2024/03/05

鮮やかなスカイブルーの宝石ヘミモルファイトとは?特徴から楽しみ方まで徹底解説

ヘミモルファイトは南国の海を思わせるような鮮やかなスカイブルーの美しい宝石です。しかしヘミモルファイトの多くが、実はカラーレスや白色だということはご存じでしょうか。

この記事では、そんな希少で美しい宝石ヘミモルファイトについてご紹介します。20年以上天然石の卸売に携わる宝石のプロTOP STONEが、特徴から魅力まで詳しく解説していきます。この機会にぜひヘミモルファイトに興味を持っていただけたら幸いです。


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1.宝石・ルースとしてのヘミモルファイト

まずはヘミモルファイトの特徴や品質など、基本的な情報をご紹介します。レアストーンのため、ヘミモルファイトという名前自体も初めて知る!というかたもいるかもしれません。詳しく知る人は少ないかも…? 一緒にヘミモルファイトがどのような宝石なのか見ていきましょう。

■高品質なヘミモルファイトとは

鮮やかなスカイブルーが人気のヘミモルファイトですが、実はこの鮮やかな色合いをしたものは非常に少ないのです。カラー以外でも、ヘミモルファイトの品質は透明度やカラットなどさまざまな要素を総合的に見て決められます。

ここではどのようなヘミモルファイトが高く評価されるかを解説します。

カラー

ヘミモルファイトの多くが実はカラーレスや白色で、まれに水色や淡い黄色、淡い緑色、灰色、茶色などのものも産出し、さまざまなバリエーションがあります。

そのなかでも特に希少で宝石として人気なのが、前述のとおり鮮やかなスカイブルーのヘミモルファイトです。微量の銅が含まれることで発色すると考えられています。数あるブルー系の宝石のなかでも珍しい色合いでコレクターを中心に人気があり、価値が高まっています。同じような色合いのターコイズも人気がありますが、ヘミモルファイトはターコイズに比べ、ほのかに透明感があるのが特徴です。

透明度

ヘミモルファイトはインクルージョン(内包物)が入りやすい石です。水晶やベリルなどと同じケイ酸塩鉱物の一種であるヘミモルファイトは、成長過程においてさまざまな不純物を含みやすい性質を持っています。そのためほとんどは不透明から半透明で、インクルージョンが少なく、透明度が高いものはおのずと希少価値が高まります。

カラット

カラットは宝石の重さのことです。1ct(カラット)は0.2gに相当し、一般的に宝石はカラットが大きいほど高く評価されます。

ヘミモルファイトは産出量が少ない上、もろく割れやすいため、サイズが大きく色鮮やかで高品質なヘミモルファイトは原石の状態であっても非常にコレクター熱の高い宝石です。

■ヘミモルファイトの輝き

    ブルー系の宝石は数多くありますが、ヘミモルファイトの鮮やかなスカイブルーの色合いは大変珍しく唯一無二です。自然が生み出したとは思えないほど印象的で美しい色合いがヘミモルファイトの大きな魅力といえるでしょう。鮮やかなスカイブルーで透明感があり、ミルキーな色合いのヘミモルファイトが宝石として特に人気があります。

    非常に繊細な鉱物のためカボションカットが施されることが多く、カットが施されたヘミモルファイトはつややかで自然な光沢が見られます。

    また、濃い青色で高品質なヘミモルファイトを「ステラエスペランサ(希望の星)」と呼ぶことがあり、別名「エスペランサ」としても流通しています。

    ■ヘミモルファイトの産地

    ヘミモルファイトは亜鉛鉱床の酸化帯から産出します。おもな産地としてはアメリカのネバダ州、カリフォルニア州、中国の雲南省などが有名です。イタリアやメキシコ、カザフスタン、ペルー、ブラジルなどでも産出し、産地は世界中に広く分布していますが、宝石品質のヘミモルファイトが産出する鉱床はごくわずかです。

    実は日本でも産出しており、岐阜県の神岡鉱山や富山県の亀谷鉱山などが知られています。産地によって結晶の形状や色などの特徴が異なることがあり、それも興味深い特徴の一つです。

    2.鉱物・原石としてのヘミモルファイト

    ヘミモルファイトは原石も色や形が美しく、大変魅力的な石です。ここでは鉱物としてのヘミモルファイトについて詳しくご紹介します。

    ■組成について

    ヘミモルファイトの組成は以下のとおりです。

    英名 Hemimorphite(ヘミモルファイト)
    和名 異極鉱(いきょくこう)
    成分 Zn4[(OH)2|Si2O7]·H2O
    結晶系 斜方晶系
    モース硬度 4.5~5
    比重 3.35~3.50
    屈折率 1.61~1.64
    劈開 一方向に完全
    白色、無色、淡青色、青綠色、淡黃色、 灰色、褐色
    主な産地 メキシコ、アルジェリア、アメリカ、ス ペイン、ブラジル、ドイツ、イギリス、 ナミビア、ベルギー、ギリシャ、イタリ ア、日本、中国

    ヘミモルファイトは水を含む亜鉛のケイ酸塩鉱物です。結晶の両端の形が異なるため、ギリシャ語で半分を意味する「hemi」と形を意味する「morphe」にちなんで名付けられました。和名を「異極鉱」といいます。言いえて妙ですね。

    また、ヘミモルファイトに由来して結晶の片端はとがり、もう片端は平らな両端の形が異なる形状を「異極像(ヘミモルフィ)」といいます。将棋の駒やホームベースのような五角形でトルマリンや水晶も異極像を見せることで知られています。異極像の鉱物には加熱や加圧によって静電気を帯びる性質があります。

    モース硬度は4.5~5とやわらかく、劈開性(一定の方向に対する割れやすさ)があるため、衝撃を与えると割れてしまうおそれがあります。保管や取り扱いには十分注意が必要です。

    ■原石の形状

    ヘミモルファイトは低温下で亜鉛鉱石の二次鉱物(亜鉛を含む鉱物が分解し、再結晶してできる鉱物)として形成され、葡萄状や塊状、粒状、繊維状、皮殻状など、さまざまな結晶形状で産出します。もっとも代表的なのは岩石の上に葡萄状の集合体を形成しているものです。

    しゅわしゅわもこもことした石とは思えないようなヘミモルファイト、一番イメージに浮かぶあの姿がいわゆる”葡萄状の集合体”と呼ぶ形状です。

    この葡萄状の集合体形がヘミモルファイトの大きな魅力で、まず最初に、亜鉛の鉱石が酸化して変質した部分に高濃度の溶液の丸い凝固物として生じます。ひとつの表面に水滴のように生まれたいくつものヘミモルファイトの点がそれぞれ核となり、もこもことした泡のように成長していくのです。

    こうして成長することを【凝塊結晶(ぎかいけっしょう)】といい、凝塊結晶によってできた微細な結晶の集合形を「コロフォーム」と呼びます。

    このコロフォームは、先にできた結晶にあとからできた結晶が積み重なり、複数の結晶が霜柱のように密集し扇状に広がるのが特徴です。同じような成長を見せる鉱物には、マラカイトやロードクロサイト、カルセドニーなどがあります。

    マラカイトやロードクロサイトの<結晶の輪切り>を見たことがあるでしょうか。木の年輪、あるいはカーネーションの花びらのような模様ができるのが、このコロフォームの特徴です。ヘミモルファイトではマラカイトやロードクロサイトほどくっきりとした模様が出ることはあまりありませんが、結晶の成長の仕方がわかるのはおもしろいですね。

    実は、この葡萄状の集合体形も氷柱の群生が逆立ちしたような霜柱状の結晶形(いわゆる水晶クラスターのような)も、発生の根元の状態は同じなのです。

    霜柱状の場合・・・岩石上に生じた成分の滴から結晶が長く伸びたもの
    葡萄状の集合体形・・・目に見えないサイズで霜柱状に結晶したもの

    で出来あがっています。結晶方位がわずかにずれるだけでここまでまったく異なる形状に成長するのも、とても興味深い特徴です。

    ヘミモルファイトは原石によって結晶の形状や色などの特徴がまったく異なり、同じ鉱物とは思えないほど異なる見た目をしているものも少なくありません。結晶の形によって見つかる色の比率も異なるため、さまざまな原石を集める楽しみがあります。

    また、ヘミモルファイトはスミソナイト(菱亜鉛鉱)やスファレライト(閃亜鉛鉱)などと共生することもよくあります。スミソナイトは見た目にも近そうですが、スファレライトは意外に感じるところですが、そう、和名からわかるとおり、どちらも亜鉛鉱物です。

    ■鉱物としてのヘミモルファイト

    さて、前述に出たスミソナイトですが、やはり昔からヘミモルファイトと間違えやすい鉱物としてスミソナイトが挙げられています。

    ヘミモルファイトはアメリカではかつて「カラミン」という別名で呼ばれていました。ヘミモルファイトに見られるコロフォームの構造が湿地植物の葦が茂っているように見えることから、ラテン語の「カラマス(葦)」が語源となり「カラミン」と呼ばれるようになったようです。

    しかしヘミモルファイトだけでなく、ヘミモルファイトとしばしば共生するスミソナイトも同じく「カラミン」と呼ばれていました。

    今ほど分析技術が発達していなかった時代、特に二次鉱物の集合体のような鉱石は個別の結晶を正確に区別することが難しく、ヘミモルファイトとスミソナイトは同じ鉱物だと考えられ,さらにはスミソナイトがヘミモルファイトと呼ばれていたこともあり、両者の区別をさらに複雑化させています。

    ヘミモルファイトとスミソナイトが重なって産出することもあり、見た目だけで区別することは難しいでしょう。結晶を切った場合、青色の濃い部分がヘミモルファイト、薄い水色の部分がスミソナイトです。しかし、この区別ができるのは現在のように鉱物学が発展し、分析の技術が向上したからといえます。

    両者を簡単に見分けるには標本に塩酸をかける方法があります。スミソナイトは酸をかけると発砲して溶けるのに対し、ヘミモルファイトは発砲せず溶けるという異なる性質があるためです。ただし、この方法では標本が溶けてしまうため破損しても問題ない標本で試す必要があります。勇気があれば、ぜひ…笑 ヘミモルファイトにはいくつか色がありますが、大切な標本を溶かしたくない場合、青い個体でしたら色が薄い方がスミソナイト、濃いブルーがヘミモルファイトです。

    3. ヘミモルファイトをより楽しむために

    ヘミモルファイトは宝石以外にも、パワーストーンやコレクションなどさまざまな楽しみ方を持つ石です。特にパワーストーンとしては、ヘミモルファイトは悪霊を祓う石とされ、非常に人気があります。

    ここではヘミモルファイトの宝石やジュエリー以外の楽しみ方もご紹介します。

    ■ヘミモルファイトの歴史

    ヘミモルファイトは古くから「悪霊を祓う石」として崇められ、魔除けやお守りなどに使用されてきました。

    現在はカボションカットやビーズカットが施され、天然石としても流通しています。天然石のヘミモルファイトは一つひとつ微妙に色合いが異なり、さまざまな表情を楽しめます。

    また、ヘミモルファイトは重量の半分を亜鉛が占める重要な亜鉛鉱石のひとつ。宝石品質でないものは亜鉛の原料として使われることもあります。亜鉛は鉄、アルミ、銅に次いで4番目に消費量の多い金属です。

    自動車、家電製品、構造物、建築材料の表面処理や部品、塗料、化粧品などとして幅広い用途に用いられています。世界の産業に大きく役立っている鉱物のひとつです。

    ■ヘミモルファイトのカットについて

    ヘミモルファイトは原石の状態でも自然なガラス光沢が見られますが、適切なカットを施すことで光をよく反射し、より美しくつややかな外観になります。ただしヘミモルファイトはもろく割れやすい性質があるため、素人が磨くと破損させてしまうおそれがあります。加工する場合はヘミモルファイトの特徴をよく理解した熟練の職人に依頼してください。

    逆に、手を加えずとも特徴的な葡萄状結晶の表面をそのまま生かし、ナチュラルな風合いのジュエリーやアクセサリーに仕立てたものも非常に人気です。

    ■パワーストーンとして

    古くから「悪霊を祓う石」として大切にされてきたヘミモルファイトは、パワーストーンとしても高い人気があります。災いやマイナスの感情から身を守り、精神をリラックスさせてくれる効果があると考えられています。

    向上心や行動力をもたらし、やる気を後押ししてくれるとされるため、新しいことにチャレンジするときや夢を実現させたいときなどにお守りとして持っていると力になってくれるかもしれません。


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    弊社で扱っている宝石、ルース(天然石)の数々は、商品名には流通名または宝石名を記載して販売しております。中立の立場である第3者鑑別機関に鑑別しているため、安心してご購入いただけます。

    ※TOPSTONEでは、鑑別・ソーティングを概ねA.G.L加盟の鑑別機関にお願いしております

    ▼鑑別・ソーティングについては以下ページにて詳細をご確認いただけます

    https://www.topstone.jp/help/faq


    4. まとめ

    ヘミモルファイトならではの鮮やかなスカイブルーが自然の力によって生まれたと思うと、あらためて地球の奥深さを感じられます。原石によって同じ石とは思えないほどまったく異なる表情を見せるヘミモルファイトは、掘り下げるとさらに楽しめるでしょう。この機会にぜひヘミモルファイトへの理解を深めてみてください。


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    この記事を書いた人

    ほしあゆみ

    TOP STOneRY / 編集部ライター

    トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。