2023/05/19

輝きはダイヤモンド以上!スフェーンの魅力をルース・鉱物視点から解説

スフェーンはダイヤモンド以上とも言われるファイア(輝き)と、黄緑をはじめとしたバリエーション豊富なカラーが魅力の近年人気が高まっている宝石です。市場の流通量も増え、ショップやミネラルショーで目にした人も多いのではないでしょうか。

「なぜあの輝きがあらわれるのか」「見る角度によって色相が異なるのはどうしてか」など、スフェーン独特の特徴を追求し始めたあなたは、すっかりスフェーンの虜になっているはずです。

この記事ではスフェーンの特徴から高品質なスフェーンを見極めるポイント、さまざまなスフェーンの楽しみ方を解説します。希少なスフェーンの魅力を、ぜひ知ってください。


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1. 宝石・ルースとしてのスフェーン

はじめにスフェーンを宝石・ルースとして楽しむ際に知っておきたい知識を解説します。スフェーンの魅力をあますところなく押さえ、より深く楽しむヒントにしてください。

■高品質なスフェーンとは

高品質なスフェーンは、次の3つの要素を満たしたものとされます。

  • カラー

  • 透明度

  • カラット数

それぞれの要素において、どのようなスフェーンが高品質とされるのか見ていきましょう。

カラー

多くのカラーバリエーションのなかでも、もっとも人気が高いのはグリーンです。色が濃く、吸い込まれるほど深い緑色はとくに品質が良いとされます。

スフェーンはクロムを含むとエメラルドのような鮮明なグリーンを呈します。コレクター垂涎のこのスフェーンは、「クロム・スフェーン」と特別な名前で呼ばれています。クロム・スフェーンはメキシコのバハ・カリフォルニアやロシア・サラノフスキー鉱山で産出が確認されていますが、希少価値が非常に高くなかなか目にする機会がないかもしれません。

またイエロー(ゴールデン)・イエローグリーン・オレンジも人気のカラーです。スフェーンの黄色みがかった色合いはバナジウムに由来し、「バナジウム・スフェーン」と呼ばれます。

透明度

スフェーンはクラック状のインクルージョンが含まれやすい石です。クラックはスフェーンの輝きを抑制するため、透明度の高いスフェーンはそれだけで価値が上がります。

宝石としての価値を求める場合は、クラックの有無もチェックしましょう。

カラット数

スフェーンは、決して産出量が少ない石ではありません。しかし宝石・ルースとしての価値が認められるだけの品質を備えたスフェーンは、多くはないのが現実です。

大ぶりの原石が採掘されたとしても「インクルージョンが多く透明度が足りない」といった理由でルースに加工されないケースもよく見られます。

そのためカラット数の大きなスフェーンのルースは、その大きさだけで価値があります。カラット数が上がるほど価値は高まり、5カラットを超えるスフェーンはかなり稀で高い価値を持ちます。

■スフェーンの輝き

スフェーンの輝きかたには、2つの特徴があります。

スフェーンのファイア

スフェーンの人気が高まった理由の1つに、華やかにきらめく輝きがあります。スフェーンの輝きは「ダイヤモンドをもしのぐ」「ギラギラした輝き」と表現されるほど、独特の雰囲気をまとっているためです。

スフェーンの輝きの秘密は、宝石内部の光の通過方法にあります。

スフェーンに取り込まれた光は、宝石の中を通りながら屈折と反射を繰り返しプリズムのように分散します。その結果、「ギラギラ」「まばゆいほどの」とたとえられる光となって人の目に飛び込むのです。スフェーンの虹色の輝きは、屈折と反射の賜物です。

この現象を「ファイア(ディスパーション)」といい、スフェーンのほかにはダイヤモンドやベニトアイトなど少数の宝石にしか見られません。ファイアの強さは「分散度」という指標で表されます。分散度は数値が大きいほど強いことを示し、ダイヤモンド0.044に対しスフェーンは0.051です。

スフェーンの輝きがしばしばダイヤモンドと比較されるのは、同じ光り方をしているのが理由です。スフェーンの個体によっては、ダイヤモンド以上のファイアを呈し、ダイヤモンドよりも激しく独特の輝きを放つ場合もあります。

スフェーンの複屈折

スフェーンのもう1つの特徴に「複屈折」があります。

◎複屈折とは…
宝石の中に入った光は、そのまま1本の光として進む場合と、宝石のなかで2本の光に分離する場合とがある。 このうち2本の光に分離し、それぞれ異なった速度と振動方向で宝石中を進行する性質を「複屈折」という。

1つの入射角からスフェーン内部に入った光は、2つ以上の光となって放出されます。ダブリングと呼ばれる「背景がぼやけて見える」「ファセット稜線が二重に見える」などの現象は、この複屈折により引き起こされます。

スフェーンがギラギラした輝きを放ちつつも柔らかく優美な印象に見えるのは、この複屈折性によるものです。スフェーンを写真に撮るとブレて写っているように見えることがありますが、それもこのダブリングに起因します。

スフェーンのカット

特徴的な輝きを呈するスフェーンですが、硬度が低く明瞭な劈開を持つため複雑な加工には耐えられません。そのため「スフェーンの輝きを活かす」「コレクター・アイテムとして楽しめる」を両立できるよう、カットは「ラウンド」「オーバル」「クッション」が施されるのが一般的です。

ジュエリーに加工する場合は、強くぶつけたり硬い床に落としたりする可能性が低いものが推奨されます。ネックレスやピアス、イヤリングなどがおすすめです。

■スフェーンの魅力

スフェーンは、多色性も魅力の宝石です。
多くのスフェーンは緑色や黄緑色をベースにしつつ、見る角度を変えると赤茶系色、さらに他方から見るとゴールド寄りの黄色といった具合に、さまざまな色合いを呈します。ファイアを持つ石でもあるため、元々の色が何色だったかわからなくなるほどに表情が豊かです。

また稀にカラーチェンジを呈するスフェーンもあります。蛍光灯の光ではグリーン系の色に見え、白熱灯下では茶系に変化する石や、光源を変えると火花が散るように赤く輝きだすものなどが確認されています。カラーチェンジするスフェーンは大変稀で、とても価値があります。

▲ 電球色のライトを照射したカラーチェンジスフェーン
元のグリーンベースのカラーも多色性が確認できます

■スフェーンの産地

スフェーンは含有する成分により、呈出する色味が異なります。産地によって特徴的な色味を呈することもあります。

◎産地によって特徴的なスフェーンの色

  • マダガスカル、パキスタン、ロシア(ウラル地方)、メキシコ : 緑色~黄色
  • ミャンマー : オレンジ色

スフェーンの産地として有名なのはロシア・ウラル鉱山のほか、マダガスカルやブラジル、パキスタンなどがあります。

2. 鉱物・原石としてのスフェーン

スフェーンは鉱石の状態でも、とても個性的な表情を見せます。ここからは、スフェーンを鉱物・原石の視点から解説します。

■組成について

スフェーンの組成は、次のとおりです。

英名(カタカナ) Sphene(スフェーン)
Titanaite(チタナイト)
和名 楔石(くさびいし)
チタン石(ちたんせき)
成分 CaTi[O|SiO4
結晶系 単斜晶系
モース硬度 5~5.5
屈折率 1.84~1.94、1.95~2.11
劈開 明瞭(2方向)
黄緑色、褐色、黄色、翠緑色、赤橙色、褐黒色
主な産地 オーストラリア、カナダ、ロシア、イタリア、スイス、マダガスカル、ブラジル、インド、メキシコ、アメリカ、アフガニスタン、パキスタン、ノエルウェー、ドイツ

「スフェーン」は宝石の世界で使われる名称です。鉱物の世界では同じ石を「チタナイト」と呼びます。宝石の世界でこの石をチタナイトと呼ぶ場合は、石に含まれるチタン含有量が多く褐色~黒色を呈するという特徴を、敢えて強調したいときです。スフェーンとチタナイトのいずれも一般的に用いられる名称ですが、意味合いが異なることを押さえて使い分けましょう。

またスフェーンは珪酸塩鉱物の一種です。

◎スフェーンの主な産出場所

  • 珪酸分の多い火成岩、ペグマタイト
  • 片麻岩、大理石
  • スカルン
  • 結晶片岩

比較的よく産出する鉱物ですが、宝石・ルースになれる品質のものは多くありません。

さらに加工の難しさも、スフェーンの価値を高める要因の1つです。スフェーンはモース硬度が5 ~5.5と比較的低く、2方向に明瞭な劈開を示します。特定方向からの衝撃に弱く加工・研磨には高い技術が要求されるため、熟練した職人しか加工できないといわれます。

使用している最中でさえも次第に角が摩耗するほど脆いため、ジュエリーよりルースで鑑賞用に流通する量の方が多い宝石です。

■原石の形状

スフェーンの原石は、名前の由来にもなっている楔(くさび)型をしています。

楔型とは片方が広く、もう一方に至るにしたがって狭くなる形状です。物を割るときや隙間をなくすときに使われる楔という道具からそう呼ばれるようになりました。

スフェーンの原石は、かなり鋭利でシャープな三角錐状をしています。双晶の形を呈するものもありますが、結晶の両端が対称になるとは限りません。

また原石のなかには、塊状や柱状、薄板状の集合体に成長するものも見られます。インクルージョンを含む石が多く、断口は貝殻状です。

母岩ごと切り取った状態で流通するスフェーンもあります。スフェーンだけでなく母岩の力強い存在を感じられ、地球の神秘を楽しめるでしょう。

■原石コレクターから見た魅力

スフェーンは性質の脆さや加工の難しさゆえ、ルースの形でケースに入れて鑑賞するコレクターに向いている石です。

またルースに加工される前の原石でも、さまざまな楽しみ方ができます。

たとえばスフェーン独特のファイアは、カットによって引き出されています。さらにスフェーンはインクルージョンのあるものが多いため、原石の状態で「発色の良さ」「高い透明度」をあわせ持つ石はとても希少です。

自然の美しさを実感できる原石で、透明でクリアな発色を持つ石を探し求めるのもスフェーンの楽しみ方の1つです。

3. スフェーンをより楽しむために

スフェーンは、何度もその輝きを眺めじっくり味わいたい石です。ルースや鉱物とはまた異なる、もっと気軽なスフェーンの味わい方を解説します。

■誕生石・石言葉

スフェーンは2021年に、7月の誕生石に追加されました。スフェーンが7月の誕生石になった理由は、2つあるといわれています。

一つ目の理由は、スフェーン(チタン石)を発見したとされるマーク・オーギュスト・ピクテットが7月うまれだったこと。二つ目の理由は、スフェーンの色や輝きが日本の夏の森を連想させることだそうです。

スフェーンの石言葉は「永久不変」「改革」「人脈強化」「純粋」。才能や魅力を開花させ、人脈を引き寄せて成功へ導くとされています。

■ビーズ・アクセサリー

大きなカラットのルースにするのが難しいスフェーンは、小さなビーズやアクセサリーの材料としてよく使われます。

スフェーンのファイアを活かしペンダントに使用すると、顔まわりに華やかな輝きを加えてくれます。クラックがあるスフェーンも、耳元で揺れるピアスに使うと光を拡散させ個性的な輝きを見せてくれることもあります。

スフェーンの新緑を思わせる黄緑色は、ピンクやオレンジなど他の色との相性も抜群です。色の組み合わせ方により春先や初夏をイメージしたアクセサリーに仕上げることもでき、多彩な表情を楽しめます。トルマリンやレモンクウォーツ、グリーンアベンチュリンなど、感性を活かした組み合わせを見つけてみてください。


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4. まとめ

スフェーンはダイヤモンドを凌ぐ輝きと豊かな色相で人気が高まっている宝石です。スフェーンの輝きはファイアと複屈折によるもので、カラーバリエーションの豊富さは含有する微量の元素の違いに起因します。

スフェーンはインクルージョンがある石が多いため、色が鮮やかで透明度が高いスフェーンほど高品質とされます。またクロムを含むスフェーンは深くこっくりとした緑色を呈し、「クロム・スフェーン」と呼ばれ希少価値を持ちます。

スフェーンは決して強度がある石ではありません。摩耗しやすいため、ケースに入れ保管するのがおすすめです。またアクセサリーに加工する場合は、衝撃を受けにくい箇所への使用が推奨されます。

スフェーンは見る角度によってスペクトル状の色を楽しめます。ぜひさまざまな光源・さまざまな角度で見て、スフェーンの醸しだす輝きを堪能してみてください。


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この記事を書いた人

みゆな

TOP STOneRY / 編集部ライター

トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。