2023/07/12

美しい黄緑色の宝石!知られざるクリソベリルの魅力とは?|宝石や鉱物としての特徴

長い歴史があるにも関わらず、市場に出回る数が少ないことから知名度があまり高くないクリソベリル。変種が絶大な人気を誇る中、クリソベリルはひっそりと、その魅力を保持してきました。

この記事では、そんなクリソベリルについて詳しくご紹介します。
宝石としてだけでなく鉱物としての特徴についても解説するので、ぜひクリソベリルの魅力を堪能してください。


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1.宝石・ルースとしてのクリソベリル

美しい輝きを放つ、クリソベリル。
まずは、その宝石としての魅力から深めていきましょう。

■高品質なクリソベリルとは

最高品質と評されるクリソベリルには、下記の特徴があります。

  • 色が濃くて鮮やか

  • 透明度が高い

  • バランスの良いカット

黄色や黄緑色、茶色が一般的なクリソベリルですが、その色が濃くて鮮やかである程価値は高くなります。また、透明度が高いクリソベリルは産出量が少ないため、その希少性からも価値が高くなっています。透明度が高いクリソベリルは、バランスの良いカットを施すことによって極上の輝きを放つことが特徴です。

変種も含めると、クリソベリルの中で一番価値が高いとされるのは「アレキサンドライト」です。希少性が高いアレキサンドライトですが、中でも色の変化が大きいものほど高品質となります。

アレキサンドライトに次いで価値が高いとされるのが、キャッツアイ効果を示す「クリソベリル・キャッツアイ」です。アレキサンドライトにキャッツアイ効果が見られる「アレキサンド・キャッツアイ」も、非常に希少で価値が高い存在として知られています。

なお、ライムグリーンが強い蛍光色のものは「パロット・クリソベリル」と呼ばれます。パロット・クリソベリルは産出量が非常に少なく、希少性が高い宝石であることから価値が高くなっています。

■クリソベリルの特徴

クリソベリルは、熱処理などのエンハンスメントが行われることのない、自然のままで使用される「天然無処理宝石」です。

人工的な処理をしなくても美しい色合いをしていて、カットによって強い輝きを放ちます。
また、耐久性に優れていて、ジュエリーとしても楽しみやすいことも特徴の一つです。

■クリソベリルの魅力

クリソベリルには、さまざまな変種があります。各変種には違った特徴があり、一口にクリソベリルといってもいろいろな楽しみ方ができることが魅力です。

クリソベリルの変種で一番有名なのが、変色効果のあるアレキサンドライトです。アレキサンドライトは、太陽光の下では緑色、白熱光の下では赤色と劇的に色が変わる宝石で、希少性も高くなっています。

    また、クリソベリル・キャッツアイも変種として広く知られている宝石です。クリソベリルには、まるで猫の目のような一条の光が現れる「キャッツアイ効果」が表れやすい性質があり、この効果が見られる石は「クリソベリル・キャッツアイ」と呼ばれます。

      キャッツアイ効果が見られる宝石はほかにもありますが、一般的に「キャッツアイ」と言えば「クリソベリルキャッツアイ」とされています。ちなみにクリソベリル・キャッツアイは、ギリシャ語で波を意味する「サイモ」と、見えるを意味する「ファイネン」を組み合わせた「サイモフェーン」と呼ばれていたこともありました。

      ■クリソベリルにまつわる逸話

      クリソベリルがいつ発見されたのかについては、はっきりとわかっていません。古くから存在してきたとされるクリソベリルですが、ほかの宝石との差別化がされておらず、明確な歴史が残っていないのです。

      そんなクリソベリルが歴史に初めて登場するのは、1789年のことです。それまでは緑柱石の一種であると考えられてきたクリソベリルですが、1789年にドイツの地質学者アブラハム・ゴットロブ・ヴェルナーによって、緑柱石ではなく、独立した鉱物であることが発見されました。

      19世紀には、イギリス王室のコノート侯爵がフィアンセにクリソベリル・キャッツアイをあつらえた婚約指輪を贈ったとされています。これにより、クリソベリル・キャッツアイは人気の宝石となり、ジュエリーとして楽しむ人が多くなりました。

      当時の原産国であったスリランカは、イギリスのヴィクトリア女王に313カラットもの大きなクリソベリル・キャッツアイを献上したことも、逸話の一つです。

      また、黄緑色をした45カラットの大きさを誇るオーバル・ブリリアント・カットのクリソベリルも有名です。これは「ホープ・クリソベリル(Hope Chrysoberyl)」と呼ばれ、現在はロンドンの自然史博物館が所蔵しています。

      なお、クリソベリルという名は、黄金を意味する「Chrysos(クリソス)」と、緑の宝石を意味する「Beryl(ベリル)」というギリシャ語に由来しています。

      人気を博した19世紀には「クリソライト」と呼ばれていましたが、当時は色味を重視した分類によって名称を付ける傾向が強かったことから、ペリドットやトルマリン、ベリルなども含めてクリソライトと呼ばれていました。

      クリソベリルは、その中でもベリルの変種で光沢が強い宝石であることから、黄金のベリルとして「クリソベリル」と呼ばれるようになったのです。
      ただし、前述したように、実はベリルではありません。

      ■クリソベリルの産地

      クリソベリルは、主に下記の国から産出されます。

      • スリランカ

      • ロシア

      • ブラジル

      • マダガスカル

      • インド

      • タンザニア

      さまざまな宝石が算出されることで知られるスリランカでは、鉄とチタンを多く含む濃褐色のクリソベリルが産出されます。クリソベリル・キャッツアイについては、スリランカが世界で最も古い産地となっていて、現在でも主な原産地となっています。

      ウラル山脈のタコワヤ川流域が主な産地となるロシアは、ヴィクトリア朝時代には主要なクリソベリルの産地でした。現在ではほぼ産出されなくなっていますが、透明度が高い金色のクリソベリルが多いことが特徴です。

      ブラジルは、透明度が高く金色から黄緑色の高品質なクリソベリルが産出されることで知られています。ミナス・ジェライス州などが主な産出地となっていて、クリソベリル・キャッツアイの産出国としても有名です。

      世界屈指のルビーの産地として知られるマダガスカルですが、透明度が高いクリソベリルが産出されていたことでも有名です。最大で径10cmにもなる大きさの原石が産出されることもありましたが、現在この産出地は枯渇しています。

      近年ではマダガスカル島南東部のイラカカ鉱区や東海岸に近いアンディラメナが主な産出地で、交差三連双晶の結晶が多いことでも知られています。

      タンザニア産のクリソベリルは品質が良く、人気が高まっています。バナジウムが含まれていることから、ミントグリーンの色味をしていることが特徴です。インドでは、オリッサ州のチンタバリ鉱床からライムグリーン色のクリソベリルが発見されました。
      これはパロット・クリソベリルと呼ばれ、現在でも人気が高くなっています。クリソベリル・キャッツアイが多く産出されることでも知られているインドですが、6年ほどしか採掘されなかったことから、希少であることが特徴です。

      2.鉱物・原石としてのクリソベリル

      鉱物・原石としてのクリソベリルも、とても魅力的です。
      ここからは、その組成や原石の形状などについてご紹介します。

      ■組成について

      クリソベリルの組成は、下記の通りです。

      英名 Chrysoberyl (クリソベリル)
      和名 金緑石(きんりょくせき)
      成分 Al₂BeO₄
      結晶系 斜方晶系
      モース硬度 8.5
      屈折率 1.74 - 1.76
      劈開 明瞭~不明瞭
      茶、黄、黄緑
      主な産地 スリランカ、ロシア、ブラジル、マダガスカル、インド、タンザニア

      鉱物としてのクリソベリルは酸化鉱物に分類され、ベリリウムとアルミニウムと酸素で構成されています。

      自然の中で長時間圧縮されて作られるクリソベリルは、その過程でインクルージョンが発生することにより、クリソベリル・キャッツアイになることがあります。これは、管状インクルージョンが平行に発生したり、含まれている針状のルチル・インクルージョンが結晶の内部で平行に並び光を反射したりすることによる現象です。

      クリソベリルは黄色~黄緑色のものが一般的ですが、この黄色は微量の鉄によるものです。鉄の含有量が多くなると、黄色から褐色やオレンジ色になります。この鉄に加えてクロムが微量含まれると、緑の色味が増し黄緑色になります。

      また、バナジウムを含むと、ミントグリーンのパロット・クリソベリルになる仕組みです。
      クロムの含有量が多くなりバナジウムが含まれると、変色効果が表れ、変種であるアレキサンドライトとなります。

      クリソベリルはモース硬度が8.50と高く劈開性も強くないため、耐久性が高いことが特徴です。 

      ■クリソベリルの原石

      ≪双晶をもった金緑石の結晶≫
      (wikipedia掲載画像)
      https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Chrysoberyl-282796.jpg#metadataによる

      クリソベリルの原石は、変成岩やペグマタイトなどから産出されます。その結晶は斜方晶系で、120度交差した三連双晶が一般的です。ガラス状の強い光沢があり、多くが透明や半透明ですが、黄色や緑色、褐色などさまざまな色のものもあります。

      ハートのような形をした、双晶の原石もあります。クリソベリルは本来であれば斜方晶系なので菱形の結晶になるはずですが、2~3つの結晶が貫入することで、このような形状になる仕組みです。

      ■鉱物としての魅力

      交差三連双晶が多いクリソベリルの原石の中には、まるで花や星のような美しい形をしたものがあります。このような美しい原石はコレクターからの人気が高く、その色味や透明度によって表情が変わることも鉱物としての魅力です。

      また、3つの結晶が貫入して六角形となった「輪座双晶(りんざそうしょう)」も、コレクターの羨望の的となっています。

      3. クリソベリルをより楽しむために

      クリソベリルは、宝石や鉱物としてだけでなく、加工品などで楽しむのもおすすめです。
      誕生石にも指定されているので、ぜひその魅力を深めてみてください。

      ■誕生石・石言葉

      2021年に誕生石が改定されたことにより、クリソベリル・キャッツアイは2月の誕生石に追加されました。クリソベリルの石言葉には、「ありのままの自分」「静かに見守る」「和」などがあります。

      なお、クリソベリル・キャッツアイの石言葉は「驚嘆」で、「その美しさに驚嘆する」という意味があります。

      ■日常使いのジュエリーとして

      クリソベリルは、さまざまな角度の切子面が組み合わされているファセットカットによって、非常に強く輝くことが特徴です。
      ダイヤモンドやルビー、サファイアに次いで耐久性が高いことから、ペンダントやリングなど、幅広く使用できます。


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      4. まとめ

      一世を風靡した19世紀頃から、日常使いのアクセサリーとして親しまれていたクリソベリル。変種の知名度の高さから、存在感が大きいとは言い難いクリソベリルですが、その輝きの強さ耐久性の高さ色の美しさは他の宝石に引けを取りません。
      さまざまな色のものやキャッツアイ効果があるものもあるので、ぜひお好みのものを見つけてみてください。


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      この記事を書いた人

      Aria

      TOP STOneRY / 編集部ライター

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