瑠璃色の宝石・ラピスラズリの秘密|宝石品質の見極めから鉱物まで

深く鮮やかなブルーが印象的なラピスラズリは、宝石・ルースとしても鉱物としても人気が高い石です。紀元前の古い時代から「聖なる石」「護符」として愛されており、シルクロードを通ってヨーロッパに運ばれた歴史から生まれたロマンチックな名前も持っています。
さて「青い石」とくくられがちなラピスラズリですが、実はとても個性的な石だという事はご存じでしょうか。
さまざまな宝石の魅力を順に紹介しているTOP STOneRY、今回はラピスラズリに迫ります。青さの秘密や歴史的ストーリー、鉱物・原石視点からの分析まで幅広くお届けします。
ルースコレクターも鉱物コレクターも知っておきたい内容ばかり、ぜひ最後までご覧ください。
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1. 宝石・ルースとしてのラピスラズリ

ラピスラズリはエジプト・ツタンカーメン王の墓からも見つかっているほど、昔から高貴な人に愛されてきました。現代でもシャネルやルイ・ヴィトン、ピアジェといった錚々たるハイブランドが、こぞってジュエリーを発表するなど、宝石としても人気があります。
はじめに宝石・ルースの観点から、ラピスラズリを深く見ていきましょう。
■高品質なラピスラズリとは

高品質なラピスラズリを見分けるポイントは、コレクターなら知っておきたい情報です。トップクオリティのラピスラズリを決める要素を、まとめて解説します。
ラピスラズリのカラー
ラピスラズリの価値を決める最大の要素は「カラー」です。ラピスブルーと呼ばれるパープルがかった深みのある濃青色(インディゴブルー)が最高品質とされます。
多くの成分からなるラピスラズリは黒みや白み、グレイやグリーンがかった色を示す場合もありますが、これらの色は美しさの面からは評価されません。
《豆知識》ラピスラズリのカラーバリエーション
ラピスラズリは単体で見ると、どれも同じ濃青色に見えるかもしれません。しかし、ラピスラズリのカラーは、含まれる成分の配合によって異なります。複数のラピスラズリを並べてみてください。個体によってカラーに違いがあることが分かります。
代表的なラピスラズリのカラーは、次の4つです。
① インディゴブルー:藍色。デニムの色としても有名。
② ロイヤルブルー:紫みのある青色。イギリス王室のオフィシャルカラー。
③ ミッドナイトブルー:真夜中のような暗く紫みのある青色。
④ マリンブルー:海のような緑みのある濃いめの青色。
ラピスラズリでもっとも価値が高いのは「深みがあり、ムラのないミディアムからダークの青色」です。紫みのある濃い青が、より価値が高いとされます。
ラピスラズリの「キラキラ」
ラピスラズリにパイライト(黄鉄鉱)の小片が含まれると、表面がキラキラと夜の星空のように輝きます。このパイライトはラピスラズリらしさでもありますが、クオリティは「まったく入っていない」「入っている場合はバランスが良いもの」が良いとされています。
《豆知識》クオリティスケールとは
クオリティスケールとは宝石の品質を客観的に評価するためにつくられた「宝石のものさし」です。縦軸には明暗度・濃淡(トーン)が7段階、横軸には美しさ(ビューティグレード)が5段階で区切られ、合計35の枠で宝石の品質を評価します。
特に美しく希少性が高い石が「ジェムクオリティ(GQ)」と最高品質の評価を得、次いでジュエリー用品質の「ジュエリークオリティ(JQ)」、アクセサリー向きの「アクセサリークオリティ(AQ)」と続きます。
クオリティスケールは採掘業者や輸入業者といった「宝石のプロ」には欠かせない専門的な指標です。もし興味がある方は調べてみてください。やや難しい部分もありますが、宝石についてもっと深く楽しめるようになります。
★ クオリティスケールについて詳しくは、以下の書籍がおすすめです!
『宝石品質ガイド~クオリティスケール』諏訪 恭一・著(アーク出版)
諏訪先生は米国宝石学会(GIA)宝石鑑別士資格を日本人第一号として取得した、日本宝石界の第一人者です。
ラピスラズリは「模造品(偽物)」も多い
この独特な藍色に憧れがあるためでしょうか。ラピスラズリは人工的につくられたものや、ラピスラズリに似せた模造品も多く流通しています。偽物は「違う色の石を青色に変色する」「青色の粉末を練り固める」「安価な材料の表面に青く薄い素材を貼り付ける」といった手法で比較的簡単に摸造されます。
あまりに安価なラピスラズリは模造品を疑ってください。本物のラピスラズリを手に入れたい場合は、TOPSTONEのような信頼できる販売店から購入するのがおすすめです。
《豆知識》ラピスラズリと似た石
ラピスラズリと見た目が似ている石をまとめました。どれも濃い青と、わずかに入るキラキラが特徴的です。
■ラピスラズリの名前の由来
この石が「ラピスラズリ」と呼ばれるようになったのは、中世ヨーロッパです。ラピスラズリを顔料に絵を描いていた画家たちが、この石を「ラピスラズリ」と呼ぶようになりました。
「ラピス(lapis)」は、ラテン語で「石」を意味します。
「ラズリ」は、ペルシア語の「ラニヤード(lāžaward)」から来ており、これは「天・空・青」を意味します。ラ二ヤードは当時、ラピスラズリの産地として知られていました。
「ラ二ヤードで採れる石」という意味で、ラピスラズリと呼ばれるようになったといわれています。
ちなみに古代ギリシアではラピスラズリを「サッペイロス(Sappeiros)」、古代ローマでは「サッピールス(Sappirus)」と呼んでいました。同じ青い宝石であるサファイアと混同され、「サファイア」はラピスラズリを指していた時代もあったようです。
ラピスラズリを原料として作られる鮮やかなブルーを「ウルトラマリン・ブルー(Ultreamarine Blue)」といいます。ウルトラマリンとは「はるばる海を越えてきた」という意味で、アフガニスタンで産出された石がシルクロードを伝い、地中海を超え、はるばるヨーロッパまで来た旅路を指します。なんと壮大でロマンチックな名前でしょうか。

天然ウルトラマリン(Wikipedia掲載画像)
《豆知識》
有名な絵画では、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のブルーにウルトラマリンがつかわれています。黒を背景にした少女に描かれた青と黄色の対比が美しい1枚です。
話題がでたところで、シルクロードの東側に目を向けてみましょう。シルクロードの東端は中国です。中国でも紀元前から装飾品として、ラピスラズリが愛用されていました。
中国から日本に伝えられたラピスラズリは、仏教の「七宝」の一つである瑠璃の名前を与えられます。ラピスラズリを「瑠璃」と呼ぶのは、ここが始まりです。
またヨーロッパではウルトラマリンと呼ばれたラピスラズリの顔料は、日本では「群青(ぐんじょう)」と呼ばれるようになりました。
ただし日本ではラピスラズリが採れません。貴重なラピスラズリより、似た色合いを呈するアズライト(藍銅鉱)が豊富に採れたため、顔料としてはアズライトがつかわれることが多かったようです。
高松塚古墳(奈良県高市郡)の壁画にも、アズライトで作った青がつかわれています。
■ラピスラズリにまつわる逸話
宝石として最古の歴史を持つラピスラズリは、その長さの分だけ多くのストーリーを持っています。
《豆知識》ラピスラズリがつかわれ始めた時代
* メソポタミア:紀元前4,000年
* 古代エジプト:紀元前3,100年
* 中国:紀元前6~5世紀
* 古代ギリシア・ローマ:紀元前5~2世紀
古代の人々は「青には魔を寄せ付けない力がある」と信じていました。さらにラピスラズリには、「いかなる者にも冒されない力」とされる金も含まれています。
魔除けの青と、万能の金。その両者を内包するラピスラズリは、護符としてつかわれていたようです。
密度の高いラピスラズリは堅牢で、研磨やカットにも耐えます。古代から彫刻や象嵌(ぞうがん)などにもつかわれてきました。
国立西洋美術館には紀元前1世紀ごろにつくられた、金にラピスラズリをはめ込んだリングが所蔵されています。ラピスラズリに彫られているのは、四頭立ての馬車に乗ったヘリオス。ヘリオスはギリシア神話の太陽神で、四頭立ての馬車で天を駆けると信じられていました。
■ラピスラズリの産地

ラピスラズリが世の中に登場してから現代まで、6,000年以上にわたって原石を産出しているのはアフガニスタンです。現在も産出量世界一を誇ります。深く濃い青色が均一に広がる最高品質のラピスラズリは、今もこの地でしか採れません。
アフガニスタン産のラピスラズリは、エジプト・ツタンカーメン王のマスクをはじめ、有名な工芸品につかわれています。
アフガニスタンのなかでも、バダクシャン州ヒンドゥークシュ山脈のサリ・サング(サーレサン/Sare Sang)鉱山で採掘できるラピスラズリの品質は極めて高いとされています。
アフガニスタンに次ぐラピスラズリの産地は、南米のチリです。アルゼンチンとチリの国境付近のコキンボ地方にラピスラズリの巨大鉱脈が発見されています。
パイライトを多く含む淡い色合いのラピスラズリが多く採れます。
ラピスラズリの産地なら、ロシアも押さえておきましょう。国土が広い分、さまざまな場所で採掘が行われています。シベリアのバイカル湖地方に、ラピスラズリの大鉱脈があるのではないかと見る専門家もいます。
2. 鉱物・原石としてのラピスラズリ

ラピスラズリは鉱物学的に見ても、とても面白い性質を持っています。ラピスラズリがもっと好きになれるよう、鉱物や原石の視点からチェックしていきましょう。
■組成について
ラピスラズリの組成情報は、以下のとおりです。
英名(カタカナ) | Lapis Lazuli(ラピスラズリ) |
和名 | 青金石(せいきんせき)、瑠璃(るり) |
成分 | 含有鉱物により異なる (Na,Ca)₇~₈ (AL,Si)₁₂ (O,S)₂₄ [SO₄,Cl₂,(OH)₂] |
結晶系 | 青色の鉱物の集合体 |
硬度 | 5~5.5 |
屈折率 | 1.65~1.90 |
劈開 | なし |
色 | 紺青・青・青緑・青紫 |
主な産地 | アフガニスタン、チリ、ロシア、カナダ、ミャンマー、アルゼンチン、イタリア、アメリカ、アンゴラ、スリランカ、ナミビア |
ラピスラズリは「青色の鉱物の集合体」です。しばしば、複数の鉱物の“混ざった”石とされる場合がありますが、“集まった”の誤りです。
◎ラピスラズリを形成する青色の鉱物4種類
① ラズライト(青金石・Lazurite)
② アウィン(藍方石・Hauyne)
③ ソーダライト(方曹達石・Sodalite)
④ ノゼアン(黝方石・Nosean)
この4つの鉱物が集まった石がラピスラズリです。ラズライトが多いほど鮮やかな青を呈します。
■ラピスラズリの原石

ラピスラズリは熱変性を受けた石灰岩中で、接触変成作用を受け生成します。母岩の隙間で固まったり、母岩を取り込んで成長するものもあります。
大理石の脈の中に筋状に形成されたラピスラズリはそれだけを取り出すのが難しく、宝石質にならない石は鉱物標本として流通します。
ラピスラズリは生成に特別な条件が必要です。
◎ラピスラズリの生成条件
・スカルン(石灰岩)に、硫黄や塩素などの特殊な元素があること
・高い温度が維持されていること
・珪酸が少なめであること
この条件を満たせる場所は多くはなく、これもラピスラズリの産地が限られる要因です。
■鉱物としてのラピスラズリ
宝石としてのラピスラズリは、パイライトが少なく均一なブルーであるほど珍重されます。
しかし鉱物コレクターとしては、パイライトが表面に現れた石のほうが、個性があって面白いと感じるのではないでしょうか。パイライトの入り方やカットによって、さまざまな表情を見られるのもラピスラズリならではの楽しみです。

また、母岩ごと標本になったラピスラズリもコレクター魂を揺さぶります。大理石や石灰岩の白とラピスラズリのブルーとのコントラストは一つひとつ異なり、いつまで見ていても飽きません。白の入り方、さらにパイライトの有無によって表情が大きく異なるラピスラズリは、集めがいのある鉱物です。

見るからに自然の石なのに、人工物かと思うほどの濃いブルー。際立つ2つの特徴が共存するラピスラズリの原石を、ぜひコレクションに加えてみてください。
3. ラピスラズリをより楽しむために

ラピスラズリはパワーストーンとしても有名です。ビーズブレスレットに加工されることも多く、パワーストーンショップで見かけた経験がある人も多いのではないでしょうか。
ラピスラズリをもっと身近に、もっと気軽に楽しむヒントを紹介します。
■誕生石・石言葉

■ビーズ・アクセサリー
ビーズ状のラピスラズリは、パイライトや石灰岩が見えるものがおすすめです。青一色のビーズより手頃な価格で集められること、なんといっても地球のような見た目が魅力です。

青い海に白い雲がかかるように見える姿は、まるで宇宙にぽっかり浮かぶ地球そのもの。ラピスラズリが持つ「魔除け」のパワーをより実感できるのではないでしょうか。
パワーといえば、ラピスラズリは世界で最初のパワーストーンとされています。「最強の聖石」ともいわれ、人間関係の改善や頭脳の明晰化、強運を導く効果があると期待されます。
古くから護符として人々とともにあったラピスラズリを、お気に入りの形でそばに置いてみましょう。遠からず、良いことがあるかもしれませんよ。
《豆知識》
ラピスラズリは酸に弱い鉱物です。微量の酸にも反応し変色します。ラピスラズリの保管やお手入れは、手袋をして大切に取り扱いましょう。
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4. まとめ
ラピスラズリは日本語で「瑠璃色」と呼ばれる、深く鮮やかな青が目を惹く鉱物です。インディゴブルーは砂漠の夜空を、キラキラ輝くパイライトは夜空にまたたく星のようです。
昔の人はきっと、ラピスラズリのような夜空の下、シルクロードを東から西へ移動しラピスラズリを運んだに違いありません。
ラピスラズリは鉱物としても興味をそそられます。そもそも、4つの青色鉱物の集合体であるという特徴はラピスラズリの独自性を際立たせるのに十分です。生成した母岩を残した原石や、丸くカッとすると地球にも見える様相は、いくつも集めたくなる魅力に満ちてはいませんか。
ラピスラズリはどこでも採れる石ではありません。また一つひとつ表情が異なるのも魅力です。いま、目の前にあるその石はきっと唯一無二の希少性を持っています。
ぜひ、あなたのコレクションにお気に入りのラピスラズリを加えてあげてください。
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この記事を書いた人

みゆな
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。