幻想のブルーガーネット | ベキリーブルーガーネットの魅力と秘密を解き明かす

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1.宝石・ルースとしてのベキリーブルーガーネット

存在しないと言われてきたブルーガーネット。その色だけでも今までにない特徴ですが、ベキリーブルーガーネットは他にも特別な特徴をもつ贅沢なガーネットです。貴石としてのベキリーブルーガーネットについて解説します。
■絢爛たるガーネット一族

ガーネットはその成分によって様々な種類に分かれています。
基本はレッドとグリーンに分かれる2つの大きなグループがあり、その中から更に3タイプに分かれています。
レッド系統をパイラルスパイトグループと呼び、アルマンディン、パイロープ、スペサルティンガーネットに分かれます。
グリーン系統をウグランダイトグループと呼び、ウバロバイト、グロッシュラー、アンドラダイトガーネットに分かれます。
それらが混ざり合い、固溶体を作ることで一味違った美しいガーネットが晶出します。今日ではマリガーネットやマラヤガーネットなど様々なタイプの固溶体が広く知られていますが、このページで紹介するベキリーブルーガーネットもマラヤガーネットと同じタイプの固溶体です。しかし同じ固溶体ながら全く違う性質を見せます。
ガーネット各種について、こちらの記事でそれぞれ詳しく解説しています。
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■ベキリーブルーガーネットとは?

ベキリーブルーガーネットは、名前の通りマダガスカルのベキリーで発見された新しいガーネットです。
人類と同じだけ歩んできたガーネットの長い歴史を経て、やっと発見されたブルーガーネット。
ブルーと一口にいっても、サファイアのような目の覚めるようなブルーではありません。愁えるグレイッシュ、グリーニッシュなブルーは、はっきりと明るい色をしたガーネットのイメージとは趣の違う美しさがあります。
色だけでも特別ですが、ベキリーブルーガーネットはアレキサンドライトのような自然光、白熱灯での顕著なカラーチェンジも大きな特徴でしょう。カラーチェンジタイプのガーネットは他に、マラヤガーネットやアンドラダイトガーネットなどにも見られます。しかしブルーの特徴を持つのはベキリーブルーガーネットだけです。
ベキリーブルーガーネットはコマーシャルネームのため、鑑別書上、宝石名はカラーチェンジガーネットと記載されます。
鉱物としてはパイロープガーネットとスペサルティンガーネットの固溶体です。レッド系のパイラルスパイトグループに属するガーネット同士から、不思議に産み落とされたブルーガーネット。革新的なブルーと伝統的なレッド。
産出量は少ないですが、その希少性と稀有な特性で需要は高まる一方です。
なお、TOP STONE オンラインショップではベキリー産のカラーチェンジガーネットは"ベキリーブルーガーネット"と"カラーチェンジガーネット アレキタイプ"のコマーシャルネームを併記して販売しています。
■高品質なベキリーブルーガーネットとは?
どの宝石にも言えることですが、発色が良く、クラリティ(透明度)が高く、カットが美しい、大粒の石が最高品質といえます。
ベキリーブルーガーネットの特徴はその青さ。やはり、明瞭に青味がわかるベキリーブルーガーネットを求めたいですよね。
しかし完全にブルーのベキリーブルーガーネットはわずかです。多くはグリーン味を含んだグリーンブルーで、時にはブルーを帯びたグリーンでも、ベキリーブルーガーネットとして販売されています。
しかしやはり、特徴であるブルーがはっきりとしている石が良いでしょう。また、青いといっても灰色味が強く黒っぽい石は評価が下がります。
色を阻害するインクルージョン(内包物)はないに越したことはありません。
ベキリーブルーガーネットは鉱物的特徴として、針状のルチルインクルージョンを内包しています。
ルチルインクルージョンは独特の角度で入っているので、ベキリーブルーガーネットを見分ける指標になります。
ガーネット一族らしく高いモース硬度を誇るベキリーブルーガーネットは、通常ファセットカットされます。今のところキャッツアイなどは確認されておらず、余程の希望がなければカボションカットされることはなさそうです。
原石自体が小さく、市場に出回るのは1ct以下のものがほとんどです。レアかつ唯一のブルーとなると需要も高く、小さくても高額になる傾向があります。
ちなみに今までで最大のベキリーブルーガーネットは9.5ct。最大の輝石が10ct未満であることを鑑みれば、大きなカット石の入手困難さが伺えます。
カラーチェンジが明瞭なこともベキリーブルーガーネットを評価する上で重要です。
■ベキリーブルーガーネットのカラーチェンジ
ベキリーブルーガーネットはカラーも特徴で重要ですが、もう一つ外せない要素があります。それがカラーチェンジ。
アレキサンドライトやマラヤガーネットと同じように光源によって色が変わります。
マラヤガーネットが淡いピンクからワインレッドなどニュアンスが変化する程度の石が多いのに対して、ベキリーブルーガーネットはグリーンブルーからレッド、ワインレッドなど、アレキサンドライトのように明瞭に変化します。そのため、カラーチェンジガーネット・アレキタイプとも呼ばれますね。
勿論、石によってカラーチェンジの個体差はあります。しかし、ベキリーブルーガーネットと呼ばれるガーネットはカラーチェンジ効果を有しています。長年待ち望まれていたブルーだけではなく、ガーネットらしい赤い輝きも持っている贅沢な輝石です。
■ベキリーブルーガーネットの逸話

ベキリーブルーガーネットは1999年頃に発見された、まだ新しい、希少なガーネットです。
このブルーガーネットの唯一の鉱床があるベキリーが、名前の由来になっています。
ベキリーブルーガーネットというのは宝石名ではなく、流通の際に使われるコマーシャルネームです。
しかし青いガーネットが世間を賑わせたのはもっと昔、1892年。かの有名な名探偵シャーロック・ホームズがガチョウの中から見つけました。
中国の某所で発見されたという青いガーネットは、ガーネットの全ての特徴を持ちながらも色だけがサファイアブルー。
青いガーネットは幾つもの血生臭い事件を引き起こした果てにモーカー伯爵夫人の手に渡り、しかし宝石箱の中から青いガーネットは、ホテルのボーイに悪魔の誘惑を囁きかけ……、という、その名もずばり青いガーネットという短編です。
実際に中国でブルーガーネットが見つかるのかといえば、少なくともベキリーブルーガーネットと同じタイプのブルーガーネットの発見は難しいと思われます。ただ別のタイプの、ガーネットの特徴を兼ね備えたブルーガーネットが見つからないとは限りません。シャーロック・ホームズ、ひいてはコナン・ドイルの慧眼が現実になることを願うばかりです。
■ベキリーブルーガーネットの産地

ベキリーブルーガーネットは2024年時点では、マダガスカルのベキリーからのみ産出しています。
タンザニアやモザンビークからはブルーではないものの、カラーチェンジガーネットが産出しています。今後、ブルーのカラーチェンジガーネットの産出も期待できるのではないでしょうか。
ベキリーブルーガーネットはコマーシャルネームであり、かつてのパライバトルマリンのように、ベキリー産のみに限定されるというわけではありません。
また、今まで採掘されていた鉱山も採掘量が減り、枯渇しつつあるとも言われています。一方、ベキリー以外からも発見があったという話もあります。科学的特徴から産地を証明することが難しいため、今のところベキリー産こそが高価値ということはありません。
しかし、今後別のところでも産出されるようになった時、現在市場にあるベキリー産のベキリーブルーガーネットは、やはりパライバトルマリンのようにオールドコレクションと呼ばれ珍重されることもあるかもしれませんね。
2.鉱物・原石としてのベキリーブルーガーネット

3000年の待望に応えたニューカラーのベキリーブルーガーネットは、貴石としてだけではなく鉱物学的にも新しい発見と魅力が詰まった鉱物です。その鉱物、原石としての側面に迫ります。
■組成について
まずは、組成から見てみましょう。
英名 | Bekily Blue Garnet/Color change Garnet (ベキリーブルーガーネット/カラーチェンジガーネット) |
和名 | - |
成分 | (Mg,Mn)3Al2(SiO4)3 |
結晶系 | 等軸晶系 |
モース硬度 | 7-7.5 |
屈折率 | 1.74-1.78 |
劈開 | なし |
色 | (自然光下)ブルー、ブルーグリーン、グリーンブルー (白熱灯下)レッド、ワインレッド、パープリッシュレッド |
主な産地 | マダガスカル(ベキリー) |
今までブルーだけがないと言われていたガーネット。長い時を経てやっと発見されたこのブルーガーネットは、鉱物としてはスペサルティンガーネットとパイロープガーネットの固溶体です。
鑑別書上は前述の通り、宝石名カラーチェンジガーネット、鉱物名は天然ガーネットです。
鉱物としては、マラヤガーネットや強い蛍光が特徴のドラゴンガーネットと同じです。しかし何が乙女心をくすぐるピンクと神秘的なブルーを分けたのでしょうか。
同じパイロープ・スペサルティンガーネットの固溶体かつカラーチェンジする結晶を比較した際、ブルー系統と他の色ではバナジウムの含有量に明確に差がありました。ブルーガーネットが圧倒的にバナジウムが多かったのです。
ガーネットでバナジウムといえば、グロッシュラーガーネットにバナジウムが含まれるとグリーンになりますね。
ちなみにバナジウムの語源は北欧神話の女神バナディース。バナジウムが加わることで様々な色に美しく輝くことから、女神の名を冠したそうです。ひろくはフレイヤの名前で知られる女神の、その加護あってのグリーンブルーの輝きなのかもしれません。
ではバナジウムを多く含んだ場所からなら、ベキリーブルーガーネットが産出するかというと、そういうわけではないのかもしれません。
カラーチェンジガーネットの産地でもあるマダガスカル、モザンビーク、タンザニアにはパンゲア大陸からの地殻変動による、造山帯があります。
この地殻変動の際の熱と圧力の中で宝石が生まれる、というのは想像に難くないですが、既に結晶したものも時に融解し、含まれていたクロムやバナジウムなどの成分は再動員され新たな結晶を産み出します。
また、マラヤガーネットはスペサルティンガーネットの成分を多く持つのに対し、ベキリーブルーガーネットはスペサルティンガーネットとパイロープガーネットの割合が同じか、ややパイロープの割合が多い傾向がありました。更にアルマンディンガーネットの含有量も他の色に比べて多い傾向があります。
宝石としては聞き馴染みが薄いですが、ゴールドマナイトも3%前後含んでいます。このゴールドマナイトこそ、従来のパイラルスパイト・ウグランタイト系の分け方では説明できないガーネットの固溶体。
複雑な組成と文字通り大地を揺るがす力が、ベキリーブルーの神秘を生み出しているのかもしれません。
そしてマダガスカルと繋がっていたであろうタンザニア、モザンビークからももしかしたら今後、産出するかもしれない、と期待してしまいますね。
■原石の形状

ベキリーブルーガーネットの完璧な原石は非常に少なく、多くは欠片が採掘されています。その為、原石についてははっきりしていないところもあります。
しかしガーネットですので、ガーネットらしく自然のカットが施されたような等軸晶系の正12面体〜正24面体の結晶になるようです。
ガーネットはダイヤモンドの指標鉱物でもあります。時にダイヤモンドがガーネットをインクルージョンとして取り込んでいることは有名でしょう。
その内包されたガーネットの組成と、ベキリーブルーガーネットの組成が似ている、という報告もあったようです。
ダイヤモンドに内包されている青い石といえばカイヤナイトですが、中々インクルージョンの同定というのは行いません。もしかしたらベキリーブルーガーネットかも……? そう思うと夢が膨らみます。
ちなみに現時点で、ブルーガーネットを内包したダイヤモンドは見つかっていません。
3. ベキリーブルーガーネットをより楽しむために
宝石のその他の楽しみ方として、誕生石や石言葉、加工品の使用例などをご紹介します。
■誕生石・石言葉

ガーネットは1月の誕生石です。ガーネット全般の石言葉は情熱や真実、友愛、勝利など。長い歴史の中で様々な意味が込められています。
ベキリーブルーガーネットに焦点を絞ると、冷静さの青と情熱的な赤の両方を併せ持ち、かつ今までにない、存在しないと言われてきた存在ということで、「変化」がキーワードになりそうです。
昼と夜での愛の変貌や、現状を変える力、新たな道に通じる力の発揮など、今を変える力を後押ししてくれるのかもしれません。
石言葉は歴史の中で紡がれたものであったり、ヒーラーや第六感に優れた人が見出すもののようです。
あなたならベキリーブルーガーネットに、どんな力を見出すでしょうか?
■ベキリーブルーガーネットに似た鉱石
希少なベキリーブルーガーネットは、ビーズなど他の形で流通することはほとんどありません。
ガーネット界で唯一無二のカラーを誇るベキリーブルーガーネットですが、自然界には似た石も存在しています。
その筆頭がアレキサンドライト。カラーチェンジする宝石の代表格です。よく知られた、深いグリーンとレッドのカラーチェンジが魔法のような石ですね。
ここからベキリーブルーガーネットを、カラーチェンジガーネット・アレキタイプと称することもあります。
ベキリーブルーガーネットもグリーン味が強い、また灰色がかっているととアレキサンドライトと混同されることがあります。

ベキリーブルーガーネットそっくりのフローライトが鑑別機関に持ち込まれたこともあります。
完全な原石の発見が少ないベキリーブルーガーネットですが、ある時、完全な正十二面体の原石が鑑別機関に持ち込まれました。まだ研磨もされていない、自然光下でグレイッシュブルー、白熱灯下で紫がかったピンクにカラーチェンジする見事な原石です。
色やカラーチェンジの様子はまごうことなくベキリーブルーガーネット。しかし化学組成にはガーネットの特徴がなく、フローライトであることがわかりました。

アレキサンドライトも、有名で市場でよく見かけるとはいえ、三大希少石に数えられる輝石です。またフローライトも、原石の段階では似通っていても研磨すれば明瞭に違いがわかるでしょう。
どちらも似ている特徴はありますが、ベキリーブルーガーネットの偽物として流通するようなことはなさそうです。
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▼鑑別・ソーティングについては以下ページにて詳細をご確認いただけます
4. まとめ
神秘的なブルーガーネット、ベキリーブルーガーネット。いかがだったでしょうか。
奇跡のブルーと魅惑のカラーチェンジの特性を併せ持つ鉱石ですが、やはり個体差はあります。是非、見事なブルーと目の覚めるようなチェンジを見せる、あなただけのベキリーブルーガーネットを探してみてください。
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この記事を書いた人

佐伯
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。