唯一無二の個性!インクォーツの魅力と特徴|おすすめ15石種も紹介

「誰も持っていない個性的な石を手に入れたい」と願うコレクターに人気なのが、インクォーツです。どの石をとっても「世界に同じものは2つとない」といわれる希少性はもちろん、他の宝石・ルースでは品質評価を下げるインクルージョンにこそ価値があるという独自性でも注目を集めています。
自然界が生み出した造形美ともいえるインクォーツのなかには、産出量が限られており年々価格が高騰している石もあります。
この記事ではそんなインクォーツの魅力と特徴を、あますことなく解説していきます。コレクターならずとも知っておきたいおすすめのインクォーツ15種類も厳選して紹介します。
インクォーツの奥深い魅力に、一緒に足を踏み入れてみましょう。
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目次/Topics
1. 宝石・ルースとしてのインクォーツ

インクォーツとは、内部に別の鉱物・物質を有しつつ成長したクォーツの総称です。内包する鉱物の種類は120種以上におよぶとの説もあり、コレクター心をくすぐります。
他の宝石やルースとは一味違った楽しみ方ができる、インクォーツの概要を解説します。
■高品質なインクォーツとは
一般的に、宝石・ルースは次の条件を満たすほど高品質とされます。
透明でクリア
色が均一で濃い
クラックがない
インクルージョンがない
ところがインクォーツはこの真逆をいくのが面白いところです。インクルージョンやクラックこそが個性であり、色ムラや濁りすらも石の魅力と考えます。
クォーツが成長する過程で他の鉱物や物質を取り込んだインクォーツは、2つとして同じ表情を見せる石はありません。インクォーツの一つひとつが「世界唯一」であり、かけがえのない存在なのです。
ルースである以上、「カットの美しさ」「傷のなさ」「透明部分のクリア度」などは品質評価に影響します。しかしそれとはまた別の視点から、自然がつくりだした唯一無二の造形美を楽しんでみてください。
■さまざまなインクォーツ・代表的な15種類を一挙に紹介
クォーツ(石英)は地殻を構成する一般的な造岩鉱物です。世界中のいたる場所で生成するため、成長した場所にある鉱物・物質を取り込み特徴的なインクォーツとなります。
インクルージョンの種類だけあるといわれるインクォーツのなかでも、とくに人気がありコレクションに加えたい石を紹介します。
厳選したインクォーツは、次の15種類です。
オイルインクォーツ
ガーデンクォーツ
ヘデンベルジャイトインクォーツ
デンドリチッククォーツ
ストロベリークォーツ
ティンカーベルクォーツ(ピンクファイヤークォーツ)
スーパーセブン
オーロラクォーツ
ファイヤークォーツ
サルファーインクォーツ
パライバクォーツ
パイライトインクォーツ
ヘマタイトインクォーツ
ルチルクォーツ
トラピッチェクォーツ
それではさっそく、オイルインクォーツから始めましょう。
オイルインクォーツ
内包物 | オイル(石油) |
カラー |
ベース:無色透明 内包物:イエロー(ネオン感の強いグリーンがかったイエローから、色の薄いものまで多彩) |
主な産地 | アラブ首長国連邦、パキスタンなどの産油国 |
オイルインクォーツは名前の通り、オイル(石油)を内包したクォーツです。結晶が、周辺にあったオイルを内部に取り込み成長することで形成されます。クォーツが成長する環境にオイルが存在する必要があるため、アラブ諸国やパキスタンなどをはじめとする産油国を中心に採掘されています。
《豆知識》
パキスタンでは両端がポイント(とがった先端)になった「両剣水晶」が産出されます。両剣水晶といえばアメリカ・ニューヨーク州にあるハーキマー鉱山から採れる「ハーキマーダイヤモンド」が有名ですが、パキスタン産の両剣水晶も「パッキーマダイヤモンド」として愛されています。
特徴的な原石形状が珍重され、研磨されずに原石のまま流通する石もたくさんあります。パッキーマダイヤモンドのオイルインクォーツは形状もカラーも美しく、とても人気です。
内部に含まれたオイルはネオンイエローの輝きを放ちます。オイルの状態や量、入り方により強い色味を呈するものもあれば、薄く控えめなカラーのものもあり、石によって個性を楽しめるのも魅力の一つです。
オイルインクォーツにブラックライトを当てると、ネオンイエローだったオイルがネオンブルーにパッと蛍光します。見事な色変化は、幻想的の一言です。ジブリアニメ『天空の城ラピュタ』に登場する飛行石にたとえられることも多い、不思議な雰囲気をまとう石です。
オイルインクォーツはオイル・空気・炭素の3つが揃った石ほど品質が良いとされています。オイルインクォーツを見つけたら、手に取って動かして見てください。空気が内包されていると、石の内部でコロコロと可愛らしく転がります。
クォーツの成長スピードは100年で1mmといわれます。そのオイルインクォーツができるまでには、いったいどれくらいの長い年月が掛かっているでしょう。内包されているオイルも空気も、太古のものであることに間違いありません。数万年以上の時をかけてできあがった時間のロマンにしばし、思いを馳せてみませんか。
ガーデンクォーツ
内包物 | クローライト(緑泥石)、ルチル(金紅石)、アンフィボール(角閃石)、トルマリン(電気石)、エピドート(緑簾石)、マイカ(雲母)、カオリナイト(カオリン石)、リモナイト(褐鉄鉱) など |
カラー |
ベース:無色透明、スモーキー、シトリン など 内包物:緑、ピンク、黄、茶、白、赤 など |
主な産地 | ブラジル、中国、アメリカ など |
ガーデンクォーツはクォーツが成長する過程で、さまざまな鉱物を取り込み独特の様相を呈します。まるで自然の風景をクォーツに閉じ込めたような見え方から、「ガーデン(庭園)」の名前がつきました。日本では「庭園水晶」「苔入り水晶」とも呼ばれます。
内包物の入り方は、2つとして同じものはありません。いま出会ったガーデンクォーツはまさに一期一会、それしかない希少性をもつ点もコレクターに愛されるゆえんです。
ガーデンクォーツはルースコレクターだけでなく、鉱物コレクターや開運石コレクターからも珍重されています。
内包物の入り方も、石によって個性がさまざまです。中央寄りよりも片側に寄っているほうが自然の風景に見えて良いという人もいれば、内包物が多いほど石の独自性が高まって良いという人もいます。
ガーデンクォーツはインクルージョンの種類によって、カラーや印象が異なります。おもなインクルージョンと特徴をまとめました。
クローライト(緑泥石):モスグリーンに近い緑色が多い。緑豊かな山、苔むした庭園の雰囲気。
ルチル(金紅石):赤みがかった金色をした針状の結晶。庭園に降る雨にたとえられる。
アンフィボール(角閃石):ピンクやイエローのふんわりとした味わいを感じさせる。霧や煙の雰囲気。
トルマリン(電気石):黒みがかった針状の結晶。結晶のなかで針が踊っているように見える。
エピドート(緑簾石):緑色の針状結晶。苔や草というよりは、海中の海藻の雰囲気を呈する。
マイカ(雲母):薄い層状の結晶。白や黒、金などラメのようなきらきらとした光が特徴。
カオリナイト(カオリン石):さまざまなカラーのマーブル模様を呈する。
リモナイト(褐鉄鉱):黄~オレンジ系の輝きを内側から放つ。
ヘデンベルジャイトインクォーツ
内包物 | ヘデンベルグ輝石(灰鉄輝石) |
カラー |
ベース:無色透明 内包物:濃い緑~褐色 |
主な産地 | インドネシア、ブラジル |
ヘデンベルジャイトインクォーツは、クォーツの成長過程でヘデンベル輝石が内包されたクォーツを指します。ヘデンベルグ輝石とはカルシウムと鉄を含む単斜輝石です。繊維状・長柱状の結晶集合体となり、クォーツ内部でもはっきりと結晶を確認できます。
ヘデンベルグ輝石は緑・濃緑や緑褐色、褐色、灰緑色などを呈します。クォーツ内部への取り込まれ方が一つひとつ異なる上、同じ石でも見る角度によってさまざまな表情を楽しめる点も魅力です。
ヘデンベルグ輝石の硬度は5.5~6.5です。クォーツの硬度が7のため、インクォーツの状態なら日常使いでも問題ありません。ただしヘデンベルグ輝石は明確~完全な劈開を持っています。無理に取り出そうとせず、インクォーツの状態で楽しむのがおすすめです。
デンドリチッククォーツ
内包物 | 二酸化マンガン、酸化鉄 |
カラー | 黒、褐色、オレンジ など |
主な産地 | ブラジル、マダガスカル、インド など |
デンドリチッククォーツは、内部にシダや樹枝が入り込んだように見えるクォーツです。自然の一瞬を閉じ込めたような独自の様相と、2つとして同じ表情がない希少性から人気があります。長い時間を耐え忍ぶ自然の力を連想させるためか、日本では「忍石(しのぶいし)」とも呼ばれます。
本物の植物のようにも見えるデンドリチッククォーツの模様は、実は金属鉱物のコロイド粒子です。クォーツが成長する過程でできた割れ目や隙間に水分が入り込み、水中に溶けていた粒子が沈殿し模様を形成します。
取り込まれた粒子が二酸化マンガンの場合は黒っぽく、酸化鉄だった場合は赤味が強くなります。
デンドリチッククォーツの名前は、ギリシア語の「dendron(デンドロン・樹)」からきています。樹枝状の結晶を「デンドライト」といい、クォーツ以外にもアゲート(瑪瑙)やオパール、ジャスパーにも顕出します。はっきりした模様になるものもあれば、ぼんやりと幻想的な雰囲気を醸しだすものなど見え方もさまざまです。
「ピクチャーストーン」「ランドスケープストーン」と呼ばれることもある石で、自然の力強さと奥ゆきを手元で実感してみてください。
ストロベリークォーツ
内包物 | ゲーサイト、レピドクロサイト |
カラー | ピンク色、赤色、オレンジ色 など |
主な産地 | カザフスタン、タンザニア |
ストロベリークォーツは、名前のとおりイチゴ色が特徴的なクォーツです。和名も「苺水晶」で、見た目も名前も可愛らしい人気の石です。
ただし希少性と、それにともなう獲得競争の激化は可愛らしいとは言えません。ストロベリークォーツは、現在ほぼ採れなくなっているためです。
ストロベリークォーツはもともと、メキシコで産出されはじめました。しかし治安の悪化とともに鉱山が閉鎖され、産地はカザフスタンに移ります。ところがカザフスタンでは原石が枯渇、現在はカザフスタン産のストロベリークォーツはほぼ流通していません。価格も高騰しており、年々希少価値が高まっています。
タンザニアでは、エピドートを含むピンク色のクォーツが産出されます。宝石学・鉱物学としての決まりがないためこれを「ストロベリークォーツ」として販売する向きもありますが、ストロベリークォーツは本来、次の2点を満たすものとされています。
内包物はゲーサイトかレピドクロサイト
内包物が細かい針状・産毛状で含有される
TOPSTONEでは「ゲーサイト/レビドクロサイト」を上記のように内包するクォーツをストロベリークォーツ、エピドートを含むピンク色のクォーツは「エピドート(イン)クォーツ」として区別しています。
ストロベリークォーツのイチゴ色は、ゲーサイト(針鉄鉱)やレピドクロサイト(鱗鉄鉱)という鉱物によって生み出されます。名前のとおり、ゲーサイトは針状結晶でレピドクロサイトは薄く平たいうろこ状の結晶です。赤色の結晶がクォーツに混入するとストロベリークォーツとなります。
ストロベリークォーツを見つけたら、ルーペでよく観察してみてください。内包された針状の赤い結晶が見えるかもしれません。
《豆知識》
一見針状に見えても、ぐにゃぐにゃと曲がっている場合はゲーサイト(針鉄鉱)ではなくレピドクロサイト(鱗鉄鉱)です。どちらが含まれていても本物のストロベリークォーツであることにかわりはありません。ただ見せる表情が変わるため、好みの石に出会うヒントとして知っておいて損はないですよ。
また「ストロベリークォーツ」は通称名です。鑑定書には内包物によって「ゲーサイトインクォーツ」もしくは「レピドクロサイトインクォーツ」と書かれます。
ティンカーベルクォーツ(ピンクファイヤークォーツ)
内包物 | コーベライト(銅藍) |
カラー |
ベース:無色透明 内包物:ピンクのラメ状 |
主な産地 | ブラジル |
細かなインクルージョンが、見る角度によって鮮やかなネオンピンクにきらめくクォーツです。正式名称は「ピンクシーンクォーツ」「ピンクアベンチュリン」ですが、ティンカーベルが魔法の粉を降らせるイメージにぴったりの名称「ティンカーベルクォーツ」で流通しています。
ティンカーベルの魔法の粉の正体は、コーベライト(銅藍)です。硫酸鉱物の一種で、さまざまな色味に光を反射させる反射多色性が特徴です。ティンカーベルクォーツが放つラメのようなきらめきも、この反射多色性によります。
ティンカーベルクォーツは2000年代から市場に出るようになった新しい宝石ですが、希少価値は年々高まっています。原石がわずか30kg程度しか産出されておらず最大量が限られているため、あとどれくらいルースが作れるかという状況だそうです。
価格も高騰し続けています。もしお気に入りの石に出会えたら、早めに入手したほうが良いかもしれません。
スーパーセブン(セイクリッドセブン)
内包物 | アメジスト、カコクセナイト、ゲーサイト、レピドクロサイト、スモーキークォーツ、ルチルクォーツ |
カラー | 紫色、黒色、赤色、オレンジ色 など |
主な産地 | ブラジル |
スーパーセブンは、7種類の鉱物成分を含む特別な石です。含有物の内訳は次のとおりです。
<クォーツ>
水晶
アメジスト
スモーキークォーツ
<含有物>
ゲーサイト
レピドクロサイト
カコクセナイト
ルチル
「スーパーセブン」の名前は、アメリカのクリスタルヒーラーであったA.メロディ女史がつけました。鉱物学上は「7種類が同時に含まれる石はない」とされていますが、複数の鉱物成分が同時に、しかも美しく含まれるクォーツの希少性が高いことは言うまでもありません。自然の神秘、そして不思議な力に見入ってしまうこと間違いなしの石です。
スーパーセブンに含有される成分比率は、石によって異なります。アメジストを多く含むと紫色に近くなり、レピドクロサイトが多いと赤っぽくなるなど、全体の印象も含有物の影響を受けます。2つとして同じ表情の石がないことも、スーパーセブンの魅力の1つでしょう。
ちなみに「スーパーセブン」は通称名です。鑑別書には正式名称が書かれますが、ベースとする鉱物とインクルージョンによって名称は変わります。
オーロラクォーツ
内包物 | ヘマタイト、ライモナイト |
カラー |
ベース:無色透明 内包物:赤色、赤褐色 |
主な産地 | マダガスカル、ブラジル |
オーロラクォーツは、クォーツのクラックにヘマタイトやライモナイトが染み込み色を呈するようになった石です。カラー部分が膜状に広がる様子から「オーロラ」の名前がつきました。赤や黄色の鮮やかな色合いが広がる幻想的なさまは、パワーストーンとしても人気があります。
オーロラクォーツの赤色はヘマタイトに、黄色はライモナイトに由来します。
ヘマタイト(赤鉄鉱)は本来は黒いメタル光沢を持っています。ただし傷をつけたり、粉末・薄片にしたりすると赤色を呈します。ちなみにヘマタイトの名前はギリシア語の「heima(血)」が語源だといわれています。血のような色、また腎臓に似た原石形状からそうよばれていたようです。
ライモナイトは和名を褐鉄鉱といいます。橙色の顔料としての歴史も古く、日本でも産出される鉱物です。オレンジ色の理由は鉄の錆(さび)です。また光の加減によっては虹色に輝いて見える場合もあります。
クォーツ内部に泳ぐように赤や黄色のインクルージョンがあるさまは、水槽の中の金魚にも見えます。自然の不思議を閉じ込めた神秘的な石として、ルースのまま楽しむスタイルがおすすめです。
ファイヤークォーツ
内包物 | レピドクロサイト(鱗鉄鉱) |
カラー | 赤 |
主な産地 | マダガスカル、ブラジル、ナイジェリア |
ファイヤークォーツは、内部から赤く燃えるように見える様子から名前がついた赤いクォーツです。赤色の正体は、レピドクロサイト(鱗鉄鉱)です。レピドクロサイトは単体では存在できない鉱物で、クォーツに内包されることでその姿をあらわします。赤色を呈する物が多く見られますが、とくにオレンジ色が入ると人気と価格が高騰する傾向があります。
正式名称は「レピドクロサイトインクォーツ」といいます。ファイヤークォーツをはじめ、流通名が多いのが特徴でもあります。
<ファイヤークォーツの流通名>
ハーレクイン(ハーレクインクォーツ・ハーレクイン水晶)
レッドスーパーセブン
レッドセイクリッドセブン
またファイヤークォーツは美しいアベンチュレッセンス効果(内包鉱物結晶が見せるキラキラとした輝き)を味わえる石でもあります。石の内側から発する光はときにゴールド色にゴージャスにきらめき、奥深い魅力を醸しだします。
サルファーインクォーツ
内包物 | 硫黄(サルファー) |
カラー | レモン色 |
主な産地 | ブラジル |
サルファーは硫黄を意味します。ラテン語の「sulpur(サルファー・燃える石)」が語源といわれています。火口や温泉の噴出口で採掘され、火薬の原料にもなったことからこの名がついたと考えられます。
サルファー自体は鮮やかな黄色をしています。柔らかな光沢とわずかな透明感が特徴で、クォーツに内包されると美しいレモン色を呈します。シトリンのグリーンがかったイエローとはまたちがった寒色系の優しい色あいが人気の秘密です。含有される成分量により、クリアなものから乳白色のものまでバリエーションも豊富です。
割るとかすかに硫黄のにおいが感じられるものもあります。サルファーは熱を加えると抜ける性質があり、またサルファー自身の硬度は高くありません。原石、あるいはルースのまま大切に保管して愛でるのがおすすめです。
パライバクォーツ
内包物 | ジラライト |
カラー |
ベース:無色透明 内包物:水色、青色 |
主な産地 | ブラジル |
パライバクォーツは、浮かぶかのように内包されたブルーの鉱物が印象的です。ブルーの鉱物はジラライトです。ジラライトはギラライトとも呼ばれる、銅のケイ酸塩鉱物で1980年にアリゾナ州・クリスマス鉱山で発見されました。独特のブルーが象徴的ですが、カラーバリエーションは濃青や緑青、水色、白色などバリエーションがあります。
ジラライトを内包するクォーツがパライバクォーツと呼ばれる理由は、2つあります。
ブラジルのパライバ州で産出される
ジラライトの結晶がパライバトルマリンの色合いと似ている
ちなみにパライバクォーツは流通名で、正式名称はジラライト(ギラライト)インクォーツといいます。
鮮やかでネオン色にも見えるほどのブルーの結晶がクォーツに浮かぶ姿は、霞の向こうに蛍が舞うかのようです。クラゲのように2段、3段とえぐられた形をしているジラライトも確認されています。パライバクォーツのジラライトの形状は、肉眼でも確認できます。じっくり見て、好みの1点を見つけてみてください。
パイライトインクォーツ
内包物 | パイライト(黄鉄鉱) |
カラー |
ベース:無色透明 内包物:金色、真鍮色 |
主な産地 | ブラジル、ペルー、ボリビア、スペイン、イタリア、メキシコ、チェコ、中国 など |
パイライトインクォーツはクォーツ内部にパイライト(黄鉄鉱)を含む石です。黄鉄鉱は鉄と硫黄でできた硫化鉱物で、火山活動によって生成されます。パイライトの語源がギリシア語で「火」を意味する「pyr」と岩石や鉱物を意味する「ite」が合わさってできたことからも、火との縁が深い鉱物であることがわかります。
パイライトは酸化しやすい性質を持っているため、自然界では参加により色合いがどんどん変化します。しかしクォーツに内包されると酸化が止まるため、美しい輝きがいつまでも保てる点も魅力でしょう。
ヘマタイトインクォーツ
内包物 | ヘマタイト |
カラー |
ベース:無色透明 内包物:銀色 |
主な産地 | ブラジル、インド、中国 など |
ヘマタイトインクォーツは、ヘマタイトが内包されたクォーツです。ヘマタイトがキラキラと銀色の光沢を放つさまは宇宙を漂う隕石のようにも、星空のようにも見えます。
ヘマタイトは黒~シルバーグレー色です。金属かと思わせるメタリックな光沢が特徴で、原石に入った光を跳ね返します。
また粉末状や塊の表面に傷がついたときなどは赤色を呈するため、1つのヘマタイトインクォーツで黒と赤、2色のインクルージョンを楽しめる石もあります。
ルチルクォーツ
内包物 | ルチル(金紅石) |
カラー |
ベース:無色透明 内包物:金色 |
主な産地 | ブラジル、インド、パキスタン、アメリカ など |
ルチルクォーツは、名前のとおりルチルを内包したクォーツです。ルチルとは二酸化チタン結晶の一種で、針状・繊維状に生成します。多くは金色を呈することから、和名を「金紅石」といいます。
ルチルとクォーツ、それぞれ単体では多くの鉱山で産出します。しかしルチルを取り込み成長したルチルクォーツは希少性が高く、さらに見た目に美しいものはとても稀で人気です。金色に輝くルチルは金運を上げる石としても親しまれています。
《豆知識》
太陽の光のように、金色のルチルが放射状に広がったものを「太陽(タイチン)ルチル」と呼びます。星が弾けるさまをイメージし「スターバーストルチル」と呼ぶこともあります。
《豆知識》
針状結晶となったルチルには金・黒・赤の3色がありますが、ほとんどは金色に発色します。一般的に「ルチル=金」と認識されているのは、金色のルチルが多いためです。
黒・赤のルチルはとても希少で、似た別の石がルチルクォーツとして混同されるケースもあります。ブラックトルマリンが入ったクォーツとブラックルチルの区別が難しいのは、その代表例です。
トラピッチェクォーツ
内包物 | 水晶以外のさまざまな鉱物 |
カラー | グレー~黒色、偏光板で虹色 |
主な産地 | コロンビア |
トラピッチェクォーツとは、中心から6つの方向に放射状の模様が伸びた特別なクォーツです。偏光板に挟んで光に透かすと、オーロラのような虹色の光を楽しめることからとても人気があります。また構造がよくわかるように薄くスライスされ流通します。
トラピッチェクォーツの「トラピッチェ」の名称は独特の模様をつくりだすことで知られる「トラピッチェ構造」に由来します。トラピッチェ構造とは、異なる2つの鉱物が共生しながら成長して特別な模様をつくりだす仕組みです。別の鉱物がつくりだした模様のため、アステリズム(星彩効果)はなく、光源や石が移動しても模様は同じ場所に留まります。
トラピッチェ構造を持つ石はエメラルドやサファイア、ルビー、トルマリン、ペツォッタイトなどがあり高い鉱物的価値を持ちます。ただし、トラピッチェクォーツはトラピッチェ構造と似た模様を持つにもかかわらず、トラピッチェ構造ではない点が興味深いポイントです。
《豆知識》
「トラピッチェ」とは、サトウキビを絞るために回転させる歯車です。1879年、世界で初めてトラピッチェ構造を持つ石(エメラルド)が発見されたとき、模様がトラピッチェに似ているという理由で名づけられました。
2. 鉱物・原石としてのインクォーツ

■組成について
インクォーツはクォーツ(水晶)グループに属します。インクォーツの組成もクォーツに準ずるため、下にクォーツの組成をまとめました。
英名(カタカナ) | Quartz(クォーツ) |
和名 | 石英、水晶 |
成分 | SiO2 |
結晶系 | 六方晶系(三方晶系) |
モース硬度 | 7 |
屈折率 | 1.54~1.55 |
劈開 | なし |
色 | 無色、白色、乳白色 |
主な産地 | ブラジル、マダガスカル、アメリカ、ドイツ、コロンビア、スイス、インド、オーストラリア、カナダ、スリランカ、日本、中国、メキシコ、ペルー、アフガニスタン、パキスタン、ネパール |
クォーツのモース硬度は7で、劈開はありません。インクォーツの多くも硬度・劈開ともにクォーツと同様ですが、インクルージョンによっては性質が異なるものもあります。またクォーツは硬く劈開がなくとも、インクルージョンが脆く、劈開を持つケースもあります。
また太陽光や熱で変色・退色する場合もあります。
多くのインクォーツは一般的な使用に耐えますが「インクルージョンを無理に取り出そうとする」「極端な環境変化に置く」などの取り扱い方は避けましょう。
■原石の形状

インクォーツもクォーツ同様に六方晶系(三方晶系)の結晶であるため、原石は六角柱状(三角柱状)の結晶を成します。
ただしインクルージョンがある分、ロッククリスタルのようにポイントを持つ長く美しい形状になる原石は多くありません。岩石に内包される形で成長したり、突鉱状になったりします。またクォーツの一部にだけインクルージョンを有すると、一つの原石で複数のカラーを呈するものもあります。
石の魅力が最大限に引き出されたカット・研磨済みのインクォーツも美しいものですが、原石のインクォーツには独特の魅力があります。原石が育った地域や環境によって、内包される物質が異なる点も興味深いポイントです。
静謐な透明感を持つロッククリスタルとはまた雰囲気が異なるインクォーツの原石、窓辺に置き太陽の光をキラキラと反射させながら楽しんでみてください。
■鉱物視点からみるインクォーツ
インクォーツの個性であるインクルージョンは、原石に均一に内包されているわけではありません。ある部分に偏っていたり、あちこちを向いていたりとさまざまな表情を見せます。
宝石を研磨する職人は、原石と対峙し「どこを・どのくらいの大きさで・どんな風に切り出すか」を決めることから仕事が始まります。できるだけ無駄なく、かつインクルージョンの個性を活かしつつ美しさを最大に引き出す「石取り」は、職人の腕のみせどころです。
さて、もしあなたがそのインクォーツ原石を石取りするとしたら、どのように切り出しますか?針が四方八方を向くルチルクォーツや、切り出し方で印象がまるで変わるガーデンクォーツなどは、石取りがルースの価値を決めるといっても過言ではありません。
「この石をルースにするなら」という視点で、原石を眺めてみてください。気づかなかった微細なインクルージョンの個性に気づかされるでしょう。
3. その他の楽しみ方

インクォーツは一つひとつの独自性に価値がある石だからこそ、個性を活かしたさまざまな楽しみ方ができます。
インクォーツの世界を広げるアイデアやヒントを紹介します。
■ビーズやアクセサリーとして

インクォーツは輝きよりもインクルージョンを楽しむ石です。そのため内包物やカラーを明瞭に見せるシンプルなカットが施されます。大きめのルースで流通する石も多いため、存在感のあるアクセサリーに加工しても良いでしょう。
クォーツの原石形状を活かすのもおすすめです。サルファーインクォーツのレモン色は夏の装いにさわやかな風を吹かせ、ガーデンクォーツの絵画のような奥ゆきは着る人に神秘的な雰囲気をまとわせます。
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4. まとめ
インクォーツは、成長する過程で何かしら別の鉱物・物質を内包したクォーツです。地球上で二番目に多い物質である二酸化ケイ素から成るクォーツは世界中の至る場所で成長するため、地域や環境によってさまざまな物質を内包します。産油国ならではのオイルインクォーツは、その代表例です。
他の宝石・ルースのように透明感の高さやインクルージョンのなさが品質の決定打とならない点も、インクォーツならではの魅力でしょう。まるで樹木を閉じ込めたようなインクォーツや、妖精がふりまく粉のようなきらめきを見せるインクォーツなど、一つひとつの個性を楽しんでみてください。
インクォーツはどれも、世界でたった1つの表情を見せる石であることにも価値があります。100年で1mmしか成長しないクォーツが、他の物質を取り込みつついまの大きさになったときの流れに、思いを馳せながら好みの1点を探してみましょう。
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この記事を書いた人

みゆな
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。