「ロードクロサイト」はアメリカ三大希少石の1つ|その魅力と歴史を紹介

アメリカ三大希少石に数えられている「ロードクロサイト」は、「インカローズ」の名前でも親しまれています。赤やピンクの美しい色合いが人気のロードクロサイトですが、どのような特徴や歴史があるのでしょうか。ここでは宝石やルースだけでなく、原石や鉱物としての特徴もご紹介するので、ぜひロードクロサイトの魅力を満喫してください。
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1.宝石・ルースとしてのロードクロサイト

ロードクロサイトの宝石・ルースとしてのそれぞれの魅力を見てみましょう。
■高品質なロードクロサイトとは
最高品質と評価されるロードクロサイトには、下記の特徴があります。
赤色が濃い
透明度が高い
縞模様がない
カットが美しい
カラット数が大きい
鮮やかで赤色が濃く、高い透明度で縞模様がないロードクロサイトは価値が高くなります。
また、硬度が低く劈開性があるロードクロサイトに美しいカットを施すには高い技術が必要となるため、カットの美しさも価値基準の一つです。
カラット数も、大きければ大きいほど高価になります。なお、アメリカのスイートホーム鉱山産のロードクロサイトは飛びぬけて価値が高いです。しかし、スイートホーム鉱山は閉山してしまい、この鉱山からの新しいロードクロサイトは産出されなくなりました。
近年では、スイートホーム鉱山産に匹敵する素晴らしい品質のものが中国で産出され、注目を集めています。
■ロードクロサイトの特徴

ロードクロサイトは赤色のイメージが強いかもしれませんが、シックで少し茶色がかった赤色や鮮やかなピンク色、黄色、チョコレート色、オレンジ色など、そのバリエーションは豊富です。同じ宝石でもさまざまな表情を楽しめるのは、ロードクロサイトの魅力といえるでしょう。
また、ロードクロサイトは複屈折率が高いことも特徴です。複屈折とは、宝石に当たった光が、石の中で2本に分かれて屈折していく現象です。完全な透明度を持つものは数が少なく、シルキーな見た目のものが多いのですが、複屈折率が高いロードクロサイトは、写真を撮る際に輪郭がボヤけてしまったり、石の下にある文字が二重に見えたりする「ダブリング効果」が現れることがあります。

なお、猫の目のような縦縞模様を呈する「キャッツアイ効果」があるロードクロサイトも存在します。ただし、キャッツアイ効果が見られる宝石品質のロードクロサイトはとても希少です。
■ロードクロサイトの歴史と逸話

ロードクロサイトの歴史は古く、13世紀頃からインカ帝国を中心にお守りとして親しまれてきました。インカ帝国は現在のアルゼンチン、サン・ルイス州に位置し、この州にある鉱山がロードクロサイト採掘の最古の場所とされています。
なお、インカローズを最初に発見したインカ人は、「暗い鉱山に花が咲いたようだった」と表現したと伝えられています。その後しばらく採掘されなかったものの、1813年にルーマニアのカヴニク鉱山で改めて発見されたロードクロサイトは、ヨーロッパの裕福な人々からの注目を集めるようになり人気の石となりました。
第二次世界大戦後になると、ロードクロサイトは広く市場に出回るようになりました。アメリカでも人気となったロードクロサイトは、透明なものだけでなく縞模様があるものも多く産出されました。
縞模様はバラのように見えることから、最初の産出地の名を取り「インカのバラ」を意味する「インカローズ」という愛称も誕生したといわれています。ちなみに、ロードクロサイトという名は1800年頃に付けられたとされ、ギリシャ語で「バラ」を意味する「rhodes(ロードン)」と、「色」を意味する「chros(クロス)」に由来します。
なお、インカローズもロードクロサイトの別称ですが、面白いものでは日本で産出されたものの中で褐色の塊状になったロードクロサイトを、かつお節を意味する「カツブシ鉱」と呼ぶこともあります。
■ロードクロサイトの産地

ロードクロサイトの主な産地は、下記となっています。
アルゼンチン
ペルー
アメリカ
ルーマニア
オーストラリア
ロシア
インド
中国
日本

アルゼンチンで産出されるロードクロサイトは、ラズベリーのような鮮やかなピンク色のものが多くなっています。
一方、ペルーで産出されるロードクロサイトは茶色がかった赤色のものが多いなど、産地により色などの特徴が異なります。
なお、赤やピンク系の色合いが大半のロードクロサイトの内、南アフリカは珍しいオレンジカラーを産出します。
世界中のさまざまな国で産出されるロードクロサイトですが、宝石品質のものは南米から多く採掘されることが特徴です。特に、アルゼンチンは高品質なロードクロサイトが多いことで有名ですが、近年、産出量は少なくなってきています。
また、前述の通りアメリカのコロラド州にあるスイートホーム鉱山はもっとも上質なロードクロサイトが多く産出されましたが、現在は閉山しています。
日本では、北海道・青森県・秋田県でロードクロサイトが採掘されていました。
北海道では、積丹半島にある稲倉石鉱山から、バラ色でシルキー光沢のロードクロサイトが採掘されていました。この鉱山はもともと金鉱山で、あわせてマンガン鉱石も採掘をしていました。ロードクロサイトは菱マンガン鉱です。工業用のマンガン鉱石を採掘する工程の副産物として、ロードクロサイトも産出していました。
ただし、海外からのマンガン鉱石の輸入が増え、日本での採掘は終了。鉱山も閉山になりました。半透明で柔らかい印象が人気でしたが、現在は当時産出した希少なものがわずかに出回るのみとなっています。
現在では青森県や秋田県の鉱山も閉山しているだけでなく世界的に産出量が減っているため、ロードクロサイトは今後希少価値が上がる可能性が指摘されています。
■有名なロードクロサイト

「アルマ・キング」 / Wikipedia掲載画像
Kimon Berlin, user:Gribeco - 投稿者自身による著作物, CC 表示 2.5,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=1098060による
アメリカにあるスイートホーム鉱山で採掘された中で最大のロードクロサイトは、「アルマキング」と名付けられています。14cm×16.5cmの大きさで、ハッキリとしたチェリーレッドが美しいロードクロサイトです。
同じようなチェリーレッドのスイートホーム鉱山産ロードクロサイトで、「アルマクイーン」と名付けられたものもあります。アルマキングはデンバー自然科学博物館に、アルマクイーンはヒューストン自然科学博物館に展示されています。
また、世界最大とされるロードクロサイトは、中国で発見されました。40cm×60cmで重さが63.5kg、最大直径は22cmを誇る赤色が美しいロードクロサイトは、「中国の皇帝」と呼ばれています。また直径39cmを誇る大きさのロードクロサイトも発見されており、こちらは「中国の皇后」と名付けられています。
2.鉱物・原石としてのロードクロサイト

ここからは、鉱物・原石としてのロードクロサイトについて知識を深めていきましょう。
■組成について
まずは、ロードクロサイトの組成からご紹介します。
英名 | Rhodochrosite(ロードクロサイト) |
和名 | 菱マンガン鉱(りょうまんがんこう) |
成分 | Mn[CO₃] |
結晶系 | 六方晶系 |
モース硬度 | 3.5-4 |
屈折率 | 1.60-1.82 |
劈開 | 三方向に完全 |
色 | 赤、ピンク、黄色、茶色など |
主な産地 | アルゼンチン、アメリカ、南アフリカ共和国、ペルー、中国、日本など |
マンガンの炭酸塩鉱物であるロードクロサイトは、カルサイト(方解石)系に分類されるマンガンの主要な鉱物の一つです。カルサイト系には、ほかにシデライトやマグネサイトが分類されています。
ただし、カルサイトはカルシウムを含みますが、ロードクロサイトはマンガンを含むことが特徴です。このマンガンにより、ロードクロサイトは美しいピンク色になります。また、シデライトなど、カルサイト系のほかの鉱物と成分が入れ替わることがあります。
別鉱物の成分が含まれる量により、ロードクロサイトは黄色や褐色などさまざまな色合いになる仕組みです。
ロードクロサイトは、マンガンの編成鉱床や銀や銅、鉛を含む熱水の鉱脈から採掘され、乾電池やアルミニウム合金などに使われるマンガン抽出のための鉱石として使われることもあります。
その中でも宝石品質のものが、市場に出回ることになります。
なお、和名である「菱マンガン鉱」は、結晶が菱形であることから名付けられました。鉱山では、炭酸マンガンを意味する「炭マン」と呼ばれています。
ロードクロサイトは、硬度が低く三方向に完全な劈開性があります。そのため、衝撃に弱く、ファセットカットなどの加工が難しい鉱石です。また、酸に弱いという性質があり、酸化が進むと光沢がなくなり、黒ずんでしまいます。水分にも弱く、湿気が多い場所に置いておくと褐色の被膜が表面を覆って曇ってしまいます。
■原石の形状

ロードクロサイトの原石は、菱形のような形をした六方晶系です。
しかし、さまざまな形状で見つかることがあります。
鍾乳石状
葡萄状
塊状
団塊状
層状
粒状
犬牙状
上記のように、多種多様な形で採掘されるロードクロサイトは、色や透明度などもさまざまです。
■鉱物としての魅力

色や透明度にバリエーションが多いロードクロサイトは、その表情の違いを楽しむためにコレクションする方もいます。南アフリカ産の原石は人気が高いですが、産地の違うロードクロサイトを集めているコレクターもいるようです。
また縞模様の入り具合や結晶の形も、原石によって違った表情を楽しめます。層状や腎臓状の原石を輪切りにすると、木の年輪のようなきれいな輪が現れるものがあります。くっきりとした模様ではなくても、輪になりかけのような部分が薔薇の花が開いたように見えるため、ロードクロサイトの磨きやスライス標本はとても人気です。
ちなみに、薔薇の花のような層を、横でなく縦にカットすると、地層のような見た目になります。白い部分とピンクの部分が三枚肉のように見え、鉱物コレクターの間では「三枚肉」とか「豚バラ」などと呼ばれることもあります。
原石の状態でも、良質なロードクロサイトは表面が美しく輝くため、この輝きも鉱物としての魅力です。
3. ロードクロサイトをより楽しむために

ロードクロサイトについて、誕生石や石言葉、加工品などについても見てみましょう。
■ロードクロサイトの誕生石・石言葉
ロードクロサイトは、7月の誕生石に数えられることもあります。石言葉には、その美しい色にふさわしいものが多く挙げられています。
愛
恋愛
情熱
引き寄せ
■ジュエリーやビーズとして

モース硬度が低く劈開性が完全なロードクロサイトは、「半貴石」に指定されています。貴石がモース硬度7以上で希少性があるものであるのに対し、半貴石は貴石に分類されないものの宝飾品としての美しさが認められているものを指します。ロードクロサイトは、その美しさが広く認められている石といえるでしょう。
破損しやすく加工も難しいロードクロサイトですが、その美しさを楽しむ方法は多くあります。ジュエリーやビーズとして楽しむほかにも、インテリアとして飾る方法も良いでしょう。
ただし、湿気が多かったり長時間紫外線にさらされてしまうと、黒ずんでしまうため注意が必要です。
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4. まとめ
日本ではインカローズの名前のほうが親しみ深い、ロードクロサイト。透明度や色にさまざまなバリエーションがあるロードクロサイトは、宝石品質のものの産出量が減っていて、今後は希少性が高くなる可能性があります。まるでバラのような美しいロードクロサイトの魅力は、これからも人々を魅了し続けることでしょう。
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この記事を書いた人

Aria
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。