2023/05/17

エメラルド、唯一無二のグリーンの女王の特徴・魅力をご紹介


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1. エメラルドの魅力とは

ダイヤモンド、ルビー、サファイアに並ぶ五大宝石の一つ、エメラルド。誰しもがその名を聞けば、眩い新緑の鮮やかなグリーンをイメージするでしょう。語源もずばり緑色の宝石で、古代ギリシャ語のSmaragdosからラテン語のSmaragdus、フランス語のEsmeraudeと各地で愛されながら変遷を辿り、ペルシャ語に由来を持つ現在のEmeraldと呼ばれるようになりました。語源の通り、他に追随を許さない唯一無二のエメラルドグリーンが煌めく宝石です。透明で色鮮やかなエメラルドは、春に芽吹く自然をそのまま結晶化したような美しさがあります。

■宝石としての魅力

エメラルドグリーンといっても、黄色味を含む淡い緑から青味がかった濃い緑まで豊かな色調を呈します。その中で最も好まれるのは青味のない、深い緑色のエメラルドでしょう。透明度の高さも重要で、ゾーニングがなく石全体が均一な色のエメラルドが好まれます。

エメラルドは様々な装飾品に加工されます。デザインによってペアシェイプやマーキス、ハートなど多様な形にカットされますが、特徴的なカットにエメラルドカットがあります。四角くカットされ一見ステップカットの様に見えますが、角やテーブルのエッジがファセットになっています。

カッティングの際、このファセットの広さ、また石の深さを変えることで反射する光の量が変わり、色の濃い石を明るく、逆に薄い色は深く見えるように印象を変えることができます。どの宝石にも言えることですが、カット職人は原石にあわせて最も美しくみえるようにカットしなければなりません。カット職人の腕が試されるところです。

エメラルドは時にはインタリオやカメオにされ、人々の身を飾ってきました。例えばロシアの女帝エカテリーナ2世を象ったインタリオがあります。女帝の優美な横顔を、硬さと脆さを併せ持つエメラルドに18世紀の職人が見事な技巧で描き出しました。エメラルドの中で微笑みを浮かべる女帝の横顔は、エメラルドグリーンに彩られることで皇帝の偉大さに併せて女性としての柔らかさを雄弁に語りかけてくるようです。

また南米で栄えた古代文明やインディオたちの手によって、見事な彫刻にされたエメラルドも現代に伝わっています。割れやすいエメラルドに、当時の技術でどうやって繊細で流麗な彫刻をしたのか、当時の人々がいかにエメラルドを敬愛していたかが窺われます。

エメラルドの魅力はなんといってもその緑の美しさですが、一方でインクルージョン(内包物)やフラクチャー(内部のひび割れ)はあまり問題にされません。

というのも、エメラルドは元々インクルージョンやクラック、フラクチャーを含んでいる宝石とみなされているためです。インクルージョンやフラクチャーが多いのは欠点に思われますが、あって当然のインクルージョンはむしろ苔や庭園に例えられ、フランス語で庭を意味するジャルダンと呼ばれることもあります。

鮮やかなグリーンの中で不規則に光を反射させるフラクチャーの閃きや、緑に影を落とす黒点インクルージョンを表現するのにぴったりの言葉です。フラクチャーに空気が入り込むと白く目立つようになり、石が曇ります。またそこから割れが広がる場合があります。これを防ぐために、ほとんどのエメラルドには樹脂やオイルの充填、含侵処理が行われています。

そのため、超音波洗浄や洗剤を使用すると処理が流れる場合があります。見た目を損なうだけでなく強度も落ちてしまうためご注意下さい。前述したロシアの女帝エカテリーナ2世は、バッキンガムシャー伯爵にエメラルドのネックレスとイヤリングのセットを贈っています。

これが、カット以外の人為的処置を行わないエメラルドだけで作られていました。含浸処理もされていない、ノンオイルのエメラルドです。深い緑の、しかし鮮明なエメラルドを惜しげもなくあしらったジュエリーは見る物を圧倒せずにはいられません。

こういったエンハンスメント(見た目の改善を目的とした処理)をせず貴石の品質を保つエメラルドの結晶は極めて稀にしか産出されません。そのエメラルドは文字通り、曇り一つないエメラルド。静かで深い緑は、まるで深い森の湖面、触れるのすら惜しい神々しさを感じる凄みがあります。

■特殊なエメラルド

エメラルドの中でも特徴的なエメラルドに、トラピッチェエメラルドがあります。核から6方向に伸びる模様が描かれているそのエメラルドは、形がサトウキビを絞る歯車に似ていることからスペイン語に由来してトラピッチェと名付けられました。

6方向に伸びる模様といえばアステリズム(光彩効果)を思い浮かべますが、トラピッチェエメラルドは光による効果ではなく、黒色不透明インクルージョンが描き出した天然の幾何学模様です。中心に六角形の核を持ち、そこから放射状に線を伸ばしていたり、中心の核はなく交差して星のような線を描くものなど、自然の筆致に同じものはありません。中心の核一つ捕えても、中心の六角形のエメラルドがあるか、黒点からエメラルドを仕切るように線が伸びるのかで大分ニュアンスが変わります。

通常は核が中央に来るようにカボションにカットされ、中心から6条の線が伸びるようにデザインされます。黒色部分が太く、エメラルドが花びらのように咲き誇るようなトラピッチェエメラルドも人気です。

このトラピッチェエメラルドの成長方法は、未だに謎に包まれています。雪の結晶のように、急速に成長した黒色の樹状結晶の周りにエメラルドが結晶していった説、熱水脈によってエメラルドの骸晶が作られ、そこに不純物を含む黒色インクルージョンが入り込んだという説、岩石の変化に伴って、原石の変質に伴い結晶の形を保ったまま分解した所にエメラルドが結晶していった説など様々な説がありますが決定打になっていません。

黒色貢岩中に産出されるため、コロンビア産の一部の鉱床にしか産出しません。トラピッチェエメラルドになるのは全体の1%程しかないと言われ、更に貴石品質となるとレアリティが増します。深い緑と漆黒のコントラストが美しい模様を描くトラピッチェエメラルド。希少性が高い石ですが、だからこそ自分の好みにあう運命の石に出会いたいものです。

他に珍しいエメラルドとしては、シャトヤンシー効果を示すエメラルドがあります。チューブインクルージョンを由来とした、キャッツアイとも呼ばれる光彩効果ですが、チューブインクルージョンそのものは珍しいものでなくともシャトヤンシーを示すエメラルドは希少です。

インクルージョンがある故に美しく閃くシャトヤンシーですが、その内部インクルージョンのために半透明~不透明のエメラルドになることがあります。しかし光を当てると、淡くも力強いグリーンのラインが光に透かした若葉のような瑞々しさでエメラルド全体を輝かせてくれます。

■エメラルドに魅せられた人々

エメラルドは人の歴史に寄り添ってきた石で、古代から装飾品や神への供物として密接に関わってきました。インカやアステカでは、エメラルドは太陽神への供物として、また永遠の若さと不滅、不死のシンボルとして捧げられてきました。

この古代文明で愛されてきたエメラルドは、現在でも高品質のエメラルドが産出されるコロンビア産と見られています。このコロンビア産エメラルドの美しさがヨーロッパに伝わることになったのは、スペイン王国によるアメリカ大陸征服を切欠としてでした。

アメリカ大陸征服について、このような逸話があります。スペイン帝国が新大陸を征服せんとアメリカ大陸に足を踏み入れた時、そこにはエメラルドが無数にありました。それも、鳩の卵より大きなエメラルドが!

兵士に同行していた伝道師ペブラザはエメラルドに魅せられ、兵士たちに「エメラルドが本物かどうかは叩けばわかる。本物なら傷もつかない」と伝えてまわったそうです。兵士たちに偽物だと思い込まれてしまった哀れに砕かれたエメラルドたちを自分の懐に……。この逸話が真実なら、100~200カラット程のエメラルドの結晶がどれだけ失われてしまったことでしょう。

しかしながら、古代インカ帝国や先住民によって作られた見事なエメラルドの彫刻品や装飾品は砕かれずに持ち帰られ、今もその美しさを誇っています。その一つ、インカ帝国最後の王アタワルパの所有していた通称アンデスの王冠は、メインストーンに24カラットのエメラルドが据えられ、442個のエメラルドで彩られた黄金の冠です。その見事なグリーンとゴールドのコントラストが美しい冠は今日メトロポリタン美術館で見ることができます。

もう一人、美しいグリーンに魅了された人物として有名な偉人にエジプトの女王クレオパトラがいます。三大美女の一人に数えられる彼女自身、美しいエメラルドグリーンの瞳を持っていたと言われています。

エメラルドに魅せられた彼女は石を宝飾品として身につけるだけではなく、惜しげもなく砕いてアイシャドウにしていたそうです。

その贅沢な使いぶりでは流通しているだけでは足りなかったのでしょう、彼女は自分専用の鉱山を所有しました。その採掘規模は相当のもので、数100の坑道からなり、中には地下270mに及ぶ坑道もありました。クレオパトラの美しさを支えた鉱山は、残念ながら再発見、調査された1899年頃には枯渇化してしまっていることが判明しています。まさにエジプトの女王のための鉱山でした。

自身の瞳になぞらえてエメラルドを愛用していたのか、それとも身につけたエメラルドの輝きが、いっそう彼女の瞳を魅力的にし、今なお語られる美しさとなったのかもしれません。

■エメラルドの産地

エメラルドは北極以外の6大陸から産出がありますが、その中でも高品質とうたわれるのはコロンビア産のエメラルドです。変成岩を通る熱水脈で成長し、石灰岩や黒色貢岩を母岩としています。チボール、ガチャラ、ムソー、コスクェス、ペニヤブランカといった鉱床があり、各鉱床から採掘されたエメラルドはサンタフェ・デ・ボゴダに集められ、各地へと流通していきます。

そのコロンビア産エメラルドに匹敵するグリーンを持つのが、ジンバブエサンダワナ地区のエメラルド。サンダワナ産のエメラルドにはトレモライトやバイオタイトが含まれることがあります。

またパキスタン北部からもコロンビア産より色が濃いエメラルドが採掘され、注目を集めています。屈折率が高いのが特徴です。ロシアのエメラルドも有名です。ウラル山脈トコバヤ川付近で産出されるエメラルドはやや黄色味を持つ、小さめながら美しい結晶が産出されます。竹の節状のアクチノーライト結晶インクルージョンが見られます。

ブラジルは長年エメラルドがあると言われながら市場に出回る程の鉱床は発見されず、僅かに採掘されるエメラルドも注目を浴びていませんでした。しかし1968年頃、ブラジルカルナイーバで濃い緑のエメラルドが発見されます。採掘が始まると一時期はエメラルド市場を席巻する勢いになりました。このカルナイーバのエメラルド峡谷からは濃い緑から僅かに黄色味を帯びたエメラルドが産出されます。

タンザニアマニアラ湖西地区では1970年頃に大鉱脈が発見され、採掘が始まりました。テリの良いエメラルドが産出されます。ザンビアミク鉱山で産出するエメラルドはやや青みがかった濃い緑色です。雲母片岩を母岩としているため、インクルージョンとして雲母が内包されることもあります。他に南アフリカ共和国トランスバールが有名な産地となっています。

2. エメラルドの正体

英名 Emerald(エメラルド)
和名 翠玉(すいぎょく)、緑柱石(りょくちゅうせき)
成分 Be3Al2(Si6O18)
結晶系 六方晶系
モース硬度 7.5~8
比重 2.68-2.78
屈折率 1.57-1.58, 1.59-1.60
劈開 なし
エメラルドグリーン、緑、緑青
主な産地 コロンビア、ブラジル、ザンビア、ジンバブエなど

エメラルドはベリル鉱物に属するベリリウム・アルミニウム・ケイ酸塩鉱物です。同じベリル鉱物にアクアマリンや、淡ピンクのモルガナイトがあります。ベリルは本来無色で、無色のベリルはゴッシェナイトと呼ばれます。ベリリウムが結晶する過程で、クロムやバナジウムが加わることで魅惑のエメラルドグリーンの結晶に成長していきます。

このベリリウムとクロムの出会いは奇跡に彩られています。ベリリウム自体は大陸地殻の上部に存在しますが、そもそも量が少なく0.002%程度しかありません。そこに海洋地殻や上部マントルに濃縮されるクロムが加わらないとエメラルドにはなりませんが、クロムには足がないので、本来、地殻上部に存在するベリリウムの結晶化に入り込む余地はありません。

しかし火成活動によって、クロムやバナジウムを含んだ苦鉄質岩、超苦鉄質岩が作られます。更にそこに、ベリリウムを含む花崗岩マグマが侵入することによってようやくベリリウムとクロムが出会い、はじめてエメラルドの美しいグリーンが生まれるのです。

一方、コロンビアのエメラルドはそれとは違った形で結晶しています。長い年月をかけて岩石となった堆積岩、それに強い熱や圧力を加えられた変成岩の中にはベリリウム、クロム、バナジウムを含むものがあります。

そこに熱水脈が通り大規模な熱水変成作用が起こると、それらの元素が放出されます。じっと岩の中に閉じ込められていたベリリウムとクロムが出会い、鮮明な緑の結晶を作っていきます。コロンビアには複数の鉱床がありますが、中でもガチャラ、チボール鉱床の形成は6500万年前、大体恐竜が絶滅する頃といわれています。それから今日までの果てしない年月の中で生み出されるエメラルドの奇跡には、地球の神秘を感じずにはいられません。

本来出会わない元素同士が結びついて結晶化したエバーグリーンの宝石。エメラルドのインクルージョンやフラクチャーは、この本来出会わない元素同士が結びつくための地質学的な働きが理由です。奇跡的に出会い、それ故にもろく、その為に美しい。恋する女性のような儚さと美しさがあるとは思いませんか。

■原石の楽しみ方

エメラルドは六方晶系の結晶で、六角柱となって成長します。カットせずとも美しい立ち姿は自然のままでエメラルドの魅力を醸しだしています。石灰岩や花崗岩やペグマタイト、片岩、貢岩などを母岩として産出します。インクルージョンの多いエメラルドですが、そのインクルージョンにも楽しみがあります。肉眼で確認することは難しいですが、ルーペで確認できるものもあります。

たとえば、三相インクルージョンは、エメラルド中に気相(多くは二酸化炭素)、液相、固相を見ることができます。これはコロンビア産、アフガニスタン産のエメラルドに見られる特徴です。このインクルージョンのみで産地が同定できるわけではありませんが、同じ三相インクルージョンでもコロンビア産はギザギザ、アフガニスタン産は針状になる傾向があります。固相にはパイライト長石を見ることができます。その他にも拡大して見ると雨のように見えるチューブインクルージョンがあります。

樹状の黒色インクルージョンは肉眼でも確認し易いです。またパイライトは固相としてのみならず、エメラルドにインクルージョンとして内包されることがあり、パイライトの黄金色とエメラルドグリーンの対比が楽しめます。

前述した通り、庭を意味するジャルダンと表現されるインクルージョンを楽しむのに、原石はうってつけでしょう。大きな原石の産出し難いエメラルドですが、デボンジャー・エメラルドは1384カラットの最大級のエメラルド原石として有名です。

■身近な楽しみ方

枯れることない常緑のエメラルドは、その新緑の眩しい5月の誕生石で知られています。石言葉は幸福、幸運、愛、希望など。古代帝国では癒しの石として信じられていました。また永遠の若さと不滅のシンボルとされていたことからビーナスを象徴しています。

結婚55周年のアニバーサリーストーンでもあります。幸福と愛を石言葉に持つエメラルドは、元素同士の奇跡的な出会いと長い年月がもたらす宝石です。出会い、長い間を共に歩んできた二人の道程を振り返り、互いの愛を確認するのにぴったりではないでしょうか。


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3. まとめ

人々に愛され、魅了してきたエバーグリーンの愛の石。地球の奇跡によって彩られた宝石はその軌跡を内に秘めた、それ故にもろさもありながら美しく輝く宝石の女王です。人と歴史を共にしながら、まだその魅力は尽きることがありません。女王の名に相応しい煌めきを、是非様々な角度からお楽しみください。


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この記事を書いた人

佐伯

TOP STOneRY / 編集部ライター

トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。