紀元前から人々を魅了してきた「太陽の宝石」ペリドット|美しさから鉱物学的解説まで

落ち着いた黄緑色が魅力的な宝石、ペリドット。一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。「品質の良いペリドットをコレクションに加えたい」と、探し求めている人もいるでしょう。
美しく、かわいらしい色合いのペリドットは、実は中学の理科や高校の地学の授業で登場した岩石「かんらん岩」から生まれています。かんらん岩、覚えていますか?表面がざらざらした、黒っぽい地味な岩。あの岩から、まばゆいペリドットが生まれるとは…、どのような仕組みでしょうか?
今回は、知っているようで知らないペリドットの秘密に迫ります。ペリドットの魅力からコレクターにおすすめのインクルージョン・ペリドット、歴史的エピソード、そして鉱物学的な解説まで、盛りだくさんの内容です。ぜひ、最後までチェックしてみてください。きっと、今よりももっと、ペリドットが好きになりますよ。
▶ TOP STONE で販売中のペリドット
1. 宝石・ルースとしてのペリドット

ペリドットは、その昔エメラルドと間違えられたほど、奥ゆきのある輝きを持っています。まずは、ペリドットの美しさを存分に堪能することから始めましょう。
宝石・ルースの観点から、ペリドットに迫ります。
■高品質なペリドットの特徴と見分け方

コレクションに加えるなら、「美しいとされるペリドット」「高く評価されるペリドット」を求めたくなるはず。トップクオリティたるペリドットが備える条件を、紹介します。
カラー
緑色の宝石の例に漏れず、ペリドットも、できるだけ色が明るく、黄緑色の発色が鮮やかな個体ほど評価されます。
わずかに黄色がかった個体もおすすめ。ペリドットを宝石として見た場合は、茶色みを帯びた個体は価値が下がります。
透明度
インクルージョンがなく、透明度の高いペリドットほど、評価は高まります。ただし、価値を高めるインクルージョンがあるのも、ペリドットの興味深いポイント。
たとえば、「リリーパッドペリドット(ウォーターリリー)」と呼ばれるペリドット。これは、内部に蓮の葉のような丸いインクルージョンを持つペリドットです。ペリドットを傾けたときにパッとあらわれるリリーパッド(蓮の葉)が、なんとも魅力的。
スパンコールにも見えることから、「サンスパングル(太陽のきらめき)」とも呼ばれます。古代エジプトでは、このインクルージョンのきらめきを太陽神がもたらしたものと考え、「太陽の宝石」としてペリドットを大切にしたといいます。
また、ルチルのような針状インクルージョンを持つペリドットもあります。このインクルージョンの正体は、ルドウィジャイト(ルドウィヒ石)です。パキスタンでのみ産出し、その神秘性から人気があります。
もう1つ紹介しましょう。とても希少で、めったにお目にかかれないスターペリドットです。スター効果は、内部で同じ方向に整列したインクルージョンがもたらす光学効果。インクルージョンが1方向に並ぶとキャッツアイに、2方向以上に並ぶとスターと呼ばれます。
スター効果を持つ宝石は数あれど、スターペリドットは極少!専門店でも、なかなか入荷できません。見かけたら、とりあえず買っておいたほうが良いともいえる、貴重なペリドットです。
カット
ペリドットは、大抵のカットに耐える堅牢さを持っています。ダイヤモンドのようなブリリアントカットやシンプルなステップカット、ペンデロークカットなど、多彩なカットを楽しめます。
TOP STONE オンラインショップでもさまざまなカットのペリドットをご用意しています。ぜひお気に入りのひとつを探してみてくださいね。
カラット
ペリドットは、産出した段階で小粒なものがほとんどです(その理由は、後半の「鉱物・原石について」の章で解説します)。
ルースになって流通するペリドットも、大きな個体はあまりありません。私たちが見るペリドットの多くは、1~5カラット程度です。
もちろん、大きくなるほど価値が高まります。ただ、ペリドットの価値は、カラーやインクルージョンなど、複合的な要素によって決定します。大きさに加えて、色合いや雰囲気が好みかどうかも、コレクション候補を選定のチェックポイントにしてくださいね。
【豆知識】世界に存在する"巨大なペリドット"
世界の著名な博物館には、大きな結晶で見つかったペリドットが所蔵されてます。大きなペリドットは、それだけ価値があるということです。
ロンドンの自然史博物館には146.10カラットものペリドットが保管されているそうです。
GIAでは写真も掲載されていますのでぜひご覧ください。
GIA/ペリドットの歴史と伝承(外部サイトに移動します)
世界最大といわれるペリドットは、エジプト・ザバルガット島で発見された311.8カラットのものだといわれています。現在は、アメリカのスミソニアン国立自然史博物館にあります。
100カラットを超えるペリドットの迫力は、いかほどでしょうか。一生に一度、見てみたいものですね。
■ペリドットの輝き
ペリドットは屈折率が高く(1.654~1.690)、さらに複屈折性も持っています。複屈折性とは、宝石の中に入った光が2方向に分かれて進む現象です。この複屈折性により、ペリドットのルースは奥のファセットが二重のラインに分かれて見えます。
ペリドットは、高い屈折性によって光の進む方向が多彩になり、複屈折性によってその光が宝石の中で倍々ゲームのように増えるのです。まさに光の競演、きらめきの強さがわかるのではないでしょうか。
ペリドットは、その強い輝きのために、古来「光」と関連付けられてきました。古代エジプトでは「太陽の宝石」として愛されたとか、紀元前の産地ではわずかな月明かりをとらえて輝くペリドットを探したとか…、逸話が尽きない宝石です。
しっとりとしたオイリーな輝きを見せる個体もあり、ルースそれぞれが豊かな個性を見せてくれます。
■神秘に包まれた特別なペリドット
地球上にあるペリドットの大半は、地殻中でつくられます。(→第2章 鉱物・原石について)
ところが、宇宙からやってきたペリドットがあるとしたら、どうでしょう。ワクワクが一気に高まりませんか。
宇宙から、隕石とともに地球に飛来したペリドットを「パラサイトペリドット」といいます。パラサイトとは隕石の種類の1つ。地球にもっとも多くやってくる「石質隕石」に属します。
このパラサイト隕石にペリドットが含まれることがあるといいます。地球で採れるペリドットより透明感が強く、カラーが淡いことが特徴。光を当てると流星のような、筋状のインクルージョンを見せるのも魅力です。
ペリドットを含む隕石が初めて確認されたのは、1772年でした。また、2005年には、スターダストロボット探査機(アメリカ・NASAが宇宙探査のために打ち上げた探査機)が持ち帰った彗星塵からもペリドットが発見されています。
漆黒の宇宙を旅する小惑星や彗星に内包された、黄緑色の美しいペリドット…。銀河鉄道に乗り、見に行ってみたいものです。
■ペリドットにまつわる逸話
宝石としての歴史が長いペリドットは、さまざまな逸話に事欠きません。ペリドットにまつわるストーリーを紹介します。
ペリドットから見つかった新種・シンハライト

「ペリドット=黄緑色」のイメージが鮮烈ですが、茶色い色合いのものもあります。さて、この茶色いペリドット。「ブラウン・ペリドット」として現在も存在しますが、ここから見つかった新種の宝石があることはご存じでしょうか。
ペリドットから生まれた新種とは、「シンハライト(Sinhalite)」です。シンハライトはブラジリアナイト(Brazillianite)・タンザナイト(Tanzanite)とともに、「20世紀に発見された三大宝石」の1つに数えられています。
シンハライトはスリランカで採取でき、淡いブラウンが美しい宝石です。サンスクリット語でスリランカを意味する「Sinhala(シンハラ)」に、石をあらわす「lite(ライト)」がついて名前がつきました。
シンハライトがペリドットから独立し、新種と認定されたのは1950年ごろでした。光学検査がペリドットと一致しない点に疑問を持ったアメリカ国立博物館のGeorge Switzer(ジョージ・シュウィッツァー)博士が詳しく検査したことが、きっかけだったといいます。
検査技法の発達とともに、同じだと思われていた宝石が、実は別種だったとわかることは、宝石界ではよくあることです。ルビーとスピネルが好例ですね。
20世紀に発見された三大宝石については、下記の記事で詳しく解説しています。
▶ シンハライト
『希少!知る人ぞ知るシンハライトの魅力と特徴を徹底的に解説します』
▶ タンザナイト
『まるで夕暮れ時の空!「タンザナイト」の魅力とは?|歴史や楽しみ方を紹介』
▶ ブラジリアナイト
Coming soon …
古代エジプト時代から愛され続けるペリドット
ペリドットは、紀元前から人々に愛されてきました。紀元前1580年~1350年ごろには、古代エジプト人たちがペリドットのビーズを制作していたことがわかっています。
【豆知識】紀元前1580年~1350年のエジプト
紀元前1580年~1350年は、エジプトの新王国時代にあたります。当時、国内ではアメン神を象徴とする一派が、強力な権力を持っていました。これに対抗して、アテン神を唯一の神とするという宗教改革を断行したアメンホテプ4世(イクナートン)が、まさにこのころの人物。
アメンホテプ4世の次のファラオが、かの有名なツタンカーメンです。
古来、エジプトやローマ、ヨーロッパなど、時代ごとに栄華を誇った国にペリドットを供給していた産地は、ザバルガット島(Zabargad)だったと考えられています。ザバルガット島は、エジプト・アスワンの東300kmほどの紅海に浮かぶ小さな島です。
▶ ザバルガット島は、英語では「セント・ジョンズ島(Saint John's Island)と呼ばれますが、シンガポールにあるセント・ジョンズ島とは別の島です。
ザバルガット島では3500年以上前から19世紀前半まで、ペリドットが採掘されてきました。中世の十字軍も、この島からペリドットをヨーロッパに持ち帰っています。
ただ、ザバルガット島には危険なヘビやトカゲがはびこっており、「死の島」「アリゲータートカゲの島」と不名誉な呼ばれ方もしていたそうです。
美しい宝石を採掘することと危険は常に隣あわせ、という事実は、昔から変わらないのかもしれません。
■混同の歴史と名付けの紆余曲折
この宝石にペリドットという名前がつくまでには、長いながいストーリーがあります。
そもそも、古代ギリシア人・ローマ人たちは、ペリドットを「トパーズ」と呼んでいました。黄玉のトパーズ…とは別物です(トパーズにもペリドットと似た色合いがあり紛らわしいですね!)。
ギリシア人・ローマ人は、この時代にペリドットが採れていた紅海のザバルガット島を「トパゾス」と呼んでおり、島の名前から宝石の名前をつけたようです。
一方で、ギリシア語で「懸命に探す」行為を「topazios(トパジオス)」といいます。電気や明かりなどない当時のこと、人々はペリドットを月明りを頼りに探したとか。ペリドットはわずかな明かりも捉えて、明るく輝く石です。暗い中で一生懸命に緑色の宝石を探すさまが topazios だということから、トパーズと名前がついたという説もあります。
さて、話は古代エジプト時代に遡ります。当時、世間一般では緑色の宝石を総称して「エメラルド」と呼んでいました。本物のエメラルドも、エメラルドではない緑色の宝石も、すべてエメラルド、だったのです。鑑別の技術がなかった時代ですから、詳細に識別できないのも当然ですね。
ただ、この「緑色の宝石=エメラルド」という呼び方が、後世の人を困らせます。なにせ、秘宝とされるあらゆる緑の宝石が、エメラルドと記録されているわけですから。
たとえば、エジプト王国最後の女王・クレオパトラ7世の話です。彼女はエメラルドをこよなく愛していました。あまりに好きすぎて、エメラルド鉱山を所有してしまうほどだったそう。
もちろん、エメラルドのコレクションも膨大に持っていたといわれています…が、実は大半がペリドットだったと考える専門家もいます。
皇帝ナポレオン・ボナパルトも、ペリドットをエメラルドだと信じていたという秘話が残されてる1人です。ある時、美しい緑色の宝石がついたネックレスを気に入ったナポレオン。「エメラルドのネックレスだ」といって、妻ジョゼフィーヌに贈ったとか。
ジョゼフィーヌが「本当にエメラルド…?」と疑問を持ったかどうかは、ジョゼフィーヌのみが知るところ。その後の展開が気になるエピソードです。
【豆知識】ドイツのケルン大聖堂にある大きなペリドット
ケルン大聖堂(Kölner Dom)、誰もが一度は写真で見たことがあるでしょう。ドイツ・ケルンにある、世界最大のゴシック様式建築物です。
この大聖堂には、三聖王(三賢人・イエスの誕生時にやってきて拝んだとされる人物)が祀られています。三聖王の豪奢な聖遺物箱の頂点には、200カラットもの緑色の宝石が施されているのですが、この宝石も長いあいだエメラルドだと信じられてきました。
実際には、ペリドットです。エメラルドと混同されて名誉なのか、ペリドットだと思ってもらえなくて不名誉なのか…、ペリドットに尋ねてみたい気もしますね。
紆余曲折を経て、ペリドットに、いよいよ「ペリドット」という名前がつきます。ペリドットとは、フランス語に由来する英語です。アラビア語で宝石を意味する「Faridat(ファリダット)」から来ているとも、ペルシア語で美しい妖精を意味する「Peri(ペリ)」が由来だともいわれます。
ちなみに、ペリドットは宝石名です。鉱物名は「オリビン(Olivin)」といいます。オリーブの実の色に似ていることから、1790年に命名されました。
ペリドットもオリビンも同じ石を指しますから、間違えないようにしましょう。
【豆知識】ペリドットの"和名"にも混乱の形跡が…
ペリドットの和名は、橄欖石(かんらんせき)です。1886年ごろに名づけられました。
橄欖は、緑色の実をつけるカンラン科の植物。
実はこれも、混乱の結果ついた名前だといわれています。
本来ならオリーブが由来の「オリビン(Olivin)」から和名をつけたかったところ、色が似ていた橄欖と間違え、橄欖石とつけてしまったとか。
オリーブはカンラン科ではなく、モクセイ科の植物なのです…。
ペリドットの混乱の歴史も、ここまでくると驚きを通り越します。
■ペリドットの産地

ペリドットは、古くは紅海のザバルガット島、その後パキスタンやロシアなど、多くの地域で見つかっています。
現在、世界のペリドットの8割を供給する産地が、アメリカ・アリゾナ州といわれます。ただ、アリゾナでは5カラット以上の大粒結晶は、ほとんど採れません。
彩度が高く、大きな結晶を産出する地は、ミャンマーです。
明るいライム色が高く評価される「チャンバイペリドット(Changbai Peridot)」は、中国東北部のチャンバイ山地(ChangbaiMountain)産です。チャンバイペリドットはインクルージョンがほとんどなく、透明度の高さでも人気があります。
さまざまな宝石を産出するパキスタンのペリドットは、カシミール地方が有名です。アップルグリーンやライムグリーンにたとえられる、金色を帯びた緑色がたまらない美しさです。
産地 | 特徴 |
ミャンマー | ミャンマーのモゴック地区北部にある、ピャウン・ガウン鉱山で世界でも最高品質とされるペリドットが産出される。 大きい粒のペリドットが多い。ペリドットキャッツアイやスターペリドットなど希少なペリドットか産出されることもある。 |
アメリカ(アリゾナ州) | サン・カルロス・アパッチ居留地は宝石品質のペリドット世界最大の鉱床。 市場に流通しているペリドットの8割がアメリカ・アリゾナ州産。ミャンマー産などに比べると褐色が強いペリドットが多い傾向にある。 |
パキスタン | 高山地域スパット渓谷から品質の良いペリドットが産出されることが発覚。 しかし採掘は困難で、量も限られているため市場には多く出回らない。 |
濃い緑色を発色し透明度が高い最高品質のペリドットはミャンマー産・パキスタン産がほとんどです。流通量の8割を占めるアメリカ・アリゾナ州産のものは、ミャンマー産やパキスタン産と比べると褐色が強いペリドットが多い傾向です。
そして実は、ペリドットは日本の三宅島でも採掘できます。大粒な個体も採掘できますが、緑がハッキリしているというよりかは褐色味が強いのが特徴です。
2. 鉱物・原石としてのペリドット

ここからは、ペリドットを鉱物・原石の観点から深めていきましょう。地中数十kmという深さの場所で生成するペリドットが、どのようにして地上まで運ばれるのか、そのプロセスも解説します。
■組成について
ペリドットの組成情報は、以下のとおりです。
英名 | Peridot(ペリドット) ※ 鉱物名は Olivine(オリビン) |
和名 | 橄欖石(かんらんせき) |
成分 | (Mg,Fe)2SiO4 マグネシウムと鉄の珪酸塩鉱物 |
結晶系 | 直方晶系(斜方晶系) |
モース硬度 | 6.5~7 |
屈折率 | 1.654~1.690 |
劈開 | 不明瞭(不完全) |
色 | 無色、黄緑色、緑色、褐緑色、褐色、黒色 |
主な産地 | アメリカ、中国、ミャンマー、パキスタン、メキシコ、オーストラリア、ノルウェー、ブラジル、日本、ケニア、フィンランド、ロシア など |
ペリドットの和名は、橄欖石(かんらんせき)。かんらん石自体は、ごくありふれた鉱物です。なんといっても、地球の上部マントルを構成する主要物質だからです。中学の理科や高校の地学で登場するのも、当然の流れ。地球全体でもっとも大量に存在する鉱物だといわれています。
▶ 上部マントル:地球表面を覆っている地殻のすぐ下にある層で、地下50~400kmほどまで。
かんらん石を40%含む岩石をかんらん岩といい、かんらん岩は地球全体の体積の82.3%を占めるとか!まさに地球は、かんらん岩でできた星といっても良いでしょう。ちなみに、ダイヤモンドを生み出すキンバーライトも、かんらん岩の仲間です。
さて、地球の深く、マグマが行き交う場所でつくられたかんらん石は、地殻変動や火山活動によって地表に運ばれます。こうしてようやく、ペリドットは私たち人の目に触れることになるのです。
■原石の形状

大半のペリドット原石は、小さな粒状や塊状で産出します。玄武岩の中に小さな結晶粒の集合体(ノジュール・球果)が含まれるのが、典型的な形状です。
ペリドットの結晶が小粒な理由は、地中深くからマグマのはたらきとともに、急激な速度で地表に運ばれたためと考えられます。高圧の地球内部から一気に減圧されたことで、ペリドットが微塵にくだけてしまうのです。
地表に運ばれたペリドットと玄武岩、時の流れとともに玄武岩が先に風化します。残ったペリドットは「ペリドット・サンド」と呼ばれる、砂状のペリドットになります。
美しい結晶形を残した原石や、大きめの結晶は、パキスタンでごく稀に見つかります。マグマ由来のペリドットだけでなく、かんらん岩の変質によってできた蛇紋岩の割れ目に浸入した熱水から成長することもあるそうです。
パキスタンで大きな結晶が保存されやすいのは、乾燥地帯であることが影響しているのでしょう。気象によって変質する可能性が少なく、また火山地域であることも、ペリドット産地たるゆえんだと考えられます。
■鉱物視点でみるペリドット
ペリドットは、代表的なケイ酸塩鉱物(ケイ素Sと酸素Oから成る鉱物)の1つです。さらに、含有する成分によっていくつかの種類に細分化されます。
ペリドットの成分を理解するために、まずペリドットは「フォルステライト(Forsterite)」と「ファヤライト(Fayalite)」とでつくられる固溶体であることを、押さえましょう。
▶ 固溶体とは : 2つ以上の元素が溶け合い、グラデーション状に変質する物質をつくっている状態。

マグネシウム分の多い側がフォルステライト、鉄分に富む側がファヤライトです。フォルステライトに近いほど黄緑色となり、ファヤライトに近付くほど褐色・茶色を呈します。ちなみに、シリカ(二酸化ケイ素・SiO2)の量も、どちらに成長するかに影響します。シリカ分が少ない環境だとフォルステライト、シリカ分が多い環境ではファヤライトになります。
私たちが「ペリドット」として認識し、市場にも流通しているのは、フォルステライト側の鉱物です。ペリドットに含まれるファヤライトは、成分全体の13%ほどに過ぎないといわれます。また、マグネシウムと鉄それぞれがマンガン(Mn)に置き換わると、Mn2SiO4となり、テフロアイト(Tephroite)という別の鉱物になることも、押さえておいて損はないでしょう。
ちなみに、ペリドット独特のオリーブ色は、ニッケル(Ni)由来です。ニッケルは、鉄とともに惑星の核を構成する重要成分。地球の核に存在するニッケルが、内部活動とともに押し上げられ、マントルでかんらん石となり、そして地表に運ばれてペリドットとして私たちの目に触れているというわけです。
ペリドットの小さな結晶から、地球内部の活発な活動を実感してみてください。
ちなみにニッケルは、隕石にも含まれています。コレクターも多いギベオン隕石やムオニナルスタ隕石に固有の網目模様「ウィドマンシュテッテン構造」も、ニッケルによってつくられています。
フォルステライトについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
▸ 無垢な輝きフォルステライト - カラーレスなペリドットと呼ばれるレアストーンを解説
3. ペリドットをより楽しむために

キラッと輝くオリーブグリーンが印象的なペリドットは、新緑の季節はもちろん、フレッシュな印象を与えたいときにぴったり。季節をとわず、まといたくなる宝石です。
人気が高い割に、意外とお手頃価格で手に入れやすいのもポイント。ここからは、もっと気軽にペリドットを楽しむヒントをお届けします。
■誕生石・石言葉

ペリドットは8月の誕生石に指定されいます。ちなみに、日本だけでなく、アメリカとイギリスも、ペリドットが8月の誕生石です。夏の日差しに輝きを増すペリドットを、ぜひ8月にチョイスしてみてください。
ちなみに、サードオニキス(赤縞瑪瑙)やスピネル(尖晶石)も、8月の誕生石。ペリドットだけが緑色というのも、興味深いですね。
ペリドットの石言葉は、「夫婦愛」「運命の絆」「平和」「安心」などです。パートナーや大切な人との絆を深めたいとき、また地に足をつけて落ち着いた人生を歩みたいときにむいています。
古代エジプトでは「太陽の宝石」とあがめられたペリドット。お気に入りの1つを見つけ、前向きにポジティブに生きるエネルギーをもらってみませんか。
■ビーズや加工品として
十分に堅牢で加工しやすいペリドットは、ジュエリーやアクセサリーの素材としても人気です。
国立西洋美術館(東京都上野公園)が所蔵する指輪がメインの宝飾品コレクション「橋本コレクション」には、それはそれは鮮やかで見事なペリドットの指輪が収められています。時折、企画展で公開されていますので、ペリドットがお好きなら要チェックです!
ペリドットの派手過ぎないグリーンは、日本人の肌色にもよく合います。ネックレスやピアスに加工しても素敵。存在を主張しすぎないため、他のカラーのルースと組み合わせても楽しめます。

また、ビーズ素材も人気です。ビーズになるペリドットは、透明度がやや下がり、クラックが入る場合もあります。しかし、コロンとしたビーズになると、不思議とクラックも素敵な個性に!クラックが光をさらに反射し、きらめきを増幅してくれます。

意外な用途は、耐熱ガラスの原料でしょうか。マグマで生成されるペリドットは融点が1900度と高いため、耐熱ガラスをはじめ、耐火レンガなどにも利用されます。
天然石・レアストーン・誕生石ならトップストーン
トップストーンは、国内最大級の天然石輸入卸問屋「株式会社ウイロー」が運営するルース専門の通販サイトです。世界中から買い付けたレアストーン、誕生石を販売しております。パライバトルマリン、タンザナイト、サファイアなどの宝石、ルースなど。豊富な品揃えから、天然石やパワーストーン、カラーストーンをお選び頂けます。
適正な販売価格を提示
天然石の市場価格は、決して安定しているとは言えません。常に変動する相場の中、トップストーンでは、最新の天然石の相場・平均価格を熟知しております。世界情勢や市場の動向をいち早くキャッチアップし、適切な価格を提示しておりますので、安心してご購入いただけます。
取り扱い種類が豊富
株式会社ウイローでは、40,000点以上の石を、鉱物・原石から宝石、ルースまで取り扱っております。また、弊社独自の調査により、入手難易度レベルを作成。入手困難な希少な天然石もトップストーンならば仕入れ可能です。
第3者鑑別機関のチェック済み
弊社で扱っている宝石、ルース(天然石)の数々は、商品名には流通名または宝石名を記載して販売しております。中立の立場である第3者鑑別機関に鑑別しているため、安心してご購入いただけます。
※TOPSTONEでは、鑑別・ソーティングを概ねA.G.L加盟の鑑別機関にお願いしております
▼鑑別・ソーティングについては以下ページにて詳細をご確認いただけます
4. まとめ
ペリドットは、地球内部にある上部マントルという場所で生成されます。ここは、1400度に達することもある、高温高圧の場所。そんな過酷な場所で、マグネシウムとシリカが結合しペリドット(フォルステライト)が生まれます。
ペリドットは、若葉を思わせるフレッシュな黄緑色が魅力です。お手頃価格のルースから、コレクター向けのインクルージョン・ペリドットまで、種類も豊富!宝石・ルースの専門店や展示会・ミネラルショーで、お気に入りのペリドットを探してみてくださいね。
TOP STONE オンラインショップでもスタンダードなペリドットをはじめ、リリーパッドペリドットやルドウィジャイトインペリドット、スターペリドットなど、珍しいペリドットも多数取り揃えています。ぜひ、チェックしてみてくださいね。
▶ TOP STONE で販売中のペリドット
▸ こんな記事も読まれています
この記事を書いた人

みゆな
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。