枯れない花、融けない雪の結晶デュモルチェライトの魅力について

パワーストーンとして扱われることも多い、デュモルチェライト。近年、とある発見によって爆発的に人気を博しています。知られざるデュモルチェライトの魅力と、新たに見出された美しさについて解説します。
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1.宝石・ルースとしてのデュモルチェライト

デュモルチェライトは鮮やかで印象深い、濃いブルーが魅力の鉱物です。ラピスラズリに追随するそのブルーの美しさは、デザートラピスと呼ばれることも。青色宝石の中でも最も美しい青色に数えられる鉱物の一つです。
不透明なデュモルチェライトは、パワーストーンなど半貴石として流通します。半貴石については後半で解説しますので、ご覧ください。
■デュモルチェライトとは

デュモルチェライトは通常、塊状の不透明石として産出されます。稀に透明の結晶が産出されることがあり、その希少な透明石が貴石として流通します。結晶の性質上、大きく成長することはなく、流通しているものはいずれも0.1〜0.2ct前後。0.5ctもあれば大きな結晶といえるでしょう。1ctを越える貴石品質のデュモルチェライトに出会えたら幸運だと思います。モース硬度は7から8.5と高く、通常はファセットカットされます。
貴石品質のデュモルチェライトは、デュモルチェライト特有の色の深みを持ちながら、抜け感も相まってより色鮮やかに感じます。ブルー系のデュモルチェライトは原色のブルーから紫味を含んだブルー、また暗めのインディゴブルーまで豊かな色彩を呈します。
特にコーンフラワーブルーと呼ばれるはっきりとした帯紫青色のデュモルチェライトは評価が高く、ブルーファントムとも呼ばれます。他にピンクのデュモルチェライトも産出しますが、ピンクのデュモルチェライトは産地が限定的です。
宝石質のピンクデュモルチェライトと出会える機会は殆どないのではないでしょうか。
ブラウンに近いレッドやカラーレスのデュモルチェライトも稀に産出があります。
■デュモルチェライトインクォーツとは

貴石品質のデュモルチェライトは希少性が高く、デュモルチェライトといえば不透明の半貴石。その印象を変えることになったのが、デュモルチェライトインクォーツの発見です。
デュモルチェライトインクォーツが発見されたのは2014年と、近年のことです。その名の通りクォーツの中にデュモルチェライトが取り込まれています。放射状に伸びるデュモルチェライトの針状結晶は、大輪の花がクォーツの中で咲き誇るようで、数あるインクォーツの中でも無類のファンタジックな結晶といえるでしょう。
雪のひと片を閉じ込めたようなデュモルチェライトインクォーツは、冬を喚起させる冴え冴えとした美しさがあります。一方、真夏の花火の一瞬を切り取ったような華やかさもあり、涼し気なビジュアルは夏の装いにもぴったりです。青色宝石の中でもブルーの美しさを評価されるデュモルチェライト、その美しさはそのままに、造形美も楽しめる結晶です。
更に稀産ながら、ピンクのデュモルチェライトを内包するものもあります。柔らかいオレンジ味のピンク色をした針状結晶の花が幾つも開くのは、花霞を小さく閉じ込めてしまったような可憐さ。ブルーのデュモルチェライトインクォーツとはまた違った印象になりますね。
クォーツの中に針状結晶の塊が小さく1つ2つ入っているようなものから、全体を埋め尽くすほど満開なものまで、様々なデュモルチェインクォーツがあります。全く同じデュモルチェライトの入り方をしているデュモルチェライトインクォーツはありません。
自分にぴったりとハマるデュモルチェライトインクォーツを探すのも、この石の醍醐味といえるでしょう。デュモルチェライトの結晶がより良く見えるようカットされますが、通常はカボションにカットされます。
■高品質なデュモルチェライトとは?
デュモルチェライトの品質のポイント

デュモルチェライトの品質を見極めるのに最も重要なポイントは色味です。青〜紫色の彩度が高く鮮やかな石が好まれます。黒味のある、またグレーっぽいブルーも魅力的ではありますが、一般的には鮮やかながら深みのあるブルーが高品質とされています。
とりわけ美しいブルーのデュモルチェライトはブルーファントムと呼ばれることもありますが、鑑別基準があるわけではなく、販売者による評価になります。
また、クラリティ(透明度)も重要です。結晶自体が小さな分、大きなインクルージョン(内包物)があると全体が濁ったように見えてしまいます。
通常はチューブ状や無色結晶などのインクルージョンを含みます。黄褐色のライモナイトなどを含んでいる石もあり、全くインクルージョンがないものを探すのは難しいかもしれません。ジェムクオリティの結晶自体がレアで、結晶の性質から重量はあまり問題になりません。とはいえ、大きくて困ることはありませんよね。
デュモルチェライトインクォーツの品質のポイント

デュモルチェライトインクォーツに関しても、色味、クラリティが重要になります。特にクラリティは重要です。そもそもクォーツのインクルージョンとしてデュモルチェライトが入っているのが、デュモルチェライトインクォーツ。
完全にクリアなクォーツに真っ青な、もしくは鮮やかなピンクのデュモルチェライトの結晶だけが入っているものが高品質と言えます。とはいうものの、曇りのあるクォーツに鮮烈なカラーのデュモルチェライトが入っているのも、霜柱に氷の花を閉じ込めた幻想的な美しさを醸し出す、得難い魅力があります。
デュモルチェライトの色も注目して欲しいポイントです。色の評価はデュモルチェライトの単結晶と同じで、ブルーファントムの入るデュモルチェライトインクォーツはロイヤルブルーガーデンファントムと呼ばれることもあります。
■デュモルチェライトの特徴
デュモルチェライトは多色性の強い鉱物です。三色性も強く、勿論、石によるところもありますが、はっきりと角度によってカラーレス、ブルー、パープルなど色の変化を見ることが出来ます。それを存分に楽しめる程の大きな結晶が中々産出されないのが難点ですが、デュモルチェライトの結晶としても、デュモルチェライトインクォーツとしても多色性がわかる結晶は魅力的ですね。
針状結晶、繊維状結晶として成長するデュモルチェライトは、キャッツアイ効果を見せる石もあります。
比較的歴史が浅く、最近認知度も上がってきたデュモルチェライト。今後、人気が高まるにつれ研究が進み、新たな発見もあるかもしれません。
■デュモルチェライトの由来と歴史
デュモルチェライトはフランスでウジェーヌ・デュモルティエ(Eugene Dumortier)によって発見されました。発見者の名前にちなんで1881年に命名されました。
E・デュモルティエは地質学者ではなく、アンモナイトなどの化石について著作のある古生物学者です。
どういう経緯で発見したかは詳細が判りませんが、もしかしたら化石と共に発見したのかもしれません。地中の奥で、化石と共に人知れず輝きを放っていたデュモルチェライト。ロマンを感じませんか?
一世紀の間、デュモルチェライトはレアストーンとしてコレクター向けに僅かに流通するか、不透明の半貴石が流通するに留まっていました。2014年にブラジルでクォーツの中に入ったデュモルチェライトが発見されると、そのファンタジックな美しさはすぐに人々を魅了し、一躍希求の的になりました。
ジェムクオリティのデュモルチェライトが稀産かつ小粒なのに対して、幻想的で大きな結晶が期待できるデュモルチェライトインクォーツは、ジェム界のルーキーながら今後益々人気が沸騰しそうです。
■デュモルチェライトの産地

デュモルチェライトは多くの地域で産出します。最初に発見されたのはフランスでした。高品質なデュモルチェライトの産地としてマダガスカル産のデュモルチェライトが挙げられます。他にアメリカ、ブラジル、カナダなどが鮮やかなブルーを呈する産地として有名です。また南アフリカやブラジルの一部ではピンク色のデュモルチェライトが産出します。
勿論、日本でも産出します。残念ながらジェムクオリティの品質、サイズのデュモルチェライトが産出するわけではなく、流通する程採掘できるわけではないようです。個人ではピンクのデュモルチェライトを発見した体験談などもあります。今後の発見に期待してしまいますね。
2.鉱物・原石としてのデュモルチェライト

半貴石としても流通するデュモルチェライト。鉱物的な組成と魅力について解説します。
■組成について
まずは、組成から見てみましょう。
英名 | Dumortierite(デュモルチェライト) |
和名 | デュモルチ石 |
成分 | Al7(BO3)(SiO4)3O3 |
結晶系 | 直方晶系(斜方晶系) |
モース硬度 | 7-8.5 |
屈折率 | 1.66-1.72 |
劈開 | 1方向に明瞭 |
色 | 青、紫、ピンク |
主な産地 | マダガスカル、アメリカ、ブラジルなど |
デュモルチェライトはホウ素を含むアルミニウム ケイ酸塩鉱物です。その深い藍色がラピスラズリに似ていることから、デザート・ラピスと呼ばれることもあります。しかしラピスラズリとは同じケイ酸塩鉱物ではあるものの組成は似ておらず、全く別物です。
ちなみにデザートは砂漠の方のdesertで、不透明で塊状のデュモルチェライトが、ブルーの砂がちりばめられているように見えることからネーミングされたようです。特に白い石英中に見られるデュモルチェライトは、白い砂浜とその波間のようで、ざらついた印象もより風情を引き立てますね。
デュモルチェライトの鮮やかで深い青を作り出すのは、結晶中のチタンと鉄の関係です。デュモルチェライトに含まれる鉄がチタンに置き換わる比率が高くなればなるほど、鮮やかなブルーに成長していきます。
鉄が多いままだと、黒っぽく、グレー味を帯びたり黒っぽく沈んだ色になってしまいます。通常はペグマタイト脈に産出しますが、アルミニウムが豊富な変成岩にも局所的に産出します
世界各地で産出があり、前述した通り日本でも産出されます。
■原石の形状

通常は鮮やかなブルーから青味のグレー、ブラックの不透明な塊で産出されます。煌めきのない、いかにも石といった風情のものから、煌めきを帯びているようなブルーの鮮やかな石などがあります。研磨するとテリが出ますが、研磨した表面にも凹みやざらつきがしばしばあります。
また、針状、あるいは繊維状結晶の集合体としても成長します。ブルーやピンクの針状結晶は煌めいて貴石らしい輝きを放ちます。ただ大きく成長しない為、遠くから見ると、ブルー、ピンクの輝く苔のようにも見えます。
母岩付きのデュモルチェライトの原石はファンタジックな景色を描き出しますね。その針状結晶がクォーツに閉じ込められたのが、デュモルチェライトインクォーツ。これはイメージし易いのではないでしょうか。
六角柱の水晶クラスター、そのポイントに放射状に成長し針状結晶を伸ばすデュモルチェライトは、ちらつき、ふわりと浮かぶ雪の結晶のような、花のような造形を天然で作り出します。未加工でも変わらない美しさがあり、原石としても充分魅力的です。デュモルチェライトインクォーツにも勿論ピンクのデュモルチェライトを内包するものがあり、優しいオレンジ味のピンクがまた印象深いです。
■鉱物としての魅力
鮮やかな色が魅力的なデュモルチェライトは、原石のまま飾るのも非常に楽しめる鉱物です。しかし、特にデュモルチェライトインクォーツについては、以前はブルーファントム級の美しい原石も流通していたようですが、人気の上昇と共にジュエリーへの加工、ビーズなどへの加工の需要が増え、美しい原石の入手は困難になってきているようです。
3. デュモルチェライトをより楽しむために

宝石のその他の楽しみ方として、誕生石や石言葉、加工品の使用例などをご紹介します。
■デュモルチェライトの石言葉
デュモルチェライトは「思慮の石」とも呼ばれているようです。デュモルチェライトの深いブルーの清明さには、確かに集中とインスピレーションをもたらしてくれそうな輝きがありますね。石言葉は「希望」「決断」など。勝負時、また何かに岐路にたった時、パワーストーンとして一助をもたらしてくれそうです。
ちなみに、クォーツの石言葉は「純粋」など。また浄化の石として知られています。そのクォーツに内包されたデュモルチェライトは、心を落ち着けて、煩雑な状態を浄化し、身のうちに秘めた無垢な願いと、それを叶える為の道筋を照らしてくれるのではないでしょうか。
■半貴石としてのデュモルチェライト

パワーストーンとしても人気の高い不透明のデュモルチェライトは、通常角を丸くした、天然の形状を活かしたものやカボションなどにカットされて流通します。やはり深く鮮やかなブルーが特徴で、均一なブルーを持つデュモルチェライトは目の覚めるような鮮烈な色を魅せてくれます。
しかしグレー味のブルーやブラックに近いブルーが混ざるのも、天然石ならではの面白さではないでしょうか。その面白さと、耐久性から彫刻の素材としても使われています。
また、ビーズに加工されることも多いです。不透明のデュモルチェライトのブルーを活かしたビーズは落ち着きある雰囲気になりますね。また透明なクォーツにデュモルチェライトの花が入ったビーズは、アクセサリーにしてもそのまま飾っても可愛らしく、ハンドクラフト以外にも需要があるでしょう。様々な活用法がありそうです。
■日常で使われるデュモルチェライト
デュモルチェライトは、1230°で加熱することによってムライトという鉱物に変身します。高温で生成されるだけあって耐熱性が高く、耐熱材などに使用されます。またムライトになる際にも体積が変わらず、そういう性質を見込まれデュモルチェライトを含んだ陶器やセラミックなど、工業用としてもデュモルチェライトは活躍しています。
またラピスラズリに似た色合いを持つデュモルチェライトは、顔料や絵具としても使われてきました。
特に福島県や奈良県周辺で採掘されていたようで、岩絵の具などになっていたようです。
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4. まとめ
それぞれに特色ある魅力を持つデュモルチェライト。自分にぴったりハマる石を探すのもまた楽しい鉱物です。近年人気が高まり、見かけることも増えてきました。是非、お気に入りの一石を見つけてください。
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この記事を書いた人

佐伯
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。