2025/3/27

ローズクォーツのすべて|柔らかなピンク色と力強い原石の魅力

身近な宝石の一つ「クォーツ(水晶)」には、独特のピンク色を呈する石があります。「ローズクォーツ」と呼ばれるクォーツで、自然がつくりだしたとは思えないほどの優しい色合いが昔から多くの人を魅了してきました。

人とローズクォーツの歴史は紀元前までさかのぼります。以来、世界各地で魔除けや癒しのお守りとして愛され続けています。

人々を惹きつけてやまないローズクォーツのピンク色は、どのようにつくられるのでしょうか。またコレクターとしてローズクォーツを集める際に注目すべきポイントは何でしょうか。

この記事ではローズクォーツの品質を決める要素や個性的なローズクォーツ、原石・鉱物としてのローズクォーツまで、まんべんなく解説します。ローズクォーツについて徹底的に知るヒントにしてください。


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1.宝石・ルースとしてのローズクォーツ

ローズクォーツは比較的身近な石だからこそ、品質を見分けるポイントに迷いやすい石です。「色合いはどのくらいが美しい?」「透明・不透明はどちらが良い?」など、あらためて知っておきたい宝石・ルースとしてのローズクォーツについて解説します。

■高品質なローズクォーツとは

ローズクォーツのクォリティは「カラー」「インクルージョン」「大きさ」が決定要因です。曇りが少なく透明度が高く、一様にきれいなピンク色のものほど価値が高いとされます。また大きく形の良い石も珍重されます。

カラー

ローズクォーツはホワイトに近い淡いピンク色から薄紅色、ダークピンクまで幅広い色合いを呈します。小さいサイズになるほど、色合いがより明るくなります。ローズクォーツとして美しいとされる色合いは、大きな塊によく見られます。

ローズクォーツのカラーの特徴は、イチゴミルクのような優しい不透明さです。この曇りは顕微鏡レベルでしか見えない鉱物インクルージョンに起因し、またインクルージョンの入り方によってはスタークォーツになる場合もあります(スタークォーツについては、後述します)。

クラック

他の宝石・ルースと同様に、ローズクォーツもクラックがないほうが品質が高いとされています。しかし「クラックがある=品質が良くない」かというと、そうでもないのがローズクォーツの面白さです。

ローズクォーツのクラックは周辺より白っぽくなるため、ピンク色との対比が際立ちます。淡いピンクに白い筋が入った様子は春の花びらのようでもあり、独特の雰囲気を醸しだします。ローズクォーツではクラックも一つの個性として愛されています。

カット

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▲ ビーズ加工されたローズクォーツ

ローズクォーツは半透明から不透明であること、またインクルージョンやクラックが多いことからファセットカットには向いていません。大多数のローズクォーツはカボションカットやビーズ、カメオに加工されます。

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▲ ファセットカットのローズクォーツ

稀に産出される透明度の高いローズクォーツにはファセットカットが施され、上品で愛らしい輝きを放つルースとなります。ファセットカットされた透明度の高いローズクォーツは、希少価値が高くコレクターやクリエイターから人気があります。

ローズクォーツは、クラックは多いものの劈開がないというクォーツ種の特徴を備えています。彫刻の材料をはじめ、さまざまな形を模したカットが施された石を楽しめるのもローズクォーツならではです。

■特別なローズクォーツ

    透明度の高いローズクォーツの中には、スター効果を呈する「スターローズクォーツ」が生まれることがあります。またスターの先に別のスターが次々とあらわれるローズクォーツ「マルチ・スター」は希少価値が高く、コレクター垂涎の石でしょう。

    スターローズクォーツについて、生まれる理由を交えながら詳しく解説します。

    スターローズクォーツ

    ローズクォーツのピンク色は、石中に含まれるチタン(Ti)が要因です。肉眼では見えない微細なチタンがローズクォーツ特有のミルク色の曇りをつくっています。

    このチタン、実はローズクォーツ形成の過程で「取り込まれ過ぎてしまう」ことがあります。過剰なチタンはローズクォーツが形成された後に「ルチル(金紅石・二酸化チタン結晶の一種)」となって、クォーツの組織中に晶出します。

    ルチルが晶出したローズクォーツはカットによってスタークォーツとなり、新たな魅力を放ちます。

    マルチスターローズクォーツ

    マルチスター(Multi star)とは、スターが幾重にも重なったように見えるスタークォーツです。クォーツを回転させるとスターの足(先端)の先に別のスターがあらわれ、さらに回転させるとまた別のスターが出現します。スターの足が次々と交わるさまはとても神秘的で奥深く、いつまでも見ていたくなる魅力があります。

    スターの見つけ方

    クォーツのスターは結晶構造の違いにより、上から光を当ててもよく見えないことがよくあります。しかし下から光を当てるとくっきりとスターが見えるため、クォーツのスター効果を確認する際はさまざまな方向から光を照射してみてください。

    【豆知識】
    クォーツのように石の下から光を当てるとスターが見えやすくなるタイプを「ダイアステリズム(diasterism・透過光でのスター)」といいます。

    ルビー・サファイアのように石の上から光を当ててスターが確認できるものは「エピアステリズム(epiasterism・反射光でのスター)」といいます。

    ■ローズクォーツにまつわる逸話

    史上初めてローズクォーツを使ったのはアッシリア人(BC800~BC600年)だと言われます。この時代の遺跡から、ローズクォーツのビーズが発掘されたことで判明しました。アッシリア人たちはローズクォーツを魔除けや宝飾品として使っていたようです。

    ローズクォーツは古代ローマ・古代エジプト・古代ギリシャなどで、お守りとして使われていました。古代エジプトでは、ローズクォーツには老化を防ぐ力があると信じられていたようです。死後の世界と魂の復活を信じ、五体満足で生ききることを重視した古代エジプト人らしい発想といえます。

    ■ローズクォーツの産地

    ローズクォーツは、他のクォーツ種同様にブラジルでたくさん産出されます。世界でも指折りの巨大鉱床があるミナスジェライス州を中心に採掘されたローズクォーツが、世界中で流通しています。

    品質の良さで知られる産地はマダガスカルです。マダガスカルで産出されるローズクォーツは、透明度の高さや色の濃さで高く評価されています。スターローズクォーツも採掘されます。

    2. 鉱物・原石としてのローズクォーツ

    カット・研磨され艶やかな美しさを見せるルースも魅力的ですが、ローズクォーツは原石のままでも優しく心が引き寄せられます。
    原石、そして鉱物としてのローズクォーツに迫ってみましょう。

    ■組成について

    ローズクォーツの組成情報は、以下のとおりです。

    英名 Rose quartz(ローズ・クォーツ)
    和名 紅石英(べにせきえい)、紅水晶(べにすいしょう)、薔薇石英(ばらせきえい)
    成分 SiO2
    結晶系 六方晶系(三方晶系)
    硬度 7
    屈折率 1.54~1.55
    劈開 なし
    ピンク色、桃花色、帯紫ピンク色、帯灰淡ピンク色
    主な産地 ブラジル、マダガスカル、モザンビーク、ナミビア、インド、アフガニスタン、イタリア、ドイツ、イギリス、アメリカ、アイルランド、ロシア、中国、日本

    ■原石の形状

    多くのローズクォーツは、カラーレスクォーツのような結晶状には成長しません。ごくごく稀に結晶の形に成長したローズクォーツが産出されますが、その形だけで非常に価値が高くなります。

    ローズクォーツの原石のほとんどは、塊状をしています。塊状の原石を「マッシブ(mssive)」と呼びます。ちなみに結晶状の原石の呼び名は「クリスタル(crystal)」です。

    ローズクォーツの原石が結晶状に成長しないのは、ピンクの発色要因でもあるインクルージョン・チタンに起因します。クォーツ種をつくる石英(SiO₂)は、化学式からわかるとおり「ケイ素(Si)」と「酸素(O₂)」からできています。ケイ素と酸素が規則正しく並ぶことで結晶となり、六角柱に成長するのです。

    しかしローズクォーツは、石英のなかにチタン原子が混じっています。チタンがケイ素と酸素の規則正しい結合を邪魔し成長を阻害します。その結果、結晶状ではなく塊状の原石になるというわけです。

    石の発色要因である不純物によって原石が大きな結晶に成長できない例は「アメジスト」でも見られます。アメジストも、カラーレスクォーツのように大きな結晶に成長する例はほとんどありません。
    アメジストの紫色はクォーツに含まれる鉄(Fe)が要因ですが、鉄の存在が大きな結晶への成長を阻害していると考えられます。

    ローズクォーツに話を戻しましょう。
    ローズクォーツの原石は、たしかに塊状です。しかし、れっきとしたクォーツですから内部構造は結晶の性質を備えています。塊全体は結晶質であるものの、個々の結晶形はあらわさない状態を、通常の結晶と区別して「多結晶(multiple crystal・マルチプルクリスタル)」と呼びます。

    あわせて読みたい

    アメジストについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

    ■原石のカラー

    塊状で産出するローズクォーツの原石の色は、大きく3つに分けられます。

    • 透明感の低いピンク色

    • 半透明のピンク色

    • 透明に近いピンク色

    原石のカラーの違いは、含有する物質の違いによります。ローズクォーツ特有のピンク色を生み出している主な物質はチタンですが、アルミニウム(Al)やマグネシウム(Mg)、リン(P)も関節的に関与しているといわれます。

    実際、ブラジル・ミナスジェイラスで産出されるローズクォーツでは、ピンク色の濃い部分に周囲よりも多くのリンが含まれていることがわかっています。

    また、スモーキークォーツの原石に覆いかぶさるように成長したローズクォーツの原石も発見されています。スモーキークォーツはアルミニウムを多く含むクォーツです。このことからも、ローズクォーツの色合いにはアルミニウムも関与していると考えられます。

    ちなみにカットして生まれるルースのカラーも、原石の色味に由来します。またスター効果があらわれるローズクォーツは、透明に近いピンク色のものが多いようです。


    ■鉱物としてのローズクォーツ

    塊状に成長する石が多いローズクォーツは、原石が結晶状であるほど希少価値があります。ジェムマーケットや通販では稀に、結晶状のローズクォーツが出品されます。お気に入りの形を探すひと時も、ローズクォーツならではの楽しみ方です。

    またローズクォーツは稀に非常に大きな塊に成長する場合があります。2022年8月には、タイにある直径204.1cmのローズクォーツが世界最大サイズとしてギネス認定されました。

    せっかく原石を集めるならば、より大きなものを探し求める旅も楽しいかもしれません。

    3. ローズクォーツをより楽しむために

    価格帯が比較的手頃で、私たちにも身近な石・ローズクォーツは、ルースや宝石、原石として愛でる以外にもさまざまな楽しみ方ができます。
    アーティストやクリエイターにも愛されるローズクォーツの、多彩な楽しみ方を紹介します。

    ■ローズクォーツの石言葉

    ローズクォーツの石言葉は「愛情」「美と健康」「優しさ」などです。ローズクォーツの伝説である「ギリシア神話の愛と美の女神・アフロディーテにささげられた石」のとおり、人々を優しくやわらかく包み込むイメージを持っています。

    ヒーリング効果や癒しを求めるに人にもパワーストーンとして人気があります。

    またローズクォーツは、イギリスでは「結婚5周年を記念する宝石」とされています。結婚から5年といえば、生活が落ち着き夫婦の関係性も安定してくるころ。恋人時代、そして新婚のころのときめきを思い出すために、愛の宝石であるローズクォーツを贈りあうのはとても素敵な習慣ではないでしょうか。

    ■アクセサリーやビーズへの加工

    アクセサリー

    ローズクォーツの優しいピンク色は肌なじみが良く、デイリーユースのアクセサリーにもぴったりです。ブレスレットやネックレス、ピアス、リング、さらにストラップにしても身につける人を柔らかな雰囲気で包みます。

    ローズクォーツは一般的に、研磨し光沢のある状態で流通しています。ただし中にはあえて表面のつやを消す加工を施した石もあります。つやが消えたローズクォーツはもともと持っている半透明さが際立ち、霜がおりた朝のような静謐な雰囲気に変化します。

    原石アクセサリー

    原石のままアクセサリーに加工するのもおすすめです。原石のゴツゴツした力強さをピンク色が和らげ、シーンを選ばずに使えるお気に入りになるでしょう。カジュアルな装いにスタイリッシュな強さを加えたいときにもおすすめです。


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    ▼鑑別・ソーティングについては以下ページにて詳細をご確認いただけます

    https://www.topstone.jp/help/faq


      4. まとめ

      ローズクォーツは淡いピンク色を呈するクォーツの一種です。原石が大きな塊で産出し、劈開がなく加工しやすいため手頃な価格で流通しています。ブラジル産が多いのですが、品質の良さではマダガスカル産も見逃せません。集める際は、ぜひ産地にも注目してみてください。

      透明度が高く色味が均一な石ほど、高く評価されます。ただしローズクォーツはイチゴミルクのような色合いでクラックがある石が一般的です。「透明度・クラックがない石にこだわって集める」「ローズクォーツらしい個性的な石を集める」など、さまざまな集め方が可能な点でもコレクター心を満たしてくれます。

      ジェムマーケットや通販で結晶状のローズクォーツを見つけたら、要チェックです。ローズクォーツは結晶状に成長することがほとんどないため、希少価値が高まります。

      さまざまなショップをチェックし、お気に入りのローズクォーツを見つけてみてください。


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      この記事を書いた人

      みゆな

      TOP STOneRY / 編集部ライター

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