地球最古の宝石・ジルコン|カラーの秘密や歴史、鉱物的価値まで解説

ジルコンはキラキラした輝きとダイヤモンドに匹敵するファイア、そして独特の照りが魅力の宝石です。強く丈夫で、日常的に身につけるときにも鉱物として研究するときにもぴったり。ブルーやレッド、ピンク、イエローなど、豊かな色合いも楽しめる魅力的な石です。
それにしてもジルコンの輝きやカラーは、どうして生まれるのでしょうか。
この記事では人気のジルコンに、多方面から焦点を当て解説しました。輝きを生み出す秘密、豊富なカラーがある理由、さらに地質学的価値までまとめています。
最後まで読み、もっともっとジルコンの魅惑にはまっていきましょう。
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1. 宝石・ルースとしてのジルコン

キラキラした輝きと豊富な色合いが魅力のジルコンは、ルースコレクションにぜひとも加えたい石です。でもせっかく加えるなら「品質の良いものを」と考えるのがコレクター心というもの。
はじめにジルコンの品質や特徴をまとめて解説します。
■高品質なジルコンとは

ジルコンの品質を決定づける要素は透明度とカラーです。
もともとインクルージョンが少ない石ではありますが、透明度が高く明るい色合いの石ほど品質が良いとされます。未処理のままだと褐色、あるいはダスティな色合いを呈するため、加熱処理され明度が上がった石のほうが価値があります。
カンボジアのラタナキリで採れるブルージルコンは、とりわけ高く評価されています。わずかにグリーンを含んだエナメルブルーは、ここでしか採れない希少な石です。
《豆知識》ジルコンの加熱処理について
ジルコンは古くから加熱による処理がおこなわれてきました。ジルコンの豊かな色合いは加熱により生み出されており、処理の有無によって価値が変わることはありません。鑑別書も「熱処理が前提である」考えに基づき表記されます。
■ジルコンの魅力
ジルコンの魅力は「ダイヤモンドにも負けないといわれる輝き」と「豊富なカラーバリエーション」です。
奥深くまで視線が吸い込まれそうなジルコンの魅惑を、詳しく解説します。
ジルコンの輝きの秘密
ダイヤモンドにもなぞらえられるジルコンの輝きは、高い屈折率と分散率によって生み出されます。
屈折率とは宝石に入った光が反射する程度です。屈折率が高いほど反射光が増え、キラキラと輝く石になります。分散率は宝石に入った光が7色に分かれる程度で、分散率が高いと宝石が虹色の輝き(ファイア)を見せるようになります。
ジルコンの屈折率は1.78~1.99で、「ダイヤモンドを上回るギラギラした輝き」と称されるスフェーンの屈折率(1.84~1.94/1.95~2.11)に匹敵するレベルを誇ります。
《豆知識》ジルコンとダイヤモンドの見分け方は?
ホワイトジルコン(カラーレスジルコン)の輝きは、ダイヤモンドに劣りません。ルースをぱっと見ただけでは区別できないほどです。
でも、ジルコンとダイヤモンドを見分ける手軽な方法があります。それはジルコンにだけある特徴「複屈折」の利用です。
複屈折とは光が物質を通過するときに、進行方向が異なる2つの光に分かれる現象です。複屈折の性質を持つ石は、文字を書いた紙に乗せると文字が二重に見えます。しかし複屈折がない石は、ルースの下の文字がくっきり見えます。
ジルコンには複屈折があり、ダイヤモンドにはありません。もし2つを見分けたい場面に遭遇したら、この複屈折の話を思い出してください。
ジルコンのカラーバリエーション
ジルコンはカラーバリエーションが豊かな石です。加熱によってカラーが変わることも古くから知られており、ジルコンの加熱処理はかなり古い時代から行われていました。
ジルコンの代表的なカラーをまとめました。すみずみまでチェックし、好みの色合いを見つけてみてください。
名称 | 画像 | 解説 |
ブルージルコン | ![]() |
天然のブルーはかなり希少。 流通しているブルーの多くは加熱処理による。 ブルーが濃すぎると透明度が下がるため、グリーニッシュブルーの石が多い。 |
アイスブルージルコン | ![]() |
薄い水色のジルコン。氷を思わせる色合いと透明度から人気が高い。 |
レッドジルコン | ![]() |
鮮やかでパキッとした赤色が一番人気。 褐色がかるものが多く、真っ赤な色合いは非常に稀。 |
グリーンジルコン | ![]() |
森林から生まれたような深いグリーンから 和を思わせる渋めのグリーンまで、幅広い色合いが魅力。 |
ピンクジルコン | ![]() |
優しく穏やか、それでいてこっくりと深い色合いが魅力のピンク。 凛とした雰囲気を感じさせる石もある。 |
イエロージルコン | ![]() |
明るい色が好きな人に人気のイエロー。 キリっとした強いイエローから暖色系イエローまで幅広い。 |
オレンジジルコン | ![]() |
地球のエネルギーを感じさせるオレンジも人気。 照りが良く似合う個性的な石。 |
カラーレスジルコン | ![]() |
ジルコン本来の無色透明。ダイヤモンドより控えめなファイヤが日本人好み。 |
シャンパンカラージルコン | ![]() |
うっすらとシャンパン色を呈する珍しいジルコン。 ほんのりとした優しい存在感が欲しい人におすすめ。 |
《豆知識》ジルコンとキュービックジルコニア
ジルコンは、キュービックジルコニアと混同されることもあるようです。名前が似ているのも、混乱の要因かもしれません。
しかしジルコンとキュービックジルコニアはまったくの別物です。ジルコンは天然の宝石で、キュービックジルコニアは人工の合成宝石だという点をおさえておきましょう。
またキュービックジルコニアはダイヤモンドの代用品としてつかわれますが、ジルコンがダイヤモンドの代用になることはありません。
ちなみにキュービックジルコニアとダイヤモンドは、比重が異なるため手に持ったときの重さで区別できます。
キュービックジルコニアの比重は5.6~6.0、対してダイヤモンドは3.52です。同じくらいの大きさのルースを手に乗せるとダイヤモンドのほうが軽く感じるはずです。
■ジルコンの名前の由来
ジルコンの名前は、ペルシア語の「Zargoon(ザグーン)」からきているといわれます。Zargoonは「金色」を意味し、またアラビア語では「朱色」になります。Zargoonが時を経てJargon(ジャルグーン)に変化し、やがて英語の「ジルコン」になったと考えられています。
ちなみにジルコンは、日本では「風信子石(ひやしんすせき)」と呼ばれていました。「ジルコンの黄橙色がヒヤシンスの花の色に似ている」ことからそう呼ばれるようになったといわれていますが、「一般的なヒヤシンスの色は青では?」という素朴な疑問が残ります。
このあたりの和名に関するいきさつは所説あり、現在でもよくわかっていません。神話や歴史に関する知識が必要になる側面もあるため、興味がある方はぜひ調べてみてください。
■ジルコンにまつわる逸話

「世界最古の鉱物」といわれるジルコンは、現代に至るまで長いながい年月を地球ですごしてきました。過ごした時間の分だけ、数多くの物語があります。
「世界最古の鉱物」といわれる理由
ジルコンが発見されたのは、2000年ごろのことです。西オーストラリア州にあるジャック・ヒルと呼ばれる場所で、ウィスコンシン大学(アメリカ)のペック(W. Peck)らが発見しました。
ペックはウラン‐鉛年代を測定し、発見したジルコンがおよそ44億年前に形成されたことをつきとめます。この事実は2000年11月に開催されたアメリカ合衆国地質学会で報告され、2001年には国際的な権威を持つ科学ジャーナル誌「Nature」にも掲載されています。
ちなみに地球が形成されたのは、約46億年前です。ペックが発見したジルコンにより、地球が形成されてから約4億年後に鉱物ができはじめたと考えられるようになりました。
《豆知識》
ジャック・ヒルではほかにも、古い鉱物が発見されています。
2001年、カリフォルニア大学のスティーブン・ジェームス・モジシス(S.J. Mojzsis)は、やはりジャック・ヒルで約43億年前のジルコン粒子を発見しました。発見した粒子の酸素同位体比からは「地表付近に水が存在していた」ことが判明し、科学者たちの関心を集めています。
またペックが44億年前のジルコンを見つけるまで「世界最古」とされていたジルコンもジャック・ヒルで見つかっており、それは約42億年前のものだったということです。
オーストラリアには世界最古の大陸地殻が存在しています。世界でもっとも古い鉱物が見つかるのも、必然なのでしょう。
古代の物語や聖書に登場するジルコン
歴史の古いジルコンは神話や伝説、聖書にもたびたび登場します。
エデンの園にいたアダムとイブ、彼らを監視する役目をもった守護天使の名前をジルコンになぞらえたのは古代ユダヤの人々です。ジルコンの火のような熱さ・強さを感じさせる輝きから、お目付け役の天使を想像したのでしょう。
新約聖書「ヨハネの黙示録」にもジルコンが登場します。“最後の審判”後に現れる新世界の都・新エルサレムの城壁に埋め込まれた12個の宝石の1つがジルコンです。
また、旧約聖書「出エジプト記」でモーゼの兄大祭司・アロンが身に着けた胸当てに飾られた12個の宝石の1つもジルコンとされています。
《豆知識》
1年12か月のそれぞれに宝石を配し、生まれた月の宝石を身につける「誕生石」の文化はこの聖書の記述から来ているといわれます。
現代では12か月だけでなく、365日毎日違った誕生石を楽しむ文化も生まれました。
誕生石リストはまだ知らない宝石に出会うチャンスです。ぜひチェックしてみてください。
■ジルコンの産地

ジルコンのおもな産地は、世界最古のジルコンが発見されたことでも知られるオーストラリアです。
オーストラリア産のジルコンは産出量・カラーバリエーションともに世界随一の規模を誇ります。世界で産出されるジルコンの37%がオーストラリア産だといわれるほどです。まれに希少な天然ブルー・天然レッドのジルコンが採れることもあります。
カンボジアもジルコンの産地として知られています。特筆すべきは、加熱処理によってブルーに変化するジルコンが採れることでしょう。褐色系のジルコンを酸素濃度が低い環境下で800℃に加熱するとブルーに、さらに1,000℃に達するとカラーレスに変化します。
加熱によるカラー変化は、カンボジア北東部にあるラタナキリ州産のジルコンにだけ見られる不思議な現象です。
《豆知識》
ジルコンは結晶構造のなかにウラン(U)やトリウム(Th) などの放射性元素を微量に含みます(※)。ジルコンが色づくのは、この放射性元素が長い年月をかけて自家分裂し、結晶格子に欠陥をつくり特定の波長の光を吸収するようになるためです。
加熱すると欠損した部分が再結晶し、原子配列が元通りに近づき色が変化すると考えられています。
※ ジルコン内部の放射性元素はごく微量です。日常的につかう分には、身体への影響は心配いりません。
2. 鉱物・原石としてのジルコン

カットされルースになったジルコンも素敵ですが、原石や鉱物の状態のジルコンもコレクターの興味を惹きつけます。
地質学者からも珍重されるジルコンの原石・鉱物について、詳しくなりましょう。
■組成について
ジルコンの組成は、以下のとおりです。
英名(カタカナ) | Zircon(ジルコン) |
和名 | 風信子石(ヒヤシンスセキ石) |
成分 | Zr[SiO4] |
結晶系 | 正方晶系 |
硬度 | 6~7.5 【宝石学での分類】 ハイ・タイプ:7~7.5 / ミディアム・タイプ:6.5~7 / ロー・タイプ:6.5 |
屈折率 | 1.78~1.99 |
劈開 | なし |
色 | 褐色、黄色、橙色、赤色、赤褐色、黄緑色、緑色、褐緑色、褐黒色、白色、青色、無色 |
主な産地 | タイ、スリランカ、ミャンマー、ベトナム、オーストラリア、タンザニア、マダガスカル、台湾、アフガニスタン、アメリカ、ロシア、フランス、ブラジル、カナダ、ドイツ、ノルウェー、中国 |
宝石学において、ジルコンは「ハイ・ミディアム・ロー」の3つに区別されます。ジルコンが含有する放射性物質による結晶の損傷度、その結果として決まる硬度によって区別されます。
ハイタイプは、放射線による結晶の損傷が少ないものを指します。完全な結晶構造を維持しており、硬度は7~7.5と高めです。宝石・ルースとして流通するジルコンのほとんどはハイタイプです。
ロータイプとは結晶が放射線の影響を受け、構造が損傷を受けているものを指します。硬度はハイタイプより低く、6.5程度です。
ハイタイプとロータイプの中間値の特性を持つジルコンが、ミディアムタイプに分類されます。
放射線の影響を受けて結晶構造が変化する過程を「メタミクト(metamict)」といい、ジルコンを含む岩石の年代が古いほど顕著にあらわれます。
■ジルコンに含まれる放射性物質

放射線は自然界のいたるところに存在しており、私たちは日常的に一定量の放射線を浴びています。日本人が一年間に受ける自然放射線の量は平均2.1ミリシーベルトといわれており、環境省は「年間100ミリシーベルトを超えると危険性が高まる」としています。
ジルコンは結晶内にハフニウム(Hf)・ウラン(U)・トリウム(Th)などの放射性元素を含み、結晶は自身が持つ放射性物質による影響を受け続けています。ただし、ジルコンが放出する放射線は測定できないほど微量です。アクセサリーにして身につけたり、鉱物標本として手元に置いたりする使い方なら被ばくの心配はありません。安心してコレクションに加えてあげてください。
《豆知識》ジルコンは放射性物質を含むからこそ、美しい
ジルコンは放射性物質の影響で、結晶が内部崩壊することがあります。結晶構造が変わると吸収する光の波長が変化するため、色合いも変わります。
内部崩壊を起こしたジルコンのなかにはバイカラーになる石もあり、レアな魅力を見せてくれます。
■ジルコンは地質学面からも価値がある

地質の年代測定で一般的に利用されるのは「化石」です。特定の時代にのみあらわれる化石が見つかれば、地質の年代をある程度特定できます。
さらに詳しく年代を調べたいときにつかわれるのが、放射線を利用した年代測定法です。地質に残っている放射線の量や周囲が受けた放射線の影響から、年代を特定します。
ジルコンには放射性元素が含まれるため、この放射線年代測定に珍重されています。かなり精度高く地質年代を特定できることがわかっており、地質学者から大注目の石なのです。
3. ジルコンをより楽しむために

きらめきとカラーが魅力のジルコンは、ルースや鉱物標本以外にも、さまざまな使い方を楽しめます。
ジルコンをもっと身近に、もっと気軽に味わうヒントを紹介しましょう。
■誕生石・石言葉

ジルコンは12月の誕生石です。
12月の誕生石といえばターコイズやタンザナイトが有名ですが、いずれもブルー系の宝石です。「ブルーも素敵だけれど、別のカラーの誕生石が欲しいな」という人はジルコンをチェックしてみましょう。ジルコンならではのカラーバリエーションが、きっとお気に入りと引き合わせてくれます。
ジルコンの石言葉は「やすらかな時間」「穏やかな人間関係」です。また「平和の石」とも呼ばれており、感情的な自分から解放され日々をゆったりと過ごしたい人に向いています。
実はジルコンは、カラーごとに石言葉が変わる面白い石です。代表的な石言葉を紹介しますので、自分に必要なものを探すヒントにしてみてください。
- ブルージルコン:成功、安らぎ、夢想
- レッドジルコン:平安
- イエロージルコン:産みの悲しみ
- ピンクジルコン:苦しみからの救い
- ホワイトジルコン:すべてを賭ける恋、正確な理解力、的確な行動、切れ者
■ビーズ・アクセサリー
初めて見る人には「カラーダイヤモンド?」とまで思われるジルコンは、ジュエリーにしたときの存在感も抜群です。比較的大きめのカラットで採れるものも多く、装いの主役に採用してみてはいかがでしょうか。
独特の深い色合いと透明感が、身につける人を格上げしてくれます。
凛としたジルコンの雰囲気は、ゴールドともプラチナとも相性抜群!硬度が高くどのようなカットにも耐えられるため、日常的に愛用するのにもぴったりです。

カラーバリエーションを活かし、カラフルなビーズとして使うのもおすすめです。自然光を取り込みキラキラと反射させ、太陽のエネルギーをたっぷりと取り入れてくれるでしょう。

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4. まとめ
地球最古の宝石といわれるジルコンは、ダイヤモンドにも引けを取らない輝きと豊富なカラーバリエーションで人気を集めています。加熱によりさまざまなカラーを生み出せるのは、ジルコンならではの不思議な魅力でしょう。
高品質なジルコンの見分け方は「色の鮮やかさ」「透明度の高さ」に注目することです。
希少なブルージルコンやレッド、ピンク、そしてイエローやグリーンまで、好みの石を見つけてみてください。
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この記事を書いた人

みゆな
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。