2024/09/06

博物館級の希少宝石「ターフェアイト」 | その希少性の秘密や歴史を徹底解明!

「レアストーン」とされる宝石はさまざまあります。しかし、見つかっているピースの数が数えられるほどしかない石があるとしたら、興味が湧きませんか?

それが今回紹介する、ターフェアイトです。

ターフェアイトはファセットカットされた状態で新種と鑑別された、稀有な宝石です。あまりに希少過ぎて博物館がこぞって収蔵するほどです。

コレクターならぜひ手に入れたい、一度は見てみたいターフェアイト。その歴史からトップクオリティ、さらに鉱物的観点まで解説します。

レアストーンコレクターならずとも興味が高まるターフェアイトについて、この機会に詳しくなってみませんか。


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1. 宝石・ルースとしてのターフェアイト

クリアで静謐、それでいて神秘的で柔らかな輝き。神話に登場する女神によく似合いそうな宝石、それがターフェアイトです。

はじめにターフェアイトを、宝石・ルースの観点から詳しく解説します。

■高品質なターフェアイトとは

ターフェアイトは「レアストーン中のレアストーン」といわれるほど、希少な石です。どのくらいレアかというと、ジュエリー向けに加工される石がほとんどないくらいです。

ターフェアイトの多くはルースのままコレクターの手元に渡るか、博物館に収蔵されます。

レアストーン収集家ならずとも気になるターフェアイトの品質について、解説します。

カラー

市場に流通するターフェアイトの多くは、淡い紫色をしています。紫色が濃いほど、より希少性が高いといわれます。また美しいカラーを持つ宝石品質のターフェアイトは、本当にごくわずかです。
もしターフェアイトに出会う機会があったら、まさに一期一会のチャンス!ぜひとも逃さず、お手元に迎えてあげてください。

ちなみにターフェアイトは、その昔はスピネルだと思われていました
スピネルといえばその豊富なカラーバリエーションも魅力のひとつ、深いレッドやコバルトブルーの美しい姿を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。

スピネルと混同されたターフェアイトも、豊かなカラーバリエーションを誇ります。
宝石界に多大な功績を残したエドワード・ギュベリン(Eduard Josef Gübelin /1913~2005)博士は、実にカラフルなターフェアイトコレクションを所有していました。

  • 淡紫色

  • 鮮やかなピンク色

  • レッド

  • コバルトブルー

  • 深い紫色

  • チェリー色 など


ギュベリン博士のコレクションは、「GIA博物館」(※外部リンク)で閲覧できます。GIA博物館は、世界最大級の宝石鑑別・鑑定機関であるGIA(Gemological Institute of America)が運営する、バーチャル博物館です。

【豆知識】ギュベリン博士の功績

コレクターなら、ギュベリン博士の功績を知っておいて損はありません。

ギュベリン博士は、ダイヤモンドの国際的評価基準「4C」を創り出した、アメリカGIAの創立メンバーです。宝石学分野にインクルージョンの概念を取り入れ、宝石の鑑別機関も立ち上げました。

顕微鏡による拡大検査の手法を確立し、現在の宝石鑑別拡大検査の礎をつくった人でもあります。

カラット・カット

ターフェアイトは大きな結晶で産出することが少ない石です。市場に流通するターフェアイトの多くは、0.5~1.5カラットほどの大きさです。

稀に研磨されただけの、カット前の石が出ることがあります。3カラットを超えるターフェアイトに出会える可能性があり、一見の価値があります。

もっぱらコレクター向けにルースで流通するターフェアイトには、次のカットがよく見られます。

  • クッションカット

  • ブリリアントカット

  • スクエアカット

  • ペンデローク

■ターフェアイトのインクルージョン

    ターフェアイトのなかには、さまざまなインクルージョンを含むものがあります。

    肉眼で確認できるインクルージョンが全体に入り、ミルキーな色合いになったものもあります。気泡状のインクルージョンに光が反射すると、雪面の乱反射のようにキラキラとした輝きを放ちます。シルクのベールをまとった、奥深いきらめきを見せる石もあります。

    ターフェアイトは生成環境の影響を受け、さまざまな鉱物を内包します。ターフェアイトに含まれるとわかっている鉱物は、記事後半で解説しますので続きをご覧ください。

    ■ターフェアイトの魅力

    ターフェアイトの魅力は、なんといってもその希少性です。

    1945年にアイルランドでターフェアイトが見つかってから、1980年代までに50石ほどしか採掘されておらず、現在もかなり限られる数しかありません。

    <これまでに発見されたターフェアイト>

    • 1945年、ターフェ伯爵がアイルランドで1つ発見

    • 1949年、2個目が見つかる

    • 1957年、3個目が見つかる

    • 1967年、4個目が見つかる

    • 以降、1980年までに10石が発見される

    • 1983年頃、50石ほどがターフェアイトと確認される

    希少性にともない、流通価格もそれなりです。1カラットあたり1,500ドル~2,500ドルともいわれます。
    日本円にして、およそ18万~30万円(※ 1ドル=120円の場合)です。

    ■ターフェアイトにまつわる逸話

    ターフェアイトは、宝石としてファセットカットされるまで、新しい鉱物だと認識されなかった珍しい例です。
    新種鉱物だと確認されるまでは、結晶の形状や色が似ているスピネルだと思われていました。

    ちなみにカットされ、研磨された状態で新種鑑別された宝石は、ターフェアイト以外にありません。

    ターフェアイトが初めて「新しい宝石」として世に出たのは、1945年のことです。
    場所はアイルランドのダブリン、宝石商が持っていた古い宝石コレクションに混ざっていたそうです。

    歴史的な発見をしたのは、リチャード・ターフェ(Richard Taaffe)伯爵です。ターフェアイトという名前は、このターフェ伯爵にちなんでつけられました。

    このとき見つかったターフェアイトは、淡いモーブ色をしており、クッションカットが施されていました。
    このターフェアイトは、後にターフェ伯爵に寄贈されています。

    さてそれまで誰もがスピネルだと思っていたにもかかわらず、ターフェ伯爵が「新種では?」と考えたのは、なぜでしょうか。

    答えは「ターフェアイトは複屈折性を持っていたから」です。

    <用語解説>複屈折とは
    宝石に入った光が、異なる2つの方向に進行する現象。複屈折性を持つ鉱物を通して文字を見ると、二重に見える(=ダブリング効果)。

    複屈折性を持つ代表的な鉱物は、次のとおり。
    サファイア / タンザナイト / トルマリン / アクアマリン / エメラルド / ジルコン / カルサイト

    スピネルは複屈折を持ちません。向こう側に置いた文字が二重に見えることもないわけです。

    ここでターフェ伯爵は「複屈折性を持つこの石は、新種ではないか」と気づいたようです。後に専門的な鑑別により、新種だと確定しターフェアイトの発見につながります。

    このエピソードを知ると、「もしかすると、自分のコレクションにも、まだ世に出ていない新種が混じっているかも?」……とドキドキしてきませんか?

    ■ターフェアイトの産地

    ターフェアイトはこれまで、以下の国で見つかっています。

    • スリランカ

    • ミャンマー

    • タンザニア

    • マダガスカル

    • 中国

    • ロシア

    ちなみに、ターフェアイトは産地鑑別ができるほど十分な量のサンプルが採取されていません。

    2. 鉱物・原石としてのターフェアイト

    ターフェアイトを鉱物的視点から見ていきましょう。ターフェアイトの知られざる特徴も解説します。

    ■組成について

    ターフェアイトの組成情報は、以下のとおりです。

    英名(カタカナ) Taaffeite(ターフェアイト)
    和名 ターフェ石
    ※ 鉱物名「magnesiotaaffeeite-2N’2S(苦土ターフェ石2N’2S)」
    成分 Mg3Al8BeO16
    結晶系 六方晶系
    硬度 8~8.5
    屈折率 1.71~1.77
    劈開 不完全(1方向)
    淡紫色、無色、青色、赤色、青紫色、薄緑色
    産地 スリランカ、ミャンマー、タンザニア、マダガスカル、中国、ロシア

    ターフェアイトはマグネシウムとアルミニウム、ベリリウム、そして酸素からできています。この4つの元素を、覚えておいてください。

    後ほど、化学式がとても良く似ている鉱物が登場します。

    ■原石の形状

    宝石質のターフェアイトは、礫岩で見つかります。礫岩とは砂以上の粒径(2mm以上)をもつ小石が堆積してできた岩です。

    マグネシウムやアルミニウムに富んだ片岩を母岩とし、沖積粒・角柱の形で見つかります。トルマリンやスピネル、フローライトとともに発見される場合もあります。

    結晶は透明から半透明で、研磨すると輝きを放ちはじめます。

    ■スピネルとの比較

    ターフェ伯爵が発見するまで、スピネルだと思われていたターフェアイト。ターフェアイトとスピネルは、本当に似ているのでしょうか。

    ターフェ伯爵が最初に見つけたターフェアイトはモーブ色をした個体でした。すっきりとクリアな色味、レッドパープルの奥深い色合いが魅惑的です。

    そしてスピネルにも、似た色合いがあります。

    上記の写真はターフェアイトとスピネルを並べたものですが、パッと見ただけでは区別できないほど似ていませんか?

    見た目の次に、今度は鉱物学的な特徴から両者を比較します。

    ターフェアイト スピネル
    化学式 Mg3Al8BeO16 MgAl2O4
    結晶系 六方晶系 等軸晶系
    硬度 8~8.5 7.5~8
    屈折率 1.71~1.77 1.71~1.75/td>
    比重 3.61 3.60
    光沢 ガラス光沢 ガラス光沢

    硬度や屈折率、比重、光沢まで、とてもよく似ています。現代のような鑑別技術が発達していなかった当時、スピネルと混同されるのは必然だったといえるでしょう。

    ■もう一つのよく似た石「マスグラバイト」

      結晶構造・積層規則が異なるターフェアイトの変種が、マスグラバイトです。

      マスグラバイトは、1967年にオーストラリアのマスグレイブで見つかりました。
      「探しても見つからない」「ほとんど手に入らない」・・・といわれるほど希少で、専門の流通ルートを持つ宝石店でも入手困難とされる石です。

      ターフェアイトと鉱物的情報を比較してみましょう。「ほとんど同じ」と言っても過言ではないことがわかります。

      ターフェアイト マスグラバイト
      化学式 Mg3Al8BeO16 Mg2Al6BeO12
      結晶系 六方晶系 三方晶系
      硬度 8~8.5 8~8.5
      屈折率 1.71~1.77 1.72~1.74/td>
      比重 3.61 3.6~3.7
      光沢 ガラス光沢 ガラス光沢

      マスグラバイトも、コレクターからの人気が非常に高い石です。ターフェアイトが六方晶系であるのに対し、マスグラバイトは三方晶系で結晶化している点が異なります。

      光が当たると虹色に輝くインクルージョンを内包する個体や、テーブル表面にレインボーカラーのイリデッセンスが見られる個体などもあり、表情がとても豊かです。

      マスグラバイトはこれまで、南極大陸やグリーンランド、マダガスカルで見つかっています。

      ■ターフェアイトに内包される鉱物

      インクルージョンの研究は、その鉱物の生成環境や起源にかかわる重要な情報を与えてくれます。
      さまざまな研究から、ターフェアイトに含まれる鉱物が判明しています。代表的なものを紹介します。

      アパタイト(apatite・燐灰石)

      アパタイトはもっとも一般的に見られるインクルージョンです。淡い黄色、またやや濁ったカラーレスのターフェアイトから見つかりました。

      フロゴパイト(phlogopite・金雲母)

      スリランカのクルウイータ(Kuruwita)で採掘されたターフェアイトから、フロゴパイトが発見されたことがあります。

      スピネル(spinel・尖晶石)

      ターフェアイトが、先に存在していたスピネルを内包する場合があります。スピネルとターフェアイトはよく似ており、かなり高倍率の顕微鏡で見ても識別は困難です。

      マスコバイト(muscovite・白雲母)

      相対屈折率を識別する特別な技術「Beck line method(ベッケ線法)」を用いて、初めて見つかったのが白雲母です。

      3. ターフェアイトをより楽しむために

      世界10大レアストーンに選ばれたこともあるターフェアイトは、いつか手元に置きたい憧れの石というコレクターも多いでしょう。

      ターフェアイトを迎えるその日を心待ちにしながら、さらに楽しむ方法を解説します。

      ■ターフェアイトの石言葉

      ターフェアイトの石言葉は「挑戦力を高める」「稀有な存在」です。
      不幸の連鎖を断ち切り、新しい幸運を呼び込む石ともされています。

      1945年に初めて鑑別された歴史の浅い石ということもあり、ターフェアイトの物語はこれから紡がれていくところです。身近に置き、あなただけのメッセージを積み上げていってください。

      ■ターフェアイトの加工について

      ターフェアイトは希少性ゆえ、ジュエリーやアクセサリーの用途にはほとんど用いられません。
      カットされたルースのまま、コレクターの手元に置かれます。

      ターフェアイトは奥ゆかしいカラーや、特徴的なインクルージョンが魅力の石です。光に透かし、きらめきと複屈折性を楽しんでみてください。

      ターフェアイトの硬度は8.0~8.5です。取り扱いに神経質になる必要はありませんが、硬いものに当たると破損するおそれがあります。
      保管の際は他の宝石とは分けてケースに入れること、また直射日光や多湿を避けるようにしましょう。


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      https://www.topstone.jp/help/faq


      4. まとめ

      レアストーン・ターフェアイト。

      1945年のあの日、ターフェ伯爵がその宝石商を訪れていなかったら、今もスピネルだと思われていたかもしれません。宝石の発見は、実に不思議な出会いが紡ぐストーリーではないでしょうか。

      そしてターフェ伯爵が見つけてから80年が経とうとするいまも、世界でも稀に見る希少性でその価値を高め続けています。これから発見されるかどうか、それは誰にも分りません。

      もしターフェアイトを見かける機会があれば、それはとても幸運なこと。
      それが良質なら尚のこと、その機会を逃すと手に入らないかもしれません。
      ミネラルショーなどで見かけた際は後悔のないよう、ぜひチェックしてみてくださいね。


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      この記事を書いた人

      みゆな

      TOP STOneRY / 編集部ライター

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