無垢な輝きフォルステライト - カラーレスなペリドットと呼ばれるレアストーンを解説

8月の誕生石としても有名なペリドット。その仲間で、無色透明な美しい貴石をご存知でしょうか? 知らないのが勿体ないレアストーン、フォルステライトの魅力をご紹介します。
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1.宝石・ルースとしてのフォルステライト

フォルステライトは、相当の石好きやジェモロジストでもなければ聞き馴染みのない名前です。工学系に携わる人の方が聞き馴染みがあるかもしれません。ペリドットの仲間ですが、産出はほとんどないレアストーンの一つです。
■フォルステライトの魅力
フォルステライトはペリドットの兄弟とも言える石です。ペリドットといえばグリーンを代表する貴石ですが、このフォルステライトはカラーレス。ペリドットの輝きだけを追求した石といっても過言ではないでしょう。ガラス光沢も相まってくっきりとした光の反射を感じます。
カラーレスの貴石といえばダイヤモンドに勝るものはないと思われがちですが、同じカラーレスの貴石でもそれぞれニュアンスが違うもの。フォルステライトはダイヤモンドより優しい光を放ちますが、複屈折性をもち、艷やかな輝きを放ちます。大きなダイヤでは派手になり過ぎるシーンでも、フォルステライトなら調和しながら華やかさも失わないジュエリーとして、身につける人を惹きたててくれるでしょう。
貴石には疎まれがちなインクルージョン(内包物)も、成長による気泡や針状インクルージョンはカラーレスのフォルステライトにそれぞれ表情をつけてくれます。輝きを阻害してしまう有色インクルージョンも、ジュエリーなどには向かないながら、エメラルドに見られる庭園のような面白みがあります。
■高品質のフォルステライトとは?

どの宝石にも言えることですが、色やテリが美しく、その美しさが最も引き出されるカットがなされている、大粒の石が最高品質といえます。
フォルステライトで重要なのはクラリティ(透明度)です。カラーレスの輝きが美しいフォルステライトですから、その輝きを阻害するインクルージョン(内包物)はその価値を下げてしまいます。ペリドットにも見られる、肉眼で確認できる黒色インクルージョンは避けたいですね。ただ、フォルステライトには肉眼で確認できるような、鉄に起因する黒色インクルージョンはほぼありません。
ペリドットにも見られる、スパンコールのような円形のサンスパングルインクルージョンなど、成長に起因するインクルージョンが目立つものも、最高品質とは言えないでしょう。しかしインクルージョンの作り出す表情は無二の魅力をもたらしてくれます。
カラーに関しては、澄み切ったカラーレスのフォルステライトが最高品質と言えます。組成の方で詳しく説明しますが、カラーレスであることがオリビンの中でもフォルステライトの最たる特徴です。
オリビン自体は地球上に多く存在する鉱物で、1ctを超えて成長するフォルステライトもあります。しかし、そもそもの産出量が非常に少なく、市場に出ることがほとんどないレアストーンです。出会えること自体が希少なので、あまり大きさに拘ると手に入れるチャンスをみすみす逃すことになりそうです。
■フォルステライトの名前の由来
ペリドットが古代から人の歴史と共にあったのに比べれば、フォルステライトが発見されたのは実に最近で、1824年のことです。同年、ジェムコレクターのアドラリウス・ヤコブ・フォスターAdolarius Jacob Forsterに敬意を表して、献名されました。
ペリドットは古代から人間の歴史と共にあった石で、その名前も多くの変遷を辿っています。同様にフォルステライトも地域によって様々に呼ばれた経緯があるようです。
例えばアメリカのマサチューセッツ州にあるボルトンでは、ボルトナイトとして一時期フォルステライトの原石と思われる鉱物を保護していました。この街の他ではベスビオ火山でしか採掘できない鉱物として移動の制限をかけるなどしたのですが、後にただの白かんらん岩だったことが判明。本当に貴石品質のフォルステライトの原石であれば、今でも保護すべき街の宝だったでしょう。
■フォルステライトの産地

貴石品質のフォルステライトはほとんどがミャンマーで採掘されています。他にスリランカなどでも産出されるようです。
カンラン石そのものは多くの土地で産出します。その中で貴石品質を保つわずかな量が貴石として流通しますが、ほとんどはグリーンのペリドットです。フォルステライトはほとんど産出がなく、多くの場所で産出される可能性はあっても一大産地といえるような場所はありません。
ミャンマーの他に、ペリドットの産地としてライトカラーが人気のノルウェーやパキスタンから採掘されることが、今後あるかもしれません。
■フォルステライトの合成石
フォルステライトは合成方法が確立されており、市場にも出ています。カラーレスの合成フォルステライトは主に工業用に合成され、ジェム市場にはタンザナイトに似せたタンザニオンといった名前で販売されることが多いようです。
フォルステライトには多色性はありませんが、タンザニオンは濃いブルーで多色性を持ちます。当然、見た目はタンザナイトとよく似ていますが屈折率など科学的特性はフォルステライトと同じです。
タンザニオンとタンザナイトの判別は比較的容易で、ファセットのエッジを見る事で判別できます。タンザナイトよりフォルステライトの方が屈折率が非常に高く、複屈折性がある為、ルーペで確認するとエッジは二重に滲んで見える筈です。タンザナイトはそうはなりません。合成石といえども、比較的高額で取り引きされているようです。
2.鉱物・原石としてのフォルステライト

フォルステライトは鉱物的にも面白い石です。ここからは鉱物としてのフォルステライトをご紹介します。
■組成について
まずは、組成から見てみましょう。
英名 | Forsterite/フォルステライト |
和名 | 苦土カンラン石、白カンラン石 |
成分 | Mg2SiO4 |
結晶系 | 斜方晶系 |
モース硬度 | 6.5-7 |
屈折率 | 1.634-1.670 |
劈開 | 明瞭〜不明瞭 |
色 | カラーレス |
主な産地 | ミャンマーなど |
フォルステライトは宝石名で、鉱物名はオリビンです。宝石に詳しい人ならピンとくるでしょう、ペリドットと同じですね。ペリドットは鉄とマグネシウムを含むケイ酸塩鉱物ですが、フォルステライトはマグネシウムを含むケイ酸塩鉱物です。
オリビンは連続固溶体を作ります。その固溶体の中で美しいグリーンの貴石がペリドットと呼ばれているのですが、ペリドットは宝石の中では珍しく組成に含まれる成分が着色原因となる自色鉱物です。ペリドットを構成する鉄、そして微量のニッケルによってあの輝く鮮やかなオリーブグリーンが生まれます。
フォルステライトに含まれる鉄は1%以下で、ほとんど含まれません。その為、わずかに混ざる鉄によって淡い黄色になることはありますが、通常はカラーレスになります。
カンラン石そのものは上部マントルの大部分を占める豊富な鉱物ですが、通常、カンラン石には10%ほどの鉄が含まれています。鉄イオンとマグネシウムイオンの大きさはほとんど同じで、ケイ酸塩(SiO)に鉄が繋がるもマグネシウムが繋がるも自由な為、鉄とマグネシウムは非常に混ざりやすいです。
それがマントルから地表に出て晶出するまでに鉄を含まなかったのか、地表に出た後、変成作用の中で鉄が削ぎ落とされることでフォルステライトという純粋な苦土カンラン石、フォルステライトになるのでしょう。鉱物が結晶し成長する時間を考えると、純粋さを保つことがどれほど凄いことか想像できると思います。
ちなみに苦土とはマグネシウムのことで、鉄よりマグネシウムを多く含んでいるペリドットも苦土カンラン石と呼ばれます。区別して、フォルステライトは白カンラン石とも呼ばれます。また、鉄を含まずマグネシウムを豊富に含む特徴からマグネシアカンラン石とも呼ばれます。
オリビンとペリドットとフォルステライト

オリビン(Mg,Fe)₂SiO₄は組成からわかる通り、そもそもマグネシウム(Mg)と鉄(Fe)を含んだケイ酸塩鉱物です。その中でマグネシウムをほとんど含まないオリビンをファラヤイトといい、逆に鉄をほとんど含まないオリビンがフォルステライトです。詳しくはペリドットの記事の方にも紹介されていますので、ぜひ合わせて読んでみてください。
書籍や、時に鑑別書には通常、鉱物名がオリビン、宝石名がフォルステライトと記載されますが、稀に鉱物名も宝石名もフォルステライトであったり、ペリドットの鉱物名がフォルステライトと書かれていることもあります。間違っているわけではありません。
連続固溶体とはいえ、ペリドットの成分の85~90%がフォルステライトということをかんがえると、無色のペリドットがフォルステライト、というよりは、グリーンのフォルステライトをペリドットと呼ぶ、の方が鉱物としてはしっくり来ますね。
■原石の形状

フォルステライトは斜方晶系で、短い柱状に成長します。尖った、宝石の原石といわれればイメージする形ですね。とはいえ、希少で原石を見かけることは少ないと思います。黄色がかったものや、白色不透明で産出されることもあります。
フォルステライトは多形をとる鉱物でもあります。通常斜方晶系ですが、高圧化で等軸晶系になります。必ずではありませんが、隕石として飛来するフォルステライトによく見られます。
■鉱物としての魅力
地表の他に、宇宙から飛来するフォルステライトもあります。一世を風靡した小惑星探査機ハヤブサが調査したイトカワからも、苦土カンラン石の発見があります。また苦土カンラン石は火星でも発見があり、特にペリドットは初めて宇宙で観測された宝石でもあります。
隕石の中にも含まれるパラサイトペリドットは有名ですが、1772年、シベリアに落下した石鉄隕石からフォルステライトが発見されています。いうなればパラサイトフォルステライト。
石鉄隕石は世界中に落下する隕石の内2%しかありません。その2%の中にペリドットがあり、その中のごくごく僅かにフォルステライトがあるのでしょう。憧れますが、人の手に渡るのは難しそうです。
3. フォルステライトをより楽しむために
宝石のその他の楽しみ方として、誕生石や石言葉、加工品の使用例などをご紹介します。
■フォルステライトの石言葉
フォルステライトは「癒し」「行動力」「秘められた力の発揮」といった力があると信じられているようです。希少で無垢な輝きを持つフォルステライトは、同じように心を純粋にして自分本来の魅力を見つける契機となる石なのかもしれません。
8月の誕生石ペリドットと一緒に持ちたい石ですね。
■フォルステライトの加工について
フォルステライトは希少なあまり、ビーズや加工品として身近に扱うことはあまりないでしょう。
レアストーンの中には、貴石としては非常にレアで目にかかるのも珍しいのに、実は日常にあふれている鉱物が多々あります。フォルステライトもその一つで、電子機器の基盤や部品に使われています。かつてはブラウン管テレビにも使われていました。この工業用フォルステライトセラミックを世界で初めて作ったのは稲盛和夫氏、京セラ株式会社の創始者です。
勿論工業用品のフォルステライトは合成石。天然フォルステライトを手にする機会があれば、その稀有なチャンスは逃さないで欲しいものです。
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4. まとめ
いかがだったでしょうか。無垢な輝きをもつフォルステライト、まだあまり知られておらず、目にする機会も少ない貴石です。しかしその生成の歴史を思うと、フォルステライトからひたむきな力を貸してもらえるような気がしてきませんか?純粋な煌めきを手にする機会があれば、是非手に入れて欲しい貴石です。
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この記事を書いた人

佐伯
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。