モルガナイトは桜色に輝く4月の誕生石|多彩なベリル種の紹介と楽しみ方

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1. 宝石・ルースとしてのモルガナイト

はじめに宝石・ルースとしてのモルガナイトについて、解説します。
高品質なモルガナイトの条件や歴史的なストーリーの世界を、見ていきましょう。
■高品質なモルガナイトとは

モルガナイトは、一般的に次の条件を満たすほど価値が上がるとされます。
透明度が高い
色が濃く、鮮やか
純粋なピンク色に近い
カラーや透明度、カラットについて、詳しく解説します。
カラー
モルガナイトはピンク色と称されますが、よく見るとバリエーションが豊富です。
パステルピンクや紫がかったピンク、オレンジ寄りのピンク、さらにローズ色にピーチ色まであります。
高品質とされるのは「はっきりとしたピンク色」「紫がかったピンク色」です。
モルガナイトには、照射処理(後述)が施されるのが一般的です。黄色味やオレンジ味を取り除き、ピンク色の鮮やかさを増すことが目的です。
照射処理によってあらわれたピンク色は、退色せず鮮やかさを保ち続けます。
コレクターからも、色が濃く鮮やかなモルガナイトほど、人気があります。
一方で、ナチュラル感のあるサーモン色やピーチ色を好むコレクターもいます。
好みのピンクを選べるのも、モルガナイトの魅力でしょう。
<モルガナイトの多色性>
モルガナイトは淡いピンク色と深い青味がかったピンク色の多色性を持っています(バイカラー)。無色の部分が加わり、トリカラー(三色)になった個体もあります。この多色性を最大限に美しく見せるよう、カッターは慎重に方向性を見極めて加工します。
モルガナイトのカッティングは、熟練の技量が求められる場面です。
透明度
他の宝石に漏れず、透明度が高くクリアな個体ほど価値が上がります。
目に見えるインクルージョンがない美しい石は、宝石品質の個体として評価されます。ファセットカットが施され、ルースになり流通します。
インクルージョンがあり透明度が低い場合は、コレクターやパワーストーン愛好家向けにカボションカットやビーズになります。
カラット
モルガナイトは、大きなサイズの結晶で採掘されます。比較的大きめのルースが流通するのは、原石の大きさが要因です。
ブラジルでは10kgもの大きさの結晶が見つかったことがあります。
またスミソニアン学術協会には236カラット(47.2g)と250カラット(50g)の、ファセットカットされたモルガナイトが収蔵されています。
モルガナイトは、カラットが大きいほど色が鮮やかになります。大きいほど、比例して価値も高まる石といえます。.
■モルガナイトの照射処理
モルガナイトは色を鮮やかに美しくするため、一般的に照射処理が施されます。
<用語解説:照射処理とは>
宝石を放射線にさらす処理。1970年代に始まったといわれている。
きちんと管理された施設で行われ、残留放射線量が人体に影響しないと確認された個体のみが流通する。したがって健康に対する懸念は感じなくて良い。
実は自然界にも微量の放射線が存在し、私たちは日常的に一定量の放射線を浴びている。
宝石に放射線を当てると、原子の配列が変化して色が鮮やかになります。自然界で放射線を浴びた場合も、色が鮮やかになります。
一般的に照射処理が施される宝石は、以下のとおりです。
モルガナイト
ブルートパーズ
スモーキークォーツ
ルベライト
レモンクォーツ
これらの宝石は、鑑別書に『通常、照射処理が行われています』と記載されます。
ただし照射処理が施されるのが一般的なため、照射処理の有無による宝石の価値変動は心配しなくて大丈夫です。
また鑑別では、放射線による色変化が自然によるものか、人為的なものかは区別できません。
■よく似た宝石「ペツォッタイト」との見分け方
桜色と称されるモルガナイトとよく似た石に、ペツォッタイトがあります。
ペツォッタイトはラズベリル、またはピンク・ベリルと呼ばれる宝石で、2003年に新種鉱物として認定されました。
どちらもピンク色をしたベリル系であり、見た目がとてもよく似ています。

モルガナイトとペツォッタイトを見分けるには、インクルージョンに注目します。
ペツォッタイトは、ほぼどの個体もインクルージョンがあります。完全に透明なペツォッタイトはほとんどない、といわれるほどインクルージョンがあるケースが一般的です。
一方、モルガナイトは透明度が高い宝石です。
ちなみにペツォッタイトは、レアストーンとしても知られています。
これまでに見つかっている原石は約40kgともいわれ、宝石になれる部分は10%にも満たない、つまり4kgほどしかないという石です。
モルガナイトとペツォッタイト、どちらもぜひ手に入れて、桜色の共演を楽しんでみてはいかがでしょうか。
■「モルガナイト」の名前の由来
モルガナイトの名前は、アメリカのモルガン財閥を創業したジョン・ピアポント・モルガン(J.P.Morgan)に由来します。
名前がつくまでのストーリーを、少しだけ見てみましょう。
===
1910年、マダガスカルの沖合にある島で、ローズ色をしたベリル(モルガン石)が発見されました。
この新しい石を「モルガナイト」と名づけようと発案したのは、ティファニー社の鉱物学者・宝石学者だったジョージ・クンツ(George Kunz)です。
1910年12月5日、ニューヨーク科学アカデミーの会合でのことでした。
ジョージ・クンツとJ.P.モルガンは、長年の友人でした。またJ.P.モルガンは当時、世界最大級の宝石コレクターでもあったのです。
新しい宝石の名前を、ティファニー社の重要顧客でもあったJ.P.モルガンに捧げる提案は、ごく自然なことでした。
ちなみにジョージ・クンツの名前は「クンツァイト」という宝石の名前として、こちらも現代に残っています。
<豆知識:モルガン財閥とは>
アメリカ最大の利益団体の一つです。有名なロスチャイルド家(世界で最も裕福なユダヤ系金融資本)と並び、国際的な金融財閥としても有名です。
1870年のプロイセン・フランス戦争(普仏戦争)では、フランス政府に対して5,000万ドルの国際協調融資を組んだこともあります。
この出来事以降、イギリスはモルガン系銀行を経由して対米投資を行うようになりました。
モルガン財閥は、歴史的にも大きな存在感を持つ利益団体です。
■モルガナイトの産地

モルガナイト最大の産地は、ブラジルです。
ブラジルのミナスジェライス州にあるペグマタイト鉱床から産出したモルガナイトが、市場に流通しています。
ミナスジェイラスは世界最大級の宝石産地として、コレクターのあいだでは有名な場所です。
モルガナイトのほかにも、つぎのような宝石が採掘されています。
トルマリン
ベリル系
クォーツ
アメジスト
ブラジルは、宝石コレクターなら一度は訪れてみたい場所でしょう。
マダガスカルで採れるモルガナイトは、品質の良さが評判です。赤紫色が強い結晶が採掘でき、世界中のコレクターが注目しています。
そのほか、アフガニスタンやモザンビーク、ナミビア、アメリカなどでもモルガナイトは産出しています。
ただしブラジルに比べると規模が小さく、安定供給には至っていません。
2. 鉱物・原石としてのモルガナイト

宝石としても魅力的なモルガナイトは、鉱物や原石の面から見ても個性あふれる石です。
モルガナイトを鉱物・原石視点から見ていきましょう。
■組成について
モルガナイトの組成情報は、以下のとおりです。
英名(カタカナ) | Morganite(モルガナイト) |
和名 |
モルガン石 ※ 鉱物名はベリル(Beryl) |
成分 | Be3Al2Si6O18 |
結晶系 | 六方晶系 |
硬度 | 7.5~8.0 |
屈折率 | 1.583~1.590 |
劈開 | 不明瞭(1方向) |
色 | ピンク、オレンジピンク |
主な産地 | ブラジル、マダガスカル、アフガニスタン、アメリカ など |
モルガナイトの和名を「緑柱石」と記す書籍・サイトもあります。これはモルガナイトが属するベリル系鉱物が発見されたときの色に由来するようです。
ベリリウム(Be)を含む鉱物をベリル系としたのは、フランスの化学者であったルイ・ニクラウス・ボークランでした。
彼が見つけた、ベリリウムを含む原石が淡い緑色をしていたのです。
以降、日本でも青色がかった緑色のベリルを「緑柱石」と呼ぶようになりました。緑柱石は現在も、ベリル系鉱物を総称した和名として使われています。
■原石の形状
モルガナイトの原石は柱状、あるいは塊状で見つかります。扁平な形になるものもあります。
柱状に成長した結晶は美しい六角柱になります。アクアマリンよりも平坦になりやすい点が特徴です。
■鉱物としてのモルガナイト
モルガナイトはベリル(緑柱石)の一種です。
ベリルはベリリウム(Be)を含む鉱物の総称です。ベリリウムを含む鉱物群は「ベリル系」として同じグループに分類されます。
さまざまなカラーバリエーションがあり、それぞれに名前がつけられています。
名称 | 画像 | 色 | 詳細 |
モルガナイト | ![]() |
ピンク、ライラック、ピーチ、オレンジ、ピンクがかった黄色など | マンガンとセシウムを微量に含み、発色。 |
レッドベリル | ![]() |
赤、赤紫、濃ピンク | アメリカ・ユタ州近郊でのみ採掘できる。マンガンにより発色。 |
イエローベリル | ![]() |
黄色 | 微量の鉄により発色。キャッツアイタイプもある。 |
ヘリオドール | ![]() |
黄緑色 | 「太陽からの贈り物」という意味を持つ。微量の鉄により発色。 |
ゴールデンベリル | ![]() |
黄金色、濃い黄色、ハチミツ色、オレンジ色 | 微量の鉄により発色。イエローベリルより濃く鮮やかな色。 |
エメラルド | ![]() |
緑色 | 濃く鮮やかな緑色が特徴。クロムとバナジウムにより発色。 |
グリーンベリル | ![]() |
淡い緑色 | エメラルドより薄く優しい色。微量の鉄が発色要因。 |
アクアマリン | ![]() |
青、緑青色 | 海水青色と呼ばれる。古くから船乗りのお守りとされた。2価の鉄が発色要因。 |
ゴッシェナイト(ホワイトベリル) | ![]() |
無色 | カラーレスに近いほど価値が高い。発見された地名「ゴーシェン(アメリカ)」が名前の由来。 |
ベリル系鉱物の名前が、2パターンあるのに気づきましたか?
「エメラルド」「アクアマリン」といった独自の名前を持つ石と、「〇〇ベリル」と呼ばれる石がありますね。
これは発見された順番の影響を受けています。
エメラルドやアクアマリンは、古代ギリシアやエジプト王国で愛されていたほど長い歴史を誇ります。
一方、ベリル系という分類が確立されたのは、1798年のこと。以降、ベリリウムを含む鉱物は「〇〇ベリル」と名づけるルールとなりました。
さてこのとき、エメラルドやアクアマリンにもベリリウムが含まれているとわかります。エメラルドやアクアマリンも、ベリル系鉱物だと初めて分かったのです。
ではルールに従って、名称を変えるべきでしょうか。
いいえ、過去の鉱物学者たちはその選択をしませんでした。
エメラルドやアクアマリンの名称はあまりに人々に知られています。いまさら「〇〇ベリル」と改名するのは現実的ではない、と考えたのです。
エメラルドとアクアマリンが、いまもその名前で呼ばれるのは、こうした理由からです。
またベリル系が確立するまで、黄色味を帯びたベリルはすべて「ヘリオドール(Heliodor)」と呼ばれていました。
細分化するため、黄色い石を「イエローベリル」、オレンジ味の強い石を「ゴールデンベリル」、それら以外の黄緑色がかった石を「ヘリオドール」と呼ぶようになったそうです。
<豆知識>
クリソベリルには「ベリル」の名前が入っていますが、ベリル種ではなく独立した鉱物です。
3. モルガナイトをより楽しむために

優しい色合いと透明感が魅力のモルガナイトを、もっと気軽に楽しんでみませんか。
きっと、モルガナイトを身近に置きたくなるヒントを紹介します。
■誕生石・石言葉

モルガナイトは、4月の誕生石です。2021年12月、全国宝石卸商協同組合が追加しました。
モルガナイトの名前の由来となったJ.P.モルガンの誕生月が4月だったこと、また淡いピンクの色合いが桜の花を連想させることが、追加の決め手となりました。
ちなみに4月の誕生石は、ほかにもあります。
ダイヤモンド(日・米・英・仏)
ロック・クリスタル(英)
サファイア(仏)
どの宝石もまばゆいきらめきを持っています。
冬が終わり、やわらかくエネルギッシュな日差しが降り注ぎはじめる4月にぴったりの石ばかりです。
モルガナイトの石言葉は、次のとおりです。
優美さ
優しさ
女性らしさ
慈悲愛
清純
誠実
先見性をもって、仕事や学業を良い方向へ導くパワーがあるとされています。
4月、新生活のスタートにあたって身につけると、良いことがあるかもしれません。
■ビーズ・アクセサリー
宝石品質に満たないモルガナイトは、ビーズにカットされます。
宝石やルースにするには透明度が低い個体も、ビーズにすると途端に新しい魅力を放つのが不思議ですね。
桜貝のような淡いピンク色は、4月のみならず一年中身につけたくなるかわいらしさです。
アクアマリンやヘリオドールなど、他のベリル系との組み合わせてみましょう。それぞれの色が互いに引き立てあい、フレッシュな輝きを放ちます。

アクセサリーにするなら、ピンクゴールドとの相性が抜群です。ピンクゴールドの柔らかな光がモルガナイトに反射し、さらに美しさを増します。

モルガナイトのモース硬度は7.5~8あり、日常使いに十分耐えられます。気軽にまとって、ピンク色の優しい光をあなたのものにしてみてください。
ローズクオーツやクンツァイトを彷彿とさせるカラーは、多くの人に好まれます。クリスマスや誕生日、とっておきの日のプレゼントにも最適です。
<モルガナイトのお手入れ>
モルガナイトを身につけたあとは、柔らかな布で汚れを拭き取りましょう。気になる場合は、中性洗剤で軽く流してもOKです。
しっかり乾かし、傷がつかないように保管します。日光による退色はほとんどありませんが、大切なモルガナイトの傷みを防ぐためにも、日光や湿度は避けたほうが無難です。
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4. まとめ
モルガナイトは、ベリリウムを含む鉱物・ベリル系の一種です。
淡いピンク色をしており、青と多色性を示す個体もあります。放射線処理により色の鮮やかさを増したものが一般的で、人体への影響はありません。
4月の誕生石に新たに追加され、いま注目を集めている宝石でもあります。
ミネラルショーやルース専門店に赴いた際は、ぜひモルガナイトをチェックしてみてください。吸い込まれそうな優しいピンク色が、あなたを魅了するはずです。
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この記事を書いた人

みゆな
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。