薔薇の輝きをもつロードライトガーネットについて解説

一族と呼ばれるほど種類があり、様々なタイプがそれぞれに美しさを放つガーネット。
組成に応じて6つのガーネットが基本ですが、基本のガーネットが混ざり合い固溶体となることで新たな魅力あふれるガーネットが生まれています。
その固溶体の先駆けであるロードライトガーネットの美しさについて解説します。
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1.宝石・ルースとしてのロードライトガーネット

ガーネットは3000年も昔から人々に寄り添ってきた宝石です。
中でもロードライトガーネットは、以前から他の赤いガーネットとは一味違う華やかさで愛されてきました。
まずは貴石としてのロードライトガーネットについて解説します。
■絢爛たるガーネット一族

ガーネットはその成分によって様々な種類に分かれています。
基本はレッドとグリーンに分かれる2つの大きなグループがあり、その中で更に3タイプに分かれています。
レッド系統をパイラルスパイトグループと呼び、アルマンディン、パイロープ、スペサルティンガーネット。
グリーン系統をウグランダイトグループと呼び、ウバロバイト、グロッシュラー、アンドラダイトガーネットに分かれます。
それぞれの系統の中で混ざり合い、固溶体を作ると、一味違った美しいガーネットが晶出します。
今日ではマリガーネットやマラヤガーネットなど様々なタイプの固溶体が広く知られていますが、このページで紹介するロードライトガーネットはその先駆けと言えるでしょう。
ガーネット各種について、こちらの記事でそれぞれ詳しく解説しています。
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■ロードライトガーネットとは

重さを感じるような深い赤色が特徴のアルマンディンガーネット、ロウソクの火のような明るい赤色が特徴のパイロープガーネット。その2つの固溶体がロードライトガーネットです。
新緑の季節に日なたで咲き誇るツツジような明るいレッド〜ピンク、また月影で揺れるバラの花びらのような、紫味を帯びた濃いレッドが特徴です。
アルマンディンガーネットとパイロープガーネットの割合で色合いは絶妙に変化しますが、高い屈折率を誇り、ガラス光沢の煌めきが強いのもロードライトガーネットらしいポイントです。
■高品質なロードライトガーネットとは?
どの宝石にも言えることですが、発色が良く、クラリティ(透明度)が高く、カットが美しい、大粒の石が最高品質といえます。
ロードライトガーネットは比較的、豊富に安定して流通している貴石です。
美しさに比べると驚くほど安価に感じることもあるかもしれません。
そしてその品質も様々です。
ロードライトガーネットのポイントは、名前の由来にもなっているバラのような華やかな赤。
ルビーのような真紅より、アルマンディン、パイロープガーネットには無い紫味、ピンク味を含んだレッドが好まれます。
以前は明るくパステルなロードライトガーネットが好まれていましたが、近年は紫味が強く、深みのある濃い色が人気を集めています。
とはいえ、色が深すぎて暗く感じる石や、あまり色の薄いロードライトは高品質とは言えません。
ロードライトガーネットは元々、クラリティが高めの貴石です。
多くは微細な針状インクルージョン(内包物)を含んでいます。
また、微細なインクルージョンが集合したシルクインクルージョンやアパタイト、ジルコンの結晶を内包していることがあります。
シルクインクルージョンが集まるとミルキーな見た目になります。
これはこれで可愛らしい印象になるなど、インクルージョンはその石の個性で面白みのある部分です。
しかし、品質という点では無いに越したことはありません。
特にガーネットに関しては、肉眼で見えるインクルージョンは避けたいところです。
モース硬度も高く、屈折率も高いロードライトガーネットは通常、ファセットカットにされます。
従来通りのブリリアントカットからブリオレットカットなど、特に近年は様々なカットが増えて店頭を眺めるだけでも楽しいですね。
また、カボションカットにされることもあります。
前述したシルクインクルージョンの入り方によって、ガーネットはスターが浮かび上がるアステリズム効果を示す石があります。
有名なのはスタールビー・サファイアですが、スターガーネットの多くは6条線の輝きではなく、2つのラインが交差して4方向に輝きが浮かび上がります。
6条線に輝くスターガーネットはレアリティが高いですね。
ロードライトはワンポイントにあしらえる小さな結晶から豪奢なジュエリーになる大きな結晶まで幅広く流通しています。
特に3ct前後の大きな結晶になると品質によって価格差が大きくなりますが、元々の流通が安定しているため、掘り出し物のような大きな結晶を求めるのではなく、自分の用途に併せて探すのが最も良さそうです。
■魅惑のパープルガーネット
ガーネットのみならず宝石には様々な色がありますが、意外と少ないのが紫色の宝石。
アメジストやトルマリンが有名ですが、他にはタンザナイトやアイオライトは青色か紫色か意見が割れそうです。
このように、紫の代名詞になり得る宝石は挙げるのに悩みます。
そんなパープルジェムに新たな風を起こしたのが、2016年、バンコクで流通し始めたパープルガーネット。
その名の通り紫色のガーネットですが、タンザナイトのような青味の紫とは対照的に、赤味を感じる、アメジストに近いような紫です。
他にグレープガーネットとも呼ばれています。
新種のガーネットかと思われたパープルガーネットですが、GIAの調査によりロードライトガーネットであることが判りました。
特に美しいパープルのロードライトガーネットはロイヤルパープルと呼ばれています。
元々ロードライトガーネットは紫味を帯びているものが良質とされてきましたが、このパープルガーネットはその最たる結晶といえるでしょう。
今までのロードライトガーネットともまた違う紫の魅力は、今後人気を増すのではないでしょうか。
日本ではまだあまり流通していませんが、近年見かける機会が増えています。
今後の人気ぶりに注目の一石です。
■ロードライトガーネットの名前の由来と歴史
ロードライトガーネットが発見されたのは1893~1897年、一説には1882年とも言われています。
アメリカのノースカロライナ州で発見され、今までのガーネットとは変わったレッドで一躍人気になりました。
正式に発表されたのは1898年で、ガーネットの長い歴史からすると意外に新しい宝石です。
ロードライトガーネットの名前の由来には諸説あります。
一つは、ギリシャ語のバラ(Rhodo)に由来した説。
華々しいロードライトガーネットの色を的確に表した、和名にもなっている由来ですね。
もう一つは、シャクナゲ(Rhododendron)に由来する説。
シャクナゲというとピンと来ない人もいるかと思いますが、誰しも馴染み深いツツジ科の花です。
ロードライトガーネットは発見当初こそあまり大きな原石はなく、細かな結晶が多数、母岩に散らばっている状態だったようです。
その様子は、初夏にかけてツツジが群生しているように、シャクナゲの花が咲き乱れているように見えたのかもしれません。
当初アルマンディンガーネットと思われたロードライトガーネットを分析、発表し、また命名したのはウィリアム・E・ヒドゥン博士とJ.H.プラット博士。
そしてクンツァイトで有名な鉱物学者ジョージ・F・クンツ博士も関わっています。
アメリカで発見され一躍脚光を浴びたロードライトガーネットは、20年程で枯渇。
束の間、ロードライトガーネットは幻の希少石になります。
しかしその60年ほど後、ロシアのウラル山脈やタンザニアのウンバ渓谷で大きな鉱床が発見されます。
その後も産出は増え、今日のような安定した供給が続くようになりました。
大きな原石はなかった、と前述しましたが、産出地はわかりませんがロードライトガーネットの巨大な原石の逸話もあります。
その原石、なんと20トン。
採掘場から運ぶのに100頭の馬が必要だったとか。
その巨大なロードライトガーネットは、宝石好きでも知られるロシアの女帝、エカテリーナ2世の孫、ニコライ1世の棺に使われたそうです。
エカテリーナ二世も君臨したロシアのロマノフ王朝はロードライトガーネットを国石としていました。
ロシアでガーネットといえば、グリーンが美しいアルマンディンガーネットの中でもデマントイドガーネットをイメージします。
しかし、枯れることなく咲き誇るシャクナゲの花束のような、一輪ではバラのようなロードライトガーネットは、長い雪に閉ざされるロシアの寒風の中で心に火を灯す宝石だったに違いありません。
■ロードライトガーネットの産地

前述の通りアメリカで発見されたロードライトガーネット。
発見された鉱山自体は枯渇し以前ほどの産出量は無いとはいえ、現在もアメリカはガーネットの産地のひとつです。
ガーネットは世界各地で産出があり、ロードライトガーネットも多様な産地があります。
アメリカをはじめ、他にスリランカ、タンザニア、ブラジル、インド、マダガスカル、ジンバブエなどから産出しています。
その中でもタンザニアなど東アフリカからはスターガーネットが産出し易いようです。
また、ブラジルやインド産は紫味の強い傾向があります。
大きく美しい結晶が産出されるのはスリランカ、タンザニアが多いようです。
世界各地から安定した供給があるロードライトガーネットは、産地によって価値や価格が変わるということはありません。
2.鉱物・原石としてのロードライトガーネット

ジュエリーとしての美しさを誇るロードライトガーネット。
その鉱物としての魅力に迫ります。
■組成について
まずは、組成から見てみましょう。
英名 | Rhodolite garnet(ロードライトガーネット) |
和名 | 薔薇柘榴石 |
成分 | (Mg, Fe)3Al2(SiO4)3 |
結晶系 | 等軸晶系(立方晶系) |
モース硬度 | 7-7.5 |
屈折率 | 1.74-1.78 |
劈開 | なし |
色 | レッド、ワインレッド、パープリッシュピンク、パープル |
主な産地 | スリランカ、タンザニア、アメリカ、ロシアなど |
ロードライトガーネットの和名は薔薇柘榴石。
ガーネットの固溶体の中では珍しく、美しい和名が付けられています。
美しい和名もあり立派な鉱物名のように思えますが、ロードライトガーネットは宝石名で、鉱物名はアルマンディン・パイロープガーネットです。
鉱物名のルールとして、後ろにくる石の成分が多く含まれています。
というわけで、ロードライトガーネットの主成分もパイロープガーネット。
アルマンディンガーネットは30%以下しか含まれていません。
このアルマンディンガーネットの含有量が多い、つまり鉄分の含有量が多いと深い、濃い色になります。
逆にパイロープガーネットが多ければ多いほど、明るいピンクになるでしょう。
ちなみにアメジストの着色原因は鉄分。
ロードライトガーネットも同じように、アルマンディンガーネットに含まれる鉄が、独特のピンク、パープルを生み出しているのかもしれません。
アメリカのノースカロライナ州で最初に発見された鉱山は、前述の通り20年ほどで枯渇しました。
その後ロードライトガーネットが発見されたタンザニアやインドの地層は、実に5.7億年より前のものと言われています。
5.7億年前といえば、アノマロカリスなど宇宙生物のような生き物が誕生し始めた古生代。
まだ恐竜もいない時代に生まれたガーネットの欠片が、長い旅の途中でアルマンディンガーネット、パイロープガーネットと混ざり合い、花のようなロードライトガーネットとなり、今、私たちの手中にある。
そう思うと、いっそ怖いようなロマンを感じます。
そんなロードライトガーネットを600℃で加熱するとヘソナイト(グロッシュラーガーネット)のようなオレンジ~褐色に変化することがあるようです。
これは不可逆の変化で、元のピンクには戻りません。
また全てのロードライトガーネットが変化するわけでもないようです。
ロードライトガーネットもヘソナイトも共に美しいガーネットですが、もし今後、オレンジ色の眩いヘソナイトが急激に枯渇、人気になったら、もしかするとロードライトガーネットが加熱処理されることになるのかもしれません。
■原石の形状

ガーネットの原石はそのままでも美しい、12面体から24面体の丸みのある立方体の結晶に成長します。
エンハンスメント(人為的処理)を必要とせず、原石のままでも美しさを堪能できる鉱物です。
岩の中から、明るいワインレッドのロードライトガーネットが晶出すれば思わず目を惹くでしょう。
そのまま原石を飾っても美しいのはガーネットならでは、です。
ロードライトガーネットは大きな原石ばかりではなく、しゃくなげの花に例えられたように細かい粒が母岩に散らばっている石もあります。
ロードライトガーネット単体の結晶の美しさは言うまでもありませんが、花崗岩と目の覚めるようなパープリッシュピンクやワインレッドの対比は見ていて飽きません。
ニコライ1世の眠る棺も、こういったロードライトガーネットを含んだ原石20トンの一部で作られたのかもしれません。
それはまるで枯れることのない花束に包まれているような棺だったのでしょう。
■鉱物としての魅力

ビルの大理石などで化石探し、などが流行ったのをご存知でしょうか。
同じように、大理石から宝石探しができるかもしれません。
ガーネットは花崗岩など深成岩に晶出します。
花崗岩は御影石という石材として利用されています。
長崎県にある美術館では、外壁にブラジル産の花崗岩が使われています。
この石材には雲母やガーネットが含まれているとのこと。
大理石、御影石製のビルを注視すれば、もしかしたらピンク色の結晶を見つけることができるかもしれません。
宝石として美しいだけではなく、宝石を含んだ鉱物もまた美しい景色を作り出します。
3. ロードライトガーネットをより楽しむために

宝石のその他の楽しみ方として、誕生石や石言葉、加工品の使用例などをご紹介します。
■誕生石・石言葉

ガーネットは1月の誕生石です。
大きくガーネットの石言葉は情熱や真実、友愛、勝利などですが、ロードライトガーネットも勝利、友愛などが石言葉に挙げられます。
ロードライトガーネット独特の石言葉は不変の愛。
ちなみにパイロープガーネットは業火、燃える恋。
アルマンディンガーネットの持つ真実や友愛だけでは足らず、燃えるような恋を経て不変の愛を手にするのが、ロードライトガーネットなのかもしれません。
■ビーズやアクセサリーへの加工は?

産出量が多く品質も様々なロードライトガーネットは、ジュエリーに仕立てられるカット石からビーズまで幅広く種類があります。
面白いところでは、研磨材として使われます。
特に初めて発見されたノースカロライナでは、当時は宝石用ではなく工業用の採掘が主流でした。
その為、多くは研磨材などとして使われる為に採掘されていることを、ジョージ・F・クンツ博士も嘆いています。
後に宝石の採掘を目的とする会社も参入し、ロードライトガーネットは宝石としてノースカロライナ州の一大産業となりました。
このロードライトガーネットを含んだ研磨材、普通の紙やすりと同じように使用します。
しかしただの紙やすりとは違い、へたり難い上に、最初は目が粗く、使用するにつれ段々と目が細かくなっていきます。
理想の目の粗さでストックし、長く使えるやすりになるというわけです。
現在は合成されたガーネットが研磨剤として使用されています。
ハンドクラフトをする人にとっては、宝石としても欲しい、研磨剤としても得難いガーネットなのではないでしょうか。
■バラの名前の鉱物たち
▸ ロードナイト / Rhodonite
▸ ロードクロサイト / Rhodochrosite
他にバラの名のつく鉱物としてはローズクォーツが挙げられます。
いつかは枯れる花の美しさを、永遠に湛えるバラの名前の鉱物たち。
そういうバラ繋がりで集めてみるのも面白いかもしれません。
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4. まとめ
ガーネットの中でも名前の知られたロードライトガーネット。
その魅力は今なお進化を遂げています。
ありふれた宝石と思わず、是非ロードライトガーネットの面白さと美しさを実際に手にして感じてください。
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この記事を書いた人

佐伯
TOP STOneRY / 編集部ライター
トップストーン編集部がお届けする「トップストーリー」メディアでは、古くから愛されている誕生石の歴史やエピソード、最新のレアストーンの特徴、宝石の楽しみ方をわかりやすく解説しています。「天然石の魅力をもっと多くの方に知ってもらいたい」という想いで、個性溢れるライターが情報発信しています。