2023/12/19

コーネルピンはコレクター渇望のレアストーン!色も個性も豊かな宝石の秘密

「コーネルピン」という宝石名を聞いてピンときたあなたは、かなりの宝石通です。

コーネルピンはレアストーンのなかでも希少性がとくに高く、コレクターが渇望してやまない宝石です。

カラーバリエーションも豊富で、多色性やキャッツアイ効果、蛍光性など多くの個性も魅力の一つ。

今回は20世紀に入ってから発見され、以降現在まで希少性が続くコーネルピンを、詳しく解説します。混同されやすい宝石や、識別のポイント、鉱物学的な情報もまとめました。

レアストーン愛好家ならずとも注目のコーネルピンについて、詳しくなりましょう!


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1. 宝石・ルースとしてのコーネルピン

はじめにコーネルピンを、宝石・ルースの観点から解説します。

コーネルピンは1884年に発見され、1912年に宝石質の石が見つかった比較的新しい宝石です。

いまでも宝石質の産出量は極めて限られており、ほとんどがコレクター向けに流通しています。

有数のレアストーンでもあるコーネルピンは、愛好家が熱いまなざしを注ぐ大注目の石です。

■高品質なコーネルピンとは

コーネルピンの品質は、次の3つの要素で決まります。

  • 色合い

  • 内包物・傷の少なさ

  • ルースが持つ個性

カラー

コーネルピンは、さまざまな元素から成る宝石です。
化学組成の幅広さゆえ、色のバリエーションも多彩です。


<コーネルピンのカラーバリエーション>

  • 暗褐色

  • ブラウン

  • 明るいグリーン

  • 明るいブルー

  • 濃いグリーン

  • ピンク

  • ブラック

  • 無色(カレーレス) など


このうち、もっとも価値が高いとされるのは濃いグリーンです。
エメラルドと見紛うほどの鮮やかなグリーンを呈するコーネルピンがあり、人気・価値ともに計り知れません。

コーネルピンの色合いは、含有する微量元素が決定すると考えられています。

グリーンはバナジウム由来です。またブルーは、バナジウムを含みません。
ただコーネルピンの発色要因は、まだ詳しくわかっていないようです。
未知の領域が残る、神秘性が魅力の石でもあります。

明るい色合いのコーネルピンも人気があります。
淡いグリーンやブルー、イエローは見た目にもさわやかで、クリアな輝きを放ちます。

インクルージョン

他の宝石の例に漏れず、コーネルピンのルースもインクルージョン(内包物)や傷が少ないほど、高い評価を得ます。

ただしルチル状のインクルージョンがキャッツアイ効果をもたらすと、それは新たな魅力や価値として高く評価されます。

一般的には透明度が高く美しい個体ほど、価値が高いと考えて差しさわりありません。

コーネルピンの多色性

    多色性とは宝石を見る角度によって、見える色合いが変化する効果です。光源の影響は受けません。

    コーネルピンが何色に変化するかは、個体によって異なるのも興味深いポイントではないでしょうか。

    ブラウンからカラーレス、グリーン、イエロー、ピンク、ラベンダーなど、さまざまな色合いを楽しめます。

    コーネルピンのカッターには、最高の色を引き出すファセットを決める技量が求められます。
    とりわけ「いかにグリーンを際立たせるか」は、カッターが細心の注意を払うところです。

    多くの色を持つコーネルピンのなかでも、グリーンはもっとも人気のある色。グリーンがもっとも美しく見えるように、結晶軸を見極めてファセットを決めます。

    【豆知識】 多色性とカラーチェンジ効果
    多色性は光源に関わらず、角度を変えると色が違ってみえます。

    ◎ 多色性を持つ宝石の例

    • アイオライト
    • アパタイト
    • クンツァイト
    • トルマリン
    • ブルージルコン
    • ペリドット
    • など

    似た光学効果にカラーチェンジ効果があります。カラーチェンジとは宝石を照らす光源を変えると、見える色が変わる効果です。
    アレキサンドライトは、自然光・蛍光灯下では深緑色や青緑色に見え、白熱灯を照射すると赤紫に色が変わります。

    ◎ カラーチェンジを持つ宝石の例

    • アレキサンドライト
    • カラーチェンジサファイア
    • カラーチェンジガーネット
    • など

    コーネルピンのキャッツアイ効果

      コーネルピンの内部に針状ルチル(金紅石)やグラファイト(炭素からなる元素鉱物)が整列し、キャッツアイ効果を見せる個体があります。

      キャッツアイ効果を持つコーネルピンはレア中のレアで、見つけたその時が間違いなく一期一会です。

      GIA(米国宝石学会)でも滅多にお目にかかれない希少性だそうです。
      ちなみにキャッツアイコーネルピンは、スリランカ産のものが多いようです。

      コーネルピンの蛍光性

        紫外線ライトを照射すると、蛍光するコーネルピンもあります。ただしこちらも、ごくごく稀。
        ミネラルショーに十数個出品されているコーネルピンのうち、1つか2つといった程度でしょう。

        タンザニアやケニアで採れたコーネルピンに、蛍光する性質のものがあるようです。スリランカ産のコーネルピンは、蛍光しません。

        ■コーネルピンと混同されやすい宝石

        コーネルピンと混同されやすい、他の宝石も見ておきましょう。

        石種ごとの違いや見分け方を押さえておくと、コーネルピンに対する愛着がさらに増すはずです。

        トルマリン、ベリル

        コーネルピンは希少性ゆえに知る人ぞ知る宝石、いやほとんど誰も知らない宝石だった時代があります。

        そんなとき、「青色や緑色、茶色、黄色、オレンジ色、黒色、無色、クリーム色、ピンク色…と、カラーバリエーションが豊富な宝石」があらわれたら、人々は何だと思うでしょう?

        トルマリンだ!」と思っても、仕方ないかもしれませんね。

        あるいはエメラルドのような鮮やかなグリーンの個体を前にしたら?

        「ベリルだ!」と考える人がいても不思議ではありません。
        ※ ちなみにエメラルドはベリル系の宝石です。

        鑑別技術が発達していなかった頃は、宝石の物理的特性に頼って識別していました。そしてトルマリンもベリルも、他の宝石としばしば混同されてきた歴史を持ちます。

        レアストーン中のレアストーンであるコーネルピンが間違えられるのも、やむを得なかったことでしょう。

        エンスタタイト

        エンスタタイトは、インドやミャンマー、スリランカ、アメリカなどで採れる黄色褐色~淡緑色系の宝石です。

        和名を頑火輝石(がんかきせき)といいます。およそ1,400℃の高温でないと溶けないことから、この名が付きました。

        さてこのエンスタタイト、見た目も性質もコーネルピンととてもよく似ています。
        どちらも「スリランカで採れる、淡いグリーンの宝石」です。

        硬度はコーネルピンが6.0~7.0、エンスタタイトは5.0~6.0。ルースになる前であれば、硬度の違いで区別できるでしょうか。

        ちなみに劈開はコーネルピンもエンスタタイトも2方向に良好です。

        屈折率に至っては、コーネルピン1.66~1.69、エンスタタイトは1.65~1.68…、いったいどう区別すれば良いのかと、悩むほど似ています。

        ルースになったコーネルピンとエンスタタイトを区別する方法は、2つです。

        まず、内包物から。コーネルピンは燐灰石やルチル、ジルコンの結晶を含むことが多く、これを特徴として識別できます。

        またエンスタタイトは特徴的なスペクトルを持っており、緑の部分(506nm)で光を吸収する点からも識別が可能です。

        プリズマティン

        プリズマティンは、化学的・物理的性質ともにコーネルピンにとてもよく似た宝石です。

        プリズマティンは「ライムグリーン」「ティーグリーン」とも称される美しいグリーンが特徴で、緑色の宝石を好むコレクターを中心に、徐々に注目が集まっています。

        プリズマティンは、コーネルピンと酷似した性質のため、コーネルピンの亜種だと考えられてきました。

        しかし現代では、独立した別個の種と認められています。

        コーネルピンとプリズマティンを区別するポイントは、ホウ素(B)です。

        ただし、コーネルピンもプリズマティンもホウ素を含みます。したがって「ホウ素を含むか否か」ではなく、「含有するホウ素の量」によって、区別します。

        具体的な数値は、以下のとおりです。

        含有するホウ素の量(apfu) 宝石名
        0.00~0.45 コーネルピン
        0.45~0.55 判別不可
        0.55~1.00 プリズマティン

        ※ レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)で検査

        ちなみにGIA(米国宝石学会)が2019年に発行したサマリーは、コーネルピンとプリズマティンの識別実験について言及しています。

        (※ 参照:Separation of Kornerupine and Prismatine|GIA)

        実験では、コーネルピンかプリズマティンかわからない30の石を使いました。
        先に紹介した手法でホウ素含有量を調べたところ、以下の結果になったそうです。

        • コーネルピン:2

        • プリズマティン:20

        • 識別不可:8

        この結果からも、コーネルピンの希少性が見て取れるのではないでしょうか。

        ■コーネルピンの逸話

        コーネルピンは1884年、グリーンランド南西部のフィスケルネス(Fiskernäs)ではじめて見つかりました。

        「コーネルピン」という響きもかわいらしい名前は、この石を発見したデンマーク人地質学者のアンドレアス・ニコラウス・コーネルプ(Andreas Nikolaus Kornerup/1857-1883)にちなんでいます。

        コーネルピン(Kornerupine)の語尾にある「-ine」は、ギリシア語に由来します。「〜に似た」「〜の性質の」という意味を添える接尾辞です。

        「コーネルプさんの」というニュアンスで、コーネルピンという名前になったのですね。

        ちなみにこの接尾辞「-ine」は、他の鉱物・宝石名でもたびたび見かけます。

        • Almandine(アルマンディン/アルマンダイン、鉄礬柘榴石)

        • Spessartine(スペサルティン、満礬柘榴石)

        • Serpentine(サーペンタイン、蛇紋石)


        さて話をコーネルピンに戻しましょう。

        コーネルピンは鉱物としては、1884年に見つかっています。
        ところが宝石質の石が初めて見つかったのは、28年も経った1912年のことでした。

        ここが、コーネルピンが希少な理由でもあります。
        コーネルピンが採掘できても、宝石質のものはほとんど採れないのです。

        コーネルピンの希少性は、産地との関連からも理解できます。
        産地について、次の章で詳しく見てみましょう。

        ■コーネルピンの産地

        コーネルピン自体は、世界の比較的広い範囲で産出します。

        主な産地はタンザニアやスリランカ、ミャンマー、ケニア、マダガスカル、カナダ、南アフリカなどです。

        日本にはスリランカ産やタンザニア産のコーネルピンが入ってきています。

        はじめて宝石質のコーネルピンが見つかったのも、マダガスカルにあるペグマタイト鉱床でした。

        ただし、宝石質のコーネルピンが採れる場所は、かなり限られているようです。

        現在、コーネルピンの主要な産地はスリランカです。スリランカの漂砂鉱床からは、数キログラム単位で原石が採掘されることもあります。
        ただしそのすべてが、宝石質とは限らないのが惜しまれます。

        スリランカ産のコーネルピンは、落ち着いたシックな色合いが特徴です。ごく稀に渋めのパステルカラーの個体が採れることもあります。

        ミャンマーのモゴク、カナダのケベック州にある聖マリア湖も産地として知られています。

        淡青色や淡緑色など、明るく美しい色合いを持つ高品質なコーネルピンは、ケニアとタンザニアの国境地帯を流れるウンバ川から採れます。

        ウンバ川では、ベリル(緑柱石)のようなキリッとした緑色や、アクアマリンを連想させる淡いブルーなど、魅力的な個体が採れています。

        ただし、ケニアやタンザニアで見つかるコーネルピンは、そのほとんどが小さな結晶です。

        カットすると1カラット未満になるような結晶ばかりで、大きくて美しいルースになれるものはほとんど採れません。

        【豆知識】
        ウンバ川(Umba River)流域には、広大な宝石漂砂鉱床があります。1950年代に発見されました。

        この地域からはコーネルピンの他、次の宝石も産出します。

        • ルビー
        • サファイア
        • ガーネット
        • スフェーン
        • スキャポライト
        • スピネル
        • トルマリン
        • ジルコン
        • など
        川底の堆積物から宝石が見つかることもあるそうです。

        2. 鉱物・原石としてのコーネルピン

        ここからはコーネルピンを、鉱物や原石の観点から深めていきましょう。

        ■組成について

        コーネルピンの組成情報は、以下のとおりです。

        英名(カタカナ) Kornerupine(コーネルピン)
        和名 コルネルップ石
        成分 (Mg,Fe2+,Al,□)10(Si,Al,B)5O21(OH,F)2
        ※ ホウケイ酸マグネシウム-アルミニウム
        結晶系 直方晶系(斜方晶系)
        モース硬度 6.0~7.0
        屈折率 1.66~1.69
        劈開 2方向に良好
        青色、緑色、茶色、黄色、オレンジ色、黒色、無色、クリーム色、ピンク色 など
        主な産地 タンザニア、スリランカ、ミャンマー、ケニア、マダガスカル、カナダ、南アフリカ など

        化学式からは、非常に多くの元素が含まれていることが分かります。

        この化学組成の多様性が、コーネルピンの特性そのものです。コーネルピンになるには、これだけの組成条件をクリアする必要があるということです。

        ■原石の形状

        コーネルピンは、その多くが小さな結晶で産出します。

        形状もさまざまです。礫状や柱状、塊状、放射状、繊維状の集合体で見つかることもあります。

        漂砂鉱床で見つかることも多く、水磨礫(すいまれき)であろう角の取れた結晶も流通しています。

        【豆知識】水磨礫とは
        水の流れによって岩石が磨耗し、研磨されてできた礫。磨耗されるうちに母岩は失われ、鉱物だけが露見したものを呼ぶ。

        ■鉱物としてのコーネルピン

        コーネルピンは、スカルンやペグマタイトの変成によってできた鉱物です。

        シリカ(二酸化ケイ素・SiO2)が少なく、アルミニウムが豊かな変成岩や火山岩、堆積岩に多く産出します。
        またコーネルピンになるためのホウ素がある場所であることも欠かせません。

        コーディエライト(菫青石・きんせいせき)やオーソクレース(正長石)、白雲母と共に生成します。

        3. コーネルピンをより楽しむために

        レアストーン中のレアストーンといわれるコーネルピンも、上手に探すと比較的気軽に手に入れられる可能性があります。

        コーネルピンのルースは、TOP STONEをはじめとするルース専門店で探してみてください。
        定期的にショップをチェックしましょう。
        仕入れのタイミングが合えば、高品質なコーネルピンをお得に手に入れられる可能性があります。

        手に入れたコーネルピンは、せっかくなら身近に置いて日常的に楽しみましょう。

        コーネルピンがもっと好きになるヒントをお届けします。

        ■コーネルピンの石言葉

        コーネルピンの石言葉は「個性」「原動力」「寛容」などです。

        広く豊かな心を持ちたい人、自分らしさを活かして輝きたい人に向いています。

        ■アクセサリーやビーズとして

        流通するコーネルピンは、ほとんどがコレクター向けのルースや結晶状です。ただ硬度が6.0~7.0と十分高いため、日常使いのアクセサリーとして加工するのもおすすめです。

        小さめのカラットが多いコーネルピンは、華奢で上品なつくりのリングにぴったり。見る角度によって色が変わる多色性を、手の動きとともに楽しめます。
        クリアでキリっとした色味の石を選べば、小さくても存在感のあるリングができあがります。

        ごく稀に、ビーズになるコーネルピンもあります。
        ルースには不向きな濃色のコーネルピンも、ビーズになれば新たな個性として息を吹き返します。
        コーネルピンの多彩な色合いを、グラデーション状に連ねても素敵です。


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        https://www.topstone.jp/help/faq


        4. まとめ

        コーネルピンは宝石質の結晶が少なく、レアストーン愛好家から人気がある石です。

        発色要因が解明されていないなど未知の部分も多く、これからに注目が集まります。

        豊かなカラーバリエーションに加え、見る角度を変えると色が変化する多色性やキャッツアイ効果、蛍光性など、非常に個性豊かな石でもあります。

        コーネルピンのルース一つひとつを見比べても、それぞれに魅力があり、いつまでも見ていたくなる美しさを持っています。

        レアストーンでもあるコーネルピンをお探しなら、TOP STONEのショップを覗いてみてください。
        きっと、好みにあうコーネルピンを見つけられるでしょう。


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        みゆな

        TOP STOneRY / 編集部ライター

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