2025/1/9

サニディン:火山が生んだガラス光沢の希少石|その美しさと魅力の秘密に迫る

サニディンは、ほんのりと色づいたカラーとクリアな輝きが印象的な、美しい宝石です。地球の地殻にもっとも多く含まれる鉱物・長石(フェルドスパー)グループに属するにもかかわらず、希少だという性質も興味をそそられるポイント。
またカリウムを豊富に含む長石の分類名になることもある、ちょっと不思議な宝石です。

今回は希少なサニディンの魅力に迫ります。美しさの決め手や、サニディンが希少な理由、長石の基礎知識もまとめました。

コレクターもルース愛好家も、そして天然石好きのあなたも、この機会にサニディンと長石について詳しくなりませんか。


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1. 宝石・ルースとしてのサニディン

まずは宝石やルースになったサニディンの美しさに迫ります。高品質なサニディンのポイントや珍しい輝き、またサニディン発見の歴史なども見てみましょう。

■高品質のサニディンとは

サニディンは、その存在そのものが希少な宝石です。宝石品質の個体は稀で、ファセットカットが施されルースになったサニディンは、ルース専門店でも滅多にお目にかかれない珍しさ。

さらに品質の良いサニディンとなれば、ほんの一握りでしょう。サニディンの品質は、次の4つのポイントで決まります。

  • カラー

  • インクルージョン

  • カット

  • カラット

サニディンの一般的なカラーは、透明〜半透明、ホワイト、イエローです。またグレーやグリーニッシュイエローの個体も見つかっています。火山由来の宝石であり、生成環境の影響から不純物を含みやすいという特徴があります。そのため透明度が高く、インクルージョンがない個体ほど、珍重されます。

サニディンの結晶は、ファセットカットを施せるほどの大きさで見つかることがほとんどありません。ルースになったサニディンはとても希少です。

他の宝石同様に、カラットが大きいほど価値があります。ドイツからは過去、30カラット近くある原石が見つかったこともあるようです。

■サニディンの輝き

希少なサニディンの中でも、さらに稀にシラー効果を持つサニディンが見つかる場合があります。国内では、富山県南砺市で発見されたサニディンに、シラー効果が見られました。

シラー効果とは結晶内部の層状構造が光の干渉を引き起こし、青白く幻想的な色味を見せる光学効果です。ムーンストーンで有名な光の不思議です。

【豆知識】ムーンストーンは鉱物名ではない!
一般的にもなじみ深い、ムーンストーンという名称。実は正式な鉱物名ではない、という事実はご存じですか?
ムーンストーンとは「シラー効果を持つ長石」の総称です。オーソクレース、アルバイト、ラブラドライトなどもムースンストーンになれます。

ただサニディンでシラー効果を持つ個体は、とても珍しい存在です。

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ムーンストーンについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

■サニディンにまつわる逸話

サニディンがはじめて発見されたのは、1808年のこと。場所はドイツ、ドラッヘンフェルスの丘(Drachenfels)でした。

発見者はドイツの鉱物学者であった、カール・ヴィルヘルム・ノーズ(1753 - 1835)。ちなみにカールは、ラピスラズリの主成分のひとつであるノーズライト(noselite・黝方石)を見つけた人でもあります。

カールはサニディンの平らな板状結晶を見て、ギリシャ語で「小さな皿」を意味する「サニス」と、「見る」「現れる」を意味する「イドス」を組み合わせてサニディンと名づけました。

サニディンの発見地・ドラッヘンフェルス

【豆知識】
サニディンの発見地・ドラッヘンフェルスは、地中から上昇してきたマグマが冷却され、固まってできた丘です。トラカイト(粗面岩)と呼ばれる珪長質火山岩を豊富に埋蔵しています。
トラカイトは古来、建築材料として用いられてきました。世界最大のゴシック様式の建築物であるケルン大聖堂は、ドラッヘンフェルスで採掘されたトラカイトでできています。
またドラッヘンフェルスの「ドラッヘ」は、ドイツ語でドラゴンを意味します。中世に始まったこの地のドラゴン伝説は、いまでも多くの場所でその名残が見られます。

サニディンは、実は日本でも産出します。はじめて日本でサニディンが確認されたのは、ドイツに遅れること70年、1877年でした。東京都伊豆大島にある三原山で見つかっています。

その後サニディンは、2016年に日本地質学会が認定して和歌山県の「県の鉱物」となりました。和歌山県東牟婁郡太地町でサニディンが採れたことが、認定の理由です。
和歌山県立自然博物館には、研磨される前の白いサニディン結晶が所蔵されています。

サニディンの和名は、玻璃長石といいます。「玻璃」とは仏教で大切にされてきた7つの宝物「七宝」のひとつで、無色透明の水晶をさします。戦前まではガラスも、玻璃と呼んでいました。

玻璃の名のとおり、サニディンは美しいガラス光沢を持っています。

■サニディンの産地

サニディンはその希少性ゆえ、世界のどこでも採れるわけではありません。知られている産地はドイツやメキシコ、マダガスカルです。

これらの地域では無色や黄色、さらに薄茶色のサニディンも産出します。

2. 鉱物・原石としてのサニディン

ここからは、サニディンを鉱物・原石の観点から見ていきましょう。サニディンが属する長石グループについても、詳しく解説します。

■組成について

サニディンの組成情報は、以下のとおりです。

英名(カタカナ) Sanidine(サニディン)
和名 玻璃長石(はりちょうせき)
成分 (K,Na)AlSi3O8
結晶系 単斜晶系
硬度 6
屈折率 1.523~1.525
劈開 一方向に完全、一方向に明瞭
無色、白色、イエロー、褐色
産地 ドイツ、マダガスカル、ミャンマー、スリランカ、アメリカ など

サニディンは長石(フェルドスパー)グループに属します。

長石は、化学式 (Na, K, Ca, Ba)(Si, Al)₄O₈、あるいは (Na, K, Ca, Ba)Al(Al,Si)Siと表示される鉱物グループで、20種類以上の鉱物を含みます。主要な造岩鉱物として地殻の6割以上を占めムーンストーンサンストーン、ラブラドライトも長石グループです。

長石グループの鉱物は、いずれもケイ素(Si)とアルミニウム(Al)、酸素(O)が共有元素です。
この3つ以外に含む元素の種類と量によって、大きく3種類に分けられます。

カリウム(K)が多いと「カリ長石」、ナトリウム(Na)が多いものは曹長石(アルバイト)、そしてカルシウム(Ca)が多い灰長石(アノーサイト)です。

このうち、サニディンはカリウムを豊富に含むカリ長石に属します。カリ長石にはほかにオーソクレース(正長石)やマイクロクイン(微斜長石)があり、それぞれは原子の並び方の違いで区別されます。

長石グループ内の区別は明確に決まっているわけではなく、含まれる成分によりグラデーション状にわかれます。それぞれの中間種も多数あります。

鑑別でも成分が明確に分析できた個体は「鉱物名:天然フェルドスパー、宝石名:〇〇〇」と記されますが、中間種は含まれる成分によって2つの宝石名が併記されるケースもあります。「鉱物名:天然フェルドスパー|宝石名:アンデシン-ラブライドライト」といった具合ですね。

難しい話が続きましたが、長石グループの鉱物は、互いに固溶体をつくりやすいという性質を押さえておけばOKです。隣あった鉱物同士が固溶体となり、さまざまな名称の鉱物をつくります。ひとつの個体が、からなずしも一鉱物と鑑別されるわけではない、という幅広さも、長石グループの面白さではないでしょうか

【豆知識】固溶体とは
化学組成が異なる複数の物質が、均質に混ざりあってできた固体です。イオンの大きさが似た元素が、互いにさまざまな割合で置換しあってできます。

造岩鉱物によく見られる現象で、合金も固溶体でできています。

■原石の形状

サニディン

【画像:Wikipediaより】By Didier Descouens - Own work, CC BY-SA 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=7634198

サニディンは、板状や針状、角柱状の結晶をなします。平らな層状や、平行六面体に成長するものもあります。

他の長石と同じように双晶を形成しますが、完全な双晶をなすサニディン結晶は希少です。

微細なサニディンが、サファイアダイヤモンドの内包物として見つかることもあるようです。

またサニディンはカリ長石の中でも、高温環境下で生成します。高温に熱せられたマグマが、高温でのイオン配列を保持したまま急激に冷やされた場合のみ、サニディンになることがわかっています。

それとは逆に、低温環境でじっくり結晶化するとオーソクレースになります。この独特の生成過程も、サニディンが希少である理由でしょう。

ちなみにサニディンになれる温度は、650度以上といわれます。650度~800度の間で安定するサニディン(低温サニディン)と、800度以上で安定状態になるサニディン(高温サニディン)の2タイプがあります。

さらに、含有する不純物でも2つに分けられます。バリウムサニジンは5%程度の酸化バリウム(BaO)を含むサニディンで、フェリサニジンは鉄を含むサニディンです。

■鉱物視点からみるサニディン

サニディンは、同じくカリ長石グループに属するオーソクレース(正長石)と、しばしば混同されます。サニディンとオーソクレースの鑑別は、主に3つの観点からなされます。

◎ 結晶の形
結晶がより規則正しい形状をしているほうが、オーソクレースです。サニディンはオーソクレースより高温で形成されるため、結晶が不規則な形状になりやすいです。

◎ 透明度
カラーは、サニディンもオーソクレースも無色から白色、黄色です。サニディンは、透明でクリアな個体が多く見られますが、オーソクレースはやや曇りがあり透明度が低めです。
ただし肉眼での区別は難しいかもしれません。顕微鏡で見るレベルで、初めて識別できるケースもあります。

◎ 光軸角
光軸角とは、結晶中で複屈折のない二つの方向のなす角です。サニディンの光軸角は2Vx=0~60°、対してオーソクレースは2Vx=33~70°です。オーソクレースのほうがサニディンより光軸角が低いことでも区別できます。

3.サニディンをより楽しむために

希少ながら、ガラス光沢が美しいサニディンは、コレクションに加えたい石の一つです。ここからはサニディンをもっと気軽に楽しむヒントを紹介します。

■誕生石・石言葉

サニディンは誕生石に指定されていません。また特定の石言葉もないようです。

ただパワーストーン愛好家からは、悲しみや不安、欲求不満の感情を軽減する効果があると愛されています。
自分のネガティブな内面をまっすぐに見つめ、新しい一歩を踏み出す助けとなるかもしれません。

■サニディンの加工

サニディンは産出量の少なさ、また宝石品質の個体が極めて稀な特性もあり、そのほとんどが結晶標本として、またルースとなってコレクター向けに流通しています。

結晶のままのサニディンのほうが、比較的手ごろな価格で入手できます。無色から白色、イエロー味を帯びた結晶まで、サニディンの個性もさまざまです。

なかには結晶の状態でも、透明度の高い個体もあります。ぜひ、好みのサニディンをチェックしてみてください。


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4. まとめ

サニディンは一大鉱物クループである「長石」に属し、カリウムを豊富に含むカリ長石の一種です。長石自体は地殻にもっとも多い鉱物ですが、その中でサニディンになれるのは、厳しい生成条件を満たしたほんの一握りだけ。
サニディンは、とても希少な長石です。

多くは透明~半透明、また黄色味を帯びた色を呈する個体もあります。ルースになれる品質と大きさの結晶がなかなか見つからないため、ファセットカットされた個体はさらに希少。コレクターがこぞって探し求める逸品です。

TOP STONE のオンラインショップでは、貴重なサニディンのルースをお取り扱いしています。サニディンが世界で初めて見つかったドイツで採れた個体は、一見の価値ある美しさ!独特のガラス光沢が輝くサニディンのルースをぜひチェックしてみてください。


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この記事を書いた人

みゆな

TOP STOneRY / 編集部ライター

トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。