2025/6/5

宝石の遊色効果と光学効果を徹底解説|虹色の輝きの秘密と代表的な宝石たち

オパールを傾けたり、動かしたりして見る向きを変えてみましょう。表面に揺らめく虹色の美しい色彩が変化して見えます。

宝石が虹色に変化して見える現象を「遊色効果(ゆうしょくこうか/プレイ・オブ・カラー)」と呼びます。

今回は遊色効果をはじめとする、さまざまな宝石の光学効果を解説します。
宝石の織りなす不思議な光の世界に、足を踏み入れてみませんか。


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1.遊色効果

はじめに遊色効果について解説します。
遊色効果が起きる理由や光の性質、オパール以外にもある遊色効果を持つ石を見てみましょう。

■遊色効果が起きる理由

遊色効果は、宝石の光学効果の一つで、オパールに見られます。
オパールが遊色効果を示す理由は、オパール内部の構造および光の反射の仕方に関係します。

まず、オパールは非晶質(ひしょうしつ)の鉱物である点を押さえましょう。

<用語解説>非晶質とは
原子や分子が規則正しい配列をとった結晶物質に対する物質。原子・分子が不規則に並びながら物質をつくっている。「準鉱物」と呼ばれることもある。

オパール内部は、二酸化ケイ素と水分が混ざり合った球体の粒子が格子状に並んでいます。
この層を作る粒子と粒子の隙間を光が通過する際、光が回折し、干渉を起こすために遊色効果が生まれます。

<用語解説>光の回折・干渉とは
光の回折とは、物質に光が当たったとき、光が影となっている部分に回り込んで伝わる現象。
光が回折すると進行方向が曲がるため、乱反射となる。

乱反射した光の波長はあらゆる方向に進み、光の干渉につながる。

光の干渉とは複数の光が互いに干渉し、光の波長が強まったり、弱まったりする性質。

オパールに入り込んだ光は、内部の粒子に当たって乱反射を起こし、干渉しあって遊色効果になるということです。

■オパールが虹色に輝く理由

    オパールの表面に虹色のような色彩が見られるのは、光が持つ七色が分散されるためです。

    白色光は、人の目には色がないように見えます。
    しかし実際は光の波長の長短により、赤・橙・黄・緑・青・紫と多彩な色を持っています。いわゆる「虹色」をイメージしてください。

    オパールを通過する際、白色光は七色に分散されます。だから私たちの目には、レインボーカラーに見えるのです。

    虹色への分散は、光がオパールに入る角度によって変わります。
    オパールを傾けると色が変化して見えるのは、オパールに入って進む光の方向が変わるためです。

    2. オパールの種類

    オパールには、遊色効果を示すものと示さないものとがあります。

    遊色効果が見られるオパールをプレシャス(ノーブル)オパールと呼び、遊色効果が見られないオパールをコモンオパールといいます。

    遊色効果があるプレシャスオパールから、6つのタイプを紹介します。

    ■ホワイトオパール(オーストラリアオパール)

    ホワイトオパール

    一般的にオパールと呼ばれる石です。和名を蛋白石(たんぱくせき)といいます。

    透明感のある乳白色の中に、美しい虹色が揺らいで見えるのが特徴です。

    オパールの中では最も産出量や市場への流通が多く、馴染みのあるオパールとして、古くから人気があります。

    ■ブラックオパール

    ブラックオパール

    ブラックオパールは、宝石の地色である黒やグレーと、遊色効果による明るい色彩とのコントラストが人気の石です。

    コントラストがあることで遊石効果による虹色がより鮮明に映し出されます。

    オーストラリアのニューサウスウェールズ州北部にある、ライトニングリッジ産が高品質だとされます。

    ■ファイヤーオパール

    ファイヤーオパール

    ファイヤーオパールは炎のような赤・黄色・オレンジなどの地色に、虹色の遊色効果があらわれます。
    一般的なオパールのような乳白色をしていないため、別の宝石と認識されることもあります。

    すべてのファイヤーオパールが遊色効果を示すわけではありませんが、多くのファイヤーオパールは、炎のような力強い色の中に煌めく虹色を見ることができます。

    ■ボルダーオパール

    ボルダーオパール

    ボルダーオパールは、カットの仕方によって、オパールの色彩や模様の見え方に違いがでる、個性豊かなオパールです。
    オーストラリアの北東部、クイーンズランド州のウイントン鉱区やクイルピー鉱区などで採掘されます。

    ボルダー(boulder)とは、英語で「岩」の意味です。ボルダーオパールは、堆積岩や鉄鉱石の隙間に生成され、母岩ごと産出します。

    ■ウォーターオパール

    ウォーターオパール

    ウォーターオパールは透明感ある水彩のような遊色効果が美しいオパールです。
    「クリスタルオパール」「ジェリーオパール」とも呼ばれます。

    ウォーターパールとされるためには、透明感や地色(無色、やや乳白色)などの条件があります。
    他のオパールには見られない、瑞々しい美しさを持った宝石です。

    ■カンテラオパール

    カンテラオパール

    カンテラオパールは、卵の中から虹色の中身が覗いているように見える珍しいオパールです。
    メキシコ産の、遊色効果が見られる母岩が付いたオパールがカンテラオパールと呼ばれます。

    岩に包み込まれたような虹色の色彩が神秘の世界を思わせる、不思議な形状をした唯一無二のオパールです。

    3. オパールに見られる遊色効果の形状パターン

    オパールは見る角度によって、表面にあらわれる遊色効果の形状パターンが変化します。
    主な形状パターン4種類の名称と、形状をまとめました。

    形状パターン 模様の詳細
    ピンファイア/ピンポイント 小さく密集した斑(まだら)模様
    ハーレクイン/モザイク 市松模様のような、大きく角ばった形が密集した斑模様
    フレーム 宝石全体を流れるように、赤みがかった筋が見られる模様
    ピーコック 孔雀のような青と緑の閃光色をした模様

    ■遊色効果を持つその他の石

    一般的に「遊色効果といえばオパール」のイメージです。
    ごく稀に、オパール以外の宝石で遊色効果を示す石が産出されることがあることは、ご存じでしょうか。

    リューサイト

    イタリアなどで産出される「リューサイト(白榴石)」です。

    リューサイトは、流通量が少なく希少性が高い宝石です。このリューサイトで、遊色効果が見られる個体が見つかっています。

    ただでさえ希少なリューサイトの遊色効果は、価値がつけられないほどの希少性です。

    ☑ あわせて読みたい

    リューサイトについてはこちらの記事で詳しく解説しています。

    4. 他にもある宝石の光学効果

    遊色効果の他にも宝石の光学効果はさまざまあります。
    代表的な光学効果を解説します。

    ■イリデッセンス(Iridescence)

      イリデッセンスは、虹色のような色彩が宝石の表面に見られる光学現象です。
      宝石内部に屈折率の異なる透明鉱物の薄い膜が積層しており、そこで反射する光が干渉するために虹色に輝いて見えます。

      ムーンストーンのシラー効果も、イリデッセンスの一種です。
      シャボン玉や孔雀の羽が虹色に輝く現象も、イリデッセンス効果であると言われています。


      【イリデッセンスで有名な宝石たち】

      ラブラドライト

      ▶ ラブラドライト(曹灰長石)

      グレーやオレンジ、青、黄色、無色などのカラーに浮かぶ虹色は、ぜひ見ておきたい美しさ。
      見る方向によって、虹色に見えるもの、青みが強くでるものなどさまざまな色彩を楽しむことができます。

      クロムトルマリン

      ▶ クロムトルマリン

      クロム(Cr)により鮮やかで美しい緑色をした石です。
      クロムトルマリンは光が当たる方向によって、地色に小宇宙が広がるような虹色のきらめきを見ることができます。
      「レインボーフラッシュトルマリン」という流通名でも知られています。

      レインボーガーネット

      ▶ アンドラダイトガーネット

      さまざまなカラーがあるアンドラダイトガーネットのなかに、「レインボーガーネット」と呼ばれる茶色やオレンジ色をしたガーネットがあります。
      宝石の表面に、虹色一つひとつの色がはっきりとわかるような、鮮やかな色彩を見ることができます。
      日本では奈良県が産地として知られています。

      マスグラバイト

      ▶ マスグラバイト

      レアストーンであるターフェアイトの亜種で、ほとんど流通していません。
      美しい虹色のイリデッセンス効果が見られるマスグラバイトがごく稀に産出します。
      さまざまな希少性が重なり、コレクターの間では絶大な人気を得ています。


      ■シラー効果(Adularescence・アデュラレッセンス)

        シラー効果とは、青白い乳白色をした光が、宝石の表面上で揺らめいて見える光学現象のことです。ムーンストーンなどフェルドスパー(長石)グループの天然石に多く見られます。

        ムーンストーン内部は多層構造をしています。光を受けるとそれぞれの層で光の反射や散乱が生じます。
        宝石の内部で光が散乱することで、宝石が乳白色に輝くのです。

        「シーン効果」と呼ぶ人もいます。

        ブルームーンストーン

        ブルームーンストーンは、青色のシラー効果を強く示します。
        その色合いは、まるでイタリアにある青の洞窟の海の色のよう。
        神秘的で美しい青色の輝きが、多くの人を魅了します。

        ■スター効果(Asterism・アステリズム)

          スター効果は、宝石に光を当てると、複数の交差する白い光筋(条線)が、星のような形で現れる光学現象の一つです。「星彩効果」とも呼びます。

          スター効果は、内包される結晶やカットの仕方が鍵となります。

          スター効果が見られる条件は以下のとおりです。

          • 宝石に内包されるルチル(金紅石)などの針状結晶が2つ以上平行に並ぶ

          • 底面を内包物の伸長方向と平行にドーム型カボションにカットする

          2方向のルチルが交差した石は4条線に、3方向だと6条線のスター効果があらわれます。

          スター効果を示しやすい宝石は、ルビーやサファイアです。
          それぞれ「スタールビー」「スターサファイア」と特別な名前で呼ぶこともあります。

          白い条線が全面にまっすぐにあらわれ、星の形がきれいに浮かぶものほど、価値が高まります。

          ■キャッツアイ効果(Chatoyancy・シャトヤンシー)

            キャッツアイ効果は、光を当てると一条の光が宝石の表面に現れる光学効果です。

            別名を「シャトヤンシー」と呼びます。「chaton(シャトン)」は子猫を意味するフランス語で、英名のキャッツアイとともに猫の目に見えるさまから、名前がつけられました。

            キャッツアイを示す条件は、以下のとおりです。

            • ドーム型のカボションカットにする

            • 宝石に内包される針状結晶が平行に並ぶ

            キャッツアイ効果に必要な針状結晶の配列は、1方向です。複数の配列が必要なスター効果とは、ここが異なります。

            キャッツアイ効果を示す宝石の代表格は、クリソベル・キャッツアイ(猫目石)です。
            ライトイエロー、ハニー、グリーンなどさまざまな色合いがありますが、どのカラーもミステリアスな輝きを放ちます。

            ■アベンチュリン効果(Aventurescence・アベンチュレッセンス)

              アベンチュレッセンスは、小さな板状・葉状の内包物に光が反射し、宝石がキラキラとラメのように煌めく現象です。

              アベンチュレッセンスを起こす内包物は、銅やヘマタイトなど。有名なところではサンストーン(ヘリオライト)でよく見られます。

              ちなみにムーンストーンも、長石グループの石です。
              サンストーンの和名は日長石(にっちょうせき)、ムーンストーンの和名は月長石(げっちょうせき)。
              太陽を意味するサンストーンと、月を意味するムーンストーンは、よく特徴が比較されます。

              サンストーンのオレンジや赤褐色にきらめくアベンチュレッセンスはまさに太陽のエネルギーを感じさせ、ムーンストーンのシラー効果は青白く幻想的な月夜そのものではないでしょうかか。

              ■カラーチェンジ〈変色性〉(Color change)

                カラーチェンジとは、同じ宝石を異なる光源下で見た時に、それぞれ違う色を示す現象のことを指します。
                アレキサンドライトが有名で、その名をとって「アレキサンドライト効果」とも呼ばれます。

                アレキサンドライトは、自然光下では青〜緑色に見えますが、白熱灯下では赤〜紫に色が変わります。
                アレキサンドライトが「昼はエメラルドのように輝き、夜はルビーのように煌めく美しい宝石」といわれるのは、カラーチェンジ効果があるためです。

                カラーチェンジする宝石は他にも、カラーチェンジ・サファイアやカラーチェンジ・ガーネットがあります。

                ■複屈折性(Double refraction)

                ダブリング

                複屈折性とは、物質を通過する際に光が2方向に分かれる現象です。

                光の進み方が異なるため、複屈折性を持つ宝石を通して見る像は二重に見えます。「ダブリング」とも呼びます。

                複屈折性を持つ代表的な石はエメラルド、シトリン、トルマリン、トパーズ、ジルコン、カルサイトなど。
                この光の屈折性の違いは、宝石を鑑別する際にも用いられます。

                ■多色性(Pleochroism)

                  多色性とは、見る角度によって見える色が変化する光学的性質です。
                  光源の違いによって色が変化するカラーチェンジと異なり、同じ光源下でも角度によって色が変わります。

                  多色性は屈折性に起因して起こります。光が宝石を通過する際に複数方向に進行する、その方向によって吸収される色が異なり、見える色も変わるというメカニズムです。
                  石を傾けるだけで全く別の色に変化する石もあれば、濃淡がやや変わる程度の色調変化を見せる石もあります。

                  タンザナイトやアイオライトなどが、多色性を強く示す宝石として知られています。
                  また、アンダリュサイトは「多色性の王様」と言われるほど、群を抜いた色変わりを見ることができます。

                  5. 光学効果を示す主な宝石一覧

                  光学効果の種類と、その光学効果を示す主な宝石の一覧は、以下の通りです。

                  光学効果の名称 光学効果を示す主な宝石
                  遊色効果 オパール
                  シラー効果 ムーンストーンなど
                  スター効果 スタールビー、スターサファイア、ガーネット、スピネルなど
                  キャッツアイ効果 クリソベリルキャッツアイ、トルマリン、アパタイトなど
                  アベンチュレッセンス サンストーンなど
                  イリデッセンス ラブラドライトなど
                  カラーチェンジ アレキサンドライト、カラーチェンジガーネットなど
                  多色性 タンザナイト、アイオライト、アンダリュサイトなど

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                    6. まとめ

                    遊色効果は、宝石内部の微細な粒子表面で、光が干渉しあい起きる光学効果です。

                    干渉しあった光は波長ごとに異なる方向に進むため、私たちの目には虹色に輝いて見えます。

                    オパールが示す遊色効果をはじめ、宝石の光学効果にはさまざまな種類があります。

                    「星のような光の筋が見えるもの」「光源によって色が変わって見えるもの」など、光によって、幻想的で美しい変化を見せてくれる宝石は、まだまだ多く存在します。

                    宝石と光が織りなす、美しい彩りの世界をぜひその目で確かめてみてください。


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