。
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4. まとめ
ムオニナルスタ隕石は、約100万年前にスウェーデンに落下した隕石です。
鉄とニッケルを主成分とする鉄隕石で、酸のエッチング処理によってあらわれる表面のウィドマンシュテッテン構造が特徴です。
はっきりとした模様が通好みで、徐々に知名度を上げているところ。
地球にある総量が限られている点でも希少性の高い隕石です。
これから価格が高騰するかもしれませんね。
ムオニナルスタ隕石を手元に置き、46億年前に始まった地球の歴史に思いをはせるのも、素敵な時間の過ごし方です。
ムオニナルスタ隕石は、TOP STONE をはじめとするルースや天然石の専門店が取り扱っています。
お気に入りの1つを探してみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人

みゆな
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。