2023/11/27

シトリンの魅惑は「色」にあり!フレッシュな黄色が生まれる秘密

数多ある黄色い宝石の中でも、流通量が多く入手しやすいのがシトリンです。フレッシュな黄色から褐色、茶色に近い色味まで、カラースケールが幅広く、好みの黄色を探し求める旅路がコレクター心をくすぐります。

クォーツの一種でありながら、トパーズのような存在感を見せる不思議な宝石・シトリン。この記事ではそんなシトリンの魅力をあますことなく解説します。

記事の前半は宝石・ルースの観点から、後半は原石・鉱物の観点からまとめました。興味の赴くままに読み進めてみてください。


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1. 宝石・ルースとしてのシトリン

古代から多くの人を魅了してきたシトリンは、手頃な価格帯で流通する身近な石です。しかし手頃で多くの人が持っているからこそ、自分だけの・品質が良く珍しいシトリンを手に入れたいと願うのはコレクターなら当然思うこと。

ここでは宝石・ルースの視点から、シトリンの品質や魅力を解説します。

■高品質なシトリンとは

「シトリン=淡黄色」とイメージする人も多いかもしれませんが、実はシトリンのカラーには幅広い濃淡が見られます。

もっとも品質が良いとされるシトリンのカラーは茶色がかっていない、彩度の高い黄色から赤みがかったオレンジ色です。石英ゆえにクラックやインクルージョンがないものは稀ですが、だからこそ透明度が高く不純物を含まない石は珍重されます。

比較的大ぶりの原石が採掘されやすいのも、クォーツ種ならではの特徴です。20カラットまでは入手しやすいといわれ、デザイナーやクリエイターがこぞって独特のカットを施しシトリンの魅力を高めています。

■シトリンのカラー

シトリンは茶色・褐色~淡黄色、レモン色に近い色まで幅広いグラデーションを呈します。

濃度が高く赤味の強いシトリンは「マディラ(Madeira)」と呼ばれます。スペインのマディラでつくられるワインの名称が由来です。

濃いオレンジ色のシトリンは「パルメイラ(Palmeira)」、さらに明るい黄色は「バイーア(Bahia)」と呼びます。この2つの名前は、最初に採掘された地名にちなんでいます。

黄色から褐色は、宝石の中でも人気のカラーです。とりわけシトリンは耐久性や価格の手頃さもあいまって、もっとも人気がある黄色い宝石の1つとなっています。

【豆知識】
シトリンとカラーが似ている、黄色い宝石を集めました。あなたの好みは、どんな黄色でしょうか?

  • スモーキークォーツ
  • グリーン味を感じさせるスモーキークォーツは、シトリンと良くにています。
  • インペリアル・トパーズ
  • 多くの色を持つトパーズのうち、こっくりとしたオレンジ色の石です。
  • イエロー・ベリル
  • ベリリウム元素を含む鉱物で、黄色を呈する石です。
  • スキャポライト
  • メイオナイト(灰柱石)とマリアライト(曹柱石)が混じった石です。黄色のほか、紫色・茶色・黒色があります。
  • イエロー・アパタイト
  • アパタイトのうち、フレッシュなレモンのような黄色を呈する石です。
  • ゴールデン・カルサイト
  • 透き通った黄金色をした方解石です。

■シトリンの歴史

シトリンの歴史は古く、紀元前3世紀ごろの古代ギリシア・ヘレニズム時代には宝石として珍重されていたといわれています。時が下り2世紀には、ギリシアやローマでインタリオや、カボションの指輪石として使われました。

国立西洋美術館には、無処理の天然シトリンがセットされた「シトリンの指輪」(紀元前2-1世紀)が所蔵されています。※ 現在は展示されていません。

加工の歴史は古いものの、シトリンはアメジストほどは広がりませんでした。シトリンが広がらなかったのはひとえに、産出量が限られていたのが理由です。

天然のシトリンは古代から非常に希少で、アメジストほど多く産出されませんでした。さらに宝石としてのクオリティを持った石はめったに採れないことも、シトリンの希少性に拍車をかけています。

現代でも天然のシトリンは、ほぼ流通していません。私たちが見かけるシトリンのほとんどが、アメジストを熱処理し色調整したものです。アメジストを熱処理するとシトリンになる原理は、のちほど「鉱物・原石について」の章で詳しく解説します。

■シトリンとトパーズ

ヴィクトリア朝時代(1837~1901年)のイギリスでは、シェリー酒のような色をしたトパーズが大人気でした。このトパーズはドイツ・ザクセン地方で採れていましたが、産出量が非常に限られており価格高騰が起きていました。

そこに目をつけた宝石商人は、色味の似た別の石を「トパーズ」と詐称して売り出します。この時に使われた淡黄色の石が、シトリンです。当時はスコットランドやフランス、ドイツなどからシトリンが採れていたと考えられています。

さて現代の私たちでも、パッと見ただけでは区別が難しいシトリンとトパーズは、実際どのような違いがあるのでしょうか。以下にシトリンとトパーズのおもな違いをまとめました。

シトリン トパーズ
成分 二酸化ケイ素(SiO2 ケイ酸塩鉱物(Al2SiO4(F,OH)2
カラー 淡黄色~淡緑黄色、淡褐黄色 無色、黄色、褐色、青色、淡緑色、オレンジ色、ピンク色、紫色 など
劈開 なし あり(結晶の上下方向)
硬度 7 8

シトリンとトパーズは、そもそも成分が異なります。またシトリンは黄色系色のみ存在するのに対し、トパーズは黄色以外にも豊富なカラーバリエーションがあります。

劈開の有無、モース硬度も違います。

ただし、淡黄色のルースを目の前にして「シトリンか・トパーズか」を肉眼で判定するのは専門家でも困難で、鑑定に出すよりほかにありません。

【豆知識】 「持ってみる」と区別できる場合も!

多種多様な天然石を扱い慣れているTOP STONEのスタッフは、似た石を区別する際に「持ち上げてみる」ことがあります。
石は種類によって比重が異なるため、似た石も持ちあげて重さを比べると区別できるケースがあるためです。
シトリンとトパーズの比重は、トパーズの方が大きいです。

・ シトリン:2.65
・ トパーズ:3.56~3.57、3.50~3.54

つまり同じくらいの大きさの石を持ち比べると、トパーズの方が重いため区別できるというわけです。丸いビーズでつくられたブレスレットサイズになると、違いが顕著にわかります。もしシトリンとトパーズの区別に迷ったら、試してみてくださいね。

■「シトリン」という名前の由来

「シトリン」は柑橘類「シトロン(Citron・クエン樹)」を彷彿とさせる色合いから、その名がつけられました。シトロンはインド原産の柑橘類で、ラテン語の「シトリーナ」に由来します。実はシトリーナも「黄色」という意味を持っています。

シトロンの色は淡い黄色で、うっすら緑を帯びています。果実はジャムや飲料の果汁などになります。フランスの「ウィークエンドシトロン」と呼ばれる、レモン果汁を加えたパウンドケーキも人気です。

■シトリンの産地

シトリンを生み出す石英(クォーツ)は世界中で産出されますが、天然シトリンとなると産出量が限られます。宝石品質の石は、さらに希少です。

高品質なシトリンは、クォーツの一大産地であるブラジルで採れます。またマダガスカルミャンマー、カナダなどでも品質の良いシトリンが産出されます。

2. 鉱物・原石としてのシトリン

ここからはシトリンの魅力を、鉱物・原石の視点から紹介します。カラーバリエーション豊富なクォーツのなかで、なぜシトリンは黄色なのかもわかります。

■組成について

シトリンの組成を以下にまとめました。

英名(カタカナ) Citrine(シトリン)
和名 黄水晶
成分 SiO2
結晶系 六方晶系(三方晶系)
モース硬度 7
屈折率 1.54~1.55
劈開 なし
(濃淡)黄色、帯緑黄色
主な産地 ブラジル、インド、スコットランド、スイス、フランス、スペイン、ドイツ、マダガスカル、チリ、ジンバブエ、日本、スリランカ

■原石の形状

天然のシトリンも、アメジストを色調整したシトリンも組成はクォーツです。したがって原石は他の水晶と同じように六方柱状の結晶で産出します。

結晶は晶洞タイプの群晶体で産出することが多く、部分によって色が異なるものもあります。クォーツ種は加熱の温度により、色がかわるためです。

【豆知識】
アメジストを約500℃で加熱すると、シトリンになります。また400℃で薄紫色、500℃で黄色、600℃で乳白色になったとする実験結果もあります。

※ 参考: Study on the effect of heat treatment on amethyst color and the cause of coloration | Scientific Reports

■シトリンのつくられ方

天然のシトリンは大変希少なため、現在流通しているシトリンの多くは産出量の多いアメジストを色調整してつくられています。アメジストを加熱処理すると色が黄色く変化し、シトリンになるためです。

天然のシトリンは、地中にあるアメジストがマグマの熱や放射線の影響を受けて色が黄色くなりできあがります。熱せられる時間や温度により、色合いが変わるともいわれています。

人の手によってつくられるシトリンは、天然シトリンがつくられる過程を人為的になぞらせて完成します。

ちなみにシトリンは、天然・人工にかかわらず鑑定書には「通常・加熱」と記載されます。ほとんどのシトリンはアメジストの加熱処理でできているため、非加熱(天然)・加熱(人工)それぞれの可能性があるものの、まとめて「通常・加熱」と記載します、というルールになっているためです。

明らかに人為的な加熱処理の痕跡が見られる石には「加熱処理」と書かれます。

「通常・加熱」と「加熱処理」の違いを押さえると、鑑別書をより深く理解できるようになります。

(参考:「宝石もしくは装飾用に供される物質の定義および命名法」|一般社団法人 宝石鑑別団体協議会)

アメジストの加熱による色変化は883年にブラジルで発見されました。なぜ、アメジストを加熱するとシトリンになるのでしょうか。

まずアメジストの紫色は、無色透明なクォーツに鉄が取り込まれたことで発色している点を押さえましょう。鉄はインクルージョンではなく、クォーツをつくる二酸化ケイ素結晶分子の一部と置き換わっています。

さてクォーツにとって鉄は、いわば不純物です。不純物があると結晶構造の一部が乱れ、特定の光の波長だけを吸収する現象が起こります。これを「カラー・センター(着色中心)」と呼びます。アメジストは無色透明なクォーツが鉄イオンを含んだために黄色の波長だけを吸収し、紫色に見えるようになった石ということです。

このアメジストを350~550℃で加熱すると、結晶構造がさらに変化します。熱エネルギーを受けた鉄イオンが安定しようとして電子を取り込み(電荷移動)、四価から三価になります。この電荷移動によりカラーセンターのエネルギー準位が変化し、今度は紫色の波長を吸収するようになります。
紫色の光が吸収された結果、補色である黄色が見えるようになるという仕組みです。

ただし、アメジストのすべてがシトリンになるわけではありません。鉄イオンの含有量や石内部の配分により、部分によって異なる色変化を見せることがあります。

アメジストの一部分だけが黄色く変色しバイカラーになった石はアメトリンと呼ばれます。1つの石に紫と黄色が同居する対照性は、見る人に光と影を感じさせるかもしれません。

シトリンやアメジストを長い時間、直射日光に当てると退色する場合があるのも、石が太陽光の影響を受けたためです。シトリンは熱に弱い石でもあるため、直射日光や熱を避けて保管してください。

【豆知識】
スモーキークォーツを加熱処理してシトリンをつくる方法もあります。スモーキークォーツは、結晶内の微量アルミニウムが天然放射線の影響で結晶構造が変化し、独特のカラーを呈するようになった石です。
スモーキークォーツに鉄イオンが含まれていると、アメジストと同じように加熱により鉄イオンの配置が変わり、黄色を呈するようになるといわれています。

3. その他の楽しみ方

淡く透明な黄色をしたシトリンは、日常づかいからフォーマルなシーンまで幅広く活躍させたい石です。
シトリンをもっと気軽に、もっと楽しむために役立つ情報をまとめました。

■誕生石・石言葉

シトリンは11月の誕生石です。全体的な淡黄色や、見る角度や部分によって顔を出す幾分かの橙色は、11月に見ごろを迎えるイチョウやモミジの紅葉と印象が重なります。小春日和の柔らかな日差しが木々に射しこみ葉を透き通らせる光景は、まさにシトリンそのものです。

実はトパーズも11月の誕生石です。かつてトパーズと呼ばれていたシトリンが、いまも同じ11月の誕生石として名前を並べている事実を興味深く思います。

シトリンの石言葉は「友愛と希望、友情、繁栄」です。太陽をイメージさせるエネルギッシュな色合いから悪い縁を切り、明るい未来を引き寄せる力を持つとされています。

【豆知識】
シトリンは結婚13周年を記念する宝石でもあります。日本では5周年や11周年に使われる場合もあります。
結婚13年といえば、夫婦関係も円熟しはじめるころ。友情や友愛を石言葉とするシトリンを贈りあい、人生の友ともいえるパートナーをねぎらうのも素敵な時間となりそうですね。

■アクセサリーやビーズとして

産出量の多いアメジストの色加工でつくられるシトリンは、大きめのルースが手頃な価格で流通しています。劈開がないためどのようなカットにも耐えうる強さを持っている点も、シトリンの魅力の1つ。デザイナーや研磨師が石の個性と輝きを最大限に引き出すために腕を競った結果の輝きを、私たちは目にすることができます。

上品でいてエネルギッシュな印象を与えるシトリンは、アクセサリーやジュエリー向けにも人気の素材です。セレブにも人気で、イギリスのキャサリン皇太子妃が大きなシトリンがついた素敵なリングを持っていることも話題になりました。

クラックやインクルージョンの多いシトリンは、ビーズに加工されます。クラックもビーズになると、細かな光のきらめきを生み出す要素として活躍するから不思議ですね。


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4. まとめ

私たちが見かけるシトリンの多くは、アメジストを加熱し色調整してできたものです。アメジストに含まれる鉄イオンの配列が熱エネルギーの影響で変化し、目に入る色が紫から黄色に変化するのです。色調整の歴史は古く科学的にも立証されていますが、なんとも不思議な現象ではないでしょうか。

シトリンはクォーツ種です。劈開がなく、強度も十分にあります。日常的に使う分には取り立てて気をつけすぎる必要もないため、気軽に身につけて楽しんでみてください。

ただし、長い時間直射日光にさらすと、退色したり色が変化したりするおそれがあります。保管場所にだけ注意すれば、キラキラした黄色の輝きをいつまでもキープできますよ。


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この記事を書いた人

みゆな

TOP STOneRY / 編集部ライター

トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。