バイキングの羅針盤?!スミレ色が美しい「アイオライト」の魅力と逸話を紹介

バイキングたちが羅針盤やフィルターとして使っていたという逸話が残る、「アイオライト」。美しいスミレ色が印象的なアイオライトは、多色性があり見る方向によって違う色に見えることが特徴です。ここでは、アイオライトの宝石や鉱物としての魅力や逸話について、一緒に知識を深めていきましょう。
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1.宝石・ルースとしてのアイオライト

宝石・ルースとして最高品質のアイオライトとはどのようなものなのでしょうか。また、アイオライトの特徴や逸話についてもご紹介します。
■高品質なアイオライトとは
最高品質のアイオライトは、下記によって決定されます。
濃い青色
多色性がハッキリ見える
透明度が高い
カットが美しい
5カラット以上
青色が濃く深みがあり透明度が高く、多色性がハッキリ見えるアイオライトは品質が高いと評価されます。上質なアイオライトは、ほぼ処理されず自然のままでも美しい色をしていることが特徴です。
ファセットカットが施されることが多い石ですが、カットが美しいものほど高品質で、5カラットを超える大きさのものは高価となります。
■アイオライトの特徴
美しいスミレ色が魅力的なアイオライト、その最大の特徴は、多色性が強く見る角度によって違う色に見えること。スミレ色のアイオライトでも、角度によって黄色、グレーなどと異なる色を楽しむことができます。
この特徴から、アイオライトは「二色性石」という意味の「ダイクロアイト」という別名も持っていますが、実際には二色ではなく「紫がかった青色」「淡い青色」「灰色がかった黄色」などの三色が楽しめます。
また、アイオライトは融点が低く加熱処理ができないため、未処理のまま、自然の色で市場に出回ることがほとんどです。放射線照射によって色を調整することも稀にありますが、ブルートパーズやサファイアなどの”青い宝石”は一般的になんらかの処理を施されることが多いのと比較し、自然のままの青色を楽しめることは大きな魅力といえます。加えて、手頃な価格で手に入ることもアイオライトの特徴です。
ちなみに、鉱物学者の間では、アイオライトは「コーディエライト」と呼ばれます。アイオライトの正式な鉱物名が、コーディエライトであるためです。
アイオライト(コーディエライト)はスミレ色だけではなく、淡い青色や淡い黄色、グレーなどさまざまな色のものがあります。稀に無色のものも産出されます。無色のものは「ホワイト・コーディエライト」と呼ばれ、透明度が高いほど品質が高くなることが特徴です。
ゴールドのものは「ゴールデン・アイオライト」と呼ばれます。ゴールデン・アイオライトは鮮やかな黄色が特徴です。アイオライトの黄色はくすんだ色合いや褐色に見えることが多く、またそもそもアイオライトという宝石がブルーをいかに美しく見せられるかを重要視し加工されることが多いため、美しい黄色部分が前面になるようにカッティングされたものは、特に希少性が高くなっています。
■アイオライトの魅力
アイオライトは液体や気体、別の鉱物などの内包物である「インクルージョン」が少ないものが多いです。その一方で、インクルージョンがあることにより特殊な効果が表れることがあります。
たとえば、針状結晶であるルチルのインクルージョンが平行に並んでいると、まるで猫の目のように見える「キャッツアイ効果」が現れ、これは「アイオライト・キャッツアイ」と呼ばれます。
ほかにも、インクルージョンが鱗状に含まれると、インクルージョンが光を反射して美しくキラキラと輝く「アベンチュレッセンス」という光学効果が表れることがあります。
鉱物であるレピドクロサイトが、赤色~褐色の針状や板状のインクルージョンとして多数含まれるものは、「ブラッドショットアイオライト」です。赤みを帯びたインクルージョンがキラキラと輝くことから、「充血した」という意味の「ブラッドショット」という名が付けられています。
また、レピドクロサイトなど鉄分を多く含む粉状のインクルージョンが多く含まれると、青いアイオライトの中でまるで星がキラキラ輝くようなアベンチュレッセンスが現れることがあります。夜空を思わせるこのアイオライトは「アイオライトサンストーン」と呼ばれ、その神秘さが人気です。
ブラッドショットアイオライトもアイオライトサンストーンもアベンチュレッセンスによるものであるため、「アベンチュリン・アイオライト」と呼ばれることもあります。これらのアベンチュリン効果を生み出すインクリュージョンは、アイオライトの発色要因である鉄分が過剰に取り込まれることで産まれます。また、微細な金属成分のインクリュージョンだけではなく、繰り返し双晶し構造が複雑化して無数の微細な亀裂が入ることでスター効果が表れるアイオライトもあるようです。
■アイオライトにまつわる逸話

古来バイキングたちが大海原を渡っていた時代には、アイオライトは羅針盤代わりとして使われていたという伝説があります。多色性のあるアイオライトを薄くスライスして使うと、光の反射をコントロールする「偏光フィルター」としての役割を果たすことができました。
アイオライトは太陽の光にかざすと、太陽がある方向に最も青色が強く見えるとされていました。これを利用し、薄くスライスしたアイオライトを使うと曇りの日であっても太陽の位置を知ることができ、進むべき進路を決められたそうです。
海上で見える美しいブルーから、アイオライトは「海のサファイア」と呼ばれることもあります。また、サファイアに似た色合いであることや、川底から採取されること、青色以外に無色にも見えることなどから、「ウォーター・サファイア」と呼ばれることもあるようです。
アイオライトという名前は、ギリシャ語で「紫」や「スミレ」を意味する「ion(イオス)」と、「石」を意味する「lithos(リトス)」に由来します。ちなみに、鉱物学者の間で呼ばれる正式な鉱物名である「コーディエライト」は、アイオライトを研究していたフランスの地質学者である「ルイ・コルディエ(P.L.A.Cordir)」にちなんで名付けられました。
■アイオライトの産地

アイオライトは、主に下記で産出されます。
マダガスカル
インド
スリランカ
ミャンマー
タンザニア
カナダ
ブラジル
2.鉱物・原石としてのアイオライト

鉱物・原石としてのアイオライトの魅力も、ここから一つずつ見ていきましょう。
■組成について
アイオライトの組成は、下記の通りです。
英名 | Iolite(アイオライト) / cordierite(コーディエライト) |
和名 | 菫青石(きんせいせき) |
成分 | (Mg,Fe²+)₂(Al₂Si)[Al₂Si₄O₁₈] |
結晶系 | 斜方晶系 |
モース硬度 | 7-7.5 |
屈折率 | 1.52-1.53, 1.56-1.58 |
劈開 | 一方向に完全 |
色 | スミレ色、青色、黄色、無色 |
主な産地 | マダガスカル、インド、スリランカほか |
アルミニウム、鉄、マグネシウムからなるケイ酸塩鉱物の一種であるアイオライトは、モース硬度が高めであるものの、劈開が一方向に完全なことが特徴です。アイオライトは、低圧の広域変成岩や接触変成岩、花崗岩などに含まれ、スミレを思わせる青色は鉄によるものです。
鉄の含有量の違いで、色合いも変化します。鉄を含まないと無色に、より多く含まれると濃いブルーを呈します。さらに鉄の量が多くなると、前述のアベンチュリン効果が生まれてくるわけです。
アイオライトの多色性は、石の内部を通った光が、進む方向によって異なる吸収のされ方をするために見られる現象です。結晶構造上、角度によって光のスペクトルが吸収される部分が変わります。これらの色が違って見える仕組みにより、紫がかったアイオライトは濃淡2種の紫と黄色が、青が強いアイオライトはカラーレスと黄色の多色性を示す傾向があるようです。
■アイオライトの原石
アイオライトの原石は、斜方晶系です。正六面体のような結晶構造をしていますが、双晶を繰り返し、花が咲いたような六方晶系のようになることもあります。これは、斜方貫入擬晶(しゃほうかんにゅうぎしょう)と呼ばれています。
ちなみに、六方晶系のような結晶となった斜方貫入擬晶が分解すると、形はそのままで白雲母(しろうんも)や緑泥石(クロライト)に変化する「仮晶」という現象が起こることも特徴です。これが風化すると結晶が分離し、アイオライトではなく「桜石」と呼ばれる石に変化します。
桜石は三大花紋石のひとつで、その名の通り、断面が桜の花びらのように見えることが特徴です。中でも京都府亀岡市薭田野町で産出された桜石は「稗田野の菫青石化晶」と呼ばれ、国の天然記念物に指定されています。
■鉱物としての魅力
アイオライトは、鉱物の状態でもしっかりと多色性を確認することができます。
多色性を楽しむだけでなく、宝石とはまた違った青色も鉱物としての魅力です。
インクルージョンが入っている鉱物は、個々に違う輝きがあることも楽しみの一つです。
3. アイオライトをより楽しむために

宝石や鉱物としてではないアイオライトの楽しみ方も、ここからご紹介します。
■誕生石・石言葉

アイオライトには、下記の石言葉があります。
誠実
貞操
道を示す
「誠実」は、スミレの花言葉にもなっています。
また、2021年に誕生石が改定されたことにより、アイオライトは3月の誕生石に制定されました。結婚21周年を記念する宝石としても、知られています。
■ジュエリーやビーズとして

硬度が高めで手頃な価格が魅力のアイオライトは、ジュエリーなどさまざまなものに加工されています。落ち着いたスミレ色は、日常使いのペンダントやピアスなどでもマッチしやすいでしょう。
ビーズとして使われることも多いですが、一方向に明瞭な劈開があるため、扱い方には注意が必要です。また紫外線に弱いため、長時間太陽に当たるような使い方は避けたほうが良いでしょう。
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4. まとめ
古くから活用されてきたアイオライトは、美しい色合いだけでなく、多色性によりさまざまな色を楽しめることが魅力です。手頃な価格で手に入りやすいアイオライトですが、一般的にはそこまで知名度が高くないため、「人と違う宝石を身に付けたい」という人にもおすすめといえるでしょう。
インクルージョンによっても表情が大きく変わるため、自分好みのアイオライトを探してみるのも良いかもしれません。
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この記事を書いた人

Aria
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。