2025/4/11

ルビーのような深紅を湛える希少宝石|キュープライトの魅力や鉱物学的特徴まで解説

キュープライトは、ルビーのような・ガーネットのような、深く美しい赤色をした宝石です。銅に由来する金属光沢もあいまって、独特の存在感を放っています。
質の良いルースはめったに市場に出ないとあって、コレクターからの人気は絶大。コレクションの一角に加え、じっくり愛でて楽しみたい石です。

今回は希少なキュープライトを、美しさや魅力、さらに原石、鉱物の観点から詳しく解説します。「ひと通りの石は持っている」「コレクター仲間に一目置かれる、珍しい石がほしい」、そんな人はぜひチェックしてみてください。キュープライトの魅力にはまり、次のミネラルショーが楽しみになること請け合いです。


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Intro.キュープライトとは

キュープライトは、和名を「赤銅鉱」といいます。和名の通り、銅(Cu)を豊富に含む鉱物で、全体の9割ほどが銅でできています。銅の主要な鉱石として、古くから人類とともにあり続けています。

ルビーのような深紅の色合い、金属鉱物らしいメタリックな輝きから、コレクター人気が高いキュープライト。ただ、透明度が高い結晶がほとんど採れないこと、硬度が低く(3.5〜4)ファセットカットが難しいことから、ルースになったキュープライトはめったに見られません
市場でよく見られるキュープライトは、赤レンガのようなマットな質感の個体が多めです。

鮮やかな緑色が美しい、マラカイト(孔雀石)やクリソコラ(珪孔雀石)を伴って産出することも多く、原石の色のコントラストも、キュープライトのみどころのひとつです。

<注意>キュープライトは変色しやすい!

キュープライトは、非常に変色しやすいという特徴を持っています。空気や光に触れ続けると、表面が徐々に暗い色合いに変わってしまいます。同時に、光の反射もマットな質感に変化します。
これは、空気や光に触れることで、キュープライトが「テノライト(Tenorite・黒銅鉱)」という別の鉱物に変化するため、と考えられています。

地球上で、空気を完全に遮断することは、現実的ではありません。それでも、屋外での使用を避け、強い光に長時間当てないよう気を付けて保管してください。ただ、この色の変化も、キュープライトらしさでもあります。時とともに表情を変える、まるで生き物のような石として、末永く愛したくなる石といって良いでしょう。

1.宝石・ルースとしてのキュープライト

この章では、希少な「宝石・ルースになったキュープライト」に迫ります。美しさの基準や魅力、逸話を存分に紹介します。

■高品質なキュープライトとは

前述の通り、「宝石品質を満たす結晶の希少性」「硬度の低さ」という2つの要因により、ファセットカットされたキュープライトは極めて稀。ルースを専門的に扱うお店ですら、「一度完売したら、次はいつ入荷できるかわからない」というほどです。

ファセットカットされ、ルースとなって姿を見せたキュープライトは、まずそれだけで価値があると押さえてください。

その前提に立って、キュープライトの価値を決める基準は、「カラー・カット・カラット」の3要因です。

カラー


キュープライトルース

▲ ルビーのような赤色を発するキュープライト

価値があるカラー、人気のカラーは、ルビーのような赤色です。「色の濃いガーネット」「深いワイン色」と表現する人もおり、独特のカーマイン色から「ルビーコッパー(ルビーのような銅)」とも表現されます。

ブラウンやブラックに近い色合いのキュープライトも多く、赤色のルースはとくに希少。鮮やかなカラーのキュープライトはなかなか見つからず、だからこそ価値が高まります

褐色や茶色を帯びたルースの価値は、赤いルースには及びません。ただ、色が濃いルースのほうがキュープライト特有のメタリックな輝きを堪能できると、あえて深い色のルースを好むコレクターもいます。

カット


キュープライトルース

▲ ファセットカットされたキュープライト

ファセットカットは、キュープライトの魅力を一層高めます。きらめく光が、まばゆいほどに目に飛び込んでくるでしょう。
ただ、硬度が低く加工が難しいため、ファセットカットではなく、カボションやビーズになるものもあります。 中途半端なファセットカットは、キュープライトの色をくすませてしまい、価値を下げます。それなら、カボションのほうが魅力を引き出せるかもしれませんね。
品質の良いキュープライトをお迎えするためには、ファセットカットの細部にいたるまで、入念にチェックしてみてください。

カラット

市場に流通するキュープライトの大半は、加工には小さすぎるサイズです。これも、ファセットカットが難しい要因の1つです。だからこそ、カラットの大きなルースは、価値が高まります。

以前は、ナミビアから大粒の原石が見つかっていましたが、現在は枯渇。コンゴから良質で大粒の原石が見つかった、という情報もあり、期待を寄せたくなります。

■キュープライトの輝き

    キュープライトは、鮮やかな赤い色合いと、メタリックな光沢を持つ石です。

    面白いのは、光源によって見せる“表情”が変わること。白熱灯の下では、赤い色合いが前面に押し出され、ルビーやガーネットのような艶っぽさを見せてくれます。一方、蛍光灯の下では、蛍光灯の白い光をガッチリと反射し、ギラギラとした金属光沢が強く押し出されます。

    多色性・カラーチェンジというわけではありませんが、光源によって変わる見た目を楽しめる、興味深い石。キュープライトを入手できたら、ぜひいろいろな光源下で見てみてください。

    ■個性的なキュープライト

    キュープライトには、個性的な表情を見せるものもあります。コレクターなら押さえておきたい、特徴的なキュープライトを見てみましょう。

    カルコトリカイト/Calcotrichite

    カルコトリカイト/Calcotrichite

    ▲ Calcotrichite
    Wikipedia(英語版)掲載:
    By Dake - Own work, CC BY-SA 3.0,
    https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=4294451

    キュープライトの結晶は、塊状や六面体、八面体などで見つかります。
    ただ、中にはとても個性的な形状を見せる結晶もあり、コレクターから熱い視線を集めています。
    それが、「カルコトリカイト(Calcotrichite)」です。髪の毛のような細く薄い針状の結晶に成長したキュープライトで、和名は「針銅鉱」。あまりに細い結晶の姿から、「毛銅鉱(もうどうこう)」「毛赤銅鉱(もうせきどうこう)」とも呼ばれます。
    英名のカルコトリカイトも、ギリシャ語で「銅」と「髪」を意味する言葉から生まれた、ドイツ語の「chalkotrichit」からきています。

    細い結晶は一方向に整列している場合と、多方向に伸びている場合とがあり、なぜこのような形状になるのか、詳しくは解明されていません。カルサイト(方解石)の上に形成されることが多く、鉱物の共演も楽しめます。

    ちなみに、カルコトリカイトは、日本でも見つかっています。秋田県日三市鉱山、荒川鉱山、尾去沢鉱山などが産地です。

    クリムゾン・キュープライト

    クリムゾン・キュープライト

    ▲ ヘブン&アース社の「クリムゾン・キュープライト」

    クリソコラやマラカイトなど他の鉱物を含む場合もありますが、一様に鮮やかな赤色をしているキュープライトを「クリムゾン・キュープライト」といいます。 これは商標名で、アメリカの大手パワーストーン専門店「ヘブン&アース社」が販売しています。興味のある方は、オーナーの「ロバート・シモンズ(Robert Simmons)氏」の名前で検索してみてください。

    ソノラサンライズ

    ソノラサンライズは、メキシコ北部にあるソノラという地域で採れる、キュープライトです。赤色と緑色のはっきりとしたコントラストが個性的。
    ソノラ地方の朝日と草原を連想させることから、名前がつきました。模様石が好きな人に、ぜひおすすめしたいキュープライトです。

    ■キュープライトにまつわる逸話

    キュープライトは長い間、銅の鉱石として利用されてきました。

    人間と銅の歴史は、8000年にも及びます。最古の銅製品は、紀元前5100年につくられた小さな錐(きり)。中東で見つかりました。この錐に使われた銅は、コーカサス地方(ロシア南東部~ジョージア周辺)で採れたものと見られています。錐が発見された場所とは1,000km以上離れており、当時すでに、広域の銅交易が行われていたことが推測できます。
    現在も、銅は工業・医療・農業など、さまざまな分野で欠かせない鉱産資源として利用されています。

    キュープライトも紀元前から利用されていたと、わかっています。紀元前2000年〜1000年前ごろ、キュープライトを使ってガラスを赤く着色する技法が使われていたようです。ここのガラスは「ルビーガラス」と呼ばれ、当時とても人気があったとか。

    そんなに長い歴史を持ちながらも、キュープライトに「キュープライト」と名前がついたのは19世紀に入ってからでした。オーストリアの鉱物学者だったヴィルヘルム・カール・リッター・フォン・ハイディンガー(Wilhelm Karl Ritter von Haidinger|1795年 - 1871年)が、1845年に命名。「銅」を意味するラテン語のcuprumから、キュープライト(Cuprite)の名をつけました。

    ■キュープライトの産地

    ナミビアは、良質で大粒のキュープライト結晶産地として知られています。ただ、残念なことに、鉱山は枯渇しています。

    現在、キュープライトの主要産地は、オーストラリアやボリビア、チリなどです。これらの地域からは小粒のキュープライトが採れます。

    2. 鉱物・原石としてのキュープライト

    ここからは、キュープライトに鉱物・原石の視点から迫ります。個性的な結晶の形状や、共生する鉱物も解説します。

    ■組成について

    キュープライトの組成情報は、以下の通りです。

    英名 Cuprite(キュープライト)
    和名 赤銅鉱(せきどうこう)
    成分 Cu2O(酸化銅)
    結晶系 等軸晶系
    硬度 3.5~4
    屈折率 2.82~2.84
    劈開 なし
    赤色、褐赤色、紫赤色、黒色
    主な産地 コンゴ、ナミビア、アメリカ、メキシコ、オーストラリア、ボリビア、チリ、ルーマニア、フランス、ドイツ、イギリス、ロシア、中国、日本 など

    ■原石の形状

    ツメブ鉱山産キュープライト原石

    ▲ ツメブ鉱山産キュープライト
    英語版Wikipedia掲載:
    By Rob Lavinsky, iRocks.com – CC-BY-SA-3.0, CC BY-SA 3.0,
    https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=10136958

    キュープライトの原石は、多くは塊状です。ただ、六面体や八面体、さらにごく稀に十二面体の結晶で見つかることもあり、原石コレクションとしての面白さもある石です。

    貫入双晶」と呼ばれる形状に成長したキュープライトも、よく見られます。貫入双晶とは、結晶の一方が他方の内部に侵入しながら成長し、貫通して表面に出現してできた双晶です。

    ■鉱物視点からみたキュープライト

    キュープライトは、銅の硫化鉱物が分解してできる二次鉱物です。銅鉱床にあるカルコパイライト(黄銅鉱)やカルコサイト(輝銅鉱)、ボーナイト(斑銅鉱)などが酸化・風化したあとに、マラカイト(孔雀石)・アズライト(藍銅鉱)・カッパー(自然銅)・クリソコラ(珪孔雀石)などとともに形成されます。

    キュープライトと他の鉱物を識別したいときは、条痕を調べてみてください。条痕とは、鉱物を硬いプレートにこすりつけ、残った微粉の色によって、石種を識別する方法です。白い陶磁器のプレートが使われます。
    条痕を調べる際は、目立たない部分をしっかりと削りましょう。キュープライトの条痕は、金属的な茶色がかった赤色をしています。ちなみに、キュープライトと共生するマラカイトの条痕は淡緑色、クリソコラの条痕は白色です。

    3. キュープライトをより楽しむために

    キュープライトの魅力は、存分に伝わったでしょうか。この章では、キュープライトをさらに楽しめる、多彩な情報を紹介します。

    ■キュープライトの石言葉

    キュープライトは、誕生石などには指定されていませんが、石言葉としては「勇気」「情熱」「安心」「行動力」「挑戦」などがあります。女性的パワーを強く持つ石とされ、持つ人に情熱や愛情を与えるとされます。
    メンタルを落ち着かせ、女性ならではの魅力を高めたいときに、身につけたい石です。

    ■アクセサリーやビーズへの加工

    キュープライトクリソコラ

    ▲ キュープライトクリソコラのビーズブレスレット

    キュープライトのうち、不透明なものや模様が個性的なものは、ビーズに加工されて市場に登場します。キュープライトのビーズも、とても素敵。一石一石異なる表情、マラカイトやクリソコラとのコントラスト、そしてコロンとした存在感。どれをとっても、可愛らしく、集めたくなる魅力を持っています。
    色の割に存在を主張しすぎないため、他の石と組み合わせて使っても良いですね。ブラッドストーンやターコイズ、ソーダライト、メノウなどは、色の相性が良い組み合わせです。

    ■銅にまつわる豆知識

    キュープライトは、現在も銅の主要鉱石として世界中で取引されています。コレクター向けに流通するキュープライトは、産出量のごくごく一部。大半は、工業用途です。
    ちなみに銅は、鉄・アルミニウムに次ぐ、産業用金属の消費量第3位。通信ケーブルや電子機器に欠かせない素材です。

    さて、そんな銅が大量に使われている、有名な彫像といえば?そう、アメリカにある自由の女神像です。

    
statue of liberty

    ▲ 銅板で作られた自由の女神像

    自由の女神像は銅を主原料につくられています。緑色である理由は、銅の表面が酸化し、緑青になっているためです。
    表面を覆う酸化銅の膜は、厚さわずか0.127mm。しかし、像全体に及ぶ膜は、膜だけでなんと総重量73トンに達します。
    銅でできている女神像、寄贈された折は、輝くばかりの銅色だったことでしょう。ただ、除幕と同時に酸化がはじまり、34年後の1920年までには完全な緑色になったそうです。

    ※ 詳しくは、ニューヨーク歴史協会のホームページ(外部リンクが開きます)で解説されています。

    最新の研究によると、銅は医療分野でも存在感を増しているそうです。多くの人が頻繁に触れる場所(ボタンや手すりなど)を銅で覆うと、院内感染防止に役立つとか。銅が微生物の細胞膜の電荷に影響し、死滅させる働きをする、というのです。

    銅は、これまでも、そしてこれからも私たちの生活に欠かせない鉱物。そんな銅の歴史や活用にも思いを馳せながら、キュープライトの輝きを楽しんでみてはいかがでしょうか。


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      4. まとめ

      キュープライトは9割以上が銅でできている、大切な銅鉱石です。世界中で産出されており、品質を満たす一部の原石だけが、ルースやビーズに加工され、コレクター向けに販売されています。
      ルビーやガーネットにたとえられる美しい赤色が、キュープライトの魅力。模様石やカラーストーンが好きな人には、マラカイトやクリソコラと共生したキュープライトもおすすめです。

      硬度が低く割れやすいため、取り扱いには十分注意してください。また、空気や光に触れると、黒く変色します。直射日光を避け、密閉容器での保存をおすすめします。


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      この記事を書いた人

      みゆな

      TOP STOneRY / 編集部ライター

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