流星と共に誕生したモルダバイト|魅力や特徴、逸話までを解説

モルダバイトは一般的に隕石にまつわる石、もしくは隕石そのものといったイメージで知られています。黒味を帯びたグリーンの、いかにも隕石のような形とともに【宇宙のパワーを持つ石】などのコメントを見たことがある方も多いでしょう。果たしてモルダバイトは隕石なのか、宇宙のパワーは秘められているのか。解説していきます。
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1.宝石・ルースとしてのモルダバイト

モルダバイトは透明〜不透明で、褐色から渋みのあるグリーンを呈します。一般的にはごつごつ、つぶつぶとした原石のイメージが強いかもしれません。しかしファセットカットすると、モルダバイトも美しい輝きを見せます。
■最高品質の宝石としてのモルダバイトは?

モルダバイトは透明~不透明で分散率も低く、他の貴石に比べると煌めきという点では物足りないかもしれません。
しかし、その落ち着いた煌めきの中にある、モルダバイトの持つ複雑で、特徴的なインクルージョンにはミステリアスな印象深さがあります。苔むしたような、鬱蒼とした森にかかる朝靄のようなグリーンも、一層、その謎めいた魅力に磨きをかけています。
気品あるオリーブグリーンも美しいですが、中でも宝石として好まれるのはやはり、はっきりとしたグリーンが鮮やかなモルダバイトです。時にクロムダイオプサイトと見紛うような、鮮明なモルダバイトも見られます。
渋みのある魅力的なグリーンはそのままに、美しくインクルージョンが揺らめくように見えるモルダバイトは、大人な魅力がある宝石ですね。またモルダバイトの性質上、年月をかければ結晶が大きく育つというものではない為、大きな宝石はレアリティが高く、価値も自ずとあがっています。
黒色インクルージョン(内包物)や目立つインクルージョンがないものが好まれますが、インクルージョンが全く無いものはよくありません。
■宝石としてのモルダバイトの特徴
モルダバイトはその生成過程で必ずインクルージョンを含みます。
その一つが気泡のようなインクルージョン。ガラス細工にはよく見られる気泡ですが、原理的にはあれと同じものです。しかしモルダバイトの気泡(バブル)は規則的に並ぶ丸い粒ではなく不規則で、楕円形の粒が見られます。丸い気泡があることもありますが、多くは楕円形でしょう。
またモルダバイト独特の特徴として、宝石の内部に龍紋(フローライン)、もしくは流理痕(スワール・ストライエ)と呼ばれる、龍が身を捩るような、龍が飛翔していった後の水面のようなウネリが見られます。龍紋が多ければ多いほど価値が高い、といったものではありません。
他に、モルダバイトの形を作っているインクルージョンとも言えるディンプル。大きいものだとえぐれたようにも見える、円形の凹凸です。同じように形を作っている飛翔痕。空気の抵抗を受けて作られた、水が流れた後のような凹凸のことです。
この二つのインクルージョンがモルダバイト特有の形を作り上げるのみならず、その石の歴史そのものを辿る手がかりにもなります。これらのインクルージョンはモルダバイトと模造石を見分ける大事なインクルージョンです。
何より、価値に関わらず天然の彫刻、不規則に光を反射する龍紋や気泡はそれだけで得難い魅力があります。
カボションカットにするとより光を透過して、より美しく龍紋や粒を際立たせることができます。
色はオリーブグリーンから帯黒緑と幅があります。
エメラルドのようにはっきりと明度、彩度の高いグリーンではなく、時にシルキーなグリーンを呈しますが、いつもは大人しく、光に透過して鮮やかに輝くモルダバイトは魅力の底を見せない、どきりとさせる美しさを表現するのにぴったりです。
■モルダバイトの模造石
モルダバイトの主成分はケイ素、ガラスと同じです。
よって模造石を作ることが容易で、また精巧に作ることができてしまいます。
とはいえ、以前の模造石はディンプルらしさや気泡らしきものがあっても本物ほど凹凸もなく、素人目にも何か変だな? と思える程度でした。
モルダバイトは限りのある鉱物で、気の遠くなる年月をかけたとしても増えることがありません。
年々希少価値が上がる一方、人気も高まっているモルダバイト。需要に対して供給のバランスが崩れている状態です。
そうなると、模造品を作れば高く売ることが出来てしまいます。売れるとなると、模造品を作る側もより本物に似せてきます。
以前は再現不可能と言われていた龍紋っぽいものの再現や、ガラス特有の丸い気泡をモルダバイトらしく楕円形に作ることも可能になっているようです。
近年は研磨後に残る天然モルダバイトの欠片を集めて溶かし、再度固めた模造石もあるようです。再生こはくならぬ、再生モルダバイトですね。
成分的には天然のモルダバイトと変わりませんが、人工的に再現したモルダバイトを天然とは呼べません。
人工ガラスに天然モルダバイトを少量混ぜ合わせた模造石もあるようです。
精巧な模造石が多く流通すると、少数派になった天然モルダバイトの値段は更に高騰します。
そうなると、より高く売れる模造石が作られるようになります。
そしてまた天然モルダバイトの値段が高騰します。
このループを止めるには、やはり偽物を掴まないのが大事ではないでしょうか。
一見して真贋の区別がつかないレベルの模造品も出回っています。特にビーズやファセットカットなど、研磨済みのものは尚更でしょう。
龍紋、気泡、手触り、光の透過具合など真贋を見分けるポイントはありますが、模造石も技術を刷新していく為、疑わしい場合は鑑別機関に出すのが最も確実です。
宝石全般に言えることですが、購入は信頼できる店や人から購入するのが一番です。
■モルダバイトの逸話と伝説
モルダバイトは月で噴火した火山の噴石が地球まで落ちてきたもの、と思われていた時代もありました。現代からすると荒唐無稽ですが、隕石と思われながら岩石や金属の塊ではなく、グリーンに煌めき、人の真似できない模様を伴うモルダバイトが、特別なインスピレーションを刺激したことは想像に難くありません。
その特別さに刺激を受けて生まれたのが、あのスーパーマンとも言えるかもしれません。モルダバイトは彼の故郷の惑星、クリプトン星の欠片クリプトナイトのモデルになったと言われています。
モルダバイトに特別な力を見出したのは現代人だけではなく、古代から、人々はモルダバイトに特別な力を見出していました。
ゴルゴダの丘で十字架にかけられたキリストの血を受け、その杯を満たして飲めばあらゆる傷と病を癒やし、若さと寿命を得られると言われる聖杯。アーサー王の伝説をはじめ歴史上の様々な人物が探し求めたとも噂される聖杯は、モルダバイトで出来ているとも言われています。
特別な力を持つとうたわれたモルダバイトは、しばらく表舞台から姿を消しますが、1700年代に再発見されます。
■モルダバイトの産地と名前

モルダバイトは、1700年代、当時チェコスロバキア共和国だった現チェコ共和国のブルタバ川で発見されました。このブルタバ川、ドイツ語読みのモルダウ川という名前で日本でもよく知られています。そこから、モルダウの石、つまりモルダバイトと名付けられました。
1470万年前、ドイツのネルトリンガー・リースを作った隕石を切欠にモルダバイトは誕生しました。現在の産地は、そこから250km程離れたチェコ共和国。隕石の落下地点と現在の産地から、モルダバイト誕生のインパクトがどれだけのものだったのか伺えます。
2.鉱物・原石としてのモルダバイト

モルダバイトは、テクタイトという鉱物の一種です。
かつてはモルダバイトは隕石だという説がありましたが、実際の隕石の欠片はインパクタイトと呼ばれます。一方テクタイトは、隕石落下の衝撃で融解した物質が、再び冷えて固まったものです。その物質はケイ素であり、厳密には鉱物ですらありません。
火山噴出物のようにも見えるテクタイトは、産出される場所によって名前が変わり、モルダバイト以外にも複数種類あります。
■組成について
ではモルダバイトの組成から見てみましょう。
英名 | Moldavite(モルダバイト) |
和名 | モルダウ石 |
成分 | SiO2(+Alなど) |
結晶系 | 非晶質 |
モース硬度 | 5.0~6.0 |
屈折率 | 1.48~1.50 |
劈開 | なし |
色 | 緑、濃緑 |
主な産地 | チェコ共和国 |
先に少し触れましたが、モルダバイトは1470万年前、ドイツのネルトリンガー・リースの盆地を作った隕石の衝突の際、急激に熱されて溶解した地中のケイ素が液状になって飛び散り、落ちる過程で急速に冷えて固まったものです。
隕石そのものでも、まして月の火山によるものでもありません。隕石によって溶けた飛沫は250kmほど遠くのチェコ共和国まで、日本で言えば東京から静岡の辺りまで飛び、その過程でオリーブグリーンの天然ガラスの塊となりました。モルダバイト特有の気泡や龍紋、ディンプルもこの時についた筈です。
また多くのテクタイトが黒色不透明なのに対して、モルダバイトがグリーンを呈するのは鉄によるものです。
先に紹介したディンプルや飛翔痕は、インパクトで巻き上げられながら溶けた物質が250㎞の飛行の最中、空気の摩擦などによってつけられました。
そのモルダバイトがどんな風に飛んだのか、どれ程の勢いで飛んだのか、その身に文字通り刻まれているのですね。
隕石の衝突を切欠に生まれたモルダバイトは、これ以上増えることがありません。
ネルトリンガー・リースに衝突した小惑星の大きさは直径1.5km程もあったと言われています。
もう一度同じ規模の隕石の衝突があれば再びモルダバイトが生まれるかもしれませんが、その新しいモルダバイトを見るのは私たちとは全く違う新人類か、人類でさえないかもしれません。
二度とその誕生を見ることはない、限られた宝石。そんなところにもまたロマンを感じます。
■原石の形状

隕石といえばこんな形、それを体現しているようなモルダバイトです。ごつごつとした怪獣の肌のような見た目と、尖っているわけでなくともちくちくとした肌触りを感じるかもしれません。
不規則で、文字通り、溶けてかためたような外見が特徴的です。同じ原石中でも透明部分と半透明部分があり、非晶質ですので決まった形もなく、一つずつ顔が違うのがモルダバイト原石の魅力と言えるでしょう。
■鉱物としての魅力

まず、隕石を由来とするその誕生経緯からして、ロマンを感じずにはいられません。
一つとして同じ形のモルダバイトはなく、また内部の龍紋や気泡も同じではないでしょう。こ自然の作り出す形状と、龍紋や気泡が絶妙な風合いを演出してくれるのがモルダバイト原石の魅力です。
また、その形状も自由なので、天然の葉のように見えるものや、何かしら形を見出すことができるのもモルダバイトの面白みを感じるところではないでしょうか。象形的な造形をインクルージョンも後押ししてくれます。
加工せずとも天然で楽しめ、その背景に物語を見ることができるのはモルダバイトならではです。また、そのまま枠留、もしくはワイヤーなどでナチュラルアクセサリーにするなど、装飾品として映える場所を選びません。
■モルダバイトの仲間たち
隕石の衝撃で熱され、融解した物質が再度冷えて固まって出来る天然ガラスはモルダバイトの他にもあります。
その多くは黒色不透明で貴石にはならないものが多いですが、その中でもエジプトのリビア砂漠に由来するリビアン・グラスは無色〜黄色の透明のテクタイトです。

モルダバイトと比べると知名度の低いテクタイトですが、太陽を運ぶ昆虫スカラベを象ってツタンカーメンの胸当てを飾るなど、古くはモルダバイトと同じ、特別な力があると考えられていたのかもしれません。
テクタイトのほとんどは、地名に因んで名付けられています。例えば、アジアではインドシナイト、アメリカではジョージアナイトなどがその例です。その多くは黒色不透明で、時に光を透過してオブディシアンのような輝きを持つものがあります。
黒色で面白いテクタイトとしては、オーストラリアで産出するオーストラライト。黒色不透明のテクタイトですが、ボタン型の形状が特徴で、UFOのようにも見える外観は一見の価値があります。
3. モルダバイトをより楽しむために

宝石、原石とは違うモルダバイトの楽しみ方を紹介します。
■パワーストーンとしてのモルダバイト

隕石のパワーをその身に浴びて生まれたモルダバイトは、パワーストーンとしても魅力的な、強い力をもつといわれる石のようです。その力の引き起こす諸症状はモルダバイトフラッシュとまで呼ばれることも。
パワーストーンとしては流れ星の見られる夜によりパワーを発揮する、とも言われているそうです。元々流れ星と出会ったことで生まれた結晶のモルダバイトには夢とロマンが詰まっています。
特別な出会いの生み出す石だからでしょうか、石言葉には「円満」「繁栄」「癒やし」などがあります。また産出国のチェコでは、恋人や夫婦でお互いの円満を願って贈り合うこともあるそうです。古くは魔除けの道具としても重用されていました。
■ビーズ・加工品として

天然ガラスであるモルダバイトは、ビーズにしても相性が良いです。モルダバイト特有の龍紋や気泡はそのままに、光をより透過できるようになるビーズは合わせ方によって様々な美しさを引き出してくれるでしょう。
また切子細工にすることで、他の貴石にはない魅力が引き出せます。ともすれば黒っぽくなりがちなモルダバイトと切子は相性がよく、程よく抜け感を作って陰影の美しい切子模様を魅せてくれるでしょう。
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弊社で扱っている宝石、ルース(天然石)の数々は、商品名には流通名または宝石名を記載して販売しております。中立の立場である第3者鑑別機関に鑑別しているため、安心してご購入いただけます。
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▼鑑別・ソーティングについては以下ページにて詳細をご確認いただけます
4. まとめ
いかがでしたでしょうか。流星と大地の子供、モルダバイト。貴石としても天然のままでも、ストーリー性からも、様々な面に魅力を持っています。そういう背景とモルダバイトの持つエネルギーを信じて身につければ、何かあなたの心の後押しをしてくれるかもしれません。
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この記事を書いた人

佐伯
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。