強く美しい輝きを放つスファレライトの魅力とは?特徴から歴史まで徹底解説

スファレライトはまばゆい輝きが特徴の美しい宝石です。宝石品質のものは産出量が非常に少ないレアストーンのひとつ。
古くから鉱物としては知られてきたものの、硬度が低いためジュエリーには向かず、これまであまり注目されてきませんでした。ところが、近年スファレライトの美しい輝きに注目が集まるようになり、コレクターを中心に人気が高まっています。
この記事ではそんな注目のレアストーン、スファレライトについて詳しくご紹介します。20年以上天然石の卸売に携わる宝石のプロTOP STONEが、特徴から歴史まで丁寧に解説していきます。スファレライトに興味があるコレクターの方も、スファレライトの名前を初めて聞いた方もぜひチェックしてみてください。
▶ TOP STONE で販売中のスファレライト
1.宝石・ルースとしてのスファレライト

まずはスファレライトの特徴や品質などをご紹介します。スファレライトがどのような宝石なのか詳しく見ていきましょう。
■高品質なスファレライトとは

スファレライトは宝石品質のものの産出量が非常に少なく、あまり市場に出回らないレアストーンのひとつです。スファレライトの品質は、カラーや透明度、カラットなどを総合的に見て決められます。
カラー

スファレライトは赤色、オレンジ色、茶色、黄色、緑色、黒色などさまざまな色合いを呈する鉱物です。スファレライトの色は含まれる成分や不純物によって変化します。鉄分が多く含まれるほど色が暗く、不透明になるのが特徴です。
透明度が高い宝石品質のスファレライトの多くは赤色やオレンジ色、黄色、明るい緑色などをしています。色が濃く鮮やかなものほど価値が高く、なかでも黄色や緑色などの明るい色は特に希少です。
もっとも希少とされているのは鮮やかな緑色で、次いで黄色、オレンジ色、赤色となっています。オレンジ色と赤色の希少性に大きな差はなく、宝石品質のスファレライトで一般的なのはこの2色です。
なかには一つの石にオレンジ色と赤色、黄色と赤色など、2色以上が混ざっているスファレライトも存在します。このような宝石はバイカラーやパーティカラーと呼ばれ、個性的な色合いが希少で人気があります。
透明度
スファレライトにはインクルージョン(内包物)が入りやすいため、インクルージョンが少なく透き通ったものは希少で高い価値があります。
また、硫化亜鉛が基礎となる鉱物で、純粋なものは白色から黄色の透明度が高い色合いを呈します。特に透明度が高く美しいスファレナイトは「クライオフェン」と呼ばれ、非常に希少価値が高く、コレクターからも人気です。
カラット
カラットは宝石の重さのことです。1ct(カラット)は0.2gに相当し、カラットが大きいほど高く評価されます。
宝石品質のスファレライトは産出量が少ないため、透明度が高く大粒のスファレライトは非常に希少価値が高くなります。
■スファレライトの輝き
スファレライトの大きな特徴は、なんといってもダイヤモンドに勝るとも劣らないまばゆい輝きです。
スファレライトの屈折率は、宝石の中でその数値が非常に高いことで有名なダイヤモンドに匹敵します(ダイヤモンド:2.42、スファレライト:2.37~2.43)。屈折率とは光が空気中から物質の中へ入り、通り抜ける間に折れ曲がる度合いのこと。屈折率が高いほど取り込んだ光をよく反射するため、輝きが強く見えるのです。
また、光の分散の大きさを表す分散率はダイヤモンドの約4倍。分散率が高い宝石は光を当てると虹色に輝く「ファイア」という現象を示します。そのため高品質で透明度の高いスファレライトは強く美しい虹色の輝きを放ちます。
そのまばゆい輝きから、スファレライトは「幻惑の石」とも呼ばれています。
■スファレライトの魅力
スファレライトの断面は光をよく反射し、強く輝きます。これは高い屈折率と分散度によるもので、力強くまばゆい輝きはスファレライト最大の魅力です。
強く美しい輝きが魅力のスファレライト。しかし、性質上もろく割れやすいためジュエリー加工に向かず、長らく宝石としてはあまり注目されてきませんでした。
ところが、近年はカットの技術が向上したことで硬度の低いスファレライトのような宝石にも一定のカットを施せるようになりました。カットの難易度が高く、ジュエリーとして市場に出回る数はまだ少ないものの、スファレライトのまばゆい輝きに魅了される人が増えています。鑑賞用のルースもコレクターを中心に人気です。
まだ宝石としての歴史は浅く、知る人ぞ知るスファレライトですが、今後さらに需要が高まっていくでしょう。
■スファレライトの産地

スファレライトは世界各地で産出されています。一般的には鉛や亜鉛を採掘する鉱山から見つかります。しかし、透明度が高い宝石品質のスファレライトが見つかるのは非常にまれで、産出量もわずかです。
宝石品質のスファレライトの主な産地はスペイン、メキシコ、アメリカ、カナダなど。特にスペインのピコス・デ・エウロパという連山では品質の高いスファレライトが見つかっています。他にもアフリカやヨーロッパ、中国などでも採掘されます。
かつては日本の新潟県や秋田県、岐阜県などの鉱山でも採掘されていました。ただし、現在は資源の枯渇や採掘コストの上昇などの理由から、閉山されています。
2.鉱物・原石としてのスファレライト

閃亜鉛鉱 | Wikipedia掲載画像
Ivar Leidus - 投稿者自身による著作物, CC 表示-継承 4.0,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=98937561による
スファレライトは原石の状態でも光沢や輝きが見られるものもあり、さまざまな魅力を持っています。ここでは鉱物としてのスファレライトについて詳しくご紹介します。
■組成について
英名 | Sphalerite(スファレライト) |
和名 | 閃亜鉛鉱(せんあえんこう) |
成分 | ZnS(硫化亜鉛) |
結晶系 | 等軸晶系 |
モース硬度 | 3.5~4 |
比重 | 3.90~4.10 |
屈折率 | 2.37~2.43 |
劈開 | 6方向に完全 |
主な産地 | スペイン、メキシコ、アメリカ、日本、カナダ、ナミビア、イギリス、フランス、 スウェーデン、アフガニスタン、ドイツ、 ルーマニア、ユーゴスラビア、オーストラリア、中国 |
スファレライトの成分は硫化亜鉛で、純粋なものは白色から黄色の透明度の高い石です。しかし、自然で産出されるスファレライトは濃い赤色から黒色で不透明な原石が多く、透き通った美しいものは非常に希少です。
スファレライトの色や透明度は不純物として含まれる鉄分の量で変わります。鉄分が少なく透明度の高い原石のなかには、べっ甲のようなあめ色をしたものもあり「べっ甲亜鉛」と呼ばれています。

べっこう亜鉛 | Wikipedia掲載画像
Trtrtr - original, パブリック・ドメイン,
https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=9912443による
また少量のカドミウムを含み、カドミウム含有率が高いほど赤みが強くなります。
モース硬度が低く、劈開性(一定の方向に対する割れやすさ)が6方向に完全であることから、もろく割れやすいのも特徴です。そのため、鑑賞用のコレクションとしてケースに保管して楽しむのが一般的です。
最近はカット技術の向上によりジュエリーに加工されることもありますが、衝撃を与えると傷ついたり割れたりするおそれがあるので、取り扱いには十分注意してください。保管の際にも他の硬度の高い宝石が当たり傷つかないよう、専用ケースに入れて収納することをおすすめします。
■原石の形状

スファレライトの結晶は等軸晶系で、原石は四面体や八面体、十二面体などの複合体をしています。結晶体で産出されることもありますが、多くは塊状で見つかります。
熱水鉱床やスカルンなどの接触変成鉱床で、カルコパイライト(黄銅鉱)やパイライト(黄鉄鉱)、ガレナ(方鉛鉱)などとともに産出されることが多い鉱物です。
含まれる成分や不純物によって、赤色やオレンジ色、茶色、黒色などさまざまな色合いを呈します。
■原石コレクターからみた魅力

スファレライトの原石は、石によって色や形、透明度などがさまざまです。また、パイライトやガレナなど他の鉱物と一緒に塊になっている原石も多く、自然が生み出した複雑な形を楽しめます。
原石でも光沢感や輝きを持つものもあり、スファレライトならではの高い屈折率と分散度を感じられるでしょう。一つとして同じものがないのは原石のおもしろさであり、コレクションの醍醐味といえます。
■鉱物としてのスファレライト
スファレライトには「ジンクブレンド」という通称名もあります。「zinc(亜鉛)」と「blende(混同する)」をあわせた言葉です。「スファレライト」という名前もギリシャ語で「まぎらわしい・あてにならない」を意味する「sphaleros」から来ているといわれています。
なぜこのような名前がつけられたかというと、スファレライトは鉛が採れるガレナとともに産出され、見分けがつきにくかったからです。ガレナは鉛を採るために紀元前6500年頃から採掘されていた鉱物で、当時の人々は焚き火の中にガレナを投げ入れ、流れ出た鉛を回収していました。ところが、ガレナだと思い込んでいた投げ入れたスファレライトから回収されたのは鉛ではなく亜鉛でした。よって「亜鉛に欺かれた」「まぎらわしい」を意味する名前がつけられました。
今でこそ強く美しい輝きで宝石としての価値が注目されているスファレライトですが、かつては「まぎらわしい」と疎まれる鉱物でもあったのです。
3. スファレライトをより楽しむために
スファレライトの宝石やジュエリー以外の楽しみ方もご紹介します。
スファレライトはレアストーンゆえに、まだ広く知られていないさまざまな魅力があります。この機会にスファレライトの魅力をさらに掘り下げていきましょう。
■スファレライトの歴史
スファレライトは古くから霊力を高める石と信じられ、古代のアフリカやオーストラリア、アメリカの先住民族が儀式の際などに用いていたという記録が残っています。また、擦り傷や切り傷、眼病の治療などに使われていた時代もあるようです。
現在はスファレライトは主要な亜鉛鉱石で、宝石品質でないものは亜鉛の原料として使われることもあります。亜鉛は鉄、アルミ、銅に次いで4番目に消費量の多い金属です。
自動車、家電製品、構造物、建築材料の表面処理や部品、塗料、化粧品などとして幅広い用途に用いられています。世界の産業に大きく役立っている鉱物のひとつです。
■スファレライトのカット
スファレライトはやわらかく割れやすいため、複雑なカットが難しい石です。しかし近年はカット技術の向上により、加工してジュエリーとして扱われることも増えてきました。
素人が磨くと割れてしまうおそれがあるのでおすすめできませんが、スファレライトの特性を理解した熟練の職人であれば、その石に合った適切なカットを施すことができます。
スファレライトはカットしたり磨いたりすると、虹色の美しい輝きを放ちます。その強い輝きはダイヤモンドに匹敵するほど。今後さらに宝石としての価値を高めていくことも予想される注目の宝石です。
■パワーストーンとして
スファレライトには「幻惑」や「調和」などの石言葉があります。相手を魅了するだけでなく、自分の本当の魅力に気づき、力を発揮する効果もあるといわれています。
自信をつけたいときや何か行動を起こしたいときに、お守りのように持っておくと力になってくれるかもしれません。
天然石・レアストーン・誕生石ならトップストーン
トップストーンは、国内最大級の天然石輸入卸問屋「株式会社ウイロー」が運営するルース専門の通販サイトです。世界中から買い付けたレアストーン、誕生石を販売しております。パライバトルマリン、タンザナイト、サファイアなどの宝石、ルースなど。豊富な品揃えから、天然石やパワーストーン、カラーストーンをお選び頂けます。
適正な販売価格を提示
天然石の市場価格は、決して安定しているとは言えません。常に変動する相場の中、トップストーンでは、最新の天然石の相場・平均価格を熟知しております。世界情勢や市場の動向をいち早くキャッチアップし、適切な価格を提示しておりますので、安心してご購入いただけます。
取り扱い種類が豊富
株式会社ウイローでは、40,000点以上の石を、鉱物・原石から宝石、ルースまで取り扱っております。また、弊社独自の調査により、入手難易度レベルを作成。入手困難な希少な天然石もトップストーンならば仕入れ可能です。
第3者鑑別機関のチェック済み
弊社で扱っている宝石、ルース(天然石)の数々は、商品名には流通名または宝石名を記載して販売しております。中立の立場である第3者鑑別機関に鑑別しているため、安心してご購入いただけます。
※TOPSTONEでは、鑑別・ソーティングを概ねA.G.L加盟の鑑別機関にお願いしております
▼鑑別・ソーティングについては以下ページにて詳細をご確認いただけます
4. まとめ
今回は強く美しい輝きが魅力のスファレライトについてご紹介しました。
産出量が少なく加工が難しいため、ジュエリーや美しいルースに出会えることはめったにありません。しかし、ダイヤモンドに勝るとも劣らないまばゆい輝きは、今後ますます注目を集めていくでしょう。ぜひこの機会にスファレライトに興味を持っていただけたら幸いです。
▶ TOP STONE で販売中のスファレライト
▸ こんな記事も読まれています
この記事を書いた人

ほしあゆみ
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。